脳動脈瘤の発症機序の一部が解明された 

蔵書類を整理していて、従妹のEOの記念誌が出てきた。彼女は、1980年代半ば、脳幹部に及ぶクモ膜下出血で亡くなった。

EOの発症直後、ご主人から電話があり、当時大学外に派遣されていたのだったが、大学の救急に運ぶように伝え、そこで意識がなく、救急のベッドに横たわる彼女にお目にかかったのだった。一時、心停止に陥ったが、救急医の尽力で心拍は回復した。だが、病棟に上がってから、肺水腫が現れ、徐々に脳波がフラット化し、最終的に九日後に昇天したのだった。まだ42歳の若さだった。

私が研修を始めたころ、なにくれとなく気をつかってくれて、家族一同本当にお世話になった方だった。私は医師として彼女の病状に関与することはなかったが、幸い大学の同級生のI氏が担当医になってくれた。彼がとてもよく対応してくれて、病状の説明も十分してくれた。分かる範囲でご家族に説明の補足をする程度のことしかしてあげられなかった・・・いや、主治医だったとしても、できることは本当に限られたことだったろう。あの闘病の九日間は、彼女の死をご家族が受け入れるために準備された時間だったのかもしれない。私にとって、親しい親族が亡くなるのを間近で見届けた最初の方だった。

それにしても、EOのように若い年齢で、激烈な経過で罹患した人を死に追いやるこの病気の残酷さは忘れられない。

クモ膜下出血の主要な原因である、脳動脈瘤の発症機序の解明が一歩進んだという記事が出ていた。

先天性の要因と、血流の問題、それにこのマクロファージの活性化による炎症機転の進展が絡むようだ。炎症が発症に絡むということは新たな知見だろう。マクロファージは、外来性の病原体に接するとTLR4といった受容体を介して、活性化され、様々なサイトカイン、ケモカインを放出、炎症反応を引き起こす。この動脈瘤発症機序では、マクロファージの活性化は何がトリガーになって起きるのだろうか。そこが知りたいところだ。動脈瘤の保存的な治療に結びつくとしたら、大きな朗報だ。

以下、引用~~~

「脳動脈りゅう」仕組み解明 治療薬開発に期待
2月8日 4時10分 NHK

脳の血管にこぶができ、破裂するとくも膜下出血を起こす「脳動脈りゅう」は、特定のたんぱく質が働くことで症状が進むと見られることを動物実験で突き止めたと京都大学のグループが発表しました。治療薬の開発につながるのではないかと期待されています。
脳動脈りゅうは、脳の血管が膨らんでこぶができ、大きくなって破裂すると、脳卒中の1つ、くも膜下出血を起こす病気で、患者は国内に数百万人いると見られています。

京都大学大学院医学研究科の成宮周特任教授と、青木友浩特定准教授などのグループは、脳動脈りゅうを起こしたマウスやラットを使い、病気の原因を詳しく調べました。

その結果、膨らんだ血管には「マクロファージ」と呼ばれる白血球の1種が集まり、この細胞の表面で、炎症を強める働きを持つ「EP2」というたんぱく質が作用していることがわかったということです。

このたんぱく質の働きを抑える薬をラットに投与したところ、血管の膨らみが半分以下に減ったということで、研究グループは、このたんぱく質が症状の進行を招いていると見ています。

青木特定准教授は「現在は手術以外に効果的な治療法がないが、このたんぱく質の働きを抑えることで治療できる飲み薬の開発を目指したい」と話しています。

同じ研究グループの研究者による総説のサマリー;

Acta Neurochir Suppl. 2015;120:13-5. doi: 10.1007/978-3-319-04981-6_2.
Molecular basis for intracranial aneurysm formation.
Fukuda M1, Aoki T.
Author information
Abstract
Intracranial aneurysm (IA) is a socially important disease both because it has a high prevalence and because of the severity of resultant subarachnoid hemorrhages after IA rupture. The major concern of current IA treatment is the lack medical therapies that are less invasive than surgical procedures for many patients. The current situation is mostly caused by a lack of knowledge regarding the regulating mechanisms of IA formation. Hemodynamic stress, especially high wall shear stress, loaded on arterial bifurcation sites is recognized as a trigger of IA formation from studies performed in the field of fluid dynamics. On the other hand, many studies using human specimens have also revealed the presence of active inflammatory responses, such as the infiltration of macrophages, in the pathogenesis of IA. Because of these findings, recent experimental studies, mainly using animal models of IA, have revealed some of the molecular mechanisms linking hemodynamic stress and long-lasting inflammation in IA walls. Currently, we propose that IA is a chronic inflammatory disease regulated by a positive feedback loop consisting of the cyclooxygenase (COX)-2 - prostaglandin (PG) E2 - prostaglandin E receptor 2 (EP2) - nuclear factor (NF)-κB signaling pathway triggered under hemodynamic stress and macrophage infiltration via NF-κB-mediated monocyte chemoattractant protein (MCP)-1 induction. These findings indicate future directions for the development of therapeutic drugs for IAs.

ウイルスのパンデミック 

14日夜、NHKで放映された「メガクライシス ウイルス大感染時代」という番組の後半だけを見た。気が付くのが遅れた。番組のサイトはこちら。18日の未明にも再放送がある由。

多様なウイルスが存在する・・・まだ、存在が分かっていないものもある・・・こと、地球温暖化に伴い、蚊等のvectorを介して広範な感染を起こしうること、遺伝子操作により蚊の寿命の短縮を図り蚊の数を減らす試みがなされていること、ワクチンの製造に、鶏卵を用いるのではなく、細胞株で製造する方法が開発されつつあること等がテーマだったようだ。一年に世界中の35億人(記憶があやふや・・・延べ数?)の人間が、世界を移動すること、多くのウイルスの潜伏期間よりも短い72時間あれば世界中に行けることが感染爆発の引き金になる可能性が指摘されていた。

実は、この番組について、facebookにも予告のpostがあった。それに対するコメントに「傑作な発言」が多くあった。曰く、どこかのだれかの陰謀で感染爆発が起きる等々の陰謀論。ネットでは、こうした荒唐無稽な発言が目立つ。ネットでは、受けを狙う発言、思い込みによる発言が多い。ネットの特性なのだろうか。政治経済分野でも、事実を事実として認めぬ、fake newsがあまりに多い。ネットは、人々の視野を広げてくれる面があるが、一方では、知らず知らずにそうした、事実に立脚しない記事に取り込まれていることが起こりうる。そうしたfake newsに接した場合、それに議論を挑んだりすることは多くの場合無用だ。John K3TNに指摘されたのだが、fake newsを流すサイトに発言することは、そのサイトを拡散することになる。それは汚染を広めることだ。同じく米国の友人が、Trumpの先日の記者会見に内容をfact checkしたサイトがあり、その50%は明らかな嘘、84%は少なくとも一部は嘘だと明らかにしたことを教えてくれた(これは、以前のポストでも記した)。BBCも、ネット情報のfact checkを開始すると最近報道されていた。今後、fact checkがあらゆるネット情報に行われるようになることだろう。factとideologyの境界は鮮明でないこともあるが、それにしても明らかなfake newsが大手をふるって出回っている。

もう一つ思ったのは、この番組では、ウイルスの多様性、伝染性、そして病原性に焦点が当てられていたが、感染を受ける側のヒトの多様性についての言及がなかったこと。ヒトには、免疫系が備わっており、体表から体内に、さらに即時の反応から長期間持続する免疫記憶という、防御機構がある。多様な病原体に対応するのに、免疫系の多様性がある。その多様性を規定する一つが、HLAの多様性だ。免疫反応の抗原提示に際して、抗原と一緒に免疫細胞に認識される。二種類のHLAがあり、classIはCD8Tcellの受容体に、抗原ペプタイドとともに認識され、classIIは、マクロファージを介した免疫応答等に関与する。そこで、特定の抗原に対する免疫応答が決定される。特定のalleleを持つ個体が、特定の病原体に免疫応答を行う一方、そうでない個体は免疫応答が生じない、または不十分にしか生じない。といったことだったような気がする。Parhamの記したThe Immune System(一人でこれだけの免疫の知識をまとめ上げる博学振りはすごい!)によると、classIは六つ、IIには五つのisotypeがあり、その各々にpolymorphicなalleleが存在する。その多様性こそが、人類の免疫上の多様性だ、ということだ、その多形性の起源は、どうも選択によるものらしい・・・だいぶ怪しい理解だが、母校の人類遺伝学教室でHLAのタイピングの仕事をしていたころ、日々更新されるこうした新たな知見について、こころときめかせたものだった。もう、そうした研究から置いてきぼりをくらって長い時間が経つが、またすこしずつ勉強してゆこう・・・という話は独り言で・・・この免疫応答の宿主側の多様性があるから、どのような病原体が流行しようとも、人類全体からみたときに、人類が絶滅するような事態にはなりにくいとはいえるだろう。ヒトが短期間に地球上を行き来することは、パンデミックの大きなリスクファクターであることには変わりはないのだが、人類絶滅の危機と言い立てるのは間違っている。

もう一つ、季節性インフルエンザに対して、抗インフルエンザ薬(NA阻害剤、商品名タミフル等)を無定見に多用するのは止めるべきだろう。必ず、同薬への抵抗性を持つウイルス株が出現する。そして、それが鳥インフルエンザと遺伝的に関係した場合、致命率の高い鳥インフルエンザと闘う手段がなくなってしまうことになる。抗インフルエンザ薬は、ハイリスクの患者にだけ用いるべきである。患者さんにも、それは理解してもらわねばならない。

新たなガン免疫療法 

私が学生時代には、21世紀には悪性新生物は克服されるだろうと語られていたような気がする。あの当時は、悪性新生物の本態がまだよくわかっていなかった時代だったための楽観論だったか。

悪性腫瘍の本態が、老化現象と関連し、遺伝子レベルの異常で発生するものと分かってかなり経つが、治療効果は年々上がっているとはいえ、根本的な治療法はまだ見出されていない。

古くから注目されてきた免疫療法も、治療法として死屍累々の有様だった。だが、この論文で述べられる抗PD1モノクローナル抗体は、免疫療法として光明を与えているようだ。

問題は、著効する症例で根治まで持ってゆけるのか、PDL1の変異が起きないか、それに対しても効果が期待できるのか、またこの製剤がきわめて高価だあること、か。特に、一年で3000万円以上といわれる薬価は、健康保険を破壊しかねない。薬価の再検討と、効果の見込める症例を見出すマーカーの検討が喫緊の課題だろう。

それにしても、効果の見られる症例の多い疾患で25%か・・・まだ、先は長い・・・。

以下、MRICより引用~~~

がんが免疫から逃れる新たなメカニズムの発見

京都大学腫瘍生物学
小川誠司

2016年6月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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がんは今や、国民の二人に一人が罹患する、大変身近な疾患となっています。診断技術や治療の進歩によって一部のがんでは著しい治療成績の向上が認められるものの、いまだにがんの多くが不治の病であることは、国民の3人に一人はがんで死亡するという数字にも表れています。とくに多くの進行がんでは、ほとんど有効な治療が見いだせていないのが現状ですが、最近、そうした進行がんに対して、「がん免疫」を活性化する薬剤が、しばしば顕著な治療効果を示すことがNEJM誌などに相次いで報告され、また我が国においても一般診療に導入され広く普及し始めたことから、がんの克服にむけて大きな期待が寄せられています。ニボルマブやペンブロリズマブなどに代表される、いわゆる「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる薬剤です。

生体には、本来、細胞ががん化した際に、これを排除する免疫のしくみ、いわゆる「がん免疫」が備わっていることが以前から知られており、この仕組みの破綻ががんの発症に大変重要な役割を担っていることが、最近の精力的な研究によって明らかにされつつあります。こうした研究によれば、がん細胞は、しばしば、「免疫チェックポイント」と呼ばれる分子を利用して、免疫システムの監視から巧妙に逃れていると考えられています。免疫細胞(具体的には細胞障害性T細胞)に発現するPD-1と、そのリガンドとして知られるPD-L1は、がん細胞の免疫からの回避に重要な役割を担う代表的な免疫チェックポイントで、PD-L1を発現するがん細胞が、PD-1との結合を介して、その殺傷にあずかる細胞障害性T細胞の機能を抑制することによって、免疫監視から逃れているというわけです。

ニボルマブやペンブロリズマブは、いずれも、PD-1を標的として開発されたヒト化抗体製剤ですが、これらの薬剤によるチェックポイント機能の阻害が、様々ながん種において(しばしば末期のがんに対してさえ)顕著な臨床効果を示すことは、PD-1/PD-L1を介したがん免疫からの回避が、がんの発症に大変重要な役割を担っていることを強く支持しています。しかし、こうしたがん免疫か
らの回避に際して、がん細胞が、いったいどのようにしてPD-L1を発現するのかについては、十分理解されていません。また、奏功率が概ね20%程度のとどまる一方、年間の治療費が3000万円以上にのぼるニボルマブを用いた治療については、医療経済への深刻な影響も懸念されることから、その治療効果を正確に予測し、効果の期待される症例に選択的に治療を行うためのバイオマーカーの開発が強く望まれています。

さて、今回紹介するのは、がん細胞がPD-L1を発現するメカニズムに関わる最近の研究成果です。私たちは、33種類の主要ながん種を含む1万例を超えるがん試料のゲノム解析データについて、スーパーコンピュータを用いた大規模な遺伝子解析を通じて、がん細胞が免疫監視を回避する新たなメカニズムの解明が明らかになりました。今回の研究における主要な発見は以下の点にまとめられます。すなわち、

(1)肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、腎がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、頭頸部がん、悪性黒色腫、悪性リンパ腫など、主要ながん種において、PD-L1遺伝子の異常が生ずる結果、その発現が著しく上昇している例がみとめられること、
(2)特に、西南日本を中心に多く認められる 成人T細胞白血病では、25%という高い頻度でこのようなゲノムの異常が生じていること、
(3)異常は、いずれも、PD-L1遺伝子の発現調節に重要な役割を担っている、「3′非翻訳領域」と呼ばれる、遺伝子の末端部分に生ずるゲノム構造の異常で、これらの異常によって正常な「3′非翻訳領域」が失われる結果、PD-L1の遺伝子発現の高度な上昇が惹起されること、
(4)3′非翻訳領域を人為的に欠失させることによりPD-L1遺伝子の発現を誘導したがん細胞は、免疫による監視を回避して増殖することができるようになること、また、この増殖効果は、抗PD-L1抗体によって阻害されること。

今回の研究によって、これまでに知られていなかったPD-L1の発現調節機構に関するあらたな知見と、それを巧みに利用したがんの免疫回避のメカニズムが明らかになりました。このような異常は、ATLをはじめとする様々な種類のがんでみとめられることから、がんの免疫回避の一般的なメカニズムになっていると考えられます。がんの免疫回避に関わるPD-L1の新しい発現調節機構があ
きらかとなったことで、がんの免疫回避のメカニズムの理解が今後大きく促進されると期待されます。

しかし、今回の研究が示唆する最も重要な点は、このような異常を有するがんは、PD-L1発現を介した免疫回避に強く依存しており、従って、ニボルマブやペンブロリズマブを用いた免疫チェックポイント阻害による治療が特段に有効であると期待されること、また、これらの異常をマーカーとして、免疫チェックポイント阻害剤が著効する患者さんを見いだすことができる可能性がある、ということでしょう。

実際には、ATLや悪性リンパ腫、胃がんなど一部のがん種を除いて、こうした異常を有する症例の頻度は1%以下にとどまります。しかし、こうした異常が認められるがんについては、たとえ、末期の症例であっても、著効が期待されるということは、生命の危機に瀕しておられる患者さんの視点にたてば、やはり、大変に意義のあることだと信じていますし、今後その可能性についての検討
が急務であろう、と考えています。今回の研究成果が、難治性のがんに苦しむ患者さんの治療に役立つことを切に願う次第です。

第一世代抗ヒスタミン薬は、小児の多くで禁忌 

第一世代抗ヒスタミン薬が、小児の多くで禁忌であることを報じる記事。こちら

2歳以下では如何なる場合も禁忌。6歳以下の風邪症状に対しての投与も禁忌。

神経系の副作用を生じうるためだ。

市販薬の所謂風邪薬にはこの成分が入っているわけだが、変えるのか?小児科医も、我々の世代では第一世代抗ヒスタミン薬を漫然と出している場合がある。要注意。だいぶ前から言われていたことだが・・・。

タミフルの抗インフルエンザ効果は限定的 

タミフルの効果が限定的であることを示すデータが、いろいろなところで公表されつつあるようだ。一方、鳥インフルエンザ感染症に対しては、唯一の切り札候補でもある。

健常人の通常のインフルエンザ感染には、タミフル等のニューラミニデースインヒビターを常用するのは控えるべきなのかもしれない。

下記の記事で取り上げられた論文には直接当たっていないが、他の総説でも同じ結論のものがあった。

備蓄薬のコスト、100億円の単位だろうか・・・。


以下、引用~~~


抗インフル薬タミフル「効果は限定的」 英医学誌など

記事:朝日新聞
14/04/11


 英医学誌BMJと世界の臨床試験を検証する国際チーム「コクラン」は10日、抗インフルエンザ薬タミフルを服用しても効果は限定的として、服用基準の見直しを世界各国の政府機関に求める声明を出した。

 英オックスフォード大のグループが、タミフルを製造するロシュ社(スイス)から臨床試験の未公開データを入手して分析した。

 グループによると、タミフルをのんだグループは、のんでいないグループに比べ、感染して発熱などの症状がおさまるまでの期間が成人では0・7日短くなった。しかし、未成年者の場合は有意な差がみられなかった。また、成人、未成年者にかかわらず、感染者が肺炎など重症な合併症を引き起こすのを減らす効果も確認できなかったという。

 タミフルは、インフルエンザの症状の軽減や予防に効果があるとされる。新型インフルエンザ対策として、国と都道府県は2013年時点で約5420万人分を備蓄している。

抗インフルエンザウイルス薬の使用の是非 

抗インフルエンザウイルス薬(ニューラミニデースインヒビター、以下抗ウ薬と略す)に抵抗性のインフルエンザA型ウイルスが、北海道で見いだされたと報告されている。抗ウ薬がインフルエンザの合併症・死亡率・入院といった点で有効であるという報告は、CDCの記載でもわかる通り、幾つもある。

しかし、下記のリビューは、少なくとも基礎疾患のない症例への抗ウ薬の積極的な投与に疑問を投げかけている。CDCの記載も、抗ウ薬の効果として断定しているのは、発熱期間・有症期間の短縮だけであり、合併症・死亡率等への効果は、可能性がある、となっているだけだ。

抗ウ薬は、重症例、ハイリスク症例への切り札として温存しておくべきなのかもしれない。ただ、臨床現場では、重症化する症例を早期に発見することは困難であるので、抗ウ薬を投与しない選択をするのは実際上難しい。

以下、抄録を引用~~~

PLoS One. 2013;8(4):e60348. doi: 10.1371/journal.pone.0060348. Epub 2013 Apr 2.

The value of neuraminidase inhibitors for the prevention and treatment of seasonal influenza: a systematic review of systematic reviews.

Michiels B, Van Puyenbroeck K, Verhoeven V, Vermeire E, Coenen S.


Controversy has arisen regarding the effectiveness of neuraminidase inhibitors (NIs), especially against influenza-related complications. A literature search was performed to critically assess the evidence collected by the available systematic reviews (SRs) regarding the benefits and disadvantages of NIs (oseltamivir, zanamivir) compared to placebos in healthy and at-risk individuals of all ages for prophylaxis and treatment of seasonal influenza. A SR was done using the Cochrane Database of Systematic Reviews, Health Technology Assessment Database, Database of Abstracts of Reviews of Effects, and Medline (January 2006-July 2012). Two reviewers selected SRs based on randomized clinical trials, which were restricted to intention-to-treat results, and they assessed review (AMSTAR) and study quality indicators (GRADE). The SRs included (N = 9) were of high quality. The efficacy of NIs in prophylaxis ranged from 64% (16-85) to 92% (37-99); the absolute risk reduction ranged from 1.2% to 12.1% (GRADE moderate to low). Clinically relevant treatment benefits of NIs were small in healthy adults and children suffering from influenza-like illness (GRADE high to moderate). Oseltamivir reduced antibiotic usage in healthy adults according to one SR, but this was not confirmed by other reviews (GRADE low). Zanamivir showed a preventive effect on antibiotic usage in children (95% (77-99);GRADE moderate) and on the occurrence of bronchitis in at-risk individuals (59% (30-76);GRADE moderate). No evidence was available on the treatment benefits of NIs in elderly and at-risk groups and their effects on hospitalization and mortality. In oseltamivir trials, nausea, vomiting and diarrhea were significant side-effects. For zanamivir trials, no adverse effects have been reported. The combination of diagnostic uncertainty, the risk for virus strain resistance, possible side effects and financial cost outweigh the small benefits of oseltamivir or zanamivir for the prophylaxis and treatment of healthy individuals. No relevant benefits of these NIs on complications in at-risk individuals have been established.

HPVワクチン、厚労省は、どうでるのか? 

WHOが、HPVワクチンの安全性情報を出した。

厚労省は、自らのメンツと、波風を立てたくない一心で、HPVワクチン推奨から、非推奨に切り替えたばかり。

腰が引けた厚労省は、さて、どのように対処するのだろうか。減点主義の行政にあって、なかなか対応に苦慮している様子だが、科学的な知見をしっかり見据えてくれないと・・・。


以下、mricの記事から引用~~~


WHOの公式声明「HPVワクチンに関するGACVSの安全性最新情報」の日本語訳配布について

子宮頸がん征圧をめざす専門家会議
議長 野田 起一郎
実行委員長 今野 良

2013年7月13日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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去る6月14日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の副反応検討部会が開催され、子宮頸がん予防ワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン、以下HPVワクチン)の積極的な接種勧奨について一時差し控える方針が決定されました。この4月に改正予防接種法が施行され、HPVワクチンが、ようやく定期接種として広く実施されることになってから、わずか2カ月余りでのこの事態を、私たち子宮頸がん征圧をめざす専門家会議は非常に残念なことと受け止めています。

HPVワクチンは、これまで全世界の120カ国以上で承認、接種されており、その有効性・安全性が広く認められています。去る6月13日には、WHO(世界保健機関)の諮問委員会であるGACVS(ワクチンの安全性に関する諮問委員会)が、HPVワクチンに関する安全性について声明を発表しています。WHOが日本での副反応報告も検討したうえで、最新の知見としてHPVワクチンの安全性を改めて確認した意味は重いものと考えます。しかし、残念ながらこの声明は、英文の資料しか用意されていないためか、これまでのところ一般の方々はあまり承知していないものと考えます。

また、6月19日には、米国CDC(疾病対策予防センター)が、HPVワクチンを米国に導入した後、導入前と比べてワクチンに含まれるウイルス型の14~19歳女性における感染率が56%減少したとの研究成果を発表し、HPVワクチンの有効性が高いこと、さらなる接種率の向上が重要であることがCDC所長からコメントされました。(http://jid.oxfordjournals.org/content/early/recent )

子宮頸がん征圧をめざす専門家会議では、ワクチン接種後に健康を害された方々とそのご家族の心身の痛みにお見舞いを申し上げるとともに、補償や救済制度の充実と、適切な治療が速やかに受けられる仕組みの構築を、社会的課題として解決すべきものと考えています。そして、公衆衛生の視点から積極的接種勧奨再開に向け、正しい科学的知識の普及を継続していきます。本資料配布はその啓発活動の一環として行うものです。MRICをお読みの皆様のご参考になれば幸いです。

日本語訳は以下。正式な内容は、http://www.who.int/vaccine_safety/ committee/topics/hpv/130619HPV_VaccineGACVSstatement.pdf にて原文をご参照ください。

<HPVワクチンに関するGACVSの安全性最新情報>
2013年6月13日、ジュネーブ

2013年6月13日の会議において、GACVS(ワクチンの安全性に関する諮問委員会)はHPVワクチンの安全性に関する最新情報を検討した。前回の検討は2009年6月に実施されていた。当時、GACVSはHPVワクチンの安全性に関する累積エビデンスは安心できるものであったこと、有害事象モニタリングのための能力向上ともに、HPVの予防接種に関する試験が開始されていたことを表明した。現在、GACVSは、ワクチンが導入されている環境において質の高い安全性データを継続的に収集することを非常に重要視している。

過去4年間に、各国が予防接種プログラムを開始した又は拡大したことから安全性データは蓄積され続けている。GAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟)も、子宮頸がんの負担が甚大な発展途上国の女性がHPVワクチンを接種できるようにするための方策を講じ始めた(注:日本政府も昨年から財源支援開始)。現在のところ、約1億7500万接種分のHPVワクチンが販売されている。2300万接種分以上が販売された後、米国のVaccine Adverse Event Reporting System(ワクチン有害事象報告システム)に報告された有害事象の検討結果が、2009年に発表された(Slade 2009年)。現在、HPVワクチンが承認された多くの国において、大量の市販後データが蓄積しているなか、現在までに懸念事項は示されていない。現在販売されているワクチンの製造業者は妊娠レジストリを作成しており、有効性と併せて長期安全性試験を継続している。

諮問委員会は、米国、オーストラリア、日本及びCervarix?(GlaxoSmithKline)及びGardasil?(Merck)の製造業者から得られたデータを検討した。米国からの最新情報には2009年に公表された調査結果以降に得られたVAERSへの自発報告ならびにVaccine Safety Datalink(ワクチン安全性データリンク)からの終了済み試験及び試験計画を含んでいる。オーストラリアでは、男性を対象とする新たなプログラムが2013年2月に開始されており、データが入手可能になりつつある。

すべての情報源からのデータは、引き続き2つのワクチンの安全性が再確認された。現在、VAERSからのデータには2006年以降に販売された5000万接種分以上のデータが含まれており、プロファイルは2009年の検討時から大きくは変わっていない。初回の検討時に明らかになっていなかった有害事象報告、すなわち失神及び静脈血栓塞栓症(VTE)については更なる調査が行われた。失神については、報告され続けているが、HPVワクチンが接種される集団及び状況(注:多感な時期にある思春期女子を対象とする)を考えれば、妥当な関係がある可能性が高い事象である。そのため、ワクチン接種後15分間の観察期間を遵守することが勧告として強化されている。VTEについては、VSDにおける1ヵ月ごとの迅速分析(rapid cycle analysis)ではリスクの増大は認められなかったものの、経口避妊薬の使用、喫煙、本集団におけるその他の危険因子などの交絡因子を適切に補正して更なる調査が行われているところである。同様に、VSDではギランバレー症候群および脳卒中のリスク増大も認められなかった。

オーストラリアでは、安全性監視が強化されており、専門家グループが報告された事象の分析を続けている。現在のところ、ほぼ700万接種分が販売されており、以前検討されたアナフィラキシーの発生率増加に関する懸念は確認されなかった。男性を対象とするワクチン接種プログラムの拡大及び2013年2月1日以降の監視強化を受けて、現時点ではGardasilの安全性プロファイルは女性におけるプロファイルと同等であることが示されている。

オーストラリアにおける使用経験は、本年齢集団に新規ワクチンを導入する国、特にワクチンを学校での集団接種において投与する場合に役立つ教訓を示している。学校での集団接種プログラムが導入されてから間もない2007年5月に、女子校でワクチン接種を受けた720名のうち26名で浮動性めまい、動悸、失神又は卒倒、脱力感及び失語症を発現した。4名は救急車で病院に搬送されたが、更なる臨床医学的評価により報告された症状の器質的根拠は明らかにならなかった。この有害事象の集団発生は、ワクチン接種に対する心因性反応の結果であると判断された。この出来事によって、オーストラリアではマスコミの関心及び一般市民の懸念が増大した(Buttery 2008年、Gold 2010年)。このような症例については、迅速かつ詳細な医学的評価を行い、診断を確定したうえでワクチン又はワクチン接種との因果関係を評価し、リスクコミュニケーションの原則を採用した積極的なコミュニケーション対策を講じる必要がある。

2つの製造業者による調査では、製品添付文書を修正する必要性を示唆する徴候は認められなかった。両社とも妊娠中のワクチン接種後の妊娠転帰に関する調査を継続している。結果の詳細な分析から、HPVワクチン接種に関連する新たな有害転帰は示されていない。Gardasilについては、長期追跡調査が最も長いコホートで8年以上に延長されており、これらのワクチン接種者において新たに診断される健康に関する事象の有意な増加は認められていない。妊娠レジストリの最新分析でも、予測される背景発生率を超える有害な妊娠転帰は観察されなかったことが再確認されている。Cervarixについては、妊娠転帰ならびに免疫と関与する疾患群などの関心の高い特定の事象に関して同様に安全性を確認できるデータが得られている。失神及びアナフィラキシーについては、リスクが潜在的にあることを警告するために製品添付文書に追記されており、失神はワクチン接種経験前後の状況にも関連がある可能性があると記されている。

最後に、800万回分以上のHPVワクチンが販売されている日本から複合性局所疼痛症候群(CRPS)の症例が報告された。CRPSは通常は外傷後に四肢に発現する疼痛状態である。傷害又は外科手技後の症例が報告されている。本症候群は原因が不明であり、明確に記録される類の傷害がなくても生じることがある。HPVワクチン後のCRPSは日本においてマスコミの注目を集めたが、報告された5例のほとんどが典型的なCRPS症例と一致しないと考えられる。十分な症例情報がなく、多くの症例で決定的な診断に達することができなかったことから、副反応検討部会による検討では因果関係を明確にすることができなかった。これらの症例については調査中であるが、日本は国の定期接種においてHPVワクチンの接種を継続している。

要約すると、HPVワクチンの安全性に関する前回の検討から4年が経過し、世界各国で1億7000万回分以上が販売され、より多くの国が国内の予防接種プログラムを通じてワクチンを提供していることから、諮問委員会は市販製品の安全性プロファイルに大きな懸念がないことを引き続き再確認することができている。以前、懸念とされていたアナフィラキシー及び失神は、更なる調査を通じて検討され、製品添付文書に適切な改訂が行われた。シグナルの可能性があるものとして報告されているギランバレー症候群、発作、脳卒中、静脈血栓塞栓症、アナフィラキシー及びその他のアレルギー反応などを含む重篤な有害事象は、さらに詳細に検討されており、多くは米国のVSDにおける1ヵ月ごとの迅速分析により検討されている。妊娠中に不注意でワクチンを接種した女性における妊娠転帰に関する自発報告及びレジストリによる調査では、予測される発生率を上回る有害転帰は検出されていない。

日本から報告されている慢性疼痛の症例には特別に言及する必要がある。世界各国で使用が増加しており、他からは同様の徴候が認められていないことから、現時点ではHPVワクチンを疑わしいとする理由はほとんどない。一般市民の懸念を認識して、治療を最善に導くために各症例についての慎重な記録ならびに専門医による確定診断の早急な徹底的調査を当諮問委員会は要請する。各症例の時宜を得た臨床評価及び診断に続く適切な治療が不可欠である。

Buttery JP, Madin S, Crawford NW, Elia S, La Vincente S, Hanieh S, Smith L, Bolam B. Mass psychogenic response to human papillomavirus vaccination. Med J Australia 2008;189(5):261-262

Gold MS, Buttery J, McIntyre P. Human papillomavirus vaccine safety in Australia: experience to date and issues for surveillance. Sexual Health 2010;7:320-324

Slade BA, Leidel L, Vellozzi C, Woo EJ, Hua W, et al. Postlicensure safety surveillance for quadrivalent human papillomavirus recombinant vaccine. JAMA. 2009 Aug 19;302(7):750-7. doi: 10.1001/jama.2009.1201

上記は理解促進のために作成した翻訳です。正式なリリースはWHO作成の原語版となります。
注)は当専門家会議が付記しました。

■子宮頸がん征圧をめざす専門家会議(通称:子宮頸がん予防ゼロプロジェクト)
子宮頸がん征圧をめざす専門家会議(子宮頸がん予防ゼロプロジェクト)は、子宮頸がんの予防、征圧を実現するために、より精度の高く費用対効果にすぐれた子宮頸がん検診(細胞診+HPV検査)を確立し、子宮頸がん検診の受診率50%以上をめざすとともに、当時まだ未達成であったHPVワクチンの早期承認と公費負担の実現を図ることを目的として、2008年11月に設立されました。
当会議は、専門領域の枠を超えて、多くの医師、専門家、団体、企業が力を合わせ、多面的な視点から、子宮頸がん予防について、社会・行政に向けた提言を行ない、私たちが果たすことができる役割を考えながら活動しています。

<役員>
議長:
野田 起一郎(近畿大学前学長)
顧問:
垣添 忠生(公益財団法人日本対がん協会会長、国立がん研究センター元総長)
?久 史麿(日本医学会会長、自治医科大学名誉学長)
実行委員:
今村 定臣(公益社団法人日本医師会常任理事、公益社団法人日本産婦人科医会副会長、恵仁会今村病院院長)
宇田川 康博(藤田保健衛生大学名誉教授、獨協医科大学医学部特任教授)
嘉村 敏治(久留米大学医学部産科婦人科学講座教授、特定非営利活動法人日本婦人科腫瘍学会理事長)
小西 郁生(京都大学大学院医学研究科婦人科学産科学教授、公益社団法人日本産科婦人科学会理事長)
今野 良(自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授) ※実行委員長
鈴木 光明(自治医科大学産科婦人科講座主任教授、公益社団法人日本産婦人科医会常務理事がん部会)
野々山 恵章(防衛医科大学校小児科学講座教授)
吉川 裕之(筑波大学医学医療系長、医学医療系産科婦人科学教授)
監事:
稲葉 憲之(獨協医科大学学長)
大村 峯夫(こころとからだの元氣プラザ婦人科部長)
委員:
青木 大輔(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授)
阿曽沼 元博(滉志会がん医療グループ代表、順天堂大学客員教授)
五十嵐 隆(公益社団法人日本小児科学会会長)
岩成 治(島根県立中央病院母性小児診療部長)
衞藤 隆(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所所長)
江夏 亜希子(四季レディースクリニック院長)
大道 正英(大阪医科大学産婦人科学教授)
岡田 賢司(福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野教授)
岡部 信彦(川崎市健康安全研究所所長)
岡本 喜代子(公益社団法人日本助産師会会長)
小澤 信義(おざわ女性総合クリニック院長)
小田 瑞恵(こころとからだの元氣プラザ診療部長、東京慈恵会医科大学産婦人科講師)
河西 十九三(公益財団法人ちば県民保健予防財団常務理事)
片岡 正(一般社団法人日本小児科医会予防接種委員会副委員長、かたおか小児科クリニック院長)
加藤 達夫(独立行政法人国立成育医療研究センター名誉総長)
加藤 尚美(日本赤十字秋田看護大学・大学院教授)
河村 裕美(認定NPO法人女性特有のガンのサポートグループオレンジティ理事長)
木下 勝之(公益社団法人日本産婦人科医会会長、成城木下病院理事長)
小西 宏(公益財団法人日本対がん協会マネジャー)
小林 忠男(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻招聘教授)
相良 洋子(さがらレディスクリニック院長)
笹川 寿之(金沢医科大学産科婦人科学講座准教授)
Sharon Hanley(北海道大学医学研究科総合女性医療システム学分野特任助教)
上坊 敏子(社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長)
寺本 勝寛(地方独立行政法人山梨県立病院機構山梨県立中央病院周産期センター統括部長)
中板 育美(公益社団法人日本看護協会常任理事)
濁川 こず枝(全国養護教諭連絡協議会会長)
平井 康夫(東京女子医科大学病院産婦人科教授)
福田 敬(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究官)
福田 護(NPO法人キャンサーリボンズ理事長、認定NPO法人乳房健康研究会理事長)
前濱 俊之(社会医療法人友愛会豊見城中央病院産婦人科部長)
宮城 悦子(横浜市立大学附属病院化学療法センター長)
宮崎 亮一郎(順天堂大学医学部先任准教授、医療法人社団順江会江東病院産婦人科部長)
柳澤 昭浩(NPO法人キャンサーネットジャパン事務局長)
雪下 國雄(公益財団法人日本学校保健会専務理事)

風邪薬による副作用 

今日のクローズアップ現代、風邪薬の市販薬によるStevens Johnson症候群(SJS)の話題だった。夕食の準備をしながら、所々見た。風邪薬でSJSを発症し、恐らく角膜の炎症を起こしたためだろうか、重篤な視力障害をきたした若い女性が登場していた。SJSの診断が如何に遅れたのか、そして「誤診」されることが多いか、早期発見であれば視力障害を残さずに済む、といった番組の論調であった。

SJSを知らない医師が多いかのような印象を与えたような気がする。が、実際のところ、SJSは有名な病気で、その軽症の病態である、多形性滲出性紅斑を含めると、かなりの頻度でお目にかかる。だが、早期診断は難しい。除外診断であるのと、病像がある程度はっきりしないと診断できないのだ。臨床医としては、薬物だけではなく、感染によっても生じる、この重篤化しうる合併症には常に気をつけなければいけない。でも、診断がついてから、後で振り返って、前に診た医師のことを軽々に批判してもらいたくない。繰り返すが、早期診断は難しいのだ。

HLA A locusとTLR3 locusの特定のgenotypeが、SJS発症と密接にかかわっているとの知見は知らなかった。臨床ですぐには利用できる検査ではないかもしれないが、家族性のケースでは、調べてもよいのかもしれない。

この番組を最後まで見てて、

風邪に効く薬はない、市販薬の風邪薬等殆ど意味がない

というコメントが出るかと思いきや、やはり出なかった。まぁ、ここまではっきりとは言えないのかもしれないが、市販の風邪薬の危険性をもっと強調すべきだったのではなかろうか。マスコミに期待する方が無理か?

食事の心理学 

この大西女史のシリーズ、なかなか味がある。食べることが、生きることとも密接にかかわっていることが、彼女のこの小論で分かる。

大げさにな表現になるが、料理を人生の最後にさしかかって遅まきながらするようになって、料理をして親しいものと一緒に食べるという行為が、生きることの本質的な部分をなしていることを、痛感している。その昔、先史時代には、一日一日食べるものが見つけられるかどうかで生きるかどうかが決まったのだ。それが今は、コンビニやスーパーに行けば出来合いのものが手に入り、お金を出せば、レストランで美味しい料理がすぐに食べられる。飢えることはまずない。で、大西女史風に言うと、ドーパミンを沢山リリースすることが容易になったわけだ。だが、それによって、過食に陥り易くなり、また苦労をして食にありつく喜びがないがしろにされている。この苦労が、生きていることの実感につながる。

レストランに出かけて、美味しい料理を食べて、満腹になっても、何かが欠けているような気がする。これは、食べることが、生きることと密接にかかわる実感が得られないためなのかもしれない。

料理を作り、家族とともに食べること、これは生きることそのものの大切な一部なのだろう。そうした時間が持てることに感謝しつつ、毎日料理を作り食べることにしたいものだ。


以下、引用~~~

郷に入っても郷に従わず その4 ~食事の心理学

ハーバード大学リサーチフェロー
大西 睦子

2012年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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前回のコラムで、人工甘味料と肥満や糖尿病の関係は、体の生理的反応と人間の行動的、心理的な要素が関与していることをお伝えしました。そこで今回は、『食べる』という行動が起こるまでの心理的な状況を、さらに深く考えたいと思います。例えば、みなさんが5人のお友達とレストランに行くことを想像してみてください。おそらく、5人とも違うメニューを選ぶことが多いと思います。私は和風パスタとチーズケーキを選んだのに、あなたはサラダにステーキを選んだ理由、それはなぜでしょうか。けっこう深い理由があるのです。

1)嗜好
最近の科学雑誌に、様々な文化の異なるヨーロッパ諸国において、1600人以上の子供たちを対象に、食事の嗜好と肥満の関係についての報告がありました。結果は、肥満の子供たちは、脂肪や糖分の多い食事を好んだということでした。動物実験で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが、空腹感を抑えるだけではなく、食べ物の嗜好にも関与していることがわかってきました。例えば、レプチン濃度が低いと、空腹感が増強するだけではなく、食べ物による喜びも増加します。
●ということは、人種や文化の違いにかかわらず、肥満の子供は、高脂肪で甘い食べ物を摂取することによる喜びが強いと考えられますね

2)学習
私たちは生後まもなく、食に対する行動的、感情的な反応を覚えます。この頃、親は重要な役割を果たします。なぜなら母親の食事は母乳に移行し、後の子供の嗜好に大きく影響するためです。従って、特に母親の食の影響は強いと思われます。離乳後、子供は自分で食べ始めますが、新しい食べ物に拒否反応を示し、少なくとも繰り返し10回以上経験して、ようやく受け入れます。このころの経験も、後の好き嫌いに影響します。さらに、食べることは、罪と報酬の意味もあります。食事の量や食べるスピードも、親の影響が大きいと考えられています。『ぐずぐずしないで、早く残さず食べなさい。』なんて、親に叱られた経験はありませんか?子供は食べ物を残すことに罪を覚え、出されたものは全部食べる習慣がつきます。

3)再学習
私たちの食事の好みは幼少期の経験に決まると考えられていますが、大人になって、再学習することによって好みを変えられることも報告されています。
●これは、いいニュースです。子供の頃の悪い習慣を、大人になって変えるチャンスがあるのですから。

4)食欲
ドーパミンは、連続した学習による行動の動機付け(associative learning)と関係している神経伝達物質です。食事開始後、ドーパミンの分泌が上昇し、食欲が増強します。重要なのは、連続した学習によって、食べ物を想像するだけで、ドーパミンが分泌されるようになるのです。例えば、食べ物の写真、料理の音やにおいでドーパミンが分泌され、食欲が増加します。ストレスでもドーパミンの分泌が増え、過食になります。コカイン、覚せい剤は、ドーパミン分放出させ快感を起こします。セロトニンはドーパミンをコントロールする神経伝達物質です。食欲を抑えるには、ドーパミン分泌を抑制し、セロトニンを放出することとなります。最近、インスリンやレプチンもドーパミンに影響を与えることも報告されています。
●やる気、ご褒美、学習などに関わるドーパミンは、脳の『快楽物質』とも呼ばれています。ドーパミンをたくさん増やしたい!と思いがちですが、やはりバランスが大切と思います。それは、5)の中毒に関係するからです。

5)習慣、依存、中毒
これは大トピックです。習慣、依存、中毒には、行動(心理的)問題が大きく影響します。2010年に、動物実験により、過食による肥満の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとする報告があり、大変な話題になりました。米国フロリダ州のポール・ケネディ准教授の研究チームは、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、ドーパミン2受容体が過剰に刺激されていることは明らかになっていましたが、同様な変化を「食事中毒」のラットで証明したのです。
●食に限らず、人生において、喜び、幸せは大切ですが、実際はそれだけではないと思います。苦しみ、悲しみを克服しつつ得る喜びを経験することが、人間の成長につながるのではないでしょうか。私もそうなりたいと思います。

6)感情
感情、例えば、喜び、怒り、悲しみ、不安も肥満に影響します。肥満のひとでは、食事摂取による感情の変化に違いがあるとも言われています。肥満の人は、食べることで報酬を得ます。
●誰でも美味しい物を食べると嬉しくなりますが、嬉しさの度合いが肥満の人は強いようです

7)決定
意思決定は、自動的に即座にされる経路(これはかなり訓練されています)と、ゆっくりですが、コントロールした上で行われる経路と2種類あります。食べる行為に、この決定は重要な役割があると思いますが、残念ながら、動物実験モデルをつくることが難しく、まだまだ不明な点が多い分野です。
●例えばみなさんが飲み物を注文するとき、『とりあえず生ビール(メニュー見ずに注文する人もいると思いますが)』という人もいますし、メニューをよく読んで『このカクテル下さい。』という人もいます。自分で決められず『お勧めは何ですか。』と店員に聞く人もいます。どうしてこんなに人は最終的な意志決定が違うのでしょうか?

最後に、肥満には、環境の影響も大きな問題になってきます。環境とは、車など、便利な社会になったため、人々が動かなくなった点、スーパーマーケット、コンビニなどで、高カロリーの食品を消費者が買いやすくしている点(そういった商品が増えた、安くなった、目に留まる位置に置いてある)などです。駅のキヨスクで、大根やキュウリが売っているのは見かけたことはありませんが、お菓子はすぐに買って、すぐに食べることができますよね。『不便、面倒』という言葉は、売り文句にはなりにくいですが、思っているほど悪くはないかもしれません。

山中伸弥教授が研究のために募金を募っている 

IPS細胞の研究で世界のトップを走り、ノーベル賞の候補にもなっている、京大教授山中伸弥氏が、研究のための資金(実際は、研究者の人件費らしい)を、ネット上で募っている。こちら


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でもねぇ・・・ノーベル賞級の研究者が、こうして募金を募らなきゃいけないなんて、日本という国の行く末が見えてくるような気がする。

殆ど社会に貢献することのない、日本医療機能評価機構という天下り団体には、毎年数十億円以上が溜り続けている。その金は、おそらく天下り官僚の給与や退職金に充てられるのだろう。官僚のためのリゾート施設に化けるのかもしれない・・・。

が、こうして実務で業績を上げ、社会に貢献している人のところに、国と行政は、金を出さないのだ。

国家として終わっている・・・。