再処理施設に、莫大な税金をぶち込む理由 

六ケ所村再処理工場は1993年に建設が始まり、とうに稼働しているはずだったが、完成を4回引き延ばし、現在来年の「完成」に向けて建設が続けられている。だが、これまでの稼働の失敗の経過を見ると、うまく稼働する可能性は極めて低い。

それに、使用済み核燃料を再処理して得られるプルトニウムを用いたMOX燃料による原発発電は、コストとリスクが大きく現実的ではない。同じく、プルトニウムを用いる高速増殖炉も実現の目途はたっていない。こちら参照。MOX燃料は、原発の中性子脆化を引き起こしやすく、もし中性子脆化による原発の爆発事故が起きると、汚染は通常燃料によるものよりも、はるかに深刻になる。

先が見えない再処理、そして成功したとしてもその先にはハイコスト、ハイリスクが待っている。そこに税金を湯水のようにぶち込む。それは原子力村の利権のためでしかない。国民は税金と、電気料金で吸い上げられるだけだ。

以下、引用~~~

経産省が“非公表”指示 再処理工場の建設費増額分
7/18(火) 11:51配信 テレ朝 news

 使用済み核燃料の再処理工場の建設費が7500億円も増えたことを経済産業省の認可法人が正式に公表しなかったのは、経産省の指示だったことが分かりました。

 再処理工場の建設費は新しい規制基準によって7500億円も増え、2兆9000億円と当初の予定の4倍近くに膨らみました。先月30日に国の認可が下りましたが、再処理機構は正式に公表していません。関係者への取材によりますと、経産省の資源エネルギー庁が都議選への影響を考慮したとみられ、機構に対して「6月30日の公表を避けるように」と指導し、都議選の翌日も「会見など大げさにやらないように」と指示していたことが分かりました。

原発部材の脆弱性 

合金に、不純物が多く混じると、硬度は増加するが、脆弱になる。急激な圧力変化等で、破壊される恐れが高くなる。

フランスの原発で、炭素が原発部材に規定よりも多く含まれていることが判明し、大きな問題になっている。蒸気発生器や圧力容器などの原発の最重要部品の鋼材の脆弱性が発覚したのだ。問題は、この脆弱な部品を提供した企業「日本鋳鍛鋼」は、日本の原発にも部品を提供している。

こちらの論文を参照。

タイトルは、

「⽇本の原⼦炉に導⼊された⼀次冷却系部材、炭素異常に関するレビュー
第⼀部 フランスの炭素異常と⽇本の原⼦⼒発電プラントの相互関係」

グリーンピースジャパンが英国の原子力コンサルタント Large Associatesに依頼して作成した、この問題についての報告書である。

この報告では、日本鋳鍛鋼の提供した部材の欠陥が、原発の重大事故を引き起こす危険性を指摘している。日本鋳鍛鋼が製造・輸出する段階、さらにフランスで原発に利用される段階で、この安全基準を満たしているかどうかチェックすべきだったが、なされていなかったとしている。(日本鋳鍛鋼がフランスに部材を輸出した時点では、安全基準を満たしていたという報道もあるが、現在の安全基準を下回るものになっていることは確か。)

このために、フランスでは、十一基の原発の稼働が停止されている。圧力容器の上部構造、付属構造の修理をするとしても、長期間と莫大なコストがかかる。上記の報告によれば、典型的な原発圧力容器の3 基の蒸気発⽣器セットの取替コストは、40〜60 ⽇の運転停⽌の場合、1 億〜1億 5000 万ユーロを超える、とされている。下部構造は、修理が不可能で、廃炉になる可能性が高い。

問題は、わが国でも13基以上の原発で上記の不具合のある部材が用いられていること、フランスで大規模な原発稼働停止になっており、そのコストの少なくとも一部が日本鋳鍛鋼等の日本の企業、原子力規制当局に請求される可能性があることだ。

この事件は、例によって、わが国ではほとんど報じられていない。

福島第一原発の排気筒を支持する構造が腐食している 

福島第一原発に排気筒を囲む120m高の構造がある。その一部が、腐食・変形している。亜鉛メッキがなされているのだろうが、海岸に隣接しているので、経年変化として腐食は必至である。東電が公表した下記pdfの画像で示された通り、一部は明確に破断している。東電は、構造強度計算をして、問題がないとしているが、腐食・変形が構造の中間部分に集中しており、他の部材も外見から分からぬ腐食・変形が起きている可能性が高い。不幸中の幸いは、腐食・変形しているのは、主幹部材ではなく、ブレス材であることか。だが、東電の示した強度計算は、明確な腐食・変形が認められた部材のみ考慮しており、一見正常な他の部材の経年変化を考慮していないように思えるこちら。東電は、事態を軽く見せる傾向が当然あるので、第三者がしっかり強度計算をし、評価しなおすすべきではないだろうか。

問題は、この排気筒内部に放射性物質に汚染された粉塵が大量にあるという雑誌の記事だ。100兆Bqの放射性物質ということだが、果たして、その根拠はあるのか。確かに、この排気筒付近では高レベルの放射能が観察されているようなので、しっかりした計測データを知りたいところだ。

もし、この排気筒が高度に汚染されているとすると、上記雑誌の記事が述べる通り、排気筒構造が倒壊し、排気筒が破壊されると、大きな放射能汚染が生じうる。最近、福島第一原発沖で地震が頻発している。この悪夢のシナリオは、可能性がないわけではない。

東電以外の第三者機関は、至急、この排気筒を含めて、自然経過・自然現象により破壊されうる構造の状況、そうした構造の倒壊による環境への放射能汚染の可能性を検討すべきだろう

原発のリスク 特に経年変化に伴うもの 

原発は、動作原理こそそれほど難解なものではないが、その実際の構造は複雑で、作動に伴い様々な深刻なリスクが伴う。

取り扱いが危険な放射性物質を燃料とするため、深刻事故が起きると、スタッフ、近隣住民、場合によっては日本国中、ないし世界にまで放射能被曝をもたらすのは言うまでもない。放射能汚染は、数百年、数千年またはそれ以上のオーダーで続く。環境汚染が、人々の故郷を奪う。

原発は、きわめて多数の配管の集合体である。沸騰水型原発の場合、格納容器・圧力容器からなる原子炉中枢部、圧力制御室、そして原子炉外のタービン・復水器等の構造の間を多数の配管が結んでいる。地震等の自然災害、またはこの記事のように経年変化で、その多数の配管が、劣化、破断等の事故を起こす。これも場合によっては、重大な放射能汚染を生じる。

原発の圧力容器壁に、放射能による劣化が生じうる。中性子被曝により、原発の圧力壁が脆くなるのである。原発作動中に、その脆化から圧力容器壁にヒビが生じると、高圧になっている圧力容器は爆発を起こす。これは経年変化として必発の事故である。また、深刻事故の場合に、水蒸気爆発等の危険な事象が起きることは、福島第一原発で実際に経験した。

使用済み核燃料、または深刻事故下の核燃料は、冷却を続けなければ、臨界に達し、高熱を発するとともに核分裂反応の連鎖が生じ、放射能の発生が格段に増える。臨界に達した燃料は、水槽・鉛コンクリート壁などによる放射能遮蔽・冷却ができなければ、容易に対応ができない。

こうした深刻事故は、経年変化として、必ず起きるものだ。下記に報じられた島根第二原発は1989年建造である。それ以前に建造された原発は、全54基中31基である。57%の原発が、この島根第二原発よりも古い原発だ。原発は元来16年間だけ稼働させる予定で建造された。それが経済的理由により稼働期間が30年間にまで伸ばされ、さらに40年間まで伸ばされようとしている。安全性が担保されたわけではない。もっぱら、原発利権組織の都合である。

さきほど、福島第一原発の復旧作業には、当初の予算の二倍、20兆円かかると報じられた。メルトダウンした燃料へアクセスできない現状では、この費用が、さらに膨らむ可能性が極めて高い。福島第一原発の復旧に伴う汚染物質、さらには原発稼働後に生じる放射性廃棄物の永続的な保存・管理の目途も立っていない。プルサーマル計画で、使用済み核燃料を再利用することは実現しておらず、そのリスクから世界各国は撤退している。こうした汚染物質・使用済み核燃料の維持・保管もきわめて困難である。

原発がいかにリスキーな代物か、国民がまずは理解し、原発全廃に向けて動く必要がある。

以下、引用~~~

島根2号機、空調配管に穴=腐食1メートル、審査中-中国電

2016年12月08日 23時16分 時事通信

 中国電力は8日、島根原発2号機(松江市、停止中)で中央制御室の換気に使う空調配管を点検したところ、腐食した穴が見つかったと発表した。この配管は安全上重要な設備に該当し、中国電は必要な機能を満たしていないと判断、原子力規制委員会に報告した。環境に影響はないという。

 島根2号機は現在、再稼働の前提となる規制委の審査を受けている。穴がいつ開いたかは分かっておらず、中国電は原因調査と補修を実施する予定。

 中国電によると、8日午後2時50分ごろ、作業員が2号機原子炉建屋で配管に穴が開いているのを発見した。穴は縦約30センチ、横約1メートル(これは穴などというものではなく、破壊である:ブログ主)。配管は外気を中央制御室に入れるのに使われており、審査のため外側の保温材を外したところ、腐食が判明した。保温材を全て外したのは1989年の運転開始以来、初めてだった(安全確保のための検査がいかにおざなりなものであるかが分かる:ブログ主)。 



昨夕の東電送電線火災と、原発事故 

昨夕、埼玉県新座市で東電の高圧送電線から出火し、大きな停電を引き起こした。東京の中枢部も停電したようで、その機能の脆弱性を露わにした。

出火の理由は明らかになっていないが、まずケーブルの老朽化が関与しているのだろう。屋外の高圧ケーブルの場合、耐用年数は20年らしい。こちら。ところが、この出火を起こしたケーブルは、35年使い続けたものらしい。明らかに耐用年数を超えている。それに、ケーブルの状態を目視でチェックしていたというのも、情けない話だ。送電を止めるわけには行かなかったのかもしれないが、何らかの方法で、被覆の劣化をもう少し科学的にチェックできなかったのだろうか。

この事故で連想したのが、老朽化した原発の問題だ。原発は、当初16年間の使用を想定して建造された。だが、経済的な理由から、使用期限はずるずると延ばされ、最近まで30年間に設定されていた。ところがそれを40年間またはそれ以上に延ばす、という。原発の内部構造を客観的に検査することはできない。中性子脆化の問題も、原子炉内に試験片を置いて脆化の進展をチェックしているはずなのだが、きちんと検証されているのだろうか。毎年、原子炉壁の脆化は確実に進展しており、ある時点で爆発する可能性がある。それだけでなく、火力発電機の安全係数が4であるのに対して、原子炉構造の安全係数は、熱疲労のリスクを低減化するために、3に抑えられている。火力発電機であっても、事故が起きることはまれではない。原発が安全であるというのは大いなる幻想なのだ(田中三彦著 原発はなぜ危険か 岩波新書102)。

東電福島第一原発事故の復旧・賠償コストは9兆円を超えるらしい。廃炉費用はどれほどになるのか、まだ分からないという。事故から5年経った今も、炉心溶融を起こした核燃料の状態さえ分からず、放射能汚染をまき散らし続けている核燃料残滓の処理ができるのか予測がまったく立っていない。このような事故を起こした会社が、まだ存続し、さらに国にさらなる莫大な公的資金の援助を求めている。

その東電、そして同じ性格のほかの電力会社には、原発を維持し管理することはできないのではないか。送電線の火災程度で済めばよいが、次の原発事故が起きたら、わが国は立ち行かなくなることを忘れてはいけない。

もんじゅは、高リスク、高コスト 

高速増殖炉は、用いた核燃料以上の核燃料物質が得られる「夢の原発」という触れ込みで、1995年に完成した。だが、最初の3か月だけ発電したのみで、後は事故対応に明け暮れている。建設、維持費用はすでに1兆円を超している。今後も、発電できるようになる保障は何もない。

高速増殖炉は冷却にナトリウムを用いる。ナトリウムは酸素と反応して爆発的な燃焼を起こす。きわめて危険な冷却方法だ。諸外国ではすでに開発を止めている。これまでの原燃があまりにずさんな管理運営を行ってきたからといって、運営主体を改めてば問題が解決するといった生易しいものではない。ナトリウムによる火災は対処が難しい。建設後、すでに21年経過し、今後は老朽化の問題も起きてくる。

高速増殖炉で二次的に生成されるプルトニウムは、すぐに核爆弾に用いられる核種だ。高速増殖炉をあくまで推し進める本当の理由は、我が国の核武装を準備することにあるのではないかと言われている。また、このプルトニウムを、再利用するうえでも問題が多く、コストの面で割に合わないことが分かっている。

なぜこうまでして、高速増殖炉の開発を進めるのか。一つは、原子力関連企業のためだろう。もんじゅの開発維持には、我が国の原子力関連企業の多くが関わっている。原子力政策で甘い汁を吸う政官業の原子力村が、あくまでこの利権を手放そうとしないわけだ。それに、上記の我が国の核武装化の意図も背後にはある。数日前にアップした、核爆弾保持・使用に関する政府見解をみらば分かる。あれは、抽象的に核武装を論じているのではなく、その法的根拠をなし崩し的に与えようと言うものだ。

原子力規制委員会は、自らの検査項目に合致するかどうかを判断するだけで、その検査項目で十分かどうか、過去に建設された原発が安全かどうか等は判断できない。それは、委員長も繰り返し述べている。3・11以前は、原発は絶対安全だという安全神話が、安全性を「担保」してきた(自己撞着の典型!!)が、現在は、原子力安全委員会が新たな安全神話になっている。

以下、引用~~~

もんじゅ新法人で存続検討、文科省有識者会議
2016年4月7日(木)6時36分配信 TBS

 高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体をどこにするかなど、抜本的な見直しについて検討を続けている文部科学省の有識者会議は、新たな法人をつくり、もんじゅを存続させる方向で検討することを決めました。
 文部科学省は、福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」に関して安全上の問題が相次いでいるとして、原子力規制委員会から運営主体を含めた抜本的な見直しを勧告され、有識者会議で検討を続けてきました。

 6日の検討会では、新たな法人をつくり、もんじゅを存続させる方向で検討することが決まり、現実的で実施可能な保全計画の作成、人材の育成などの課題や新たな法人に求められる要件について話し合いました。

 新たな法人は、外部の経営協議会を持つ国立大学法人のように外からの目が行き届くような形で構成し、5月中にも原子力規制委員会に提出する予定の報告書に盛り込む方針です。(06日21:20)

『世界でもっとも厳しいレベル』の新規制基準は本当か? 

原子炉再稼働のために、原子力規制委員会が審査する基準である、「新規制基準」は、「世界でもっとも厳しいレベル」だとよく言われる。安倍首相が、国会答弁や記者会見でも繰り返して、そのように述べてきた。だから、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断した原子炉は安全なのだ、と言うわけだ。

ここで、政府、安倍首相は。原子力委員会に判断をゆだね、自らの責任を放棄している。一方、原子力規制委員会は、新規制基準に適合するかどうかを判断するのみという立場で、原子炉の深刻事故が起きないとは決して明言しない。また、周辺地域の住民の避難の問題等には積極的に関与していない。こちらも、深刻事故が起きることへの責任は放棄している。

『世界』8月号の「解題「吉田調書」」では、新規制基準が「世界で最も厳しいレベル」にはなっていない例として、欧州の加圧水型EPRという次世代型の原子炉の例を挙げている。EPRは、我が国の加圧水型炉PWRとほぼ同様の構造、機能のようだ。違うのは、EPRが、航空機の衝突と炉心溶融に対処するための方策がとられている。一つは、格納容器が二重構造になっている。これは、外部からの衝撃、破壊から原子炉を守るためなのだろう。もう一つは、格納容器底部にコアキャッチャーといいう構造があり、深刻事故の際に生じる炉心から生じる溶融デブリを冷却装置のある貯留エリアに導かれるためといわれている。これらの安全性のための構造は、大多数が建造後20年以上たっている日本のPWRには適用できない。もしこうした安全策を適用しようとすると、コスト面から原発再稼働はペイしない。「世界で最も厳しいレベル」という形容は、新たな安全神話なのだ。

新規制基準の別な重要な問題としては、東電福島第一原発事故の原因究明がされておらず、その知見が取り入れられていないことが挙げられる。原因が究明され、それに対する対応が検討されて初めて新規制基準の内容が決まるはずなのに、そこがすっぽり抜けている。たとえば、一号炉の水素爆発は、建屋五階で起きたとされてきたが、四階でも起きたという知見が得られたことがある。こうした知見によって、事故がどのように起きたのかの理解が変わってくる。原因究明が去らないうちに、「世界で最も厳しいレベル」の新規制基準だと言われても信じかねる。

また、同じ連載記事で、原子炉の安全性の問題に詳しい田中三彦氏が、原発事故の際の緊急時対策本部長のポスト、さらに対策組織の在り方に言及している。これまで、各原発の所長が、その職に就くことになっていた(なっている)が、それで良いのか、ということだ。東電福島第一原発事故当時の当該原発所長だった吉田氏の個人的な責任を追及するためではないと断りながら、吉田氏が原発の機能、深刻事故時の対応に詳しくなかったことを、吉田調書の記載から明らかにしている。もっと現場に詳しい人間が、対策本部の中枢にいれば、違った事故の経過になったかもしれない。所長は、いわば現場の第一線から離れ、マネージメントを主に行う管理職であるから、当然と言えば当然のことだ。だが、今も、深刻事故の際の緊急時対策本部長は、各原発の所長が自動的になるようになっている。これはシステムエラーと言えるのではないだろうか。

このように、原発稼働のリスク、それへの備えができていないのに、原発再稼働に突き進む現政権の姿勢は無責任かつ異常である。

老朽原発をさらに20年稼働するリスク 

田中三彦著「原発はなぜ危険か」(岩波新書)は、原発建造に直接かかわってきたエンジニアならではの好著だ。その中に、原発の老朽化問題についての記載がある。

それによると、深刻事故につながる冷却材喪失事故が、通常、配管破断から始まると想定されているが、より深刻な事態がある。それは、原子炉圧力容器自体の瞬間的な破壊、脆性破壊である。

脆性破壊による深刻事故について、日本原子力研究所・構造強度研究室室長であった藤村理人史が、雑誌「原子力工業」1986年第32巻第10号で、次のように述べている。

もし圧力容器が破局的な破壊をしたならば、その鋼材の破片はミサイルとなって瞬時に飛び散ることになるので、格納容器の数十mmの壁は難なく貫通してしまうであろう。格納容器はまったく役立たず、ECCSなど緊急冷却装置なども無力化する。炉心は露出し、それこそ数万人の死亡者を出す大災害へと発展してしまう。

この脆性破壊を起こす大きな要因は、中性子照射が長年にわたって続くことにある。その程度を表す一つの指標が、NDT温度である。Nil Ductility Transition Temperatureの略であり、金属が延びの見られぬ破壊に移る限界の温度である。NDT以下でその金属材料を用いることは脆性破壊を生じえることから極めて危険であるといわれている。上記著作が記された1990年時点で、多くの原発で、当初マイナス16からマイナス50度であったNDTが、プラス30から60度にまで上昇していることが判明している。このニュースに取り上げられている、高浜1号機等がそれに含まれている。その後、原発が稼働され続け、NDTはさらに上昇している可能性が高い。

脆性破壊による爆発が生じると、壊滅的な汚染を生じることになる。福島第一では、まがりなりにも原子核分裂反応は停止され、圧力容器の爆発は免れたこと、さらに放射性物質の多くが海側に流れたことで、あの規模の被害で「収まっている」・・・それでも甚大な被害であるが。この脆性破壊による原発の爆発は、今回の原発事故の規模をはるかに超える。さらに、高浜の近傍には9機ほどの原発が存在し、高浜原発で脆性破壊による爆発が起きると、瞬時にそれらの原発もコントロール不能になる。その結果は、恐らく日本全土が汚染され、住めなくなるということだ。

これほどのリスクがあるのに拘わらず、そしてそのリスクが仮定の話ではなく、現実に差し迫っているにも関わらず、高浜原発を再稼働するのは無責任である。国を真に愛する者が考えることではない。


以下、引用~~~


稼働40年の高浜1・2号機 関電、20年延長を検討

2014年11月13日11時44分 朝日新聞デジタル版

 関西電力が、運転開始から約40年たった高浜原発(福井県高浜町)1、2号機について、最大20年間、運転を延長する検討に入った。原子炉などの耐久性などを調べる特別点検を実施するため、原発メーカーなどと調整を始めており、来春にも運転の延長を国に申請する方向だ。年内にも最終判断する。

 経済産業省は、運転開始から40年を迎える国内の原発7基について、廃炉か、運転延長かを判断するよう電力会社に求めているが、態度を明らかにしたところはない。

 高浜原発は1号機が1974年、2号機が75年の運転開始で、出力は各82・6万キロワット。同じく廃炉かどうかの判断を求められている美浜原発(福井県美浜町)1号機(出力34万キロワット)、2号機(同50万キロワット)より出力が大きく、動かせば収支を改善させる効果も大きい。

関西地方近傍原子炉13基のうち9基は建設後30年以上 

タイトルに示す通りなのだが、建設40年以上が2基、30年以上が7基である。

旧い原子炉の問題点は、おおまかに言って二つ。

一つは、経時変化で劣化が進むこと。どれだけ念入りに作られた工業製品でも、30年も経てば、劣化は逃れようがない。以前から繰り返し述べていることだが、中性子照射による脆化がとりわけ心配だ。原子炉の稼働により、中性子が生じ、それが原子炉圧力容器の璧をなす金属を劣化させることが知られている。徐々に低い温度で金属璧の弾性が失われる、即ち圧力により破壊され易くなる。この劣化による原子炉の破壊は、稼働中の爆発となるので、極めて危険である。福島第一原発事故では、原子炉の停止が一応できたので、被害があの程度で収まった、爆発による事故では、放射能汚染は想像を超えて深刻になる。さらに、原子炉には極めて多くの配管がある。それらも経時的に劣化することが当然想定される。福島第一原発事故では、地震の第一撃により配管の一部が破損した可能性が指摘されている。

もう一つ、設計が過去にさかのぼるほど、安全基準、安全への対策が、それ以降の設備に比べて貧弱であることだ。これは原子炉の設計に携わった方がはっきりと述べておられる(田中三彦著 原発はなぜ危険か 岩波新書)。古い原子炉を稼働させるのは、たとえ原子炉の劣化を考えなくても、より大きなリスクが伴うのだ。

西日本の方々は、是非関西近傍の原発の位置をもう一度確認なさり、各々の原発が建設された時期も確認なさっていただきたい。原発再稼働には、大きなリスクがあることを理解されることだろう。

東電は原状回復・損害賠償を拒否 

[福島県などの住民約2600人が、原子力発電所事故による放射能汚染からの原状回復や損害賠償を求めた裁判で、被告の東京電力が「莫大な費用がかかると予想されること」などを理由に拒否する姿勢を示した。]

だそうだ・・・さもありなんである。東電福島第一原発事故が起きるまで、深刻事故に対する保険は最大支払額1200億円だったそうだ。現在までのところ、除染費用だけで5兆円以上かかっている。これ以外に廃炉のために莫大な費用がかかる。その上限はまだ見えない。結局、これらの事故対応のコストは、電気料金として我々が支払うことになる。

現時点でも、政府の茂木大臣等は、原発のコストが低廉だと、時々述べている。以前のように、それを原発のセールスポイントのように主張することはなくなった。が、原発を再稼働させるためには、根拠のないことを述べ立てる。

以下のことを改めて記しておこう。

〇東電福島第一原発事故の収束はまだ先が見通せない。コストの面だけからもゆうに10兆円は超えるだろう。それは、すべて電気料金として我々が負担することになる。

〇原発の深刻事故は、東電福島第一原発事のこれまでの経過のように揮発性放射性物質が拡散するだけで済む場合と、原子炉自体が作動中に爆発することによって全組成の放射性物質が拡散する場合とがある。後者の方が圧倒的に被害は大きく、条件次第では、国家予算を優に超えるほどの経済的損失が生じると、予測されている(1960年、原子力産業会議)。

〇上記の原子炉作動中の事故のリスクは、原子炉の中性子照射による経年変化によって高まっていることはすでに何度も記した。原子炉作動中の深刻事故が起きたら、日本の国土の半分程度が酷く汚染されると予想されている。上記の経済的な負担だけでなく、国土の喪失という点からも、日本という国が立ち行かなくなる。



東電福島第一原発事故は、まだ終わっていない。そして新たな事故が起きたら、その時我々は母国を失うことになる。