死刑制度の重み 

金田法相の死刑執行命令を下した理由が、どうもしっくりこない。残忍な事案だったではなく、徹底して冤罪の可能性は排除できたというならまだ理解できないことはない(可能性をゼロにすることは不可能なのだが・・・)。社会心理学者の小坂井敏晶氏によれば、米国での刑法犯の冤罪は1.3%に上るという。起訴された刑法犯の99.9%が有罪となる日本ではさらに冤罪率は高まる可能性がある。死刑制度は、死刑執行の実務を担う刑務官に、尋常ならざるストレスを与え続けている。死刑囚と長い時間をかけてこころを開き合う関係になる刑務官。しかし、刑務官は、むごたらしい絞首刑に死刑囚を処する実務を負うことになる。その精神的な負担は、尋常なものではない。犯罪を償わせるために、人を殺す死刑という制度の重みを、金田法相は感じていないように思える。

以下、引用~~~

2人の死刑執行、金田法相「極めて残忍な事案」

2017年07月13日 15時15分 TBS

 金田法務大臣は、13日、死刑囚2人が刑を執行されたことについて会見し、「いずれも極めて残忍な事案で慎重に審議し、死刑の執行を命令した」と述べました。1人は再審請求中だったとみられます。

 死刑が執行されたのは大阪拘置所の西川正勝死刑囚(61)と、広島拘置所の住田紘一死刑囚(34)の2人です。関係者によりますと、西川死刑囚は再審請求中で、請求中の死刑執行は99年12月以来ということです。

 「いずれの事件もまことに身勝手な理由から、被害者の尊い人命を奪うなどした極めて残忍な事案。慎重な検討を加えたうえで死刑の執行を命令したしだい」(金田勝年 法相)

 金田大臣は13日に執行した2人が再審請求中かどうかは「答えを控える」とした一方で、一般論として「再審請求を繰り返す限り執行がなされないということになりかねない。やむを得ない場合もある」との考えを明らかにしました。(13日14:37)

共謀罪法の運用を法務省がチェックする? 

共謀罪法は、対象、手続きが不明確で、恣意的に運用される可能性が高い。

その点に関する国民の不安を払しょくするためと称して、法務省は共謀罪法の実際の運用について検察庁に報告を求めることにした。

だが、検察庁は法務省の傘下になる行政機関。いわば、同業である。

警察が刑事犯罪で逮捕を執行しようとするときに、裁判所に逮捕状を請求する。裁判所は、その逮捕が適切かどうかを判断して逮捕状を出すことになる。一応のチェック機能だ。ところが、逮捕状発行が拒否されるのは、実際の統計から実に0.05から0.07%である。逮捕する前に、被疑者のアリバイをチェックする等必要な手続きを経ていないにも関わらず、逮捕状が発行されることもあるという。チェック機能が働いているとは言い難い。

だから。法務省が共謀罪法の運用をチェックすることには、期待するわけにはいかない。

きちんとチェックするならば、完全な第三者が行うことと、情報公開することだ。おそらく、それは法務当局はやらないだろう。

この法務省によるチェックは、国民の不安を和らげるための「見せかけ」「口実」だろう。

このように捜査機関にフリーハンドを与える、対象・手続きの不確かな法律は、撤廃されるべきだ。この法律は、刑法体系そのものを根本的に変え、国家権力が国民を監視する手段となる。

繰り返しになるが、「適切な運用」を期待しなければならない法律は、そのことだけで「不適切」なのだ。

朝日デジタルから引用~~~

法相、検察庁に全件報告求める訓令 「共謀罪」適用巡り
2017年7月11日13時21分

 法務省は11日、「共謀罪」法が適用される全ての事件について、検察庁に事件受理から裁判確定までの報告を求める大臣訓令を出した。金田勝年法相は閣議後の記者会見で「適切な運用をするよう関係機関への周知につとめたい。我が国は裁判所の審査が機能し、捜査機関による恣意(しい)的な運用はできない仕組みだ。(同法の新設によって)捜査機関が常時、国民の動向を監視するような監視社会にはなりようがない」と述べた。(小松隆次郎)

共謀罪施行 

共謀罪が今日から施行される。

共謀罪は、すでに何度も記した通り、対象、捜査手法、容疑等ついて不明確な内容であり、捜査当局に大きなフリーハンドを与える。

恣意的な運用により、処罰されるべきでない人々が処罰されるようになる。

共謀罪導入時、批判の対象にならぬように、捜査現場が慎重に運用すると警察当局が述べている。だが、捜査現場の適正な運用に期待をかけるような法律は、法律として失格だ。刑法体系を根本的に変える、共謀罪法はすぐに廃止すべきだ。

たとえ今は慎重運用されているとしても、将来、共謀罪を用いて、政治・社会を監視し支配しようとする政治家が出てくる可能性がある。今でさえ、自らに反対の声を挙げる、国民の一部を「あのような人たち」と排除し、敵対しようとする政治家がいるのだから。戦前の治安維持法が、国民に徐々に牙を剝くようになった歴史を知るべきだ。将来の世代のために、このような法律を残すことはあってはならない。

以下、引用~~~

7月10日付朝日新聞デジタル(問う「共謀罪」 施行に思う)裁判官は警察に問いただす勇気を 

■元裁判官・水野智幸さん(55)

何が処罰されるのかが不明確。疑問はいっさい解消されていません。



政府は、適用対象は「組織的犯罪集団」であり限定をかけたと言いますが、一般人が含まれるかどうかをめぐり、国会での説明は二転三転しました。犯罪の構成要件である「準備行為」も、「花見か下見かをどう区別するのか」と議論になりましたが、日常の行為との区別は難しい。ひとえに捜査当局が怪しいと見なすかどうか、そのさじ加減にかかっていて、恣意(しい)的な運用が懸念されます。

また、犯罪の実行行為がおきて捜査が始まるという原則が、根本から変わります。事前の任意捜査の範囲が際限なく広がります。今でさえ、警察が、犯罪の疑いのある人物の自動車にGPS端末を勝手に装着して行動を監視したことが明るみに出ました。証拠を集めるために、盗撮や盗聴、メールの傍受、尾行など日常的な監視は不可避なのです。

警察は「共謀罪」という大きな、危うい武器を手にしたわけです。警察内部でチェックが働く仕組み作りがより重要になってきます。監視の方法や捜査対象の選定が恣意的にならないような、内部基準を作っていただきたいと考えています。
裁判官も重大な責任を背負うことになりました。

警察から令状請求があった段階で、厳しい目で審査することが求められます。少しでも疑問があれば、警察に問いただす勇気と矜持(きょうじ)が求められています。

準抗告(不服申し立て)での裁判官の役割も重要です。逮捕された容疑者の勾留について、弁護側が申し立てる準抗告を形式的に退けるのではなく、容疑者の抱える事情に丁寧に耳を傾けるのです。威力業務妨害罪などに問われた沖縄県の基地反対派リーダーについて、裁判所は準抗告を繰り返し却下し、約5カ月の長期勾留を認めることになりました。こうした姿勢は改めるべきです。
犯罪の対象などを厳格化し、乱用を防ぐ基準をいかに構築するか。これからの実務家や研究者の英知が問われています。

捜査現場で「適正運用」を図らなければならない法律が施行される 

捜査現場で適正運用を図る、ということ自体が、この法律の立て付けの悪さを物語っている。

適正運用を図ると言うことは、「不適正な運用」も可能だということだ。官邸と警察官僚が一体化するような状況では、この法律は、国民に対して害悪を及ぼし得る。

おりしも、黒川弘務法務省官房長が、法務省事務次官に昇格した。彼は、甘利明前経済再生担当相の口利き賄賂容疑で、彼の秘書二人を不起訴にしたと言われている。彼は、法務検察官僚で実権を握り、現政権にベッタリの関係にある。マスコミで政権の宣伝に勤しんでいた、山口敬之氏が、準強姦疑惑を起こし、所轄警察の意向で逮捕状が出されていたが、その逮捕は突然取りやめさせられた(何度もここで記した)。逮捕を中止させた中村格警察庁刑事部長(当時)だった。彼も、黒川新法務省事務次官と同じく、官邸と密接に通じ合った警察官僚だ。そうした法務警察官僚のもとで、この不適正運用可能な共謀罪法が施行される。このような法務警察官僚のもとで「不適正運用」するために、この法律が作られたと考えるべきだろう。政権と警察検察権力のための法律だ。

政治家の口利き賄賂はやりたい放題、政権に近い人物の犯罪疑惑はお咎めなし、一方軽微な犯罪、その疑いがかけられるだけで、犯罪の実行前計画段階から処罰される共謀罪を国民に幅広く適用しよう、ということだ。共謀罪では、自白が主要な検挙の根拠になり、冤罪も必発だ。

甘利明議員は、真相を説明すると言ったきり何も説明していない。山口某は外国に逃亡したまま。政治家や仲間内の人間には甘く、国民には厳しく、というダブルスタンダードが始まる。

現政権には退場してもらい、このような悪法は廃止する必要がある。

以下、運用~~~

共謀罪:11日施行 消えない「乱用を危惧する声」

2017年07月09日 19時59分 毎日新聞
捜査現場では「適正運用」図る模索も

 「共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が11日、施行される。政府は、各国で協力して組織犯罪を未然防止する「国際組織犯罪防止条約」の国内法が整備されたとして、条約締結の受諾書を同日中にも国連事務総長に寄託する。捜査機関の乱用を不安視する声が相次いだことを受け、捜査現場では適正運用を図る模索も見られる。【鈴木一生、川上晃弘】

 「十分な時間的余裕を持って報告すること」。警察庁は先月23日、都道府県警に同罪に関する通達を出した。適正な運用のため「当面の間、警察庁への報告を求めることにした」とし、報告の時期は「捜査を行おうとするとき」としている。

 同罪は、組織的犯罪集団の団体の活動として2人以上で犯罪を計画し、うち1人以上が計画に基づく実行準備行為を行った場合に、計画した全員を処罰できる。対象犯罪は277で、幅広い犯罪で処罰が可能となる。

 国会審議で野党側は「内心の自由を侵害する恐れがある」と成立に強く反対した。捜査開始前の報告を求める今回の通達について、警察庁幹部は「こうした通達は極めて異例だが、国会でもさまざまな指摘があり、責任を持って判断することが必要と考えた」と説明する。

 法務省も取り調べの録音・録画(可視化)の実施を検討するよう周知する通達を全国の地検などに送付。また、同罪を適用した場合は法相への報告を求める大臣訓令も出す。事実上、警察庁と法務省が全国の現場の運用をチェックする体制を取ることになる。

 今のところ、捜査現場で実際に適用しようとする動きはない。検察幹部は「条約締結が唯一の目的の改正。要件が厳しすぎて、ほとんど適用されないのではないか」とみる。

 だが、乱用を危惧する声は消えない。日本弁護士連合会は成立後、中本和洋会長名で「さまざまな懸念は払拭(ふっしょく)されていない。対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても十分な審議が行われたとは言い難い。恣意(しい)的に運用されることがないように注視し、法の廃止に向けた取り組みを行う」との声明を出している。

共謀罪法施行を前に 

ネットを回っていると、共謀罪法が、テロ対策のため、TOC条約批准のために必須だと主張している方々が、未だいることに驚かされる。政府が主張した、共謀罪法の必要性をそのまま信じ込んでいる様子。

だが、同法はテロ対策のためではない。我が国は、13本のテロ防止関連国際条約をすでに締結している。共謀罪法は、テロ対策と言いつつ広範な犯罪を網羅し、監視社会を生むもので、国民の思想信条表現の自由そしてプライバシー権を侵すものとなる。

TOC条約は1990年代に経済的な国際組織犯罪を対象にして生まれた条約だ。ネットが社会に行き渡っていない時期のもので、9・11よりも前に作られた。テロを対象としたものではない。テロが頻発している欧米諸国はTOC条約に加盟しているが、残念ながら、テロを抑えることはできていない。共謀罪法を制定して、この条約を締結しなければ、オリンピックが開催できない等というのは、虚偽である。

共謀罪で立件するためには、様々な手法で容疑をかけた者を監視することが必須だ。ネット・電話などの通信傍受、尾行等が堂々と行われるようになる。警察は、車の監視システム、防犯カメラ、顔認証システム等により、特定個人の行動を把握することができるようになっている。そして、密告と自白強要が、これまで以上に進められる。

出来上がった共謀罪法は、立法するための根拠を欠き、さらに粗雑な法体系になっている。憲法自体に違反する内容だ。この法律は、公安警察によるさらなる監視を通して、社会の自由闊達さのみならず、我々の内心の自由を侵食する。前川前文科省事務次官への監視は、特定秘密保護法の対象案件を扱うための適性検査の一環として行われた、という報道もある。また、菅官房長官への本来あるべき記者会見を果敢に実行している、東京新聞望月記者について個人情報を得るべく警察が動いたということも言われている。こうした監視が、国民すべてに対して行われることとなる。

だが、今月11日、あと一週間で共謀罪法が施行される。これほどの悪法が施行されることに対して、しかし、まだやるべきことがある。木村草太教授が、それを述べているのでご紹介したい。

この悪法は、ぜひ撤廃すべきだ。そのためには、次の国政選挙で、安倍政権、それに続く自公政権には退場してもらう他ない。

以下、引用~~~

沖縄タイムスより引用~~~

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

木村草太の憲法の新手(59)「共謀罪法」施行を前に これからなすべき4つのこと

2017年7月2日 19:54木村草太の憲法の新手共謀罪

 前回論じたように、「共謀罪」法の成立過程には問題が多い。そんな法案が無修正で成立したことは非常に残念だが、施行も間近となった今、これからなすべきことを4点指摘したい。

 第一は、未遂処罰との関係整理だ。共謀罪法では、傷害罪など、刑法において未遂処罰規定のない犯罪についてまで、その共謀を罰する。刑法が「既遂にならなければ処罰の必要がない」と評価した犯罪について、未遂のさらに前段階にすぎない共謀を処罰するのは、あまりにも不合理だ。政府・与党は、せめて未遂処罰規定のない犯罪を対象から除く修正だけでも検討すべきだ。

 第二は、捜査手続きの適正確保だ。自白偏重の問題が指摘されて久しい。しかし、近年になっても、長い身柄拘束を背景に、不当に自白を強要したと思われる事案が発生している。例えば、神保哲夫『PC遠隔操作事件』によれば、2012年に発生したPC遠隔操作ソフトを使った連続脅迫事件で、警察は4人も誤認逮捕してしまった。うち2人は犯行を自白し、しかも、調書には犯人しか知りえない情報すら含まれていたという。

 従来から処罰対象となっていた殺人の予備罪を立件しようとすれば、凶器となるナイフやひもなど、客観的な物証が存在するはずである。しかし、共謀にはそうした物証はないことも多いだろう。その結果、自白に頼る部分が多くなり、長期間にわたる拘束や心理的圧迫による自白が冤罪(えんざい)を産む危険は大きい。捜査段階での弁護士の立ち会いを義務化するなど、本格的な対応が必要だ。

 第三は、憲法による限定だ。憲法31条は、刑事手続きの適正と共に、刑事実体法の適性をも求める規定だと理解されている。刑事実体法の適正には、「刑罰を科すに値する法益侵害がない限り、刑罰を科してはならない」との原則が含まれている。共謀罪法は、危険度が非常に低い準備行為まで処罰対象に含んでおり、「処罰範囲が過度に広範であり違憲だ」と評価される可能性もなくはない。

 この点、最高裁は、過度に広範な法文について、その適用を限定することで合憲性を担保する限定解釈をしてきた。例えば、国家公務員法の条文は、公務員によるほぼすべての政治活動を処罰対象とするように見える。しかし判例は、公務員の中立性を損なうおそれを「現実的」に発生させる行為のみを処罰対象とすべきだとした。共謀罪の処罰対象も、犯罪発生の危険が明白かつ現実的に差し迫っている計画のみに限定すべきだろう。

 最後に、死刑廃止への取り組みだ。共謀罪制定は、国境を越える犯罪についての国際協力の枠組みを定める国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に入るために必要と政府は説明していた。この点、TOC条約16条7項は、犯罪人を引き渡すときに、相手国の刑罰の内容を考慮することを認めている。つまり、死刑廃止国が、死刑を存置する日本への犯罪人引き渡しを拒否するという事態があり得るということだ。諸外国との協力を本気で望むなら、諸外国の趨勢(すうせい)に合わせ、死刑廃止の検討が急務である。

 共謀罪法について、今後、検討すべきことは多い。(首都大学東京教授、憲法学者)

民主主義を窒息死させる共謀罪 

共謀罪法案が成立する直前に宇都宮健児弁護士が訴えた同法案の問題点。同法案が成立したからと言って、問題が解決したわけではないのは当然のこと。今後、安倍晋三は、これを手段として、まずはマスコミを脅し、さらに声を挙げる市民を脅迫する。

この法律の大きな問題は、対象犯罪が多岐にわたり、既遂ではなく未遂、準備段階で罪に問われること。二人以上の集団が、そうした犯罪を計画・準備したと捜査当局が判断しただけで、共謀罪に問われる。この法律は、一般市民を対象にしている。

「自首」をして「仲間の情報」を捜査当局に漏らせば、罪が減免されることになっていることから、密告、監視が奨励され、社会で自由にものを言うことができなくなる。冤罪も多発することだろう。

こうした社会を、次の世代に遺すことで良いのかどうか、が問われている。私は、それに否を言い続ける積りだ。

以下、引用~~~

 6月30日付 民主主義を窒息死させる共謀罪(宇都宮健児)

共謀罪(テロ等準備罪)法案は、5月23日の衆院本会議で、自民・公明・日本維新の会の賛成多数で可決され、現在参院で審議されている。(編注:6月15日、“異例”の中間報告により参院法務委員会での採決を省略し、参院本会議で可決・成立)
安倍晋三首相は「2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて(共謀罪の)創設が不可欠だ」と強調し、共謀罪法案をあたかもテロ対策法案であるかのように説明している。

しかしながら一方で政府は、2000年11月に国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために、共謀罪法を制定する必要があると説明してきている。

国際組織犯罪防止条約は、マフィアなどによる国境を越えた麻薬取引、人身売買、マネーロンダリングなどの経済的利益を追求する組織的犯罪を取り締まることを目的とした条約である。

したがって、政府が説明しているようなテロ対策を目的とした条約ではないのである。テロ対策に関しては、日本は既に「ハイジャック防止条約」「人質行為防止条約」「爆弾テロ防止条約」「核テロリズム防止条約」など13の国際条約を批准している。
また、国際組織犯罪防止条約を批准するために、共謀罪の新設が必ず必要とされるかというとそうでもない。わが国では、内乱罪、殺人罪、強盗罪、爆発物取締罰則違反などの重大犯罪については、「予備」「準備」「陰謀」「共謀」などを処罰する制度が整っているので、新たに共謀罪を新設しなくても、国際組織犯罪防止条約を批准できるのである。

国際組織犯罪防止条約は187カ国・地域で既に批准されているが、共謀罪を新設したのはノルウェー、ブルガリアの2カ国だけである。

共謀罪は過去三度廃案となっているが、今回の法案で新たに要件として付け加えられた「組織的犯罪集団」や「準備行為」は定義があいまいであり、実質は「犯罪の合意」を処罰する法律であるという点では、これまでの共謀罪法案と変わらない。
わが国の刑事法体系は、「意思」を処罰するのではなく、法律違反の「行為」を行なったこと、すなわち「既遂」を処罰することを原則としてきている。

共謀罪法案は、法律に違反する犯罪行為を実行しなくても、話し合っただけで市民を処罰できる思想・言論の処罰法である。
「犯罪の合意」を処罰する共謀罪では、盗聴が共謀立証の重要な手段になってくる。そのため、電話、メール、ライン、市民の会話などの盗聴が行なわれ、市民の日常生活が監視される危険性がある。また、共謀立証のためいろいろな団体やグループに捜査機関がスパイを送り込んだり、協力者をつくり、共謀があったことを密告させることになりかねない。
このように共謀罪法案は、わが国において監視社会化を進め、自由な言論活動を萎縮させ民主主義社会を窒息死させる法律である。

国連のプライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏も共謀罪法案に関し、「プライバシーの権利や表現の自由を不当に制約する恐れがある」と批判している。
あまりにも問題の多い共謀罪法案は、参院で廃案にするしかない。

(うつのみや けんじ・弁護士、6月16日号)

警察国家への道 

官邸の意向を受けて警察刑事部長がレイプ疑惑をもみ消した疑惑は、一頃マスメディアも盛んに取り上げたが、その後追及がとんと聞かれなくなってしまった。こちらのポストで扱った事件。

かって菅官房長官の秘書官だった、その刑事部長は、秘書官在職当時、安倍首相に批判的な古賀茂明氏のテレビ朝日報道番組からの降板に関わった。降板をテレビ朝日に働きかけたことは事実だ。

政治権力と、警察がつながり、政治権力に不都合な事件・人物をもみ消したのが本当だとすると、警察の存在意義自体に疑念が生じかねない。文字通りの「警察国家」である。こうした疑惑は、共謀罪法が国民一般を監視し強権的に取り締まるものであることを予表する。

山口某の準強姦容疑疑惑問題について、元検察官の若狭勝衆議院議員が、警察刑事部長の関与を批判している。こちら。

レイプという女性に対する精神的殺人に等しい事件に、現政権に近い人物が関与したことを警察権力を用いて握りつぶした、現政権の深刻な疑惑。同じ警察官僚による、政権に批判的な人物のマスメディアからの引きずり下し。これらが本当だとすると、我が国は、法治国家であることを止め、人治による警察国家になり下がったことを意味する。これほど深刻な事件を追及しない政治、そしてマスメディアは、責任を放棄している。この安倍政権を支持している方々も、警察国家による人権蹂躙の被害者にご自身、家族が何時なるかもしれないと考えておくべきだろう。自分は大丈夫だと思い込んでいると、「マルチンニーメラー牧師の悔い」を痛切な形で追体験することになる。

被害者として名乗りを上げた女性は、山口某の不起訴を不服として検察審査会に申し立てをしている。その結果を注目して行きたい。

以下、引用~~~

安倍政権と警察の闇--元TBS政治部記者のレイプ疑惑をもみ消した?「中村格刑事部長」とは何者なのか

2017年06月17日 06時00分 週プレNEWS

「新聞やテレビに、この疑惑を本気で追及しようとする姿勢が見られないことが何より問題」と訴える古賀茂明氏
被害女性が会見を開いて話題となった、元TBS政治部記者、山口敬之(のりゆき)氏のレイプ疑惑。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、山口氏の逮捕をもみ消したとされる人物の闇に迫る!

* * *

このほど上梓(じょうし) した『日本中枢の狂謀』(講談社)の刊行に際し、6月5日、日本外国特派員協会で記者会見を行なった。

武器輸出三原則の撤廃、安保法制や秘密保護法のゴリ押し、メディアコントロール―ここ数年の安倍「一強」政治を見るにつけ、日本は後戻りできない危機的状況に陥っているのではないかと危惧してきた。本書ではその権力中枢による“狂ったはかりごと”と、危機からの脱出の方法を書いたつもりだ。

この会見では、やはり加計(かけ)学園に関する質問が多かったが、私が驚いたのは、会見後も多くの記者から取材の電話がかかってきたことだ。その内容は、「中村格(いたる)とは何者なのか?」。そして、「中村格氏の圧力メールはどんな内容か」というものだ。

2015年3月いっぱいで、私はテレビ朝日の『報道ステーション』のコメンテーターを降板した。その2ヵ月前の1月23日のオンエアで、安倍首相が外遊中、「イスラム国と戦う周辺国に2億ドルを出す」と表明したことを批判し、「I am not ABE」と発言したのが原因だった。

このとき、私の発言に激怒した官邸からテレビ朝日の幹部に直接、抗議のメールをしてきたのが当時、菅義偉(よしひで)官房長官の秘書官だった中村格氏だった。後にテレビ朝日関係者からそのメール内容を知らされたが、相当に激烈な言葉で私への非難がつづられていたという。

この抗議がテレビ朝日を萎縮させた。オンエア直後、報道局長や政治部長など、局幹部が集まり対応策を協議。その後、私の降板が決まった。

外国人記者らは、この中村格という名前に強く反応した。

つい最近、「安倍首相と昵懇(じっこん)」とされる元TBS政治部記者、山口敬之(のりゆき)氏のレイプ疑惑が話題となった。被害に遭った女性が「逮捕状が出ながら、警視庁刑事部長の指示で、山口氏の逮捕がもみ消された」と告発したのだ。

この刑事部長こそ、中村格秘書官その人だった。警察庁から出向していた中村秘書官は、私が『報道ステーション』を降板する4日前の15年3月23日付で、警視庁刑事部長へと異動になっていたのだ。

15年6月、山口氏の逮捕状を請求したのは警視庁高輪(たかなわ)署だった。逮捕状は犯罪の証拠などを検察がチェックし、了解をした後、所轄からの請求を受け、裁判所が交付する。それを執行直前に所轄の“雲の上”の存在である警視庁本部の刑事部長が止めたのだ。警察幹部OBに聞いてもよっぽどの事情がなければありえないという回答が返ってきた。

私の『報道ステーション』からの降板と、この事件はつながっている―つまり政権の意を受けた中村氏が、メディアへの圧力や逮捕状の取り消しに暗躍しているのではないか、という疑惑である。

真相はまだわからない。ただ、私が何よりも問題だと思うのは、新聞やテレビに、この疑惑を本気で追及しようとする姿勢が見られないことだ。事実を証明するのが難しいからか、あるいは官邸の意向を忖度(そんたく)したのか、手を引いてしまっている。

言うまでもなく、メディアの役目は権力の監視である。安倍官邸の強権を背景にした警察の腐敗疑惑から目を背けるようなことがあってはならない。徹底した調査報道を望む。

●古賀茂明(こが・しげあき)

1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画「古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

『望月記者の身辺調査』を官房長官が警察に命じた?! 

東京新聞の望月衣塑子記者について、菅官房長官が「身辺調査」を警察に命じたと週刊文春が報じるらしい。ことの真相は分からないが、大いにありそうなことではある。

前川前文科省事務次官についての似非スキャンダル記事が読売新聞に出る二日前に、読売新聞から前川氏にその記事に関連してインタビューしたいと連絡があり、その次の日に内閣官房から彼に「会う気があるか」と電話があったらしい。内閣官房からの連絡は、「何だったら、読売の記事を差し止めさせてやっても良い」というニュアンスであったと、前川氏は語っている。内閣官房からこの似非スキャンダル情報が読売に流され、それをネタに内閣官房が、前川氏に「総理の意向です」文書について証言しないように脅したということだ。

前川氏は、内閣官房からの脅しには乗らずに、決然として「行政が歪められた」ことを証言した。

同じ手法を、この政権は、多用することになる。というか、以前から敵対勢力を挫くために用いていたのだろうが、それを大っぴらに行うようになるだろう。

そのようなスキャンダルでの脅しによって、マスメディアの記者たちまたは野党政治家を萎縮させる効果が出る前に、我々が行動すべきだろう。やがて、同じ手法で、モノを言う国民に彼らは対応してくることになる。そうならない前に、こうした陰湿な攻撃をする政権に否を言うべきだろう。

共謀罪の対象がさらに拡大されている 

衆議院から参議院に審議が移り、「法案の曖昧さ」が浮き彫りになってきた。というか、「捜査当局の判断でどうにでもなる」という本質が明らかになってきた。

このように、捜査当局にフリーハンドを与える杜撰な内容の共謀罪。成立して、施行されるようになると、その暴虐性が明らかになることだろう。

金田法相は、戦前の治安維持法は適法に制定され、その捜査手法なども適法であったと答弁している。恐らく、それは法務官僚が作った答弁だろう。そうした法務官僚が、自らが広大な権力を得るためにこの法案を作ったのだろう。彼らの意識には治安維持法があるに違いない。実際に犯罪行為を行って初めて処罰されるという一般的な刑法の理念は破棄され、準備段階で処罰されるようになる。一つの国の形を変える、この法案を、こんな審議で成立させて良いものだろうか。

一応、マスメディアがあり、ネットで情報がたちまちのうちに拡散する現代社会にあって、この法案が成立したとしても、すぐさま治安維持法と同じように運用されることはないだろう。だが、公安警察が日陰で用いてきた捜査手法が表で堂々と用いられるようになることだろう。まずは、マスメディア、政治家達が監視され、ついで声を挙げる国民に厳しい監視の目が向けられることになる。

きわめて危険な法案だ。

以下、引用~~~

「共謀罪」の「歯止め」答弁 次々変わる 一般人対象外→処罰あり得る

2017年6月14日東京新聞朝刊

 「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について、与党幹部は十三日午後の参院法務委員会での採決に言及したが、野党から金田勝年法相の問責決議案が出てこの日の審議は打ち切りとなった。与党側は参院での審議時間が二十時間に達することを採決の理由にしようとしているが、政府は国会の最終盤になって当初の答弁を次々と変えている。 (山田祐一郎)

 「共謀罪とは別物」「一般人は対象にならない」といった「歯止め」の根拠は、審議の中で逆に曖昧になってきている。

 法案は約三十時間の審議を経て五月二十三日に衆院を通過した。衆院では通過後も法案に対する質疑があり、今月二日には計画内容の具体性について、法務省の林真琴刑事局長が「犯行の日時、役割の詳細まで定まっている必要はない」とこれまでとは異なる答弁をした。

 四月時点で林氏は、計画した日時や場所、方法などについて「できる限り特定する必要がある」と説明し、逮捕や起訴のハードルが過去の法案よりも高いことを強調。計画内容も「指揮命令や分担なども含めて合意が必要」と述べていた。計画内容の詳細は不要とする二日の答弁は、捜査機関が計画と判断できる範囲が限定されず、計画に基づく準備行為の範囲も広がることを意味する。

 「犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定したので一般人は処罰対象にならない」としていた点も今月に入って説明が変わった。一日の参院法務委で金田勝年法相は「組織的犯罪集団と関わりがある周辺者が処罰されることもあり得る」と答弁を一転。林氏も「構成員以外を一般人というのなら、一般人が計画に参画することはあり得る」と認めた。

 十三日の参院法務委で、民進党の福山哲郎氏がこの点を厳しく追及した。金田氏は「全体の中で同じことを言っている。限定したという説明に訂正はない」と答弁。林氏も「衆院から同じように説明してきた」と述べたが、福山氏は「国民をだまそうとしているのではないか」と政府の姿勢を批判した。

 「組織的犯罪集団はテロリズム集団のほか暴力団、麻薬密売組織などに限られる」との説明も金田氏が八日に参院法務委で「限定されない」と翻した。五月二十九日の参院本会議で「対外的に環境保護や人権保護を標榜(ひょうぼう)していたとしても、それが隠れみのであれば処罰されうる」と初めて言及。隠れみのかどうかを判断するのは捜査機関であり、処罰対象に限定がないことがあらためて浮き彫りとなった。

異例尽くしの最高裁判事任命 

昨年、安倍内閣が最高裁判事に任命した木澤克之氏。

木澤氏は、弁護士出身の最高裁判事である。弁護士出身の最高裁判事は、通例、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、大阪弁護士会の会長経験者であったが、彼は、wikiの情報で見る限り、そのポストについたことはなく、また最高裁判事に任官するに足る、弁護士としての目立った業績を上げていないように思える。

史上初の立教大学の卒業生の最高裁判事でもある。別に最高裁判事にふさわしい方であるなら、学歴は関係ないのだが・・・。

木澤氏は、加計学園理事長と同窓、加計学園の役員を務めていた。安倍・加計グループのお一人なのだろう。

安倍首相は、官僚をそのポストで縛り上げ、さらには司法も直接「親しい間柄」の人物を任命して自らの配下にする積りなのだろうか。三権分立などは、安倍首相にとっては邪魔な古臭い原則に違いない。憲法も邪魔。行政は思いのままに動かせる自分の手足。我が国の体制は、かくして独裁へ確実に進んでいる。