年金資金の株による運用で生じうる巨大損失 

もう何度も取り上げた話題だが、年金資金による株式投資の問題。予想損失額が、政府から公表された。驚きの数字だ。

株式投資にはリスクが付きもの。年金資金を株式で運用する諸外国では、年金本体ではなく、所得比例部分に相当する部分のみを運用対象にしている。年金本体を株式投資するのは日本だけ。それも最大67%の年金資金を投入することになっている。株式投資運用の目的は、表面上株価を高く維持することにある。日銀もETFで株式投資をしている。これも同じ目的だ。株価は、本来、時の経済状態を反映する指標の一つで、それを政府が操作しようとすることは禁じ手のはずだ。以前、同じことを政府が行おうとしたときには、PKO price keeping operationとマスコミに批判された。が、今回は、マスコミはダンマリである。

株式運用で想定される損失額は、21から26兆円に上ることが、政府答弁で明らかになった。これは年金資金総額の最大20%に相当する。これとて、政府の試算であるから、低めに見積もられている可能性がある。巨額の株式投資は、小回りが利かないことと、GPIFが行う情報開示によってマネーゲームに長けた外国資本に、食い物にされる可能性が、極めて高い。

問題は、このような巨大な損失が出た場合の対処方法を決めていないこと。結局、年金減額、年金料増額ということになるのは明らかである。問題の先送りだ。今後増税が続く可能性も高く、このような損失を生じた場合に、年金だけで生活することはまず無理(今でも無理)となる。

これも何度も記したが、公務員の共済年金の株式投資比率は低いまま。また、長期間議員をしている政治家は、名目上廃止された議員年金を受給する資格があり、その年金額は破格に高い。年金とはいえ、100%国家予算から出る「恩給」のようなものだ。彼らが、我々の年金の運用方法を決め、実際に運用している。彼らの利権を確保するためだとしたら、倫理的に許されない。

今後、年金を受給する予定の世代の方は、よくよく覚悟しておくべきだ。株式投資により、年金財政がさらに厳しくなるその時になって、政府は様々な言い訳をするだろう。だが、問題は今進行中の滅茶苦茶な年金資金運用にあるのだ。

所謂、世論にもこの問題を批判する声があまり上がってこないことが不思議でならない・・・やはり、政府のじゃぶじゃぶの金融緩和で潤っている方が多いのだろうか・・・。


以下、日刊ゲンダイの本日の記事から引用~~~

約130兆円の年金資産を運用するGPIFは昨年10月、「国内株式」の投資比率を12%から25%に引き上げる(外国株を含めた最大投資比率は67%・・・ブログ主注記)ことを決めた。そこで民主党の長妻昭衆院議員が、運用見直しで想定される今後の損失額を質問主意書で問いただし、9日付で政府答弁書が閣議決定したのだが、その中身にビックリ仰天だ。経済「中位」のケースで、「確率95%で予想される最大損失額」は約21・5兆円となり、見直し前の損失額(約10・4兆円)と比べて2倍に膨らんだからだ。

 答弁書によると、仮に「リーマン・ショック」が起きた2008年度に当てはめた場合、損失(想定)額は約26・2兆円で、当時の損失額(約9・3兆円)の3倍近くになる。

年金の見通しは暗い 

年金の財政検証結果というデータが厚労省から公表されている。こちら。

将来の年金水準を予測するのに、様々な因子がからむので、致し方ないのかもしれないが、全般に見ずらく理解しにくい。行政の図式は、理解しにくいように作られていると受け取られても仕方ない。国民は、これでは理解できない。

給与水準が1から2%程度上昇するという予測条件は、オカシイのではないか。近年、給与水準は下がり続けている。「アベノミクス」なる借金垂れ流しが続けば、物価水準が上がり、表面上賃金があがるかもしれないが、それはそれできちんと明示すべきだ。

さらに、経済成長率、運用利回りの予測値も高すぎる。3%の運用利回りを確保するのは、至難の業なのではないだろうか。運用利回りは、株式投資を導入して、どのような結果になるのか。年金資金のように小回りの利かない資金の投資では、株式市場で食い物にされるのが落ちだろう。少なくとも、大幅な負の運用利回り、即ち元本割れが生じる可能性がかなりある。

この楽観的な見通しの図でも理解できることは、平均給与に対する年金額の比率は、どんどん下がることだ。

2006年に止めたはずの議員年金は、年金支給は続いており、100%公的資金がつぎ込まれている。我々の受給資格取得に必要な25年間に比べて、10年間という短期間で受給資格が得られ、年金額も比較にならぬほどに高い。掛け金も確かに高いのだが、それを考慮しても、年金掛け金総額を得るのに必要な年数は、我々の年金の半分程度と短いのだ。こうした年金を得ている、議員経験の長い連中にとっては、我々の年金がどうなるのか、あまり関心は持てない、言ってみれば、どうでもよいのだろう。

彼らに年金制度をまかせっきりにしておけない。この年金の予測のデータをじっくりご覧になり、議員年金と是非比べてみて頂きたい。

年金の粉飾決算 

年金受給開始年齢の引き上げを、厚生労働省が主張し始めている。

そもそも、彼らに年金を扱う、能力・資格があるのだろうか。年金を、財政投融資や、特殊法人への投資に回し、大きな焦げ付きを生じさせてきたのは彼らだ。また、2004年小泉政権当時、年金保険料の引き上げ、年金額の引き下げをする代わりに『100年安心プラン』を打ち出した。年金額が、現役世代の50%を下回らない、今後100年間は年金財政が破たんしないことを約束する内容だった。

2009年に定期的な年金制度の見直しが行われた。そこで、『100年安心プラン』は、着実に実行されているという結論を、厚生労働省は出した。これがトンデモナイ粉飾であることを、学習院大学経済学部教授の鈴木亘氏が、ちくま新書「年金は本当にもらえるのか?」で述べている。

鈴木氏によると、2009年の財政検証では、賃金上昇率が当年は0.1%、その翌年(2010年)には3.4%に急激に上昇すると仮定し、労働力率も大幅に改善、国民年金の未納率は4割から2割に驚異的な改善をすると仮定している。さらに、運用利回りを、2004年の3.2%を大きく上回る4.1%に想定している。これらの数値は、現状を全く反映していない。年金額が現役給与額の50%を下回らないようにするという「目的」から逆算されたものではないか、と鈴木氏は結論づけている。

何故行政による、こうした粉飾決算が可能になるのかと言えば、企業の監査法人にあたるチェック機関が存在しないことが原因であると、鈴木氏は述べている。たしかに、厚生労働省が、年金を集め、運用し、給付を行い、その上に、年金行政のチェックを自らが行う、現体制では、粉飾を行うのは容易なことだろう。本来は、政治がチェックを行うべきなのだろうが、これまで年金の運用等によって生まれる権益に政治家自身が与ってきたこと、さらに強大で強固な官僚組織にメスを入れるには、1年そこそこで交代する大臣はあまりに非力であったこと等で、チェック機構足りえなかったのだろう。

もうすぐ、年金の準備金も減少し始める。厚生労働省は、それが枯渇することはないと言っているが、それは大嘘だ。この準備金が枯渇しないうちに、年金制度の改革、それに年金の運用主体と別に、官僚以外からなる監査機構を作り出すことが急務のはずだ。現在も優位にある共済年金を、厚生年金や、国民年金と一本化すること、官僚の年金行政を監視し、年金財政の客観的な評価を行う第三者組織を作るべきだ。