国際的軍産複合体が、東アジアを有望な市場として捉えている・・・ 

先日、安倍政権が米国から100数十億円相当の空対空ミサイルを購入することに決めたと報じられた。今後、ミサイル防衛、およびミサイル他の軍備を米国等の軍産業複合体から購入することになるのだろう。それが、国家財政をさらに圧迫することになる。そして、東アジアにさらなる緊張をもたらすことになる。

雑誌「世界」8月号で、谷口長世氏が、「北朝鮮核緊張のまぼろし(下)」と題する論考を発表した。その論考の重要な点を抜粋する。

彼によると、東アジア地域の軍事市場の伸びに目覚ましいものがあるとのことだ。今年ストックホルム国際平和研究所が公表した「世界の軍事費(2016年)の傾向によると、軍事費推計値は以下のようになっている。

        2016年の数値  前年比増加率  2011年からの増加率 

世界全体  1兆6860億ドル   0.4%      以降横ばい

アジア・オセアニア圏 4500億ドル 4.6%     64%

東アジア    3080億ドル               74%

中国の軍事費が、東アジア全体の48%と高い。今後、朝鮮半島、東シナ海、南シナ海の緊張が高まるにつれ、軍事費の増加が見込まれる。

この文脈で観てゆくと、朝鮮半島の緊張が、作られたものであることが見えてくる。

1970年代以降、米国・オランダさらに国際社会全体が、パキスタン等を介する「核の闇市場」で世界各国から北朝鮮に技術・部品・特殊素材が不正輸出されていたことを黙認していた。それが、国際的な軍事産業複合体の利益をもたらしたからだ。東アジアの軍事的緊張は、同複合体、関係諸国に莫大な経済的利益をもたらした。(以前から私が強調していた、北朝鮮体制の転覆を意図した、米韓合同軍事演習を1970年代以降北朝鮮近傍で実施してきたことも、この人為的な緊張を増大させる方策の一環だったのだろう。)

緊張増大に伴い、同複合体、西側諸国は、この地域の諸国に、イージスシステム・THAAD等のミサイル防衛網、さらに通常兵器を売りつけてきた。これにより、西側諸国・ロシア・中国を含めた世界的な軍事産業複合体が、さらなる利益を得ることになる。

この軍事産業複合体は、国境を越えた国際的な組織になっており、特定の国家がコントロールできない。

1967年、NATOの基本ドクトリンが出された。「抑止と対話」である。当時、冷戦体制が緊張を増しており、ベルギーのハルメル外相が主張した、このドクトリンをNATOは採択した。その骨子は、ハルメルによると、当時のソ連に対して軍事的な圧力による「抑止」政策をとる米国に対し、対話を進めることを促したものだった。その後、このドクトリンは、各国の防衛政策の基本となってきた。だが、北朝鮮問題に対して、(現在の米国のトランプ政権と、それに隷従する)安倍政権は、もっぱら軍事的な圧力を北朝鮮にかけることだけを行っている。

1994年の米朝合意に基づき合意したKEDOを廃止し、北朝鮮を悪の枢軸の一つと数えて、敵対政策を続けてきたのが米国である。我が国の安倍政権は、それに諾々と追随する。それは、東アジアの緊張によって巨額の利益を得る軍事産業複合体が背後で関係各国政府を動かしている可能性が高い。

ここからはブログ主の見解・・・現在の国際関係に戻ると、米国は最近ユネスコからの脱退を行った。以前にも脱退したことがあり、その直後に米国は、アフガン、イラク等で戦争を開始した。北朝鮮周囲でも軍事的圧力を加え続け、さらにわが国や韓国に軍備の輸出を拡大させている。トランプ政権内部には、軍事産業複合体の関係者が多数いる。一方、北朝鮮との外交交渉を担当する行政官が少ない。米国が北朝鮮で有事を引き起こす可能性がある。北朝鮮有事がどれほどの人的物的被害をもたらすかを、トランプ政権は、考慮しない、または二の次にする。それに隷従する安倍政権の方針も同じだ。すでに自衛隊が米軍の後方支援を行い、米軍と共同作戦を取っている。自衛隊は、有事の際には、米軍指揮下に入る。わが国は、戦争当事国となる。

今回の選挙では、こうしたきわめてリスキーな外交・安全保障政策で良いのかどうかが問われている。


  

第三次世界大戦の恐れ 米国共和党外交委員長 

米国共和党上院外交委員長、これが、普通の知性を持つ政治家の判断だろう。

東アジアで戦乱が起きると、我が国は壊滅的な被害を受ける。我が国の政治を担う人々は、どう考えているのか?

今回の総選挙で、米軍の北朝鮮への軍事行動を支持する候補者。自民党は39%。維新の会に至っては78%。

そして、安倍総理大臣は、トランプ大統領の軍事行動の方針に隷従している。

この連中は、国民が血を流すのを観たくてしようがないようだ。

自衛隊の隊員構成は、極端な逆三角形になっている。一番下の士の位の隊員が少ない。今後、自公政権が続くと、軍拡が進み、この自衛隊員の歪な構成を補正するために徴兵制、ないし実質徴兵制に近い制度が導入される可能性が高い。若い諸君は、否応なく、この制度に組み込まれる。

以下、引用~~~

米、第3次大戦へ向かう恐れ=与党の上院外交委員長が警鐘
10/10(火) 14:21配信 時事通信

 【ワシントン時事】米与党・共和党のコーカー上院外交委員長は9日付のニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたインタビューで、トランプ大統領の他国に対する威圧的態度によって、米国が「第3次世界大戦への道」を歩みかねないと警鐘を鳴らした。

 北朝鮮の核・ミサイル問題や、イラン核合意をめぐる政権の強圧的姿勢を念頭に置いているとみられる。

 コーカー氏はトランプ氏について「(かつて出演していたテレビの)リアリティー番組か何かのように振る舞っている」とも述べ、政権運営の手法に疑問を呈した。

 トランプ氏はたびたび共和党指導部との間で摩擦を起こしているが、有力議員がここまで明確に批判するのは異例。上院(定数100)で同党の議席は過半数をわずかに上回る52で、議会との不協和音は税制改革など今後の重要案件の審議に影響を及ぼす可能性もある。 

南スーダン自衛隊派遣は一体何だったのか? 

南スーダンから自衛隊が撤収することになってから、南スーダンの情報は殆ど入ってこない。

同地では、内戦が続き、アムネスティの報告では、毎日数千人規模で隣国への難民が生じているらしい。

わが国政府は、自衛隊に海外派遣の実績を作らせることだけを目的にして南スーダン派遣を行った。その後は、何もフォローしているように見えない。

南スーダンへの武器輸出を禁止する国連決議には、わが国政府は、棄権という形の反対の意思表示をしている。

安倍政権の外交政策が上手くいっていたという声も時に聞くが、これが安倍政権外交の実態だ。

以下、引用~~~

南スーダン戦闘で病院次々撤収=着の身着のまま患者脱出-日赤派遣の朝倉看護師語る

2017年09月30日 17時16分 時事通信

南スーダン戦闘で病院次々撤収=着の身着のまま患者脱出-日赤派遣の朝倉看護師語る

離散した家族と再会するため赤十字国際委員会(ICRC)の航空機で避難民キャンプ近くに着いた南スーダン北部コドック出身の少年=6月5日、北部アブロク(AFP=時事)

 内戦下の南スーダンで、赤十字国際委員会(ICRC)が支援する病院が次々撤収に追い込まれている。昨年に続き現地入りした武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)の朝倉裕貴看護師が、去年働いた病院が今はない。「仲間がどうなっているのか全然分からない」。今年の派遣では、戦闘でまた別の病院が撤収に追い込まれ、着の身着のままで脱出してきた患者を受け入れる役割を担った。

 ◇髪乱れ服泥だらけ

 9月7日の帰国後、東京都内で語った。朝倉さんの南スーダン入りは5月。4カ月間、首都ジュバを拠点に国内各地を飛び回り医療支援を行った。昨年も半年間、南スーダンに滞在し、7月にはジュバで戦闘に遭遇。隣国ウガンダに2週間避難し、戻った南スーダンでさらに2カ月間勤務した先が北部コドックの病院だった。ここは今年4月、戦闘激化に伴い撤収に追い込まれている。

 コドックでの戦線が徐々に南下し、7月には南方のマイウットに達した。マイウットにもICRCが支援する病院があり「自力で動けない患者20数名を緊急避難させる」と連絡を受けた朝倉さんは、避難先に指定された中部オールドファンガクへジュバからヘリコプターで真っ先に飛んだ。国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が設営した病院の敷地内に間借りし、テントを運び込んで受け入れの準備をしていた。

 しかし、来ない。ICRCの航空機は、政府軍、反政府勢力双方と交渉し、安全の保証を取り付けて初めて飛ぶ。マイウットを離陸した輸送機はこの了承を得られず、患者を乗せたまま一時エチオピアに退避せざるを得なかった。戦火と雨期の豪雨をくぐり抜け、ようやく朝倉さんが待つ避難先にたどり着いた仲間の医療団や患者たちは「髪は乱れ、服は泥だらけ、靴のひもも切れ、見ただけで壮絶さが伝わる姿」だった。

 ◇「着いた」「無事か」

 南スーダンは「国土の6割以上で戦闘が継続中」だ。朝倉さんはジュバで看護師養成などを担う一方、ヘリや小型機で国内各地へ向かい、患者の搬送をはじめ緊急対応に追われた。「データ上は今年の初めの半年間だけで、昨年1年間の搬送件数を上回っていて、確かに私自身、去年より飛んだ」と状況の悪化を実感した。

 拠点としたジュバは「必ず2人以上で行動する」と決まりを守れば外出もできた。しかし「移動は車。無線で本部と『今から出る』『運転手は誰』とやりとりし、到着後も『着いた』『無事か』と連絡を取る」という外出だ。

 一方で、昨年からの変化にも気付いた。患者の搬送や病室の清掃、手術器具の管理を支援するボランティアたちは「1回1回メンバーが代わるごとに教えなくても、自分たちで申し送りできるようになっていた」。戦闘が続く中でも若い世代は成長する。「どちらかと言えばICRCに依存した印象が昨年はあったが、今年は自分たちが主になって動き、自立していた」と感じられたのは明るい収穫だった。 

武装難民殺害という麻生副総理のオプション 

麻生副総理が、朝鮮半島有事の際に、武装難民が日本にやってくる、彼らを射殺するのもオプションの一つという意味の発言をして物議を醸している。

まず、トランプと金正恩の口喧嘩がだんだんエスカレートしており、安倍首相が、トランプにべったり寄り添って勇ましい発言を繰り返していることが問題だ。正面切っての米朝間での開戦はまずありえない。が、偶発的な事故により武力紛争化する可能性は,
小さいがある。それが、全面戦争に拡大するリスクもある。それを減らすことが、国家の安全保障だと思うが、安倍首相は逆の行動を取り続けている。

日米安保ガイドライン改定に基づき、自衛隊が米軍と共同作戦行動を取っていることから、朝鮮半島有事の際に、我が国が戦争当事国になることを、彼は考えているのだろうか。日本海上で、米軍イージス艦へ、海上自衛隊が燃料補給を行っている。米朝軍事衝突となれば、米軍基地のある諸都市、沖縄は間違いなく攻撃される。また、政府は何も言わないが、原発は一体どうするのか。稼働中の大飯原発等は、第一に攻撃される。原発への攻撃による被害は、たとえ通常兵器であったとしても、想像を絶する。こうした想定されるシナリオに対して、対処を考えているようには思えない。または、そうした状況になるとは思っていない、平和ボケなのかもしれない。

さらに、米朝間の戦争になれば、北朝鮮が負けるのは必至。すると、残存する軍部、軍備、さらに汚い商売の利権等を巡って、内戦状態になる可能性がある。そして、難民の流出。米国が関与したアフガン、イラクの「戦争後」の惨状を見るべきだ。朝鮮有事では宗教対立はないかもしれないが、ロシア・中国がからむ大国の覇権争いは確実に起きる。その混乱をどうやって防ぐのか、何も安倍政権は青写真を持っていない。米国も同様だ。

武装難民という混乱の一現象に関して、対処が難しくなる可能性が高い。南京虐殺に際して、日本軍は、市民のなかに便衣兵が隠れているとして、市民を虐殺した。また、在日朝鮮人への差別が、そうした難民問題と絡んで、国内でも虐殺行為が起きる可能性がある。武装難民が生じるような事態を何としても避けなければならない、ということだ。

「戦後」の混乱にどう対処するのか、何も考えていないことを自ら明らかにしたのが、麻生副総理の暴言の意味だろう。それにしても、射殺か・・・政治家として終わっている。彼のナチス礼賛は、口だけでなく、本心なのかもしれない。

追伸;
麻生発言があってすぐに、ダミーアカウントによる「火消し」が始まった由。こちら。政権与党は、手抜かりなく、ネット・マスコミにサポーター網を築いている模様だ。それで世論を誘導できると思い込んでいる。

トランプが拉致被害者を救う? 

トランプ大統領が、国連演説で、拉致された横田めぐみさんのことを言及したとして、好意的に受け止める発言がSNSで目立つ。たしかに、拉致問題を世界に広めたという意味はあるかもしれない。

だが、あの発言にどれほどの実質的な意味があるのだろうか。現在、米国政府には政府任用の北朝鮮担当官僚が「一人も」いない。北朝鮮との交渉ルートが皆無のはずだ。むしろ、トランプ大統領は、北朝鮮に軍事圧力をかけ続け、金正恩とともに、瀬戸際外交を進めている。軍事行動に出る可能性は極めて低いと思われるが、だが、不用意な衝突がおきる危険は高まっている。軍事圧力を高めることは、北朝鮮を硬化させる。1970年代から、米韓軍事演習で北朝鮮に軍事圧力をかけ続けてきた結果が、現在の北朝鮮の核武装・ICBM配備につながっている。これ以上の軍事圧力は問題を解決しないばかりか、偶発的な衝突の可能性をさらに高めている。そして、緊張状態が高まる状況では、拉致被害者の解放は遠ざかるばかりだ。

安倍政権は、北朝鮮との交渉ルートの皆無なトランプ政権にべったりで、米軍との共同作戦を自衛隊にとらせている。安倍首相は、拉致被害者のことを政治的に利用してきたと言われている。拉致被害者の救出をまじめに考えるならば、軍事的圧力を加えるばかりのトランプ政権にべったりになるはずがない。

こうやって軍事的な危機が演出される状況では、勇ましいことを述べる政治家に人気が集まる。だが、それはもっとも危険なことだ。トランプ大統領を持ち上げるとは、知性のかけらもない所業だ。

北朝鮮問題、唯一の解決方法 

これしか解決の道はなさそうに思える。

米国と北朝鮮と戦争状態になれば、数百万人規模の犠牲者が出る。集団的自衛権を行使するとするわが国にも甚大な人的・物的被害が生じる。北朝鮮の首脳の抹殺、軍事基地だけへの攻撃で済むことではない。

北朝鮮は潰されるだろうが、その後に北朝鮮国民、軍人、非合法ビジネス、難民そして北朝鮮の治安維持の問題が残る。もし米国が、先制攻撃をかけるならば、中国は北朝鮮の側に立って参戦すると言っている。

これらのことを考えると、外交的な交渉に持ち込む以外に、現実的な解決方法はない。北朝鮮が交渉で約束したことを反故にしない保証、そして北朝鮮の体制をすぐに破壊するための米韓合同演習を凍結すること、そして北朝鮮の核軍備、ミサイル開発を止めること。これが唯一の解決だ。

田原総一郎氏のBLOGOSでの記事を引用~~~

北朝鮮のミサイル発射・核実験の背景にある、「報道されない事実」とは?

8月29日早朝、北朝鮮が中距離の弾道ミサイルを発射した。このミサイルが、北海道上空を通過し、太平洋に落下したのだ。

日本政府やメディアは「とんでもない挑発だ」と、この暴挙に対して抗議した。さらに9月3日には、北朝鮮は6回目の核実験をおこなっている。それに対して各国は、連係して北朝鮮を非難し、制裁を強めようという論調が高まった。だが、今回のミサイル発射と核実験には、報道されない事実があった。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、今年6月、アメリカのトランプ大統領と会談している。そこで、文大統領はトランプ大統領にある提案をしたのだ。それも、文大統領は再三再四、提案を繰り返したそうだ。

その提案とは、「韓国は、北朝鮮の核開発や発射実験を止めさせる。その代わり、米韓合同軍事演習を止める」というものだ。文大統領は、いわば北朝鮮とアメリカとの「仲立ち」をしたいと訴えたのだ。

ところが、トランプ大統領はこれを拒否した。8月21日、米韓合同軍事演習が強行された。そして29日に、北朝鮮はミサイルを発射したのだった。日本のメディアは、こうした背景を知ってか知らずか、北朝鮮を非難している。

実は、こうした申し出をアメリカが拒否したのは、韓国に対してだけではない。ほかの国々に対しても、同じ姿勢で通している。

なぜ、アメリカはこうも強硬なのか。それは、アメリカは北朝鮮に激怒しているからなのだ。2003年の6カ国協議で、北朝鮮は核開発をしないという取り決めをした。この6カ国とは、日本とアメリカ、中国、ロシア、韓国、そして北朝鮮だ。ところが、北朝鮮は、2006年、2009年と核実験を強行した。この北朝鮮の裏切りに、アメリカは激怒したのである。

ミサイル発射の翌日の8月30日、トランプ大統領はツイッターで、「対話は解決策ではない」と語った。では、いったいどうするのか。

ある情報筋によると、実はアメリカと北朝鮮は、水面下で交渉しているという。核開発か、ロケット発射か、いずれかを北朝鮮が止めれば、アメリカは対話に応じる、と。大変な情報だ。だが、北朝鮮は応じないだろう。

いま、各国首脳は困惑している。時間が経てば経つほど、「アメリカの武力行使」という危機が、リアリティを帯びてくるからだ。朝鮮半島有事となれば、また多くの命が失われる。それは、どの国も避けたいと思っている。もちろん、日本もそうだ。

米朝の水面下交渉に期待したい。だが、その一方で、いまある危機を回避するためにも、トランプ大統領に言いたい。韓国の「申し出」を受け入れることを、いま一度、考えるべきではないか、と。

北朝鮮問題をどのように解決に導くか(2) 

北朝鮮に先制攻撃をしかける、ないし北朝鮮を徹底して追い詰めて戦争を起こさせる、というハードランディングを志向する人々がいる。トランプ大統領は今のところ口だけかもしれないが、この方向で対処しようとしている。それに、ピッタリくっついているのが安倍首相だ。昨日の北朝鮮核実験のNHKを用いたラジオ報道を聞いていて、寒々したものを感じた。核実験であることは明白なのに、それが確定していないかのように延々と同じ危機を煽る報道を続けていた。危機を煽ることは、軍事行動を肯定する、促すことにつながる。ネットを見ても、北朝鮮を叩けという論調の発言が多い。

だが、そのハードランディング路線で、本当に大丈夫なのか。米国が北朝鮮に先制攻撃をしかけたら、中国は北朝鮮とともに戦争をすると明言している。下手をすると、全面戦争は、世界大戦に結びつく。そこまで行かなくても、東アジアでの全面戦争が起きる可能性が高い。米軍基地のあるわが国は、韓国とともに、北朝鮮にとって攻撃の対象になる。集団的自衛権行使で、自衛隊が米軍と共同作戦を行えば、確実に戦争当事者になる。

もともとこの北朝鮮問題は、朝鮮戦争から継続して、北朝鮮に軍事的な圧力を加え続ける米国と、軍拡にひた走ってきた北朝鮮との間の問題だ。米国が、北朝鮮と外交的に解決する以外に方法はない。繰り返すが、米韓合同軍事演習で、北朝鮮の崩壊を狙った軍事演習を繰り返すことを一時的に棚上げする、北朝鮮を核保有国として処遇するという前提から、現在の緊張状態を外交的に改善することしか、解決の方法はない。

下記の論考で、内田樹氏が述べているように、北朝鮮の現在の統治体制が崩壊するに際して、様々な問題が起こる。軍人の処遇、北朝鮮が手を染めてきたダーティビジネス利権をめぐる内戦の危険、多く生じるであろう難民の問題等々。内田氏の述べる一国二制度が可能かどうか、分からないが、上記の問題を一つ一つ国際的に考えてゆかねばならに。ソフトランディングができたとしても、解決はきわめて難しい過程を経なければならない。

トランプ大統領と一緒になって、軍事的圧力をかけることだけに熱心な安倍首相は、一体何を考えているのだろうか。

9月4日付内田樹の研究室より引用~~~ 

米朝戦争のあと

7月に、ある雑誌のインタビューで、米空母の半島接近で、北朝鮮とアメリカの間で戦端が開かれる可能性はあるでしょうか?という質問が出ました。

戦争が始まる可能性はあるのか。あるとしたら、どういうかたちになるのか。その後何が起こるのかについて、そのときこんなことを申し上げました。

米朝戦争ということになれば、アメリカはすぐにICBMを打ち込んで、北朝鮮は消滅することになると思います。
でも、北朝鮮が消滅する規模の核攻撃をしたら、韓国や中国やロシアにまで放射性物質が拡散する(日本にも、もちろん)。朝鮮半島や沿海州、中国東北部の一部が居住不能になるような場合、アメリカはその責任をとれるでしょうか。

空母にミサイルが当たったので、その報復に国を一つ消滅させましたというのは、いくらなんでも収支勘定が合いません。人口2400万人の国一つを消滅させたというようなことは、さすがに秦の始皇帝もナポレオンもやっていない。それほどの歴史的蛮行は世界が許さないでしょうし、アメリカ国内からもはげしい反発が出る。

北朝鮮の空母がハドソン川を遡航してきてマンハッタンにミサイルを撃ち込んだというならともかく、アメリカの空母が朝鮮半島沖で攻撃されたというのでは開戦の条件としてはあまりにも分が悪い。

そうなると、あとは戦争をすると言っても、ピンポイントで核施設だけ空爆で破壊し、国民生活には被害が出ないようにするという手立てしかない。でも、仮にそれがうまく行って、ライフラインや行政機構や病院・学校などが無傷で残ったとしても、その国をアメリカがどうやって統治するつもりなのか。

アフガニスタンでもリビアでもイラクでも、アメリカは独裁政権を倒して民主的な政権をつくるというプランを戦後は一度も成功させたことがありません。成功したのは72年前の日本だけです。でも、それが可能だったのはルース・ベネディクトの『菊と刀』に代表されるような精密な日本文化・日本人の心性研究の蓄積が占領に先立って存在していたからです。同じように、もし北朝鮮の「金王朝」を倒して、民主的な政権を立てようと思うなら、それを支えるだけの「北朝鮮研究」の蓄積が必要です。でも、アメリカもどこの国もそんなものは持っていない。戦争であれクーデタであれ住民暴動であれ、北朝鮮政権が統制力を失った後の混乱をどうやって収めるかについてのプランなんて、中国もロシアもアメリカも韓国も誰も持っていない。

それについて一番真剣に考えているのは韓国だと思います。でも、その韓国にしても「北伐」というようなハードなプランは考えていないはずです。とりあえずは脱北者を受け入れ続け、その数を年間数万、数十万という規模にまで増やす。そして、もし何らかの理由で北朝鮮のハードパワーが劣化したら、韓国内で民主制国家経営のノウハウを学んだ脱北者たちを北朝鮮に戻して、彼らに新しい政体を立ち上げさせる。韓国政府が北朝鮮に直接とって代わることはできない。混乱を収めようと思ったら、「北朝鮮人による北朝鮮支配」というかたちをとる他ない。そのことは、韓国政府にはわかっているはずです。

もっとソフトな解決法があります。一国二制度による南北統一です。

これは1980年に、当時の北朝鮮の金日成主席が韓国の全斗煥大統領に向けて提案したものです。統一国家の国名は「高麗民主連邦共和国」。南北政府が二制度のまま連邦を形成するという案です。「在韓米軍の撤収」という韓国政府にとって簡単には呑めない条件がついていたせいで実現しませんでしたが、懲りずに北朝鮮は2000年にも金正日が南北首脳会談の席で、金大中大統領に対して、再び連邦制の検討を提案しています。

南北統一については、北の方からまず「ボールを投げている」という歴史的事実は見落としてはいけないと思います。条件次第では、南北統一、一国二制度の方が「自分たちにとって安定的な利益がもたらされる」という算盤勘定ができないと、こんな提案は出て来ません。

今の金正恩にとっては、「王朝」の安泰が約束され、「王国」の中で自分たち一族が末永く愉快に暮らせる保証があるなら、一国二制度は悪い話じゃありません。連邦制になれば、核ミサイルをカードに使った瀬戸際外交を永遠に続けるストレスからは解放されるし、飢えた国民が自暴自棄になって暴動を起こしたり、政治的野心を持った側近がクーデタを起こすといったリスクも軽減される。 
ですから、北朝鮮問題を考えるときに、北朝鮮と戦争をやって勝つか負けるかというようなレベルの話をしても仕方がないのです。考えなければいけないのは、三代60年にわたってファナティックな専制君主が支配してきた2400万人の「王国」をどうやって現代の国際社会にソフトランディングさせるかという統治の問題です。

一番困るのは、金王朝が瓦解した後に無秩序状態が発生することです。難民が隣国にどっと流れ込む。もちろん日本にも場合によっては数十万単位で漂着するでしょう。それについての備えが今の政府にどれだけあるのか、僕は知りません。でも、与党政治家たちの排外主義的は発言を徴する限り、難民問題について真剣に考えているようには見えません。

でも、リスクは難民問題だけではありません。もっと暴力的なリスクがあります。北には大量の兵器があり、麻薬があり、偽ドル紙幣がある。国家事業として「ダーティ・ビジネス」を展開してきたんですから。これらは世界中どこでも高値で通用する商品です。中央政府がコントロールを失ったら、当然さまざまな国内勢力がこの巨大利権の奪い合いを始める。近代兵器で武装した「軍閥」が北朝鮮国内各地に割拠して、中国・ロシア・アメリカをバックにした「代理戦争」を始めるというのが、最悪のシナリオです。

もう一つのリスクは、ソ連崩壊後のロシア・マフィアのように、北朝鮮の「ダーティ・ビジネス」を担当していたテクノクラートたちがそのノウハウを携えて、海外で商売を始めることです。北朝鮮の「ダーディ・ビジネス」担当者はこれまでも世界各国の諜報機関や「裏社会」とつながりを持ってきました。今までは「国営」ビジネスでしたけれど、王朝が滅びてしまうと、これが私企業になる。兵器や麻薬や偽札作りやスナイパーや拷問の専門家などが職を求めて半島を出て、世界各地で新たな「反社会勢力」を形成することになる。北朝鮮が瓦解した場合の最初の問題は難民です。でも、難民は寝る所を提供し、飯が食えれば、とりあえずは落ち着かせることができる。怖いのは軍人です。

北朝鮮は保有する兵力は想定ですが、陸軍102万人、海軍6万人、空軍11万。他に予備役が470万人、労農赤衛隊350万人、保安部隊が19万人。2400万人の国民のうち約1000万人が兵器が使える人間、人殺しの訓練をしてきた人間です。

イラクでは、サダム・フセインに忠誠を誓った共和国防衛隊の軍人たちをアメリカが排除したために、彼らはその後ISに入って、その主力を形成しました。共和国防衛隊は7万人。朝鮮人民軍は1000万、その中には数万の特殊部隊員がふくまれます。職を失った軍人たちをどう処遇するのか。彼らが絶望的になって、反社会勢力やテロリスト集団を形成しないように関係諸国はどういう「就労支援」を整備したらいいのか。それはもう日本一国でどうこうできる話ではありません。

リビアやイラクがそうでしたけれど、どんなろくでもない独裁者でも、国内を統治できているだけ、無秩序よりは「まだまし」と考えるべきなのかも知れません。

今のところ国際社会はそういう考えのようです。とりあえずは南北が一国二制度へじりじりと向かってゆくプロセスをこまめに支援するというのが「北朝鮮というリスク」を軽減するとりあえずは一番現実的な解ではないかと僕も思います。

内田樹の研究室

日本の覚醒のために/晶文社 『最終講義』に続く、講演集その二です。 立憲デモクラシーの会、伊丹十三賞受賞記念講演、立命館大学土曜講座、SEALDs KANSAI の集会でのスピーチなど、さまざまな場所でした講演を収録しています。講演とはいえ、原型をとどめぬほどに加筆しておりますので、「あのとき聞いたよ」という人も「こんな話聞いてないよ」と驚かれることが多々あると思います。ご容赦ください。
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北朝鮮問題をどのように解決に導くか(1) 

上村康太氏 元自衛官・防衛省官僚 が、北朝鮮の核実験と弾道ミサイル発射について、日経ビジネスオンラインに寄稿している。こちら。 核実験と弾道ミサイル発射の意味を述べたあとで、彼は北朝鮮への今後の対応方法を三つ挙げている。

以下、引用と私のコメント(青色フォント)~~~

 1つは、本格的な戦争によって問題を解決する選択肢だ。朝鮮半島から在韓の外国人を逐次避難させ、1991年の湾岸戦争時のように、約半年ほどで北東アジア地域に戦力を増強する。準備が整ってから北朝鮮に対して先制攻撃に踏み切り、一気に北進する。軍事的な制圧後、現在の北朝鮮の体制を一掃し、新たな政権を樹立するシナリオだ。米軍を中心とする圧倒的な兵力による先制攻撃は、朝鮮半島の戦力構造を念頭に置いた場合、戦いに勝利する可能性が最も高い。

戦いに勝利するかもしれないが、百万人規模の犠牲者の上に獲得される「勝利」だ。それは、勝利ではない。北朝鮮へ米国が先制攻撃をしかける場合、中国は北朝鮮に組して参戦する可能性もある。いずれにせよ、全面戦争を想定しておく必要がある。移動式ミサイル発射装置や、潜水艦からのミサイル攻撃能力を北朝鮮が持つことを考えると、北朝鮮の反撃が起きる前に、北朝鮮を殲滅させるということは不可能だ。

 2つ目は、力と圧力を背景とした外交により、核・ミサイル開発の放棄を要求する。有効な交渉のためには、北朝鮮が真剣に対応するための「脅し」が必要となる。経済制裁に加え、第一の選択肢の場合と同様、北東アジア地域への戦力増強を開始して先制攻撃の態勢を確保しつつ、力を背景とした「話し合い」により事態を進展させる。この場合、当然、開戦のリスクも背負うことにもなる。

北朝鮮に対抗する軍備はある程度必要だろうが、さらに軍事的圧力を加えて、力づくで話し合いのテーブルにつかせ、彼らの軍拡を停めさせることは、不可能である。なぜなら、過去40年間の米韓軍事共同訓練がなしえなかった、むしろ軍拡を進めさせたからだ。米韓軍事演習による北朝鮮への軍事圧力が、北朝鮮を軍拡に進ませている一つの重要な要因であることは確実。

 そして3つ目は、双方の戦略的妥協だ。現状を追認する形で北朝鮮による核保有の現状を認め、北朝鮮からも妥協を引き出すことを目指しつつ、当面の開戦リスクを下げる。ただし、日本を含む近隣諸国は、その後も彼らからの軍事的な影響力を受けることとなり、北朝鮮という核兵器保有国の存在によって一層の不安や恐れを抱え込み続けることとなる。

北朝鮮が核軍備を保有することは、金政権の暴走、核兵器のテロリストへの流出等、大きなリスクだ。ただし、彼らが核兵器を持つ現実から出発しないと、ここまで危機が進んでしまった以上、問題解決への目途が立たない。ソフトランディングの道を探らなければならない。

~~~

国際社会は、ソフトランディングを探る以外に方策はないと考えているようだ。下記の独メルケル首相が、その典型だ。

NHK NEWS WEBより引用~~~

独メルケル首相「平和的外交による解決しかありえない」
9月4日 7時32分

北朝鮮が6回目の核実験を行ったことについて、ドイツのメルケル首相は3日、連邦議会選挙を前にしたテレビ討論の中で、「北朝鮮の独裁者の攻撃的な行為に大きな懸念がある」と危機感を示しました。

そのうえで、「この問題をアメリカ大統領なしで解決することはできない。しかし、はっきり言っておくが平和的な外交による解決しかありえない」と述べ、軍事ではなく外交による解決の必要性を訴えました。

米韓合同軍事演習がもたらすもの 

下記の論説は、辺真一氏が、米国が北朝鮮の要求に応じない理由を説明している。

一方、米韓合同軍事演習は、北朝鮮金政権にしたら、目の前で自らの命脈を経とうとする軍事行動と映ることだろう。同軍事演習が、北朝鮮を核軍備に走らせ、瀬戸際外交に向かわせている面も否定できない。

金政権は、独裁の全体主義政権であり、肯定する積りはないが、しかし核兵器まで開発し、東アジアの緊張の源になっていることは事実。そこから、状況を改善する努力をする以外にない。もし、北朝鮮への先制攻撃を行うと、北朝鮮と米韓、さらには米軍基地のあるわが国との間で全面戦争になる。すると、百万人規模の犠牲者が出ることになる。

1974年来続く、米韓軍事演習が、東アジアの緊張を作り出した、ないし悪化させてきたことは事実だろう。それを一旦棚上げにして、北朝鮮を交渉のテーブルに引き出す以外に、問題解決の方法はない。

この東アジアの緊張で、利益を得ている、軍産複合体の影が常に見える。不必要に緊張を煽ることに加担すべきではない。

Yahooニュースより引用~~~

米国が米韓合同軍事演習を中止しない理由
辺真一 | ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
8/20(日) 20:42

 トランプ政権は北朝鮮が中止を求めていた米韓合同軍事演習を21日から実施する。

 中止すれば、グアムへのミサイル発射を自制するとの金正恩政権の要求を聞き入れなかった。合同軍事演習に踏み切っても、戦略爆撃機「B-1B」さえ、演習に投入しなければ、北朝鮮のミサイル発射はないと読んでいるのかもしれない。

 北朝鮮は2015年1月10日、米韓が「今年の合同軍事演習を臨時中止した場合、北朝鮮も核実験を臨時中止する用意がある」と米国に提案したことがあった。韓国に対しても当時、朴槿恵政権が求めていた南北対話の再開、引いては南北高位級会談(首脳会談)にも応じる用意があることを表明していた。まさに、米韓合同軍事演習を脅威に感じていることの表れでもある。

 結局、米国は「防御目的の軍事訓練と核実験の可能性を不当に関連付けるのは適切ではない」として、また韓国も「核実験は国連安全保障理事会決議で禁止されたもので、米韓演習と連動するものではない」と北朝鮮の提案を拒否した。韓国国防部に至っては「泥棒が一時泥棒をしないので玄関の扉を開けてもらいたいと言っているのと等しい」と全く相手にしなかった。

 米韓両国が核実験の中止を交換条件として提示されても合同演習を止めない理由は主に四つある。

 一つは、かつて一度中止したのにその後、裏切られた苦い経験があるからだ。

 今から25年前の1992年に北朝鮮との間で「バーター取引」をしたことがあった。米韓両国は1992年に恒例の米韓合同軍事演習(当時はチームスピリット)を実施することで合意していたが、1992年1月7日、北朝鮮がIAEA(国際原子力機構)との核査察協定に調印することを条件に14年間続いていた合同軍事演習の中止に踏み切った。

中止が発表されると同時に北朝鮮外務省はIEAEの査察受け入れを表明し、1月30日に査察協定に正式調印した。翌2月には南北初の総理会談で「和解・不可侵と交流協力合意書」と「非核化共同宣言」が発表された。

 しかし、北朝鮮が申告した内容とIAEAの査察結果に重大な差があることが判明し、IAEAは北朝鮮に対して特別査察の受け入れを迫り、北朝鮮がこれを拒否したことで1993年にチームスピリットが復活することとなった。

 チームスピリットのハイライトである野外機動訓練が3月9日に開始されや通常は「戦闘動員体制」に留めていた北朝鮮が1983年以来10年ぶりに「準戦時体制」を宣布。そして3月12日に北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言した。

 米韓合同軍事演習を中止しても、北朝鮮が核開発を止めなかった過去の経緯からして、北朝鮮との取引に応じるのは北朝鮮の時間稼ぎに利用されかねないとの危惧が米韓両国にはある。

 二つ目の理由は、合同軍事演習が北朝鮮の戦争遂行能力を削ぐことにあるからだ。

 米韓合同軍事演習は北朝鮮を降伏させるための「5015作戦」に従って実施されているが、この作戦は2002年にブッシュ政権下で作成された「5030作戦」も取り入れている。

 当時、ラムズウェルド国防長官を頭にペンタゴンが作成した「5030作戦」はずばり、北朝鮮を干し挙げるための作戦計画である。軍事衝突発生前に北朝鮮政権を転覆させる多様な低感度の作戦で、統帥権者である大統領の承認なしで遂行できる作戦である。

 例えば、「R-135」偵察機を北朝鮮の領海に近づけ、北朝鮮戦闘機のスクランブル発進を誘導させることで燃料を消費させるとか、戦略爆撃機「B-1B」や原子力空母、原子力潜水艦など戦略兵器を投入し、北朝鮮を緊張状態に置き、北朝鮮の戦争備蓄を消費させ、経済活動を麻痺させるという戦法が取り入れられている。制裁を掛けて、北朝鮮の金融システムを封鎖する作戦も含まれている。

 三つ目の理由は、北朝鮮が核とミサイル開発を止めないことにある。

 米韓合同軍事演習は米国が敗退したベトナム戦争直後の1976年に兄弟国・北ベトナムの勝利で勢いづく北朝鮮の脅威から韓国を守るためスタートした。当時の演習コードネイムは「チームスピリット」と命名されていた。

 北朝鮮の脅威が存在する限り、軍事境界線(38度線)が引かれている限り、米韓は米韓総合防衛条約に従い、同盟国の韓国の安全を保障するため合同軍事演習を続けることにしているが、北朝鮮の核開発疑惑が浮上した1990年からは北朝鮮の核脅威に対処するうえでも欠かせない訓練となっている。

 現在の演習が朝鮮半島有事の際に北朝鮮の大量破壊兵器(WMD)を破壊、無能力化することに主眼が置かれていることでもわかるように北朝鮮が核を放棄しない限りは、合同演習は継続されることになる。

「1994年は戦争一歩手前だった」―元韓国大統領秘書室長の証言)

 最後に、朝鮮半島(韓国)は米軍にとって格好の演習場となっていることだ。

 朝鮮半島は「アジアの火薬庫」と称されて久しい。駐韓米軍と韓国軍は東西248kmに及ぶ軍事境界線(DMZ)を挟んで120万の兵力を有する敵(北朝鮮軍)と対峙している。世界でも稀に見る緊張状態が続く地域では本番さながらの演習が可能だ。

 まして、韓国は親米国家である。また、保守、革新問わず、歴代大統領は親米である。米軍撤退の声も、基地反対の声も起きない。米軍にとって演習の立地条件としてはこれほど好条件に恵まれているのは他にない。

 国際的紛争の解決に向け在韓米軍を他の地域に投入する、あるいは紛争地域に派遣するうえでも韓国での演習は米軍にとって不可欠なのである。

北朝鮮問題 

「攻撃は最大の防御だ」というのは、現実の国際関係においては空論に過ぎない。先制攻撃をある国が考えると、それに敵対する国も先制攻撃を考慮する。または、攻撃を受けた段階で、それを凌駕する反撃を始める。それは、全面戦争を引き起こす。

小野寺防衛大臣が、「敵基地攻撃能力」の獲得を検討すると表明した。自衛隊に対地ミサイルの配備も始まる。下記の記事で安倍首相が述べたことは、多少ぼかした表現だが、敵基地攻撃を準備することを意味している。これは専守防衛路線からの大きな逸脱だ。

北朝鮮に先制攻撃をしかければ、反撃される。とくに、移動式ミサイル・潜水艦からのミサイルでの攻撃がわが国の主要都市、米軍基地、原発に対して行われることになる。犠牲者は数百万のオーダーになる。プエブロ事件の際に、ニクソン大統領は、北朝鮮への攻撃を考えたが、それによる同盟国への損害の大きさを考え取りやめた。クリントン大統領の時代にも、北朝鮮攻撃のオプションを検討したが、少なくとも80万人に上る犠牲者が出る可能性があったため取りやめた。

だが、トランプ大統領は違う。彼の行動は予測不可能なのだ。低空飛行を続ける政権の支持を浮揚させるために、北朝鮮への軍事行動をとる可能性は否定できない。ティラーソン国務長官のように、外交的に解決しようとする米国政府高官もおり、彼らが米国の外交・軍事を担っている。だが、やはり大統領であるトランプの予測不能な行動により、破滅的な戦争になる可能性は否定できない。トランプ大統領に連動しようとし、敵基地攻撃能力すなわち侵略に通じる軍備を準備する、安倍政権も結果責任を何も考えずに行動する可能性がある。

vox.comに掲載されたこの論考に、北朝鮮金正恩の国際関係での行動様式が述べられている。北朝鮮は、1953年の朝鮮戦争休戦から、このかたずっと、自国の存続だけを目指して行動してきた。金正恩の政治行動は、非情であり、理性を欠くように見える。が、通底しているのは、自国の体制を維持しようとする論理的な意思だ。過去40年間、米韓、そして最近はそこに日本が加わって、北朝鮮の体制転覆を狙う軍事訓練を北朝鮮近傍で繰り返してきた。その結果が、北朝鮮の軍拡であり、核軍備、ミサイル開発だ。軍事的圧力、ましてや軍事行動では、解決を得られない、ないし破滅的な損害を被る。北朝鮮からの外交的信号を読み取り、緊張緩和に向けて交渉を始める以外にない。

以下、引用~~~

2017年08月06日 12時58分 時事通信
安倍首相、敵基地攻撃「現実踏まえ検討」=公明代表は慎重姿勢

 安倍晋三首相は6日午前、広島市で記者会見し、弾道ミサイル発射などの前に敵基地を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有について、「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としながらも、「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中、国民の生命と財産を守るため何をすべきか、常に現実をしっかりと踏まえながらさまざまな検討を行っていくべきだ」と述べ、将来的な検討に含みを残した。

 敵基地攻撃能力の保有をめぐっては、小野寺五典防衛相が弾道ミサイル対処能力強化に関連して検討の意向を示している。首相は会見で「専守防衛の考え方はいささかも変更はなく、これからもそうだ」と強調した。

 公明党の山口那津男代表は6日、広島市で記者会見し、敵基地攻撃能力の保有について「冷静に考える必要がある。わが国は国際社会と連携して北朝鮮の非核化を目指そうという運動の中心にいる」と慎重な姿勢を示した。

 一方、首相は先の内閣改造に際して小野寺氏に検討を指示した防衛大綱の見直しについて、「南西地域の防衛強化や弾道ミサイル防衛の強化に加え、宇宙、サイバーといった新たな分野も検討課題になる」と指摘した。