共謀罪法案は、政治家・企業・行政の犯罪を除外、国民すべてを監視対象とする 

高山佳奈子京都大教授のブログで、高山教授が「共謀罪法案」が国連条約との関係でも疑問であると指摘している。リンクを貼るだけにしようかと思ったら、ブログは今月一杯で閉じるらしいので、内容をコピーしておく。

テロ対策がこの法案の本旨ではないのは、法務省が出してきた法案に「テロ」という呼称がまったくなかったことからも明らかである。国民の思想信条を広範に監視し、摘発するための手段である。

高山教授が指摘している通り、公務員・企業・政治家の犯罪が対象から除外されていることは、国連条約の趣旨に反するのみならず、自らをこの法律の対象から外そうという公務員・企業経営者・政治家の狡猾、否あからさまな意図を反映している。この法案が、上記に携わる者を除いた、国民全体に対するものであることが分かる。

凄まじい法律を、彼らはでっち上げようとしている。

以下、3月8日付、高山教授のブログを引用~~~

3/6昼の国会前集会で、「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」の呼びかけ人としてスピーチさせていただきました。
内容は2点です。

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(1)法案はオリンピックのためのテロ対策と関係ない

前の共謀罪法案は2009年7月まで自民党政権下で国会において継続審議扱いになっていました。
私がオリンピック招致のためドーピング対策の仕事を始めたのは2008年4月。遅くともそのときまでにオリンピックの準備は始まっていました。
もし、五輪招致のために共謀罪立法が必要なら、現に法案が国会に提出されているのですから、そこで議論すればよかったはずです。

(2)対象犯罪の選別のしかたが国連条約の趣旨に反する

今般の案がこれまでの共謀罪法案と異なるのは、対象犯罪の数が約400減っていることです。
予備罪や過失犯など、「共謀」を想定しにくいものが対象犯罪から削られたことは、理解できます。
しかし、次のような犯罪がわざわざ除外されているのはなぜなのでしょうか。

特別公務員職権濫用罪(刑法194条)
「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、6月以上10年以下の懲役又は禁錮に処する。」

特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条)
「1項 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処する。
2項 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。」

公職選挙法違反の罪
選挙の候補者や選挙管理委員による買収・利害誘導の罪、これらの人や有権者に対する買収・利害誘導罪など、4年以上の懲役を含む多数の処罰類型あるがすべて対象犯罪から除外
新聞・雑誌の不法利用罪(148条の2)
「1項 何人も、当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者に対し金銭、物品その他の財産上の利益の供与、その供与の申込若しくは約束をし又は饗応接待、その申込若しくは約束をして、これに選挙に関する報道及び評論を掲載させることができない。
2項 新聞紙又は雑誌の編集その他経営を担当する者は、前項の供与、饗応接待を受け若しくは要求し又は前項の申込を承諾して、これに選挙に関する報道及び評論を掲載することができない。」罰則(223条の2第1項)5年以下の懲役又は禁錮

政治資金規正法違反の罪 すべて対象犯罪から除外

取締役等の収賄罪(会社法967条) 国際的に見ても各国で処罰が強化されているいわゆる商業賄賂罪
株式会社の役員や従業員「が、その職務に関し、不正の請託を受けて、財産上の利益を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。」

マフィア対策の条約である国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約、パレルモ条約)はまさにこのような犯罪こそターゲットにしているはずです。
たとえば、条約締結のために一般的な共謀罪立法を行ったわずかな国の1つとされるブルガリア刑法の共謀罪(321条6項)は、利得または公的機関に対する違法な影響力の行使を目的とすることが要件になっています。マフィアがターゲットであることが明らかで、テロは除外されているといっても良いでしょう。

マフィアによる司法権力や政治権力の支配、また企業の支配、汚職は国連条約がまさに禁圧を目指しているものです。
これを外してどうするのでしょうか。
国連に対する説明がつきません。
「政治家や企業の汚職は懲役5年だけど対象から外しました」と言えるのでしょうか。

<結論> 今般の法案は、
(1)オリンピックのためのテロ対策とは関係のない動機で作られているものであり、かつ、
(2)政治家や企業の汚職をわざわざ対象から外すことによって、国連条約の趣旨にも真っ向から反する内容のものになっています。

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<補足1>
テロ対策の国際条約・国連決議がパレルモ条約と別体系になっている理由は明白で、
・テロは利得目的ではなく政治的目的によること、また
・テロは自爆テロのように大規模な被害を出すものであっても単独で遂行でき、組織性を本質としないこと
によります。

<補足2>
「『共謀罪』の構成要件を厳しくして『テロ等準備罪』を新設する法案」
という判で押したような表現が報道の中に見られますが、事実に反します。
厳しくなっていないからです。
「組織的犯罪集団」の範囲は限定されていません。
「テロリズム集団」が書き込まれたようですが、「その他」があるので限定になっていません。また、対象とされる集団は、過去に継続して存在していたことや違法行為を行ったことを要件としていません。認定や指定はもちろん不要です。
組織的犯罪処罰法に関する最高裁判例は、組織的詐欺罪の適用に関し、ある組織がもともとは詐欺罪を実行するための組織でなかったとしても、客観的に詐欺にあたる行為をすることを目的としてなり立っているのであれば該当し、中に詐欺のことを知らないメンバーがいても関係ないとしています(最決平成27年9月15日刑集69巻6号721頁)。
ちなみに、テロ対策のための内容は法案の中に全く含まれていません。
・「準備行為」の範囲も限定されません。
予備や危険物の扱いはすでに処罰されていますから、「準備行為」には、それらにすらあたらない、危険のない行為全般が該当します。これにも例示があるようですが、「その他」があるため限定されていません。
・「計画」の手段も限定されません。
黙示共謀・順次共謀が含まれ、LINEなどの通信はもちろんのこと目配せでも足りるとされることは、従来の共犯処罰実務のとおりです。

本音は共謀罪 

対「テロ等準備罪」法案に、テロという言葉がないことが明らかになった。

政府与党は、それではまずいと、テロという言葉を法案のなかに入れる画策を今しているらしい。

やはりテロ対策は、酒のツマミで、本音は、共謀罪対策だったことが明らかになった。

対共謀罪法案は、国民を監視して、思想信条の自由を抑圧し、政権への国民の正当な批判を抑えるための法案である。

それにしても、法務省当局、政権与党の何と杜撰なことか。

以下、引用~~~

「共謀罪」法案、全容明らかに 条文に「テロ」表記なし
朝日新聞デジタル 2/28(火) 11:56配信

 犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の要件を変えた「テロ等準備罪」を新設する法案の全容が28日、明らかになった。対象となる犯罪は91の法律に規定された277種類の罪に及ぶ。政府は呼称として「テロ等準備罪」を使っているが、条文の中に「テロ」という文字が入っていないことも判明した。

 公明党は28日午前、全国会議員を対象にした会合を開催。自民党も同日午後に法務部会を開くなど、法案についての与党の事前審査が始まった。政府は審査を経たうえで、3月10日の閣議決定をめざす。

 明らかになった法案によると、正式な罪名は「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」の罪。政府は今回の法整備の目的を2020年の東京五輪・パラリンピックなどに向けたテロ対策強化としているが、法案にはテロリズムの定義も文字もない。「テロ」を冠した呼称は、世論対策に過ぎなかった面もうかがえる。

共謀罪捜査は、一般集団・組織を対象とし、通信手段の種類を問わない 

共謀罪の捜査対象、その通信手段には何も制限がない、ということが国会議論で明らかにされた。2015年に改定された通信傍受法を適用し、捜査機関は、第三者の立ち合いなしに、ネットのメールのみならず様々なSNSにも傍受の網を張ることになる。捜査令状を出すのは、裁判所だが、特定集団を捜査対象とするかどうか決める、即ち、特定集団が組織的犯罪集団に「一変」したかどうか判断するのは、捜査機関である。捜査機関が広範なネット監視を始めることになる。ネットのSNS参加者は、6000万人を超えている。実際上、国民全員が共謀罪の捜査対象になりうることが明らかになった。



共謀罪捜査は手段を択ばず 

昨年12月、通信傍受法が改定され、捜査当局は、通信業者の立ち合いがなく、捜査施設で通信傍受が行えるようになった。裁判所の令状は必要とされるが、その捜査対象の範囲は拡大され、捜査機関は容易に通信傍受が行えるようになった。

共謀罪の疑いで捜査をするとなると、通信傍受は必須になる。電話だけでなく、ネットのメール・SNSが広範に傍受されることになる。テロの定義は曖昧であり、それが拡大される可能性は極めて高い。事実上、社会の治安を乱すという言いがかりで、様々な反政権政治運動が共謀罪に問われる可能性が高い。また、共謀罪が、そうした政治運動を萎縮させる。

テロ等準備対策法が、たとえ政権・法務当局の「善意」で制定されるとしても、将来、その対象が拡大解釈される可能性は高い。こうした公安関係の法規は、それがもたらす社会への利益と、拡大解釈・乱用による不利益とを比較する必要がある。基本的人権にかかわる、共謀罪等では特にそうだ。安倍政権は、解釈改憲を堂々と行い、立憲主義を踏みにじっている。その目指すところは、戦前の皇国史観によるナショナリズムだ。国民をその思想・信条まで監視し、訴追するための共謀罪対応法=治安維持法という道具を、彼らに与えることは極めて危険だ。

オリンピック開催のため、という理由づけで、国民は納得させられるのか。特定秘密保護法、安保法制、通信傍受法改正そしてこの共謀罪法案という流れは、最終的に、国民の基本的人権に制限を加え、一方政権に絶大な権力を付与する、憲法改正に至る。それを国民は知るべきなのだ。

以下、東京新聞から引用~~~

LINEでも共謀成立の恐れ 法相「合意の手段を限定せず」

2017年2月24日 朝刊

 政府が「共謀罪」と同じ趣旨で創設を目指す「テロ等準備罪」について、金田勝年法相は二十三日、衆院予算委員会の分科会で、犯罪を合意(共謀)する手段を限定しない考えを明らかにした。会議などでメンバーが対面して行う合意だけでなく、電話やメール、LINE(ライン)で合意が成立する可能性を認めた。広い範囲で会話や通信が捜査対象となる恐れがある。 (山田祐一郎)

 民進党の山尾志桜里氏の「共謀は電話やメールなどでも認定され得るのか」という質問に、金田法相は「特段、限定をしない前提で検討している」と答弁。複数の人に同時送信するメーリングリストや、LINEのグループメールでの合意が成立するかどうかについては「そのような事例は証拠を慎重に検討していく」としながらも、手段の限定は検討していないとした。山尾氏は「誰がどのタイミングでどんな内容を送っているのか。それを閲覧し、どう返信しているかを幅広く監視しなければならなくなる」と指摘した。

 日本刑法学会理事の葛野尋之(くずのひろゆき)一橋大教授(刑事法)は「最高裁の判例は、黙示的な意思の連絡があっただけでも共謀を認めている。申し出を受け、積極的に異議を述べなかったことから合意が成立したとされる可能性もある」と説明。「共謀と準備行為はもともと曖昧だが、疑いがあるだけで捜査の対象になる。今後、捜査で通信傍受や位置情報の探知がなされると、その範囲が拡散する恐れがある」と問題点を指摘する。

 また、合意の定義を巡っては、二〇〇五年十月の衆院法務委員会で、法務省の大林宏刑事局長(当時)が「目くばせによって一斉に動くようなシステム化されたものであれば、十分成立する場合はある」との見解を示している。金田氏はこの日、合意の定義について「目くばせだけでは合意は成立しない」と述べたが、過去の共謀罪法案審議で政府が示した定義は「変わっていない」とも答弁。今回の法案でも一定の条件の下では「目くばせ」で合意が成立する場合があることを事実上認めた。山尾氏は「都合の良いところだけを発信するのは誤解を生み、不誠実だ」と批判した。

◆日弁連 反対の意見書

 日弁連は二十三日、「共謀罪」と同じ趣旨で政府が創設を目指す「テロ等準備罪」について、テロ対策のために広範な共謀罪の新設が必要なわけではないとして、法案の国会提出に反対する意見書を法務省と外務省に提出した。共謀罪法案に反対する意見書は二〇〇六年、一二年に続いて三度目。昨年八月に政府の新たな共謀罪法案の検討が判明してからは初めて。 

テロ準備も「一回」であればお目こぼしに与れる? 

共謀罪法案について、金田法相は、「正当な活動を目的とした団体が、重大な犯罪を1回だけ実行すると意思決定しても直ちに『組織的犯罪集団』にはあたらない」と述べたらしい。

何とかして世論に支持してもらいたくて、何かバーゲンセールを始めた様な感じがする。こんないい加減なことを言うことで、法案が治安維持法と同じ性格であることが隠せると思っているのか。この機会に、どうしてもこの新たな治安維持法を制定したい、というがむしゃらな意図が見え隠れする。

この法案の対象であるというテロの場合、どんな団体であれ、一発必中で準備し、テロリズムに走ることだろう。一回だけは、この法律で規定するテロ行為とは見なさないというのは、あまりにご都合主義だ。「一回だけ」というのは、どうにでもなる。この法律を制定すれば、最初の犯罪準備かどうかは、捜査機関の判断でどうにでもなる。

そもそも、普通の団体が、政府・法務省の言うテロ組織(実際は、反政府の政治運動を行う集団が含まれる)となったと判断し、捜査を開始するのは警察だ。それを法的に決めるのは裁判所である。警察は、自らの捜査に都合の良いように判断するだろう。さらに、裁判所は、国の方針と違う結論を出すことは稀だ。

裁判官は、キャリアーの途中で、本省に派遣されることがあり、そうするとその裁判官の判断がとくに国よりになる、法体系の問題もあり、行政訴訟では国が勝つことが圧倒的に多い。と、JH4WBY氏ご紹介の阿倍康隆著「行政の組織的腐敗と行政訴訟最貧国: 放置国家を克服する司法改革を」に記されている。裁判所は、裁判内容に関わらず国に有利な判断をする、中東の笛を吹くのだ。行政訴訟のみならず、国がかかわる訴訟では、訴訟提起された裁判所に、国の意向を受けた裁判官が急きょ派遣され、その訴訟を扱うことも多い。従って、当該集団が政府の言うテロ組織であるかいなかを判断する裁判所は、国の意向を受けた判断を行うはずだ。反政府の政治運動を行う団体が、テロ組織の指定を受ける可能性がある。裁判所の判断が入るから、この法律が乱用されることはない、というのは詭弁である。

なりふり構わず、この法案を成立させようとしている安倍政権は、この法律をまさに政治的な道具として、自らに反旗を翻す人々を犯罪者に仕立てるために、また国民を、そうした反政府の政治行動から遠ざけるために使おうとしている、としか考えようがない。

テロ対策は、現在の法体系で十分対応できるのだ。「一回だけ」の集団犯罪準備行為は、この法律で取り締まらないというのは、捜査機関の意向でどうにでもなる。組織犯罪かどうかの判断を裁判所がするから乱用はありえないというのは詭弁だ。

共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明 

共謀罪法案が、不必要であり、かつ危険であることを、刑事法研究者達が述べ、同法案の国会提出に反対している。こちら。必読である。

この法案に基づく捜査と、通信傍受は抱き合わせで行われ、国民の思想・信条の自由を著しく阻害する。警察が通信傍受の拡大を行う可能性があることを、法務大臣自ら国会で述べている。

国民は、思想・信条の自由を失わなければ、問題の重大性に気づかないのだろうか。

戦前の治安維持法、沖縄の問題そしてテロ等組織犯罪準備罪対策法 

以前、キリスト教独立学園高校、その創設者の鈴木弼美のことを記したことがある。こちら。このところ、両親の残した蔵書を整理していて、同高校の創立50周年の記念誌を発見した。1980年代に編まれたもののようだ。鈴木自身、さらに同高校の設立・維持・発展に関わってこられた方々、卒業生の方々が長短取り交ぜた文章を寄稿している。1000ページにも及ぼうかという浩瀚な書物だ。

そのなかで、渡辺彌一郎という方の記した、鈴木弼美との交流記が目を引いた。1920年代だったか、同地で無教会主義の伝道を始めた鈴木が同地に定着するための手助けをし、さらに鈴木がそこに高校(の前身の学校)を建設した際に援助をした現地のか方のお一人が、渡辺であった。個人的な苦悩から鈴木の下でキリスト教に入信した渡辺は、しかし、戦時中、特高警察に鈴木とともに逮捕されてしまう。当初、「国体」に反逆する者達だけを検挙するためとして導入された、治安維持法が、どんどん拡大されて行き、山形の山奥で静かにキリスト教信仰に基づく学びと信仰の生活を送っていた彼らをも、逮捕するまでになっていったのである。鈴木と渡辺は、特高警察の執拗な尋問に対して、自らの潔白と、信仰とを表明した。その拘禁は8か月にも及んだ。外部の人々の援助と、何よりも彼ら自身の毅然とした態度によって、検察は彼らを釈放せざるを得なくなった。その一部始終が、手に取るように記録されていた。平和な生活を送っていた二人が、特高警察(現在でいえば、公安警察となるのだろう)によって、何も容疑がないのに突然逮捕され、日常生活から連れ去られる恐怖はいかばかりだったかと思う。ご家族・仕事をともになさっていた方々はどのような思いだったことだろうか。彼らは、堅固な信仰に立ち、何らやましいところがなかく、助かることができた。が、特高警察の尋問は苛烈を極めた様子が、この記録に記されている。朝、拘置所から尋問のために連れ出された人が、帰ってくるときには、自力で歩けぬほどになるのを何度も目にした、とある。拷問が行われていたのだ。治安維持法によって、こうした狂った警察活動が、いたるところで繰り広げられた。国民の間に疑心暗鬼が広がり、密告も多くなされたという。お二人がその信仰によってその過酷な運命を生き延びたことにまずは驚嘆させられる。が同時に、治安維持法がいかに国民を苦しめるだけの悪法であったかということを改めて教えてくれる。

この記事を読んで思い起こしたのは、沖縄で反基地活動を行い、微罪で逮捕され、現在も拘置され続けている、山城博治のことだ。彼は、起訴されて、拘留される理由がないのに、100日以上拘留され続けている。彼は2年前に悪性リンパ腫を患っている。そのフォローも十分されていない。家族との面会もゆるされていない。国際人権NGOアムネスティが、彼の逮捕・長期間拘留の非人道性を国際的に訴えている。こちら。これも一種の治安維持法的な拘禁ではないか。テロ等組織犯罪対策法ができれば、このようなケースでは、さらに多くの方を逮捕し、長期間拘留する根拠を権力側に与えることになる。また、国民の間の密告が奨励されることになる。

現在、国会で審議されているテロ等組織犯罪対策法という名の共謀罪法案は、戦前の治安維持法とその法的意味合いは同様である。国会答弁で、安倍首相は、この法案の対象は、テロ等の組織犯罪であり、一般人は対象にならないと繰り返し述べている。だが、昨日の審議で「オレオレ詐欺」を対象にするとも述べた。オレオレ詐欺のどこが一体テロ等組織犯罪なのだろうか。安倍首相は、オレオレ詐欺という身近な犯罪にもこの法律で対処できるようになる、だからこの法案を支持してほしい、という積りだったのかもしれないが、この論理は、同法案がいかようにも拡大解釈できることを示している。安倍首相と警察・検察の意図は、治安対策にこの法律を用いることなのではないか。安保法制の審議中に、安倍首相がその必要性を外国で有事の際に、邦人を救い出すためと説明していた。だが、実際は内戦状態にある南スーダンへの自衛隊派遣、駆けつけ警護という名の内戦への参画であった。また、米軍との統一行動にも結び付けようとしている。安保法制の国民への説明は、ほとんど詐欺同然であった。それと同じことが、このテロ等組織犯罪対策法の説明でも行われている。

戦前、治安維持法により、国民がどれだけの災禍に見舞われたか、先に述べたキリスト教独立学園高校のお二人の経験から我々は学ぶべきだ。そして、沖縄でも同じようなことが進行している。次は我々がターゲットにされる可能性がある。このテロ等組織犯罪準備罪という新たな犯罪名は、オリンピックのための一時的なものではなく、今後我々の思想信条の自由を永続的に縛り上げる根拠になる。

(以上、敬称省略)

高齢者交通事故が増えている? 

昨今、高齢者の交通事故加害者報道が目立つ。高齢者の交通事故が増えているような印象を、マスコミは我々に与えている。それは真実なのか、その背後に何があるのかを警察関係者へのインタビューで明らかにしようとした記事。こちら。

まず、各年齢層の母集団を、「一般人口」にしているところが問題。「実際に運転している人々」を母集団にすべきだろう。これでは、運転者が少ないはずの高齢者に関して、交通事故加害者が少なく見えるバイアスがかかる。

だが、もともときわめて少ない80歳以上の年齢層を除いて、各年齢層で、年次推移として、交通事故を起こしている人は減ってきていることは言える。警察庁の元のデータにあたっても、そのような印象を受ける。

高齢者の認知症による交通事故は確かに今後増える可能性がある。再免許の際の認知症スクリーニングで、それはかなり防げるのではないか。もっとも、それが警察の利権に結びつく可能性があるわけだが・・・。

車の国内販売台数は、1990年800万台弱をピークとして、ほぼ右肩下がりに減ってきており、2015年には500万台を割った。自動車メーカーとしては、新規購入を促す方策が欲しいところだろう。安全ブレーキやら、自動運転の類だ。また、人口減少・自動車所有者減に伴い自動車運転者数が減り続けることは、自動車メーカーのみならず、運転免許に関わる利権に与る警察にとっても困った問題なのだろう。高齢者運転教習を厳格化し、そこに生まれる利権を警察は望んでいるのかもしれない。

この記事のインタビューは、匿名であり、相手が本当に警察関係者なのかどうか分からない。が、高齢者交通事故を強調して報道するように警察関係者がマスコミに働きかけている可能性は十分にある。機能を改良しより安全になった車が市場にでるのは、結構なことなのだが、そうした車の販促や、警察の利権漁りのために、高齢者の事故が増えているという印象を世間に意図的に与えているとすると、大きな問題だ。

共謀罪は、息のできない監視社会をもたらす 

新たに制定されようとしている共謀罪の怖さを、分かりやすく解説している記事。海渡雄一弁護士は、PLL訴訟で原告団の実務を担当された方だったのではないか。

共謀罪がどのような場合に適用されるのか、共謀罪に該当する犯罪は刑法になかったのか、これまで三回共謀罪が法律化されようとしたが、その内容はどうだったのか、戦前の治安維持法との共通点は何か、我々はよく知る必要がある。治安維持法制定過程、そして対象拡大の過程が、この共謀罪法が我々にどうかかわるかを明確に示している。

最近、対象犯罪の数を減らすことで、同法案を通すことを政府は考えているらしい。それは、大きな欺瞞だ。この法律は、テロに対処するためのものではなく、市民社会を監視し、微罪で取り締まるためのものだ。対象犯罪が組織犯罪だけではなく、詐欺、窃盗等にまで拡大された通信傍受法と、この法律を用いれば、市民社会での自由な発言、発想までもが処罰の対象になる。我々の内面まで、警察が監視することになる。

政府の言う「オリンピックのため」という理由づけも、嘘だ。この法案がなくても、テロ対策はとれる。東日本大震災を教訓として、非常事態条項を憲法に加える、または改憲して同条項を加えるというロジックと同じだ。

この法案に関心がないという方も、国会に法案提出される前に、ぜひその内容をチェックしてもらいたい。この法案の意味を自分で考えてもらいたい。

次の世代に、息苦しい監視社会を残すのかどうか、が問われている。必読だ。神奈川新聞の記事から、こちら

日弁連は共謀罪創設に反対する 

共謀罪創設に反対する日弁連のパンフレット。ぜひご一読頂きたい。こちら

この法律は、実質的に治安維持法の再来だ。このパンフをぜひネットで拡散して頂きたい。