対テロ等準備罪に関する誤解 

世論調査によると、質問項目が対テロ等準備罪法案であると支持率は高くなり、共謀罪法案とすると支持率は下がるらしい。

対テロというと、テロを防ぐための法律と誤解されるようだ。国民のその誤解をこそ、法務省・政府は狙っている。

対テロ等準備罪法案には、当初テロという文言はどこにもなかった。それを指摘されて、法律の目的の項目に「テロ等」と法務当局は慌てて入れた。テロの定義もなければ、テロに特化した条項もない。テロ「等」とある通り、広義のテロも含まれるが、テロ以外のさまざまな犯罪を準備計画段階から処罰するための法律なのだ。新たに277(以上の)犯罪類型が生まれたわけだ。この新たな犯罪の捜査には、盗聴・尾行・監視等を捜査令状なしに行う任意捜査が必須となる。司法取引も行われる。国民のプライバシーが侵され、さらに冤罪が生まれる。

賄賂、公務員職権乱用罪、特別公務員暴行陵虐罪、選挙違反等、組織集団の犯罪にあたる、政治家、公務員、財界人の犯罪は、この法案の処罰対象になっていない。国を支配する層は、警察司法の監視を免れることになっている。

一般人はこの法律の対象外だと、首相・法務大臣等が繰り返し述べている。が、法務官僚・法務副大臣・刑法の専門家は、それは誤りで、一般人こそが対象になると言っている。一般人かどうかは、具体的な事案に対応して、捜査を行う警察自体が判断することになるわけで、一般人がこの法律の対象外だというのは詭弁だ。刑法案件は、2002年から2015年までの間に40%も減少し、その間警察人員は2万人増えているらしい。公安警察にはイスラム過激派に対応する通訳さえいないらしい。この法案の実際の目的に、警察の新たな仕事づくりがある。その新たな仕事が、277以上の犯罪について一般国民を監視することなのだ。この新たな犯罪を作り出すことで、国民の様々な活動が萎縮させられる。

安保法制にせよ、通信傍受法にせよ、そしてこの法案にせよ、「お上のやっていることは間違いはないだろう」という思い込みは、そろそろ捨て去った方が良い。対テロという呼称で騙されてはいけない。

共謀罪は、警察公安部と政治権力のため 

今西憲之著「原子力ムラの陰謀 機密ファイルが暴く闇」という本がある。動燃に長く勤めて、最終的に「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故の検証チーム担当になり、1996年に「謎の」死を遂げた西村成生氏。彼が残した膨大な資料を丹念に調べ、再構成した書物だ。プルサーマル計画という核燃料サイクル事業を行うために立ち上げられた動燃は、ナトリウム漏れ事故で破たんする。動燃の人形峠におけるウラン採掘、使用済み核燃料処理事業、それに東海村原発事業において、動燃がどれだけ政治的な動きをしたかが、具体的に記されている。準公的な組織である、動燃が、自民党政治家を選挙運動で積極的に支持し、選挙運動にも関わった。特に注目すべきは、住民、地方自治体の議員等に対する運動だ。動燃は、警察公安部と密に連絡をとり、上記事業に対する住民の反対運動に対処していた。住民の一人一人の政治信条等の情報を、動燃と公安警察が共有していたのである。

この動燃の問題は、一つには警察公安部と動燃という準公的組織が共同して動燃に反対する運動を潰すように陰で動いていたことだ。警察公安部が国民全般を対象に監視する体制を取っていたこと、その情報が実際に動燃の反原発運動への対処に利用されていたことが問題である。下記の記事にある通り、警察公安部が陰で秘密裏に行ってきた様々な国民監視が、組織犯罪の恐れがあると警察が判断すれば、堂々と捜査されることになる。思想信条の自由、表現の自由だけでなく、国民生活の様々なありふれた生活局面で監視を受けることになる。社会が息苦しさに満ちたものになる。

警察公安部は、冷戦時代には、共産党、新左翼の政治運動を監視し、取り締まることを主な仕事にしてきた。だが、共産党は暴力革命路線を破棄、国民政党になり、さらに冷戦が終結。警察公安部が行うべき仕事にこと欠く状況にある、という。京大法学部の高村教授が述べたように、この共謀罪法案は、警察公安部の仕事を増やすためなのではないか、少なくともそうした側面があることは否めない。テロ対策などとはかけ離れた277(またはそれ以上)という多数の犯罪類型を、この法案の対象にしているのは、そのためなのではないだろうか。共謀罪法案が成立すると、そうした国民への監視-捜査・摘発が、今後は公然と行われるようになる。警察の判断で、計画前の段階で捜査が行われることになる。

政権与党にとっては、様々な市民運動、反政府運動を未然に潰すために、共謀罪が有用な手段になる。動燃と警察公安部が共同して、反原発、反プルサーマル運動の市民を監視し、対処したことは、いわば隠蔽されてきたことだった。だが、この共謀罪法案が成立すれば、そうした市民運動を事前に潰すことができるようになる。または、市民の側からすると、社会的に必要だと思われる運動にも参加することを躊躇せざるを得なくなる。権力は往々にして腐敗するものだ。それに対して、国民が反対・追及の声を挙げられなくなる。そうした政治手段として共謀罪法案が利用される。

この組織的犯罪処罰法の改正案という名称の共謀罪法案は、警察公安部と、時の政治権力のための法案なのだ。

以下、引用~~~

準備行為前でも捜査対象 「共謀罪」、政府が見解
2017年4月22日05時00分

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案について、政府は21日の衆院法務委員会で、テロなどの犯罪計画の疑いがあれば「準備行為」の前でも捜査できるとの見解を示した。過去の法案と同様、犯罪の既遂、未遂を問わず、計画段階で捜査対象になることが明らかになった。

 政府は資金や物品の用意、現場の下見などの「準備行為」を犯罪成立の要件として新たに加え、準備行為がなければ処罰の対象にならないと説明。過去3度廃案になった共謀罪法案とは「明らかに別物」(菅義偉官房長官)と主張してきた。

 この日の法務委では、民進党の階猛氏が「準備行為が行われた後でないと捜査は開始できないのか」と質問。法務省の林真琴刑事局長が「テロの計画が実行される蓋然(がいぜん)性があり、犯罪の嫌疑があれば、準備行為が行われていない段階でも、任意捜査を行うことが許される」と答えた。

 任意捜査は内偵や事情聴取など裁判所の令状が必要ない捜査。民進党の山尾志桜里氏は審議で「一般人も広く網がかけられ、監視されるようになる」と批判した。一方、過去の法案では計画段階でも可能だった逮捕や家宅捜索といった令状に基づく強制捜査について、金田勝年法相は「(今回の法案では)準備行為が行われておらず、罪が成立していない段階ではできない」と否定した。(小松隆次郎)

共謀罪法案の問題点 決してテロ対策ではない 

「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、いわゆる共謀罪法案の問題は、

1)その対象となる犯罪が広範にわたり、政府の言うテロ対策だけでは決してない、一般市民が対象となること。組織犯罪集団かどうかは、警察が判断することになり、明確な定義がない。

2)犯罪を実行する前、計画の段階で立件されるので、捜査は盗聴、監視等によって行われる、すなわち監視社会を生み出すこと。監視社会では、密告・諜報が奨励されることになる。この共謀罪法案では、戦前の治安維持法と同様に、自首すれば罪を減免する自主減免制度が明記されている。さらに、昨年の刑法改正で、共謀「犯罪集団」の情報を明かすことでやはり罪が減免される司法取引が制度化された。これらの制度によって、密告・諜報による監視がさらに強化され、冤罪も横行するようになる。

組織犯罪に対処する必要は確かにある。それは既存の法律で対処できる、というのが刑法の専門家の見解だ。組織犯罪の取り締まりを強化することにより、市民の思想的な自由、表現の自由等が侵されることはあってはならない。この法案の立法事実・立法内容ともにあまりにお粗末である。これは、公安警察による公安警察のための法案であって、市民の正当な人権を阻害するものだ。

この法案は、テロ対策では決してない。安倍首相が述べるテロ対策としての意義はない。自民党法務部会長、古川俊治議員が述べた通りである。

以下、引用~~~

 4月20日付バザップ 共謀罪が「テロ等準備罪」ではないことが明言される

自民党で「テロ等準備罪」こと共謀罪の取りまとめを行っている古川俊治議員が共謀罪の目的がテロではないことを明言しました。これまでの安倍首相を始めとする自民党の説明は全て大嘘だったということになります。詳細は以下から。

テレビ朝日「モーニングショー」で、コメンテーター玉川徹が“ニュースに潜む疑問”を独自に追及するコーナーとして人気の「そもそも総研」。このコーナーで国会で審議入りしたばかりの共謀罪が取り上げられました。

出演したのは共謀罪の取りまとめを行っている自民党法務部会長の古川俊治議員。しかし、これまで安倍首相らがテロ対策と散々説明してきたにも関わらず、実際の目的がテロ対策ではないことを明言してしまいました。

安倍首相は東京オリンピック開催のため、テロ対策として「テロ等準備罪」こと共謀罪が必要であるとし、今国会で成立させようと躍起になっています。しかし、玉川徹の追求の中で共謀罪の目的が国際組織犯罪防止条約に入って組織犯罪の情報をもらうことだと答えてしまいます。

つまり、2017年1月23日の衆議院本会議での安倍首相の「現在政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの間違いです」という発言は根本からの大嘘だったということになります。

もちろんその首相発言が大嘘であることははBUZZAP!でも2度に渡り記事化し、一般市民であっても共謀罪の取締対象になり得ること、犯罪を実行しなくても計画し、相談しただけで逮捕される危険があることをお伝えしています。しかし、自民党の法案取りまとめ役である古川俊治法務部会長が明言したことでこれは確定となります。

シャレにならない、共謀罪はキノコ狩りをしようと「相談するだけ」で「中止しても」成立すると判明 | BUZZAP!(バザップ!)

「同人誌作ろう」にも適用?「共謀罪」法案の対象に「著作権等の侵害等」まで盛り込まれる | BUZZAP!(バザップ!)

また、古川議員は共謀罪によって日本社会が監視社会になるかならないかとの質問に対してならないと断言。その理由を問い詰められても「やるべき理由がないから」と法案上なんら根拠のない回答にならない回答をつぶやくだけ。条文からその根拠を引くことが全くできていません。法務部会長であるにも関わらず、です。

共謀罪については、「そもそも総研」は以前にも取り上げて詳細な情報を提供しており、Tツイッターのモーメントにもまとめられています。

共謀罪のお話し(羽鳥慎一モーニングショー「そもそも総研」から)

また、実際問題として共謀罪は法務大臣すらまともに理解できていない法案。ここ数日でも金田法相は国会で散々野党に突き上げられてまともな回答が全くできていませんでしたが、衆議院法務委員会が野党の反対を押し切って法務省の刑事局長を審議を通じて出席させることを決定。

民進党と共産党は「参考人の出席は、質問する議員の要求に応じて認めてきたはずだ。要求していないのに、一方的な形で議決されたのは国会の慣例に反する」と抗議しましたが、これは自民党が金田法相では質問に対応することが不可能であると認めたとしか言えないもの。

法務大臣すら理解して議員の質問に答えられないような法案であれば、その時点で提出されるのがおかしいことは中学生でも分かりそうなものですが、日本社会のあり方を完全に一変させてしまう極めて危険な法案においてこのような慣例無視の強行が行われるというのは極めて異常。

一端廃案にした後に本当に必要であればパブリックコメントを取り、法相がまともに答えられるようになるまでしっかり練った上で極めて慎重な議論を行うのが当然の筋です。

共謀罪法案は、国民の思想的自由、良心を抑圧する 

高村京都大学教授(刑法)によると、「組織的犯罪処罰法改正案(共謀罪法案)」には、贈収賄等、政治家・財界人の犯罪が対象になっていないそうだ(以前のポストにも記した)。自分たちは、この組織的犯罪処罰法改正案の対象から除外し、一般国民の共謀を狙い撃ちにすることが明らかになった。

また、この法律が成立すると、それに基づき警察公安部が捜査を担当することになる。この法案は、テロ対策と言いつつ、一か所だけテロ対策の文言が法案に後付けで入れられた。高村教授の説明では、そもそも公安部にアラビア語を自由に話す人間等おらず、ムスリムの多い中東からの犯罪者の尋問等は公安部ではできないらしい。テロ対策というのがいかに取って付けた理由なのかが分かる。

秘密保護法・安保法制を作り戦争への準備を行い、毎年防衛費予算を増額し続け、教育勅語を教育に取り入れ、銃剣道を体育の科目にし、さらに国民の基本的人権を抑圧する憲法改正を行おうとしている現政権が、国民をどこに向かわせようとしているのか、明瞭ではないか。この法律は、国民に政権に対する疑念を表明させないようにする、即ち国民の言論の自由、思想的自由を侵害し、抑圧するものになる。国家が国民のこころにまで踏み込むこの法律は、決して成立させてはいけない。

お子さんを育てている世代の方々には、現政権のこの突出した国家主義への回帰の動きに注目してもらいたい。


以下、治安維持法がどのようなものであったかを教える記事を引用~~~

 4月5日付朝日新聞デジタル 「共謀罪」ある弁護士の懸念 父親が治安維持法で逮捕

 「新たな言論弾圧の道具になりはしないか――」。政府が「共謀罪」の趣旨を盛り込み、6日に国会での審議入りが見込まれる組織的犯罪処罰法改正案に、愛知県岡崎市の弁護士天野茂樹さん(71)は警鐘を鳴らす。弁護士だった父は戦前・戦中に言論弾圧に使われた治安維持法の被害者。歴史の教訓から法案に不信の目を向ける。

 父の名は天野末治(1901~76)。小作料減免を求める農民を弁護し、30年には三信鉄道(現・JR飯田線)工事で働いた朝鮮人労働者が賃金不払いを理由に起こしたストを支援。弱者の側に立つ弁護士だった。

 治安維持法違反容疑で逮捕されたのは33年。同法違反容疑で共産党員が大量検挙された「3・15事件」(28年)などで被告の弁護人を務めた「日本労農弁護士団」の約25人が一斉検挙されたとき(日本労農弁護士団事件)だ。末治さんもその一人。「焼けた火箸を突きつけられて『言う通りに話せ』と脅されたよ」。当時の話を茂樹さんにそう語ったという。

 「国体」(天皇を中心とした国のあり方)の変革や私有財産制度の否定を目的とする結社を禁じた治安維持法。「3・15事件」を機にした改正で、懲役10年だった最高刑は死刑に引き上げられ、「目的遂行罪」が導入された。

 目的遂行罪とは、ある行為が結社の目的遂行のためになっていると当局が見なせば、本人の意図に関わらず罪にできるものだ。治安維持法に詳しい森正・名古屋市立大名誉教授(憲法)は「日本労農弁護士団事件では、被告人との接見や法廷外の救援活動に加え、法廷での弁護活動までも『共産党の目的遂行のためにする行為』とされた」と指摘。「弾圧を恐れる弁護士を萎縮させ、言論統制を司法の場にまで浸透させる効果をもたらした」と話す。

 末治さんは執行猶予付きの判決を受け、弁護士資格を剝奪(はくだつ)された。39年に復帰したが、もはや、まともな弁護活動は不可能だった。41年の法改正で、治安維持法事件の担当弁護人は国が指定した弁護士からしか選べなくなった。

 6日に審議入りする法案は、処罰対象をテロ集団に限ってはいない。政府は「一般市民は対象にならない」と説明しているが、法務省は「正当に活動する団体が犯罪を行う団体に一変したと認められる場合、処罰対象になる」との見解も示している。

 治安維持法や特高警察について研究している荻野富士夫・小樽商科大特任教授(日本近現代史)は「組織的犯罪集団の認定や正当団体の犯罪集団への移行は、いずれも警察側が判断し、拡大解釈の危険性が大いに残る。恣意(しい)的な運用ができた『目的遂行罪』を武器に、特高警察が治安維持法の適用を際限なく広げていった過去を想起すべきだ」と指摘する。

 茂樹さんも思う。「戦前の政府は『無辜(むこ)の民は対象にしない』と説明していたのに、取り締まりは社会運動や宗教団体にまで広がり、正当な裁判も受けられなくなった。国民が反対しにくい『テロ対策』を口実とした法律が、政府に批判的な市民団体などに適用されていかないか、心配だ」

 父の影響を受け、自らも弁護士の道を選んだ茂樹さん。父は「あんな暗い時代を、二度と繰り返してはいけない」と語っていた。茂樹さんは今、その言葉の重みをかみ締めている。(黄澈)

二つの告発劇 

元検察官の郷原信郎氏による、籠池理事長への二つの告発に関する問題提起。BLOGOSより引用する。

安倍首相を侮辱したとして、籠池理事長を国会へ証人喚問し、その内容から「偽証」を見出した、と政府関係者が主張する。首相への侮辱が証人喚問の理由というのも、どこか独裁国家の出来事のようだし、見出された「偽証」もあまりに無意味だ。書類をだれが記入したかは、籠池理事長自身「伝聞である」と証言で述べている。誰が書こうが、問題の本質に関係しない。さらに、ここでは述べられていないが、この「筆跡鑑定」とは、テレビ番組のワイドショーが行ったもので、番組中でもその鑑定に出演者の多くが違うと述べていた代物らしい。とある官邸よりの「評論家」がテレビに持ち込んだネタのようだ。

国からの補助金も、一旦国が適正と判断したものであり、問題が発覚後、森友学園は返金している。問題の核心とは関係のないことがら、というのは郷原氏の述べる通りだろう。

この告発劇の背後で何があったのか、検察当局の動きに詳しい郷原氏の推測は、おそらく当たっている。政府中枢が、検察と合議し、無理筋の告発を受理、さらに受理したという事実を当局中枢がリークした、ということだ。

権力中枢が、自らの保身のために告発劇を演出している。官邸が、検察と連携し、ないし検察に命じて、この告発について公にしたとしたら、三権分立が成立しない。これは、安倍政権が、できごとの後追いで追い詰められ、かなりリスキーな行動に出ていることを示している。


以下、BLOGOSより引用~~~

籠池氏「告発」をめぐる“二つの重大な謎”

3月23日の衆参両院予算委員会の証人喚問での証言が社会的注目を集め、「時の人」となっている籠池泰典氏をめぐって、3月29日から30日にかけて、二つの「告発をめぐる動き」があった。

一昨年秋に公刊した【告発の正義】(ちくま新書:2015年)等で、告発をめぐる最近の環境変化の問題について専門的立場から調査研究してきた私にとって、いずれも、不可解極まりないもので、凡そ理解できないものだ。このような告発をめぐる不可解な動きが行われる背景に、一体何があるのだろうか。

一つは、3月28日に、「籠池氏偽証告発」に向けての調査結果が公表されたことだ。

同日夜、自民党の西村康稔総裁特別補佐が、西田昌司参議院議員、葉梨康弘衆議院議員とともに、党本部で緊急の記者会見を行い、衆参両院で証人喚問を受けた森友学園の籠池泰典氏による複数の発言に虚偽の疑いが濃厚だとして「国政調査権の発動も必要だ。精査を進めたい」と述べ、その上で、議院証言法に基づく偽証罪での告発について「偽証が確定すれば考えたい」などと述べた。

そしてもう一つは、翌日29日の夕刻になって、大阪地検が、籠池氏に対する補助金適正化法違反での告発を受理したことだ。NHKは、次のように報じている。

大阪の学校法人「森友学園」が小学校の建設をめぐって金額が異なる契約書を提出し、国から補助金を受けていた問題で、大阪地検特捜部は29日、籠池理事長に対する告発状を受理し、今後、補助金の受給が適正だったかどうか捜査を進める

今回の告発受理公表の特異性

まず、二つ目の「補助金適正化法違反の告発受理」であるが、刑事訴訟法上、告発というのは、何人も行うことができる。告発人の一方的なアクションである。告発が行われたからと言って、その事件が起訴されるか、ましてや、告発事実が真実なのか、犯罪に当たるのか全く不明なので、告発やその受理が、当局の側から積極的に公表されることはほとんどない。告発人が、自らのリスクで公表し、マスコミがそれを報じることがあるだけだ。

ところが、今回の「籠池氏告発受理」の報道は、明らかに検察サイドの情報によって行われている。マスコミ各社の報道の多くは、告発人が誰かということすら報じていない。「告発状を受理し」と書かれているだけだ。【森友学園問題 補助金不正で捜査機関が動かないのはなぜか】で述べているように、この補助金適正化法違反が刑事事件として立件されるのは容易ではないと考えられた。しかも、3月28日に、森友学園は、問題となっていた国土交通省からの補助金全額を返還したとされている。通常であれば、起訴の可能性はほとんどなくなったので、告発状を引き取ってもらうことになるはずだ。それにも関わらず、「告発受理」が報じられるというのは誠に不可解だ。

この二つの不可解な「籠池氏告発」をめぐる動きが、相次いで起きたことの背景には、この森友学園問題をめぐって大混乱に陥っている首相官邸の意向があるように思える。

補助金適正化法違反による起訴の可能性はゼロに等しい

まず、大阪地検による「籠池氏告発受理」の“謎”について考えてみたい。

【前記ブログ記事】でも述べたように、森友学園が設置をめざしていた小学校の建設工事に関しては、金額の異なる3つの請負契約書が作成され、そのうち最も高い約23億円の契約書が提出された国から5000万円余の補助金が学園に支払われた事実がある。この契約書が、国から補助金を受けるための虚偽の契約書だったとすれば、「偽りその他不正の手段」によって補助金の交付を受けた「補助金適正化法違反」が成立する可能性がある。

しかし、請負契約書が虚偽だったとしても、国の側で審査した結果、適正な補助金を交付したのであれば、「偽りその他不正」は行われたが、それによって補助金が不正に交付されたのではない、ということになる。詐欺罪であれば未遂罪が成立するが、補助金適正化法違反では未遂は処罰の対象とされていないので、犯罪は不成立となる。(補助金適正化法が適用される国の補助金の不正受給については、詐欺罪・同未遂罪は成立しない。)この点について、

専門家を交えた検討の結果、補助対象の設計費と工事費はおよそ15億2000万円と算定され、6194万円を助成することになり、先月までに5644万円余りが支払われている。

との報道があった。(NHK)

森友学園が受給していた国土交通省の「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」というのは、「先導的な設計・施工技術が導入される大規模な建築物の木造化・木質化を実現する事業計画の提案を公募し、そのうち上記の目的に適う優れた提案に対し、予算の範囲内において、国が当該事業の実施に要する費用の一部を補助」するもので、木造化・木質化が審査され、それに応じて建設代金の一部について補助金が交付されるものである。森友学園の件については、虚偽の請負契約書が提出されていても、森友学園が交付を受けていた補助金のうち、国交省の審査で、適正とされた部分を控除した「不正」受給金額は、少額になる可能性がある。また、審査の結果、認定された金額によっては、適正な金額が認定されており、不正受給がないという可能性もある。

しかも、森友学園は既に補助金を全額返還したというのである。過去の事例を見ても、よほど多額の補助金不正受給でなければ、全額返還済みの事案で起訴されることはない。

このように考えると、少なくとも今回の籠池氏の補助金適正化法違反の事実については、起訴の可能性はほとんどないと考えざるを得ない。そのような事件で、告発の受理の話が、告発人側とは異なる方向から表に出て、大々的に報道されるというのは、全く不可解であり、何か、特別の意図が働いているように思える。

大阪地検が、この事件を起訴する方向で捜査していく方針であれば、「告発受理」を公表することなどあり得ない。告発は捜査着手の要件でも、起訴の要件でもない。本気で行う捜査であれば密行性が重要であり、「告発受理」をマスコミに報道させるなどということはあり得ない。

実は、私自身も、この補助金適正化法違反の告発に関しては、3月中旬に、マスコミ関係者を通じて事前に相談を受け、告発状案にも目を通していた。単に、既にマスコミが報道しているような事実を、補助金適正化法違反で構成して告発状を提出しただけであって、捜査を行っていく上で特別の情報を含んでいるわけではない。

今回の告発受理の件については、昨日午前、大阪地検から告発人に突然連絡があり、その後、告発人に、大阪の記者が確認してきたとのことだが、その記者が「大阪地検告発受理」の情報を得たのは、東京の記者からだという。つまり、東京サイド(最高検ないし法務省)が「告発受理」の情報源だと考えられる。

いずれにしても、大阪地検の現場の動きではなく、何らかの意図があって、東京側主導で、「籠池氏の告発受理」が大々的に報道されることになったようだ。

自民党調査での籠池氏偽証告発はありえない

次に、「偽証告発」をめぐる動きであるが、【籠池氏証人喚問は、自民党にとって「危険な賭け」】【籠池氏問題に見る”あまりに拙劣な危機対応”】でも述べたように、籠池氏の証人喚問での証言を偽証告発するというのはもともと無理筋だった。自民党が籠池氏の「安倍首相からの100万円寄付」の発言の直後に、拙速に証人喚問に打って出たこと自体が、「拙劣極まりない危機対応」だったのであり、予想どおり、証人喚問は「籠池氏の独演会」に終わり、しかも、籠池氏が証人喚問で明らかにした昭恵夫人付職員からのファックスで、昭恵夫人が国有地の売却に関わっていた疑いが生じるなど、自民党、首相官邸はますます窮地に追い込まれることになった。

偽証の疑いがあるとして、告発をめざす調査の対象とされている事項は、

①籠池氏は、「学園の職員が払込取扱票の振込人欄に“安倍晋三”と書き、郵便局に持参した」などと証言したが、「安倍晋三」の筆跡が籠池氏の妻が書いたとされる字に似ていることから、郵便局に行ったのは、職員ではなく籠池夫人ではないか。

②寄付依頼書に「安倍晋三小学校」の記載がある払込取扱票を同封して使用した期間について、籠池氏は、「(安倍首相が)衆院議員時代、つまり総理就任、24年12月以前」であり、「使用してきたのは、ほんの一瞬」と午前の参議院予算員会で証言し、衆議院では「5カ月余り」と訂正したが、平成26年3月にも配っている。27年9月7日の100万円の振込に使われた払込取扱票にも「安倍晋三小学校」が記載されていることから、もっと長期にわたって使用していたのではないか。

の2点のようだ。

しかし、これらの事項に関して、国会議員が独自に調査した結果に基づいて籠池氏を偽証で告発することは極めて困難であり、現実的にはその可能性はほとんど考えられない。

まず、①で問題にされている籠池氏の発言は、参議院予算委員会での自民党の西田昌司議員の質問に対して答えたものだが、その前に、山本一太委員長の質問に対して、

その日は土曜日でございましたので、中身を確認し100万円であることを確認し金庫の中に入れました。そして、月曜、すぐ近くの新北の郵便局の方へまいったということでございます。その後、私は金庫に入れましたところあたりからは伝聞でございますので、私は直接いたしておりません。

と証言し、昭恵夫人から受け取った100万円を職員室の金庫に納めるところまでは自分がやったが、その後のことは「伝聞だ」と証言している。

したがって、その後の西田議員の質問に対する籠池氏の証言は、自分が直接経験したことではなく、「伝聞」であることが前提になっている。

「伝聞」であれば、聞いた話が間違っていれば、本人の認識も間違うのは当然のことだ。森友学園側で、100万円の振込の手続について、籠池氏の妻や学園職員からその時のことを聞いたのであろうが、当初の話が違っていたことがわかれば、それに応じて籠池氏の認識も変わることになる。証人喚問の時点では、籠池氏は、「学園職員が郵便局に行って手続をした」と聞き、そのように思っていたが、その後、郵便局に行ったのが実は籠池氏の妻だったことが判明したということであれば、籠池氏の「認識が間違っていた」だけで、「記憶に反して意図的に虚偽の証言をした」ことにはならない。籠池氏が、妻が郵便局に行ったことを知っていて、それを隠すために意図的に虚偽の供述をする理由があれば別だが、郵便局に行ったのが職員なのか妻なのかは、籠池氏にとってはどちらでも良い話であり、嘘をつく理由も考えられない。

すなわち、①の点について籠池氏に偽証罪が成立する可能性は限りなくゼロに等しい。このような問題で、籠池氏を偽証告発するために、払込取扱票の振込人欄の筆跡鑑定を行うというのは、全く馬鹿げていると言わざるを得ない。

次に、②の点については、籠池氏は、「安倍首相が総理大臣に就任する前」と証言し、その期間も「5ヶ月余り」と証言しているが、どの程度の期間使っていたのかという点についての籠池氏の証言が、客観的事実に反している可能性があることは確かである。

しかし、「安倍晋三小学校」の記載がある払込取扱票が、どの程度の期間使われていたのかというようなことが、国政調査権によって明らかにすべき「国政上重要な事項」なのであろうか。

【国会での証人喚問は「犯罪捜査のため」という暴論】でも述べたように、国会での証人喚問は、憲法62条に基づく「国政調査権」の手段として、国政上の重要事項に関して、偽証の制裁を科して証言を求め、真実を究明するために行われるものである。そこで、仮に、事実に反する証言が「故意に」行われたとしても、すべてが「偽証告発」の対象となるものではない。「偽証に対する制裁として刑事罰を科すこと」が、国政調査権の目的を達するために不可欠と判断された場合に、偽証告発が行われる。当然、国政にとっての重要事項を証人喚問によって明らかにしようとしたところ偽証が行われた、ということが証拠上明らかとなった場合に、偽証告発が行われることになるのである。

過去に偽証告発が行われた事例のほとんどが、その問題が検察等の捜査の対象となり、捜査の結果、偽証が明らかになった場合だけであることは【籠池氏証人喚問は、自民党にとって「危険な賭け」】でも述べた。

典型的なのは、閣僚、政府高官、国会議員等に関して何らかの疑惑が持ち上がり、それに関して国会として真相解明のために、当事者の証人喚問が行われ、そこで、疑惑を否定する証言が行われたが、後日、検察等の捜査で、偽証であったことが明らかになった場合である。

そのような形で偽証告発に至った2000年以降の事例として、鈴木宗男議員、守屋武昌防衛事務次官のケースがある。この場合、疑惑は、その後刑事事件に発展する可能性があるのであるから、証人喚問において「刑事訴追を受ける可能性がある」ということで証言拒否することは可能である。しかし、証人喚問されたのが国会議員、政府高官の場合、もし証言を拒絶すれば疑惑が一層高まることになるので、「自らのリスク」で疑惑を否定する証言をすることもあり得る。その証言が、その後の捜査で否定され、なおかつ、意図的な偽証であることが明らかになれば、その事実について偽証告発が行われることになるのである。

実際のところ、「国政上の重要事項」は、刑事事件に関連するものである場合が多い。「刑事訴追を受ける可能性がある」と証言拒絶されてしまえばそれまでなのだが、政府高官、国会議員は、証言拒否によって疑惑が深まるから拒否することもできない、ということで、証人喚問することに意味があるのである。籠池氏が、証人喚問の後の外国人特派員協会での記者会見で、「いきなり民間人が証人喚問されるというのは、あり得ないこと」と怒りを露わにしていたが、民間人であれば、犯罪事実に関することを聞いても、当然、証言拒否をすることになるので、証人喚問をすることの意味がないのである。

今回の証人喚問で籠池氏が述べた100万円の寄付自体は、違法な寄付ではない。それがあろうとなかろうと「国政上重要な事項」ではない。その寄付の事実に関して、仮に、意図的な虚偽の証言があったとしても、国政調査権の目的が達せられないなどとは言えないので、偽証告発の対象になどならない。ましてや、「安倍晋三小学校と記載された払込用紙をどの程度の期間使って寄付を募っていたのか」という点も、国政調査で明らかにすべき事項とは考えられない。

証拠面でも、偽証告発というのは著しく困難だ。籠池氏は、証人喚問で、

総裁になられて、(「安倍晋三小学校」を)お断りになられた後に、振込用紙が残っていて、少しの期間使われたことがあった

と証言し、その後、振込用紙がどのように使われているのかはわからなかったというのが籠池氏の弁解のようだ。証言内容が、仮に、客観的事実と異なっていたとしても、意図的に虚偽の証言をしたのでなければ、偽証とは言えない。

籠池氏の証言については、①、②いずれについても、意図的な偽証を明らかにできる証拠が収集されるとは思えないし、そもそも偽証の起訴価値もないので、偽証告発などあり得ないのである。

「二つの謎」の背景に何があるのか

大阪地検特捜部の不祥事で批判非難を受けたことで、それまでの「ストーリー通りの調書をとるための不当な取調べ」を中心としてきた特捜捜査の手法が使えなくなり、検察捜査は著しく弱体化した。「絵に描いたようなあっせん利得」の甘利元大臣の事件の捜査でも、為すすべなく敗北、東芝の歴代社長の告発をめざす証券取引等監視委員会に対しても告発を断念させることに懸命になっている。そのような今の検察にできることは、起訴の可能性のほとんどない補助金適正化法違反を「告発受理」するという「単なる手続」を行って、それを「籠池事件捜査着手」とマスコミにぶち上げて大々的に報道させることぐらいなのだろうか。

一方で、自民党議員による調査はほとんど無駄であり、偽証告発が可能になるとは思えないにもかかわらず、首相官邸側は、調査を肯定する異例のコメントをしている。自民党本部で偽証告発をめざす調査の記者会見が行われた28日午前の参議院決算委員会で、菅義偉官房長官は、齋藤議員の「虚偽証言で告発をすると、こういうことでしょうか。」との質問に答えて、「事実と違ったら、そのようになるという風に思っています。ですから、客観的な内容について、今私ども精査しています。」と答弁し、記者会見でも、証人喚問での籠池理事長の証言を巡り自民党が偽証罪での告発も検討していることについて、「真相究明の動きだ」などと評価する発言をした。

政府側のスポークスマンである官房長官が、国会での国政調査権に関して、偽証告発を肯定するような発言をするというのはあり得ないことだが、それに加え、既に述べたような全くの「無理筋」である籠池氏偽証告発に向けての調査まで肯定する発言を敢えて行っているのである。

今後、東京地検特捜部は、何らかの「無理筋」の事件を無理やり仕立て挙げて捜査を行い、偽証告発に向けての動きをアシストするというようなこともあり得るのであろうか。

そして、検察庁を所管する法務省は、これからテロ等準備罪と称する「共謀罪」の国会審議が本格化する中で、与党サイドの全面協力を得る必要がある。

このような状況において、籠池氏の「告発」をめぐって起きた「2つの不可解な動き」には、何やら不気味なものを感じる。

共謀罪法案は、政治家・企業・行政の犯罪を除外、国民すべてを監視対象とする 

高山佳奈子京都大教授のブログで、高山教授が「共謀罪法案」が国連条約との関係でも疑問であると指摘している。リンクを貼るだけにしようかと思ったら、ブログは今月一杯で閉じるらしいので、内容をコピーしておく。

テロ対策がこの法案の本旨ではないのは、法務省が出してきた法案に「テロ」という呼称がまったくなかったことからも明らかである。国民の思想信条を広範に監視し、摘発するための手段である。

高山教授が指摘している通り、公務員・企業・政治家の犯罪が対象から除外されていることは、国連条約の趣旨に反するのみならず、自らをこの法律の対象から外そうという公務員・企業経営者・政治家の狡猾、否あからさまな意図を反映している。この法案が、上記に携わる者を除いた、国民全体に対するものであることが分かる。

凄まじい法律を、彼らはでっち上げようとしている。

以下、3月8日付、高山教授のブログを引用~~~

3/6昼の国会前集会で、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」の呼びかけ人としてスピーチさせていただきました。
内容は2点です。

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(1)法案はオリンピックのためのテロ対策と関係ない

前の共謀罪法案は2009年7月まで自民党政権下で国会において継続審議扱いになっていました。
私がオリンピック招致のためドーピング対策の仕事を始めたのは2008年4月。遅くともそのときまでにオリンピックの準備は始まっていました。
もし、五輪招致のために共謀罪立法が必要なら、現に法案が国会に提出されているのですから、そこで議論すればよかったはずです。

(2)対象犯罪の選別のしかたが国連条約の趣旨に反する

今般の案がこれまでの共謀罪法案と異なるのは、対象犯罪の数が約400減っていることです。
予備罪や過失犯など、「共謀」を想定しにくいものが対象犯罪から削られたことは、理解できます。
しかし、次のような犯罪がわざわざ除外されているのはなぜなのでしょうか。

特別公務員職権濫用罪(刑法194条)
「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。」

特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条)
「1項 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処する。
2項 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。」

公職選挙法違反の罪
選挙の候補者や選挙管理委員による買収・利害誘導の罪、これらの人や有権者に対する買収・利害誘導罪など、4年以上の懲役を含む多数の処罰類型あるがすべて対象犯罪から除外
新聞・雑誌の不法利用罪(148条の2)
「1項 何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、その供与の申込若しくは約束をし又は饗応接待、その申込若しくは約束をして、これに選挙に関する報道及び評論を掲載させることができない。
2項 新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者は、前項の供与、饗応接待を受け若しくは要求し又は前項の申込を承諾して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載することができない。」罰則(223条の2第1項)5年以下の懲役又は禁錮

政治資金規正法違反の罪 すべて対象犯罪から除外

取締役等の収賄罪(会社法967条) 国際的に見ても各国で処罰が強化されているいわゆる商業賄賂罪
株式会社の役員や従業員「が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。」

マフィア対策の条約である国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約、パレルモ条約)はまさにこのような犯罪こそターゲットにしているはずです。
たとえば、条約締結のために一般的な共謀罪立法を行ったわずかな国の1つとされるブルガリア刑法の共謀罪(321条6項)は、利得または公的機関に対する違法な影響力の行使を目的とすることが要件になっています。マフィアがターゲットであることが明らかで、テロは除外されているといっても良いでしょう。

マフィアによる司法権力や政治権力の支配、また企業の支配、汚職は国連条約がまさに禁圧を目指しているものです。
これを外してどうするのでしょうか。
国連に対する説明がつきません。
「政治家や企業の汚職は懲役5年だけど対象から外しました」と言えるのでしょうか。

<結論> 今般の法案は、
(1)オリンピックのためのテロ対策とは関係のない動機で作られているものであり、かつ、
(2)政治家や企業の汚職をわざわざ対象から外すことによって、国連条約の趣旨にも真っ向から反する内容のものになっています。

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<補足1>
テロ対策の国際条約・国連決議がパレルモ条約と別体系になっている理由は明白で、
・テロは利得目的ではなく政治的目的によること、また
・テロは自爆テロのように大規模な被害を出すものであっても単独で遂行でき、組織性を本質としないこと
によります。

<補足2>
「『共謀罪』の構成要件を厳しくして『テロ等準備罪』を新設する法案」
という判で押したような表現が報道の中に見られますが、事実に反します。
厳しくなっていないからです。
「組織的犯罪集団」の範囲は限定されていません。
「テロリズム集団」が書き込まれたようですが、「その他」があるので限定になっていません。また、対象とされる集団は、過去に継続して存在していたことや違法行為を行ったことを要件としていません。認定や指定はもちろん不要です。
組織的犯罪処罰法に関する最高裁判例は、組織的詐欺罪の適用に関し、ある組織がもともとは詐欺罪を実行するための組織でなかったとしても、客観的に詐欺にあたる行為をすることを目的としてなり立っているのであれば該当し、中に詐欺のことを知らないメンバーがいても関係ないとしています(最決平成27年9月15日刑集69巻6号721頁)。
ちなみに、テロ対策のための内容は法案の中に全く含まれていません。
・「準備行為」の範囲も限定されません。
予備や危険物の扱いはすでに処罰されていますから、「準備行為」には、それらにすらあたらない、危険のない行為全般が該当します。これにも例示があるようですが、「その他」があるため限定されていません。
・「計画」の手段も限定されません。
黙示共謀・順次共謀が含まれ、LINEなどの通信はもちろんのこと目配せでも足りるとされることは、従来の共犯処罰実務のとおりです。

本音は共謀罪 

対「テロ等準備罪」法案に、テロという言葉がないことが明らかになった。

政府与党は、それではまずいと、テロという言葉を法案のなかに入れる画策を今しているらしい。

やはりテロ対策は、酒のツマミで、本音は、共謀罪対策だったことが明らかになった。

対共謀罪法案は、国民を監視して、思想信条の自由を抑圧し、政権への国民の正当な批判を抑えるための法案である。

それにしても、法務省当局、政権与党の何と杜撰なことか。

以下、引用~~~

「共謀罪」法案、全容明らかに 条文に「テロ」表記なし
朝日新聞デジタル 2/28(火) 11:56配信

 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案の全容が28日、明らかになった。対象となる犯罪は91の法律に規定された277種類の罪に及ぶ。政府は呼称として「テロ等準備罪」を使っているが、条文の中に「テロ」という文字が入っていないことも判明した。

 公明党は28日午前、全国会議員を対象にした会合を開催。自民党も同日午後に法務部会を開くなど、法案についての与党の事前審査が始まった。政府は審査を経たうえで、3月10日の閣議決定をめざす。

 明らかになった法案によると、正式な罪名は「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」の罪。政府は今回の法整備の目的を2020年の東京五輪・パラリンピックなどに向けたテロ対策強化としているが、法案にはテロリズムの定義も文字もない。「テロ」を冠した呼称は、世論対策に過ぎなかった面もうかがえる。

共謀罪捜査は、一般集団・組織を対象とし、通信手段の種類を問わない 

共謀罪の捜査対象、その通信手段には何も制限がない、ということが国会議論で明らかにされた。2015年に改定された通信傍受法を適用し、捜査機関は、第三者の立ち合いなしに、ネットのメールのみならず様々なSNSにも傍受の網を張ることになる。捜査令状を出すのは、裁判所だが、特定集団を捜査対象とするかどうか決める、即ち、特定集団が組織的犯罪集団に「一変」したかどうか判断するのは、捜査機関である。捜査機関が広範なネット監視を始めることになる。ネットのSNS参加者は、6000万人を超えている。実際上、国民全員が共謀罪の捜査対象になりうることが明らかになった。



共謀罪捜査は手段を択ばず 

昨年12月、通信傍受法が改定され、捜査当局は、通信業者の立ち合いがなく、捜査施設で通信傍受が行えるようになった。裁判所の令状は必要とされるが、その捜査対象の範囲は拡大され、捜査機関は容易に通信傍受が行えるようになった。

共謀罪の疑いで捜査をするとなると、通信傍受は必須になる。電話だけでなく、ネットのメール・SNSが広範に傍受されることになる。テロの定義は曖昧であり、それが拡大される可能性は極めて高い。事実上、社会の治安を乱すという言いがかりで、様々な反政権政治運動が共謀罪に問われる可能性が高い。また、共謀罪が、そうした政治運動を萎縮させる。

テロ等準備対策法が、たとえ政権・法務当局の「善意」で制定されるとしても、将来、その対象が拡大解釈される可能性は高い。こうした公安関係の法規は、それがもたらす社会への利益と、拡大解釈・乱用による不利益とを比較する必要がある。基本的人権にかかわる、共謀罪等では特にそうだ。安倍政権は、解釈改憲を堂々と行い、立憲主義を踏みにじっている。その目指すところは、戦前の皇国史観によるナショナリズムだ。国民をその思想・信条まで監視し、訴追するための共謀罪対応法=治安維持法という道具を、彼らに与えることは極めて危険だ。

オリンピック開催のため、という理由づけで、国民は納得させられるのか。特定秘密保護法、安保法制、通信傍受法改正そしてこの共謀罪法案という流れは、最終的に、国民の基本的人権に制限を加え、一方政権に絶大な権力を付与する、憲法改正に至る。それを国民は知るべきなのだ。

以下、東京新聞から引用~~~

LINEでも共謀成立の恐れ 法相「合意の手段を限定せず」

2017年2月24日 朝刊

 政府が「共謀罪」と同じ趣旨で創設を目指す「テロ等準備罪」について、金田勝年法相は二十三日、衆院予算委員会の分科会で、犯罪を合意(共謀)する手段を限定しない考えを明らかにした。会議などでメンバーが対面して行う合意だけでなく、電話やメール、LINE(ライン)で合意が成立する可能性を認めた。広い範囲で会話や通信が捜査対象となる恐れがある。 (山田祐一郎)

 民進党の山尾志桜里氏の「共謀は電話やメールなどでも認定され得るのか」という質問に、金田法相は「特段、限定をしない前提で検討している」と答弁。複数の人に同時送信するメーリングリストや、LINEのグループメールでの合意が成立するかどうかについては「そのような事例は証拠を慎重に検討していく」としながらも、手段の限定は検討していないとした。山尾氏は「誰がどのタイミングでどんな内容を送っているのか。それを閲覧し、どう返信しているかを幅広く監視しなければならなくなる」と指摘した。

 日本刑法学会理事の葛野尋之(くずのひろゆき)一橋大教授(刑事法)は「最高裁の判例は、黙示的な意思の連絡があっただけでも共謀を認めている。申し出を受け、積極的に異議を述べなかったことから合意が成立したとされる可能性もある」と説明。「共謀と準備行為はもともと曖昧だが、疑いがあるだけで捜査の対象になる。今後、捜査で通信傍受や位置情報の探知がなされると、その範囲が拡散する恐れがある」と問題点を指摘する。

 また、合意の定義を巡っては、二〇〇五年十月の衆院法務委員会で、法務省の大林宏刑事局長(当時)が「目くばせによって一斉に動くようなシステム化されたものであれば、十分成立する場合はある」との見解を示している。金田氏はこの日、合意の定義について「目くばせだけでは合意は成立しない」と述べたが、過去の共謀罪法案審議で政府が示した定義は「変わっていない」とも答弁。今回の法案でも一定の条件の下では「目くばせ」で合意が成立する場合があることを事実上認めた。山尾氏は「都合の良いところだけを発信するのは誤解を生み、不誠実だ」と批判した。

◆日弁連 反対の意見書

 日弁連は二十三日、「共謀罪」と同じ趣旨で政府が創設を目指す「テロ等準備罪」について、テロ対策のために広範な共謀罪の新設が必要なわけではないとして、法案の国会提出に反対する意見書を法務省と外務省に提出した。共謀罪法案に反対する意見書は二〇〇六年、一二年に続いて三度目。昨年八月に政府の新たな共謀罪法案の検討が判明してからは初めて。 

テロ準備も「一回」であればお目こぼしに与れる? 

共謀罪法案について、金田法相は、「正当な活動を目的とした団体が、重大な犯罪を1回だけ実行すると意思決定しても直ちに『組織的犯罪集団』にはあたらない」と述べたらしい。

何とかして世論に支持してもらいたくて、何かバーゲンセールを始めた様な感じがする。こんないい加減なことを言うことで、法案が治安維持法と同じ性格であることが隠せると思っているのか。この機会に、どうしてもこの新たな治安維持法を制定したい、というがむしゃらな意図が見え隠れする。

この法案の対象であるというテロの場合、どんな団体であれ、一発必中で準備し、テロリズムに走ることだろう。一回だけは、この法律で規定するテロ行為とは見なさないというのは、あまりにご都合主義だ。「一回だけ」というのは、どうにでもなる。この法律を制定すれば、最初の犯罪準備かどうかは、捜査機関の判断でどうにでもなる。

そもそも、普通の団体が、政府・法務省の言うテロ組織(実際は、反政府の政治運動を行う集団が含まれる)となったと判断し、捜査を開始するのは警察だ。それを法的に決めるのは裁判所である。警察は、自らの捜査に都合の良いように判断するだろう。さらに、裁判所は、国の方針と違う結論を出すことは稀だ。

裁判官は、キャリアーの途中で、本省に派遣されることがあり、そうするとその裁判官の判断がとくに国よりになる、法体系の問題もあり、行政訴訟では国が勝つことが圧倒的に多い。と、JH4WBY氏ご紹介の阿倍康隆著「行政の組織的腐敗と行政訴訟最貧国: 放置国家を克服する司法改革を」に記されている。裁判所は、裁判内容に関わらず国に有利な判断をする、中東の笛を吹くのだ。行政訴訟のみならず、国がかかわる訴訟では、訴訟提起された裁判所に、国の意向を受けた裁判官が急きょ派遣され、その訴訟を扱うことも多い。従って、当該集団が政府の言うテロ組織であるかいなかを判断する裁判所は、国の意向を受けた判断を行うはずだ。反政府の政治運動を行う団体が、テロ組織の指定を受ける可能性がある。裁判所の判断が入るから、この法律が乱用されることはない、というのは詭弁である。

なりふり構わず、この法案を成立させようとしている安倍政権は、この法律をまさに政治的な道具として、自らに反旗を翻す人々を犯罪者に仕立てるために、また国民を、そうした反政府の政治行動から遠ざけるために使おうとしている、としか考えようがない。

テロ対策は、現在の法体系で十分対応できるのだ。「一回だけ」の集団犯罪準備行為は、この法律で取り締まらないというのは、捜査機関の意向でどうにでもなる。組織犯罪かどうかの判断を裁判所がするから乱用はありえないというのは詭弁だ。