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リハの医療事故の原因は、医療機関だけの責任か? 

高齢者のリハビリテーションは、対象がもともと運動機能の障害を持っていることが多く、事故の起きる可能性は低いとは言えない。それは、自宅であろうが、医療機関であろうが同じだ。

高齢者のリハビリテーション中の事故数を、また、日本医療機能評価機構が報告している。医療事故の数それ自体は、どれほど目の細かい網を、どれだけの範囲にかけるかによって多寡が変化する。したがって、トータルの数は少ないに越したことは無いが、大切なことは、一つ一つの事例の原因を明らかにし、それを再発防止に役立てることだ。

日本医療機能評価機構の担当者のコメントは、医療を知らない人物の発言としか思えない。

そのコメントとは「多忙な中で漫然と危険性を見過ごしている医療機関もある」という発言だ。漫然と見過ごすいうことと、多忙を極めているということは並立しない。多忙を極めているのならば、漫然と見過ごすということではない。多忙になる理由は何なのかを突き詰めるべきではないか。ここ数年、リハビリテーションの診療報酬に成果主義が取り入れられ、それこそ漫然とはりハビリテーションを続けることはできなくなっている。さらに、リハビリテーションの診療報酬自体が毎回の改定時に引き下げられ、十分なマンパワーを充てられなくなっている。多忙の背景に、そうしたシステム上の問題がないのか、事故を起すリスクの高い高齢者のリハビリテーションに十分な医療行政上の十分な手当てがなされているのか、そのことをこそ、日本医療機能評価機構は問題にすべきではないのか。

リハビリテーションに日数制限を持ち込んだ官僚に対して、多田富雄東大名誉教授が激しく抗議したことは、既に記した。行政が、リハビリテーションを軽視し、貶めたことが、医療事故の原因になっていると、日本医療機能評価機構は何故指摘しないのか。個別の医療機関・医療従事者「だけ」の責任に押し付けるような、医療事故調査は無意味であるばかりか、真の問題を隠すことになる。



以下、引用~~~

リハビリ中の事故多発 「医療機関、予防策を」
08/08/14
記事:共同通信社
提供:共同通信社


 日本医療機能評価機構(東京)は13日、高齢者などのリハビリテーション中の事故が、全国約560の医療機関で2004年から07年にかけて計24件発生していたと発表した。機構は「報告以外にも相当数の事故が起きていると思われる。予防可能なケースが多く、各医療機関は危険性の調査をして事故防止策を検討すべきだ」としている。

 厚生労働省によると、リハビリ中の事故についての全国調査はあまり例がない。

 機構のまとめによると、24件のうちリハビリ中の運動に伴う骨折や筋断裂などが19件、やけど4件、原因不明による骨折が1件だった。障害が残った可能性が高いケースも1件あった。

 医療機関からの報告では「目を離したすきに患者がベッドから転落した」「患者の骨が想定以上に弱くなっていた」などが原因に挙げられていた。機構の後信(うしろ・しん)医療事故防止事業部長は「多忙な中で漫然と危険性を見過ごしている医療機関もある」と指摘している。

 ダウン症や脳性まひなどで療養する15歳未満の小児患者の事故も、同期間に37件起きたという。

一臨床医、行政を訴える 

昨年、厚生労働省の決めたリハビリの日数制限に、自身がリハビリを必要としていた多田富雄元東大教授が、強い抗議の声を挙げ、多少の改善を勝ち取った。

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しかし、来月から、厚生労働省は、リハビリに日数制限を再び取り入れた。重症患者の場合、発症後5から6ヶ月以降、リハビリを実質上受けられなくなる。

それに対して、一臨床医が行政訴訟を提起した。

診療報酬等と言うものは、一般国民には関係ない、医療機関の収入にだけ関係していると思われるかもしれないが、決してそのようなことはない。病気になったら、すぐに自分に直接関わることなのだ。官僚は、公的保険で受けられる医療の範囲を、すこしずつ縮小している。彼等の目的は、公的保険をなし崩し的に縮小・撤廃することなのだ。高齢者は、すでに何度も記している通り、十分な医療を受けさせぬ制度が、同じく来月から実施される。

一臨床医が、このような訴訟を起こさざるを得ない状況が、国民にとってとても不幸なことなのだ。

私は、この訴訟を断固支持する。


以下、m3医療維新より引用~~~


医師が国を訴える、「改定に異議あり」
今改定のリハビリ算定要件を問題視、通知の差し止めを求める
橋本佳子(m3.com編集長)

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「今回の提訴は、火を付けるのが狙い。医療関係者に、リハビリをはじめ医療問題に関心を持ってもらいたい」と語る、鶴巻温泉病院の澤田石順氏。

 鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)に勤務する医師、澤田石順氏が3月18日、国を相手取り、行政訴訟を起した。この4月の診療報酬改定で、リハビリテーションの点数に算定制限が設けられたため、それを定めた通知の差し止めを求める内容だ。

 提訴の理由を澤田石氏は、「今改定前も一定日数を経た後は点数が下がるなどの問題があったものの、医学的な必要性が認められれば、リハビリの実施は可能だった。しかし、今改定により医学的必要性があってもリハビリの点数が算定できなくなった。これはリハビリを必要とする重症患者の切り捨てだ」と説明する。その上で、「前回の2006年改定でもリハビリを問題視する方が署名活動を行ったが、それでもあまり効果はなかった。改定実施の4月1日までには時間がないこと、また厚生労働省に一市民が問題提起しても影響はないことから、提訴するのが一番有効な方法だと判断した」と澤田氏はつけ加える。

 リハビリの算定日数の制限は、重症のリハビリ患者を受け入れる病院への影響が大きいが、こうした患者を多く抱える病院は少ない。提訴に踏み切ったのは、病院団体を通じた活動が期待できないことも一因だ。

 代理人を務める弁護士の井上清成氏は、「療養担当規則には、『リハビリテーションは、必要があると認められる場合に行う』と記載してある。療担規則は省令であり、通知よりも上位の法令に当たる。通知でリハビリの日数制限を行うのは、違法であり無効。憲法25条で定める生存権にも違反している」と法的な問題を指摘する。

  患者から自費徴収で可能だが、非現実的

 今改定では、リハビリテーションの点数が再編され、4種類の疾患別(心大血管、脳血管疾患等、運動器、呼吸器)、かつ重症度別(I~IIの2ランク、脳血管疾患等はI~IIIの3ランク)に設定された。その上で、「標準的リハビリテーション実施日数」が設けられ、実施日数」よりも前までは1日6単位(一部の患者は9単位)まで算定が可能だが、この基準を超えれば1カ月13単位までしか、算定できなくなる。

 【標準的リハビリテーション実施日数】
 心大血管疾患リハビリテーション:150日超
 脳血管疾患等リハビリテーション:180日超
 運動器リハビリテーション:150日超
 呼吸器リハビリテーション:150日超

 従来も、一定期間を超えれば、点数が下がる仕組みがあった。しかし、医療上の必要性をレセプトに記載すれば、低い点数ながらも算定が認められた。「土日曜日を除くと、1カ月に約132単位から207単位は実施している。しかし、今改定以降は、1カ月当たり、わずか13単位しか算定できない」と澤田氏。それを超える部分は、保険外併用療法(選定療養)の扱いになり、診療報酬の代わりに患者から自費を求める形であれば、リハビリを実施できる。

 今回、特に問題になるのは、リハビリニーズが高い入院の患者だ。鶴巻温泉病院の回復期リハビリ病棟の約75%は脳卒中の患者が占める。そのうち180日超までリハビリが必要な患者が数%存在するという。「当院の患者の平均年齢は76歳と高い上、重症患者が6~7割にも上る。とても患者から自費を徴収できる状況ではない。一方で、当院としても、改定前もわずかに黒字を計上していた程度であり、今改定でリハビリの点数そのものも下がったので、病院の持ち出しで実施することもできない」と澤田石氏。

 「勝ち負けは関係ない、火を付けるのが狙い」

 もっとも、この訴訟自体、却下される可能性が高い。井上氏によると、「処分性」が一番問題になるという。今回における処分性とは、簡単に言えば、「厚労省の通知によって、不利益を被ったか」ということ。「リハビリが必要であるにもかかわらず、受けられなかった」という患者は、今改定が実施される4月以降でないと生じない。つまり、現時点では不利益を被った患者がいないため、通知の差し止め請求は認められにくいというわけだ。

 「今回の提訴は、改定前のあくまで予防的な措置。ただし、一審で差し止め請求が認められなくても、最高裁まで争う予定」(井上氏)。その間に、必要なリハビリが受けられず、実際に「不利益」を被った患者が出れば、損害賠償請求も可能になる。こうした訴訟が起きれば、今回の訴訟の役割は終わる。

 3月18日の未明に、澤田石氏は、提訴に先立ち、訴状を自身のホームページに掲載した。既に、支援する声などが多数寄せられているという。

 「リハビリに限らず、医療問題への関心が低い医師もいる。こうした医師に関心を高め、行動してもらうために提訴した。まず火を付けることが重要。勝ち負けは関係ない」と澤田石氏は語っている。  

重症者、症状の固定した患者にはリハをせず 

昨年だったか、リハビリに日数制限が設けられ、療養途中でリハビリを打ち切られるようになった。ご自身が、脳血管障害でリハビリを受けておられた東大の多田富雄名誉教授が、大変怒られて、猛抗議を当局に対して行った。その後、完全とはいえぬまでも、日数制限が緩和されたようだ。

脳血管障害等によるリハビリでは、特に早期に行うと、改善することが見込めるが、慢性期に入ると、機能を維持することが主たる目的になるのだと思う。

ところが、厚生労働省は、今度は、リハビリに「成果主義」を持ち込むというのだ。良くなったら、診療報酬を厚くする、良くならなかったら、当然のことながら、診療報酬は下げるという意味だろう。厚生労働省にとっては、この「下げる」方に主眼がある。リハビリの診療報酬を下げられても、医療機関が耐えられるとは思えない。結局、重症患者、症状の固定した患者は、リハビリから締め出されることになる。

厚生労働省当局は、リハビリの対象疾患の特性、リハビリの意義を一体どのように考えているのだろうか。

大きな制限のかかった後期高齢者医療といい、このリハビリの扱いといい、高齢者・重病の方には、早く亡くなって欲しいと言うに等しい政策だ。

以下、引用~~~

リハビリ診療に成果主義を導入 厚労省方針
07/11/19
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

厚労省:リハビリ診療に成果主義を導入----方針

 厚生労働省は16日の中央社会保険医療協議会(中医協)小委員会で、08年度診療報酬改定で医療の世界に初めて「成果主義」を導入する方針を表明した。08年度は、脳卒中などでリハビリを受ける人が入院する「回復期リハビリ病棟」(約3万6000床)への診療報酬を、病状の改善度合いに応じて加減する意向。11月末の中医協に正式に提示する。【吉田啓志】

リハビリ制限撤廃へ 

昨年の診療報酬改定で「リハビリ期間の制限」が施行された。下記のニュースに示すとおり、原則180日間でリハビリが打ち切られることになったのだ。

それに対し、多田富雄元東大教授を始め多くの方が、これの撤回を強く求めてきたのは、最近のエントリーで記した通りだ。

リハビリ期間制限の緩和を知らせるニュースを、私のコメントと共にここに載せる。

以下、引用とコメント~~~

医療保険:リハビリ期間を延長 医師判断で運用----厚労省方針

 医療保険で受けられるリハビリの期間が最長180日間で原則打ち切られている問題で、厚生労働省は、改善の見込みなどがある場合、保険適用の期間を医師らの判断で延長できるよう運用を拡大する方向で見直す方針を固めた。早ければ今年4月から適用する方針。12日に中央社会保険医療協議会に報告されたリハビリの実態調査で、疾患によっては1割の患者が、改善の見込みがあるのに、上限期間を超えたためリハビリを打ち切られていることなどが判明した。

 06年度の診療報酬改定で、一部の難病を除いて▽脳卒中などの脳血管疾患180日▽骨折など手足の損傷150日▽肺炎など呼吸器疾患90日、などと疾患別に保険適用期間の上限を設定。一方、市民団体が上限撤廃を求め患者ら約44万人の署名を昨年6月、厚労省に提出していた。

 実態調査は昨年12月、リハビリを行っている医療機関2822施設を対象に実施。回収率は30・3%。関節の炎症性疾患では、改善の見込みがあるのに上限があるため、リハビリを打ち切られた患者が15%に達した。同様の患者が急性心筋梗塞(こうそく)で11・3%、狭心症発作で10・3%に上った。

4月にリハビリ上限を設定、それの影響を12月になって初めて調べるという遅い動き。この間に、どれだけの方々が、運動機能を奪われたか。官僚は、よく反省するべきだ。

 「判明した」等とひとごとのようなことでは、行政機関として失格ではないか。人の命が関わる決定だ。こうした重大な施策は、それのもたらす影響を十分検討してから実施されるべきだ。改善の見込みがあるとはどのような基準で決めたのか。改善しなくても、運動機能を保持する効果で、人間的な生活を送れる人々も沢山いたのではないのか。

 改善する予測の患者さんにだけリハビリの延長を認めるということは、運動機能を保持するためのリハビリは認めぬということなのか。第二、第三の鶴見和子女史の悲劇を繰り返させる積りか。

 厚生労働省は、思いつきでこうした重大な変更をしてはならない。これだけの影響を予測せずに、たった1年で制度を手直しするのは、官僚が機能していないことを意味する。官僚のこの軽さは一体何処から来るのか。

厚生労働省の恣意的行政 

昨年の診療報酬改訂で、リハビリに「日数制限」が加えられた。リハビリをある程度行ったものは、回復の可能性がないとして、リハビリを受けられなくしたものだ。

リハビリは、失った身体機能を元に戻す以外に、残された身体機能をそれ以上失わないようにする意味がある。高齢者の脳血管障害後遺症等には、後者の意義は大きい。

しかし、厚生労働省の官僚は、問答無用に後者の目的のリハビリを受ける機会を多くの患者から奪った。

その恣意的で非道な行政を敢然と批判し続けている方がいる。元東京大学免疫学教授の多田富雄氏だ。彼は、自ら脳梗塞の後遺症を負いながら、このリハビリ制限という悪しき行政と戦っている。彼が、2006年11月号の現代思想において、この恣意的行政が鶴見和子女史の死期を早めたとして、強く批判している。多田氏は、小泉前首相と、リハビリの「専門家」とを批判しているが、実質は、厚生労働省の担当官僚への批判である。

厚生労働省は、リハビリ制限を撤廃する方向で、検討中だと言う。朝令暮改の行政はいい加減にして欲しい。その度に、患者さんと医療に携わる人間は右往左往させられる。人の命を左右するこうした恣意的な決定をした官僚には、そうしたことを繰り返さぬために、後になってでも、責任を是非取ってもらいたい。

以下、多田富雄氏の文章を引用する。

以下引用~~~

犠牲者の第一号になったのが、不幸にも社会学者の鶴見和子さんであった。例にあげるのも痛ましくてはばかられるが、11年前に脳溢血で倒れられてからも、リハビリによっ て、自立して精力的に文筆活動をしていたが、今年になってリハビリ打ち切りが宣告された。回数が減らされた後、間もなく起きあがれなくなり、7月30日に亡くなった。その 前に彼女が詠んだ歌に、

政人(まつりごとびと)いざ言(こと)とわん老人(おいびと)われ 生きぬく道のありやなしやと

寝たきりの予兆なるかな ベッドより 起きて上がることのできずなりたり

直接の死因は癌であっても、リハビリ打ち切りが死を早めたのは確かである。小泉さんがこの碩学を殺したと、私は思っている。病床で書いた「老人リハビリテーションの意味」 というエッセイには、維持期のリハビリがどんなに生きるために必要かが、切々と語られている。そして今回の改定は、老人に対する死刑宣告だと、いつになく激しい口調で糾弾 している。リハビリの「専門家」といわれた人はこの文を読んで欲しい。あなたの専門家意識が打ち砕かれることだろう。

もうこれ以上語るまい。このような老人を救うミッションが、リハビリ医療には厳然としてあるはずである。またそれを忘れた専門家意識が、鶴見さんの死を早めたことを糾弾さ れるであろう。

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