Tim、そしてSteve・・・ 

昨夜、7メガでTim VK3IMから呼ばれた。1時間程お喋りに興じた。彼のネット環境は回復し、電話も使えるようになった由。

彼が、Bill N4ARから何か連絡があるか、何か聞いているかと尋ねてきた。Billは、2,3年前にようやく退職し、これからアンテナも復旧させて出てくると言っていた。年齢はもう70歳台半ばだろう・・・が、年に一度ほど耳にするだけであることを伝えた。Timは、もっと悪い知らせがあるのではないかと心配していたらしく、大層喜んでいた。やはり1980年代、Timがメルボルンからマウントエライザの自宅まで車で帰宅する途上、Billとしばしば交信したらしい。Billは、定期的な相手だったとのことだ。

ついで、私がSteve WA6IVNとしばしば交信していたのも、同じころに聞いていたと彼が言う。彼の口からは、コールが出てこず、脳腫瘍の末期でそれでも無線に出てきていたカリフォルニア在住の私の友人、という形容だった。Steveのことを耳にするのはしばらくぶりのことだ。ほかのところで記したとおり、Steveは子供のころから、悪性リンパ腫にかかり、最初は比較的良性のもので放射線治療だけで対処していたが、30歳台になって、より悪性度の高い悪性リンパ腫を併発、その後悪性黒色腫にも離間して40歳台そこそこで亡くなられた方だ。

私がカムバックしてきた1980年ごろからしばしばSteveと交信をするようになった。今考えてみると、彼の人生の晩年の数年間を比較的近しい立場にいさせて頂いたことになる。小児科医になりたてで、彼の病状や治療について理解してあげられることができたこと、同じ趣味をもつことによって、私のことを近しく感じてくださっていたのかもしれない。

この年齢になって、彼の短かった人生に思いをはせると、激烈な人生を歩まれたのだ、ということがひしひしと迫ってくる。彼は、人生の一番輝く時期を、病との戦いで過ごしたのだ。ぎりぎりと締め上げられるような気持ちでいたのではなかっただろうか。彼はその戦いに埋没することなく、無線や、ボートに熱中していた。人生を燃焼しきることに集中していたのだ。その人生を生きる彼の口から出てくる言葉が、いかに重たいものであったか、今になると痛いほど分かる。私もいろいろと語ったような気がするが、それは殆ど記憶に残っていない。彼の語る言葉を、その重みにおいて受け止めて上げられただろうか。時に、彼の長口舌に正直ウンザリさせられたものだったが、でも、その長い話から、彼の生きようとする意思をどれだけ聴き取っていただろうか。

Bob W6CYXのお宅にお邪魔した1988年だったか、その時にも車で2時間はかかるところを病身をおして、奥様どもども会いに来てくださった。キャンピングカーで来てくださり、一晩泊まって行った。悪性黒色腫が脳に転移し、すでに末期の状態だった。美しいブロンドの髪もあらかた抜け落ち、やせ細り、老人のようだった。あれから数か月たたぬうちに、彼がSKになったという知らせを受けた。

人生の最後の数年間、燃焼しつくすために戦った彼を、この趣味を通して知ったのだった。最近、人生で出会い、そして先に亡くなって行かれた方々のことを良く思い出す。皆先に逝ってしまったが、どのような思いであったのかと考える。Steveは、そうした方々のなかでも、とくに鮮やか思い出を残して走り去った方だった。今となっては遅いが、彼の言うことをその重みに置いてしっかり受け止めていたか、それだけが心残りだ。

そんなことをぼーっと考えながら、Timの話を聞いていた。Timは同じ時代を生きた、そして生きている友人である。そうした友人が無線を通して存在することに少しほっとした。

「バンドをワッチする」が、「RBNを見る」に変化して・・・ 

過日、14メガでPer OH2PMが、CQを繰り返し出していた。久しぶりだなと思いつつ、しばらく聴いていた。どうも、応答を求める普通のCQとは異なる気配。CQを二、三回、それに自分のコールも二回ほどを、かなりの高速で送信するのだ。誰も呼ばないようなので、コールした。

Perは、自分の信号がRBNのどのskimmerにどの程度の強さで捕らえられているかを見ていたのだと言う。なるほど・・・交信の成立ではなく、「飛び」のチェックということか、と納得した。実際、正直なところ、バンドが開けているかどうかを知るのに、自分のCQがskimmerに捕らえられているかどうかを「見る」ことは私自身も行う。

RBN関連の話題では、こちらがCQを出して、1,2分後に呼んでくる局も時々いる。昨日、14メガで会ったJim K6ARは正直にそう話してくれt。バンドをていねいにスイープしてワッチする局は、むしろ少数になってしまったのかもしれない。私は、他の局をRBNを用いて探すことはしない。だが、CQを出した後は、できるだけその周波数に留まるようにしている。

バンドをワッチする、という表現は、すでに死語に近くなっているのかもしれない。RBNのデータをスクロールして、バンドのワッチは完了というわけだ。それが時代の趨勢なら仕方の無いことだ。だが、CQを出しても、応答が極めて少なくなっていることも、こうした時代の動きによることなのだろうか。CQを出して、旧知の友人に呼ばれたり、新たな友人を得たりする楽しみが、とても少なくなった。便利さは、この趣味の世界の味わいを損なっているのではなかろうか。

Perもすでに74歳。人生は短い。もっと「ほっ」とできるような楽しみ方はないものだろうか。

マイノリティ排除に関するマスコミと国民の責任 

ネットであからさまな人種的な差別に基づく発言をよく目にする。最近は、在日朝鮮人の方が強制送還になる、身近にそうした方がいたら、出入国管理局に通報しようと言うデマが拡散しているらしい。

最近お目にかかったのは、「日本のマスコミが在日の方によって支配されている」というデマ。これは、しばらく前に、某匿名巨大掲示板に、リベラルな考えを持つ文化人やジャーナリストを、朝鮮人であるとする根拠のない発言があり(たとえ朝鮮人、または朝鮮出身の方であったとしても、その思想、発言が首肯できるものであれば、全く問題ないはずだ)、それが拡散したものに基づくものらしい。このデマには、知り合いの方も「支持」をしており、びっくりしたものだ。少し調べれば分かるものなのに、それもしない知的怠惰だ。

ナチスが政権につき、国家社会主義を現実の政治に持ち込んだ1930年代。ドイツの歴史をみると、それを可能にしたいくつかの要因がある。これまでは、ヒットラーという煽動家があの忌まわしい人種的偏見に基づく虐殺を実行したと片付けられていたが、最近になって、その背景、それを可能にした条件を探る歴史的な探求が行われるようになってきた。そうした条件のなかでも大きな働きをしたのが、マスコミと、国民による、ナチスへの支持だとされている。

当初、共産党員、支持者をナチスは排除するために、彼らを予防拘禁し、強制収容所へ収用した。それが、ユダヤ人、さらには社会的なマニノリティへの差別、社会からの排除に向かっていったわけだ。国家社会主義体制を築き上げるのに、マスコミによって国民を扇動し、国民を動員することが必要だったのだろう。国家社会主義体制に国民を収束させるために、マイノリティを排除、虐殺する必要があったのだ。

ワイマール体制という民主主義の理想を実現しようとした体制が破綻し、第一次世界大戦後の過大な賠償要求による国内経済の疲弊も存在した。だが、国民が物事の本質を理解せず、国家社会主義の煽動に当初は無関心を装い、さらにマスコミの扇動活動によって積極的にナチスを支持していった。

わが国で、同じことが繰り返されるとは思わないが、在日朝鮮人への謂れのないデマが、ネットという空間であれ拡散し、広範な支持を集めることに、何か寒々しいものを感じる。

そういえば、先日NHKが、岸信介元首相を持ち上げる懐古番組を放映していた。彼こそ、国家社会主義を戦前の政権のなかで実行してきた政治家ではないか。あたかも、米国からの独立を志向した政治家のように紹介されていたが、内実は戦前の政治体制への復帰を目指しただけだったのではないか。警職法改定を目指したことが、政権にあった彼の失脚の一つの理由であったとされているが、同番組で警職法の内容について深く触れることはなかった。改定を目指した警職法は、ナチスが進めたゲシュタポと新しい警察司法制度に近似する。

マスコミと一部の国民の、こうした言動に、注目し、必要があれば、否と言わなくてはならないだろう。

昨夜の7メガで 

昨夜、少し持ち直してきた7メガで、Wと交信しておられるJAの方の信号に耳をしばらく傾けた。JL1GEL局がK6ZBと、JE1TRV局がN6TTと交信をしていた。お二人ともに、都市部ないし郊外の住宅地にお住まいの方である。やはりノイズが多そうだった。アンテナの違いというよりも、周囲のノイズの問題が大きそう。こちらは、周囲に人家もあまりない田舎なので、静かなのは当然だが、その違いに少しショックに近いものを受けた。海外局とラグチューを楽しんだ方が良いと常々申し上げているが、都市部、その近傍に住むハムは、これほど苦労をなさっている、ということだ。

仕事のために、家族のために都市部に住み続けるのは当然のことだ。田舎住まいは、良いことだけではない。何をするにも車での移動が必要になるし、近所付き合いも都市部に比べると面倒くさいほどに密接である。高齢になって住み続けるのは難しい。だが、HF帯の無線を愉しむ環境としては、やはり田舎の方が、圧倒的に有利なのだ。

これほど無線を気兼ねなく楽しめる場所で生活できることに改めて感謝した。それとともに、海外の局とラグチューを楽しもうというスローガンも、都市部で限られたアンテナを使って運用している局には、なかなか実現ができないことであるのを改めて知った。スローガンの押し売りは、ほどほどにしようと思った。

ただ、ハイバンドが秋に向けて開ける。都市部の方々には、ハイバンドで是非活躍して頂きたいものだ、と思っている。先刻ご承知のこととは思うのだが、人生は短い、この秋こそハイバンドで、お二人のような方々がactiveに出ておられるのをお聞きしたいものである。

じっとワッチするのもなかなか面白い。

JI1XJB/6、SM2EKM 

久しぶりに晴れ上がった日曜日。家人は、近所のお祭りの世話人とやらで忙しそう。家事をこなし、シャックにこもる。

朝、7メガで、某クラブのオンエアーミーティングなる顔見世興行が行われているころ、彼らの少し上でCQを出してみた。JI1XJB/6という聞きなれぬコールの方が呼んでくださった。鹿児島在住のmicさん。自作の6146パラのリグだそうで、50Wアウト。少しチャピっているが、ドリフトはなし。クリスタルコントロールの様子。11階建ての8階でバルコニーから釣竿でワイアーアンテナを張っておられる様子だ。日中の7メガは、国内にもかなり信号が弱くなるので、途中でビームをJA6向けに回した。

流暢に英語とCWを操られる方で、とりわけ感心したのは、(失礼な言い方になるかもしれないが)分からない場合は、分からぬとはっきりと言ってくださること。自尊心に関わることなので、なかなか率直には言えないものだが、彼はその点率直である。大学で教鞭をとられているらしく、農作物の成熟を感知したり、農作業の遠隔操作したりする研究を行っていらっしゃるとか・・・私の家庭菜園は専ら目視でモニターしていると申し上げると、それが一番確実だと言って笑っておられた。お子様も成人されていらっしゃるようなので、もう50歳台以上でいらっしゃるのだろうと想像した。今は自宅から離れての一人暮らしだそうで、時間が余るから無線に出ていると仰っていた。

なかなかこうした中身のある交信には巡り合えないものだが、micさんとの交信でこころ満たされた思いだった。7026近辺に居座っている私だが、いつもDX相手にするわけではなく、こうした交信であれば常に歓迎である。

午後2時過ぎ、ようやく西海岸に開け始めた14メガに出た。カリフォルニアの局とありふれた交信を終えると、SM2EKM Jimが呼んでくれた。彼のことは以前にも記したかもしれない。少なくとも、私がカムバックした1980年代以降、きわめてコンスタントにCWでお聞きしてきた方だ。実際に交信も年に一度か二度はさせて頂いている。ヨーロッパへのパスは、昼間の北極越えなので、かなり厳しいはずだが、ピークでS9を振っている。qrz.comの画像を見て納得。5エレのスタックを、他のバンドのアンテナとともに高いタワーに上げている。

勝手に、もう70歳台だろうと思い込んでいたら、昨年夏にリタイアしたばかりの64歳の由。無線は1969年に始めたのだが、その前数年間SWLをしていた由。我々は二人とも、人生のイベントを同じように歩んでいるのですねと申し上げた。違いは、彼の壮大な設備、それにDXやコンテストにも精力的に出ておられるところか。現在、街中にある自宅から、この山のシャックをネットでコントロールしているとのことだ。最初、(latencyによる)キーイングの乱れがあって、どうしたのだろうと思ったが、リモートコントロールをしていることを伺い、理解できた。夏の間は、観光客が多く、インターネット回線が込み合い、どうも具合がよくないとこぼしておられた。

ふっと思い出して、スェーデン出身の今は亡きEric W6DUのことをご存知かと尋ねてみた。母国が同じ、そして同じころCWにactiveだったから、もしかしたら知っておられるのではないかと思ったのだ。良く知っているとの返事。Jimは、勉強のためにベイエリアに1970年代滞在していたことがあり、その際に何度もお会いしたらしい。いつも笑顔を絶やさぬEricのことを、Jimと話しながら思い出していた。当時、多くのOMと知り合いになったが、大多数はすでにSKになってしまって、残念と彼は言う。私も、同感だ。しかし、これが世の習いということか・・・。まだ、起き出して着替えていないからと言って、彼は二階に上がって行った。

少しCONDXが持ち直してきている気配。庭仕事を終えてから、また少し出てみる積りだ・・・。

ギリシャ財政危機に際してゴールドマンサックスが、どのように利益を上げたのか? 

The Nationの最近号に、ギリシャ財政危機でゴールドマンサックス(GSと略す)が、如何に儲けたか、という論文が載っている。こちら

ギリシャ財政危機は、長年にわたる放漫な国家財政、脱税の横行等によって基本的に起きたことだ。EU加盟の際に、財政健全化を求められたが、他の国々とは異なり、ギリシャは国の借金を隠ぺいすることに加担し(28億ユーロの帳簿外融資をcross currency swapとして秘密裏に行った)、結局、借金はその後二倍に増えた。その際の、GSの担当責任者だった人間が、現在GSのCEOを務めている。この取引によって、GSは6億ユーロの利益を計上した。その後、2005年には、この負債を固定化する取引も行われた。その際のGSの責任者は、現在ギリシャの最大の債権者であるヨーロッパ中央銀行の総裁になっている。同じような融資が、米国の多くの地方自治体でも行われ、地方自治体に大きな損害を及ぼしている。GSは、取引相手に好条件の案件であることを強調し、その取引のリスクを十分説明していなかった。

こうしたことらしい。ウォールストリートの他の投資銀行も同じような取引で莫大な利益を上げているようだ。

彼らの行った取引は、もしかしたら、法律には触れないのかもしれない。だが、モラルには反する。GSのCEOが年収20億円以上を稼いでいる一方で、ギリシャ国民は薬や食品を買うこともままならないのだから、という著者の見解に同意である。

これは、我々と遠い国での出来事では決してない。わが国は借金を積み上げており、対GDP比ではギリシャよりも大きな額になっている。現政権は、社会保障の切り詰めには熱心だが、海外援助、大企業優遇、防衛軍備拡大などには大盤振る舞いを続けている。国家破産が既定路線であり、その前に、金をできるだけバラまき、自分の懐に入れようとしているかのようだ。

こうしたgreedyなウォールストリートの投資銀行は、日本が窮状に陥るのを今か今かと待ち構えている。様々な形で、日本国民の資産を奪い尽くす行動にでるはずだ。TPPは、その大きな手段を彼らに与える。この安保法制で必要になる新たな軍備への予算にも喰らいついてくることだろう。大きいのは、医療介護、社会保障の民間企業参入だ。そこにはすでに米国の資本が入り込んできている。

彼らのモラルからはずれた簒奪から、日本国民を守ろうとする政治家、官僚はいないのだろうか。

商人と代官の会話 

商人; お代官様、このたびは手前どもに新国立競技場建設でしこたまもうけさせてくださるはずでしたのに、何やら下々の者どもが騒いで、御取下げになるようで、残念でなりません、はい。

代官; 騒ぐでない。わしが政を取り仕切るようになってからというもの、東南アジアやアフリカに、5年間で合わせて8.2兆円の政府開発援助等を行うことにしておる。その多くが、ひも付きで、お前たちに商売が回るようになっておるのは分かっておろう。

商人; はは、そうでございましたか。それはありがたい。政府開発援助で得られる商いは、うまみのある商売でございます。ありがたいことで・・・。

代官: それ以外にも、千億円単位で世界中に政府開発援助の種をまいておいたぞ。分かっておるな・・・その種が大きく成長したら、こちらにも、収穫の喜びを分かち合わせるのじゃぞ。世界中に金をばらまいた効果で、世界の警察の用心棒にさせて頂けることになったぞ ふぉっふぉっふぉ・・・。この警察、時々は犯人でない者を犯人に仕立て上げ、自国の武器商人に多大な利益をあげさせているようだが、・・・イラクと言う国の戦では、少なくとも96兆円の戦費を使い、4000人以上の警察官が殺されたそうだ・・・ま、それはそれ、これはこれでよかろう。

商人; はは、それはおめでとうございます。しかし、・・・用心棒でござりますか・・・(首をひねる)。手前どもは、商いができればそれで満足でございます、はい・・収穫の分け前を差し上げること、もちろんでございます。新国立競技場の商いなぞ、何でもございません。しかし、お代官様もなかなかやり手でございますね。

医療事故再発防止のために 

医療には重大事故につながりうるケースが、残念ながら多数存在する。そうした事例は「ヒヤリハット」と称されている。限られた医療資源のなかで、スーパーマンではない人間が行う作業であるために、「ヒヤリハット」事例はいくら努力してもゼロにはできない。日本医療機能評価機構という天下り団体が、「ヒヤリハット」事例を収集し、分析している。以前、このブログでも紹介したが、彼らは、医療者個人の不注意等にその原因を求め、背後にあるシステム、労働環境の問題には殆ど目を向けない。医療事故を見る行政の眼差しが、同機構の「分析」なるものに典型的に表れている。

医療事故の大多数は、システムエラーの結果生じる。医療者に刑事責任を負わせても、その再発は防げない。これは、国際的に広く認められた事実である。同機構は、「ヒヤリハット」事例を収集し、その数が増えた減ったと報告し、それで医療事故を防ぐ事業だとナイーブに思い込んでいる・・・または、背後のシステムエラー、労働環境にまで踏み込むと、医療体制の不備が明らかになるので、故意にそれでお茶を濁しているのかもしれない・・・恐らくは、こちらの可能性が高い。

医療事故の背後にあるシステムエラー・労働環境の問題を考慮しない司法判決が、ある事件に対して下された。こうした司法の態度は、事故再発に結びつかない。また、医療を委縮させる。結局は、医療事故が再び起きることになる。

以下、MRICより引用~~~

Vol.140 「医療従事者を守ろう」−ウログラフィン誤投与事件の責任は病院にあり− 

医療ガバナンス学会 (2015年7月17日 06:00)


「現場の医療を守る会」
代表世話人 坂根みち子

2015年7月17日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://me


2014年4月18日に国立国際医療研究センター病院で起きた、研修医によるウログラフィン誤投与事件は、7月14日に禁固1年執行猶予3年の有罪判決が言い渡されました。過去の同様の事件と比べても重い判決で、世界の医療安全のスタンダードから遥かに遅れ、個人の責任を追及した恥ずべき判決でした。医療安全のイロハを学ばない検察と裁判官の不勉強も然ることながら、自らのシステムエラーと警察への届け出内規をともに放置してきた病院の責任は重大です。
現場の医療を守る会世話人と有志では、下記嘆願書を提出していました。
現場の医療者を守るために更に支援していきたいと思います。
研修医をスケープゴードにしたこのような警察への届け出は二度と起きないようにしなければいけません。

嘆 願 書
平成27年7月7日
東京地方裁判所 刑事第4部 御中
「現場の医療を守る会」世話人10名、有志

国立国際医療研究センター病院「ウログラフィン」医療事故裁判での被告人医師に対する寛大な判決を求めます。

拝啓
貴職におかれましては、連日司法の重責を担われていますことに敬意を表します。今秋より、改正医療法に基づく「医療事故調査制度」が開始されます。現場の医療を守る会は、医療現場の声を医療事故調査制度に反映するために、情報を共有し議論を深めるための集まりで、医師や看護師を始めとする医療機関関係者、法律家、政治家といった多職種の個人264名(2015年7月1日現在)が参加しています。私は、その世話人10名と有志の代表です。

今回の国立国際医療研究センター病院の事例は、脊髄造影検査にウログラフィンが使用された結果、患者が死亡したという事例であり、不運にも被害者となられた当該患者とそのご遺族に対し哀悼の意を表します。

しかし、本件は、医療界及び司法界にとって青天の霹靂ではありません。本件で使用された造影剤「ウログラフィン」による死亡事故は、過去7件発生しており、内5件で当該医師に刑事罰が科されています。8件目である本件の発生を担当医師に対する刑事処罰によって防止できなかった以上、過去の再発防止策を再検討し、医療界及び司法界が一丸となって再発防止に取り組まねばなりません。

本公判では、検察官が被告人のヒューマンエラーとしての個人責任を深く追求し、禁錮1年を求刑しております。確かに被害者の直接的な死亡原因は被告人がウログラフィンを脊髄内に投与したことです。しかし、1999年に出版された「to err is human」以降、医療安全における原因分析・再発防止はヒューマンエラーの観点からシステムエラーの観点へと移行しています。すなわち、人の注意力は不確かなものであり、いくらペナルティーなどを背景に注意喚起をしても間違いはなくならないことから、「フールプルーフ」(利用者が誤った操作をしても危険に晒されることがないよう、設計の段階で安全対策を施しておくこと)や「フェイルセーフ」(故障や操作ミス、不具合などの障害が発生することを予め想定し、それが起きた際の被害を最小限にとどめる工夫をするという設計思想)といったシステムにより安全を図る必要があるのです。ミスをした人間を責め、ミスをした人間を医療界から排除し、あるいは医療界に対して注意喚起を促したところで、人は必ず間違えるため再発防止の効力はありません。一人の人間の単純なミスが患者の死や後遺症といった重大な結果に繋がらないシステムを分析・対策すべきなのです。

本件が発生した背景にはシステムエラーが存在し、そのことは証人尋問においても指摘されています。まず、医療が高度に専門化したことに伴い、現在、医療従事者が患者に使用する薬剤の適切性の担保は薬剤師が責任を持ってチェックをすることとなっています。しかしながら、国立国際医療研究センター病院では、脊髄造影検査で使用する造影剤は、検査室の廊下にある棚から、医師が直接造影剤を取って使用しており、薬剤師による調剤や監査が行われておりませんでした。それに加え、現場において他の医療者と造影剤をダブルチェックする体制もなく、造影剤選択ミスを防ぐシステムが全く構築されていませんでした。さらに脊髄造影検査数の減少に伴い、被告人だけではなく、研修医が造影剤に関する知識を得る機会に乏しい状況にもあるにもかかわらず、国際医療研究センター病院に存在する医薬品の安全使用のための手順書等には、脊髄造影検査に関する手技や使用する造影剤に関する記載はありませんでした。
本事例は、本公判証人尋問にて弁護人による「新しい体制が事故当時にあったならば、同様の事故は避けられたと思うか」との問いに、診療科長が「そう思う」と答えたことからも示されるように、通常、病院として備えておくべき安全管理体制がとられていないことが主たる要因であり、問題の本質は、システムエラーにあることは明白です。

このように本質的な問題は、システムエラーであるにもかかわらず、過去の同種の事件では、一般予防のためと称し、最終行為者である医師個人を処罰することで、対策をしたとしてきました。本件においても、検察官は「医師の勉強不足、基本的な心構えの欠如」「同病院の医薬品の安全管理体制が十分であったか否かなどについては、今回の事故では、医師としての基本的な注意義務を怠った事案であるため、重視すべきでない」と前近代的な発言をしています。システムエラーの視点を捨象し、盲目的に個人の責任追及を行うことは、再発防止に寄与するどころか、医療安全を後退させ、医療を萎縮させると言わざるを得ません。
過去7件同様の事件が起きているにも関わらず、本件が発生したことからも「一般予防の観点から刑事罰を科すべき」との検察官の認識が誤っていることは明らかであり、直近過失に関与した医師個人を刑事罰に処するのではなく、その背後にあるシステムに対応することこそが再発防止に有効な手段なのです。

また、刑事司法による医師個人への責任追及は医療現場に多大なる悪影響を及ぼし、国民の生命・身体に著しい不利益をもたらします。その典型例が福島大野病院事件です。通常の医療を行ったにも関わらず、産科医が逮捕・勾留されたことにより、我が国の産科医療は萎縮、崩壊し、産科医数、産科医療機関数が激減しました。それにより、高度の医療を要する妊婦が適時に治療が受けられない事案が発生する等、出産リスクが上昇し、今もなお、国民が不利益を受けています。
福島大野病院事件においても、医療体制や医療安全体制の不備というシステムエラーによって生じた患者の死という結果を医師個人に帰責しようとしました。本件被告人も福島大野病院事件の被告人となった医師も、共に患者を救おうと日々医療現場に従事していた善良な医師です。システムエラーの観点からの原因分析・再発防止が行われず、最終行為者である医師のみの責任として非難するといった前近代的な対応のみで、現在の医療安全工学に則った事故調査を行わなければ、医療現場が危険なままとなるばかりでなく、医療が萎縮、崩壊することとなります。

医療界が求めているのは、未来のある若者をスケープゴートにして医療安全に何らの寄与もしない事案処理ではなく、このような残念な事案が二度と発生しないよう、科学的に分析し、再発防止をはかる医療事故調査制度です。そして、このような医療安全のための事故調査制度には、非懲罰性、秘匿性が担保されなければならないとWHOドラフトガイドラインにも示されています。個別の事案に対し、逐一、刑事司法が介入することは、一般予防どころか、かえって医療の安全を阻害するのです。

医療現場は、一刻を争う患者に対して、圧倒的に不足する人的・物的資源の中、現場医療従事者が国民の健康のためと、労働基準法度外視の長時間勤務によって維持されています。このような悪条件においては、いつでも生じうるヒューマンエラーが重大な結果に直結しないシステムを構築することが何よりも肝要です。医療界は、医療安全を積み重ね、同種の事故が発生しないよう努めていきたいと切に願っています。
国民の健康を守るため、医療をより安全にするためにも、被告人に対し、寛大な判決をお願いいたします。

「現場の医療を守る会」
代表世話人  坂根 みち子  坂根Mクリニック院長
世話人    井上 清成  井上法律事務所 弁護士
於曽能 正博  おその整形外科院長
小田原 良治  日本医療法人協会常務理事
佐藤 一樹  いつき会ハートクリニック院長
中島 恒夫  全国医師連盟理事
満岡 渉  諫早医師会副会長
岡崎 幸治  日本海総合病院研修医
森 亘平   浜松医科大学 医学部医学科 3年生
有志    伊藤 雅史  日本医療法人協会 常務理事
大磯義一郎  浜松医科大学医学部法学教授
染川 真二  弁護士法人染川法律事務所 弁護士
田邉 昇   中村・平井・田邉法律事務所 弁護士
山崎 祥光  井上法律事務所 弁護士

戦争法案を廃案へ 

戦争法案が、衆議院委員会で強行採決された。これで、戦争法案が成立するわけではない。

下記のように、これからが戦争法案を廃案に追い込む戦いの正念場だ。

下記の記事、拡散をお願いしたい。

以下、引用~~~

明日の自由を守る若手弁護士の会

【安保関連法案 まだまだ阻止できます☆】

 安保関連法案、さきほど衆院特別委員会で強行採決されてしまいました(明日、本会議で採決とのこと)。
 政府がなに一つ誠実に質疑に答えず、日本語として理解できないような答弁で逃げ切ったあげく「時間がたった」と、怒号の中で多数決。
 まるで、映画のような、ドラマのような、暴力的な政治です。

 もしかして、衆院特別委員会通過と聞いて、「あぁもう成立してしまった」…かのように落胆されている方はいらっしゃいませんか?
 もちろん、あすわかも落胆しています、が、まだ国会は続くのです。私達の声が法案成立を阻止できるチャンスは、ま~だまだ残されてます!


 そもそも法案というものが成立する道のりは2つあります。
1つは、同一の会期内に衆議院と参議院の両方を過半数の賛成で通過する道のり。
もう1つは、参議院が衆議院から法律案を受け取って60日以内に議決しないときに、衆議院の3分の2以上の賛成で再議決する道のり(最近よくきく60日ルール)。

 ですから、衆議院特別委員会で強行採決されて本会議で採決されても、参議院で可決されなければ法案成立しません。参議院で可決しないまま60日経ったとしても、衆議院で再議決しない限り成立はありえない。

 この国会(臨時国会)の会期は、9月27日までです。

 会期中に議決できなかった案件は廃案となるのが原則です。

 しかし、「継続審査」とすることが許されており、これには回数の制限などはありません。

 また、今回たとえば衆議院で可決して、参議院に送られたものの会期末となり、「継続審議」になった場合、
次の国会では、参議院は審議の続きから始まりますが、衆議院はもう一度最初から審議やり直しになります。
 なのでこの場合には、臨時国会でなされた衆院採決は意味が無くなるわけです。


 廃案または継続審議となっても、次回以降の国会でまた法案提出、審議して成立を目指すことはできます。
 しかし、法案の内容がもっともっと国民に広く知られ、もっともっと反対される時間ができると、ますます支持率は下がりますし(ますますアベノミクスのボロも出るし)可決しづらくなるので、政府としては世論がこれ以上反対で盛り上がる前に早く可決してしまおうと考えるわけです。

 まだ諦めなくてもいいのです、というか諦めてはいけないのです!まだ私達はこの法案の成立を阻止できます。
 対抗手段は、とにかく問題点を広く知らせ、反対意見をあらゆる方法でアピールし続けて、会期内に参院で通させないことです。
 先日書いたように、議員さんにFAXやメール、手紙で直接声を届けましょう。デモや集会をしっかり報道した新聞やテレビには応援のメッセージを送りましょう。強行採決を中継しなかったNHKには、きちんと「それでも公共放送のつもりですか」と批判の声を届けましょう。

 共同代表の黒澤は、ついこないだ、さる集会で「これは安倍首相の執念と、私たち国民の執念のたたかいです」とお話しました。
 諦めないことです。

 主権者は私たち国民なのですから。

 憲法は、私たちのものなのですから。

 この国の行方は私たちが決めるし、勝手に憲法を死文化させるもんですか。

 衆議院を通過してしまったとしても参議院で通過させないよう粘りきることです。毎日、声をあげ続けましょう☆

(この記事は、2013年11月、特定秘密保護法案が衆議院の特別委員会で強行採決された際に書いた記事を思い返しながら書きました。)

無責任の系譜 

ハーバート ビックス著「昭和天皇」は、昭和天皇の生い立ちと彼の第二次世界大戦との関わりとを実証的に記述した好著である。ピューりツァー賞も受賞している。この本を読んで感じるのは、昭和天皇が、躊躇をしつつも、戦争の勃発に積極的に加担し、その遂行にも関わったこと、それに加えて、責任の所在を分散し、壮大な無責任体制を作り上げていたことである。後者は、昭和天皇自身の責任と言うより、軍部を含めた官僚機構が生み出したこと、またはそれに本質的に備わる特質なのだろう。

国の運営に責任を取らぬ体制は、戦後も続いている。

例えば、新国立競技場の建設の問題。行政、政治、専門家、が、お互いに責任を擦り付け合っている。2520億円のコスト、その後に生じる莫大な維持コストは、のちの世代に付けまわしにすれば良いという考え、だれも責任を取らない。原発再稼働もそうだ。政府は、原子力規制委員会が安全であると言ったという。同委員会は、安全規則に従って評価しただけ、という。もし深刻事故が再び起きたら、責任を取る者はだれもいない。安倍首相は、その第一次政権当時、福島第一原発の津波への対応が不十分だと国会で問い詰められて、深刻事故は起きないと答えた。その後の事態に対して責任をとっていない。そればかりか、原発事故がコントロールされていると欺いている。無責任である。

集団的自衛権行使を実現する安保法制が定められ、実際に自衛隊が外国で戦争を行うことになる。当然、自衛隊員から戦死者が出る。自衛隊が派遣される可能性が一番高い中東では、テロ集団との戦闘になる。米軍が行ってきたように、自衛隊も、現地の市民を巻き添えで殺すことになる。それが憎悪の連鎖を引き起こす。在外邦人がテロの対象となり、さらにわが国もテロ攻撃にさらされることになる。そうした事態になっても、現政権は責任を取らないだろう。

この無責任の流れを何とかしないといけない。