終末期医療の充実を 

庭の仕事を一手に引き受けて下さっていた、Hさんがしばらくの休みを経て、昨日から復帰してくださった。何しろ田舎のだだっ広い一軒家なので、彼の助けがないと、庭の大きな仕事が片付かない。しばらく前に母上の介護が必要なので、休みたいとの連絡を頂いていた。昨日伺うと、三週間ほどの病ののち、今月上旬に亡くなられたとのこと。感染症から肺炎を起こし、皆に看取られつつお亡くなりになったらしい。御年96歳。大往生と言ってよいのだろう。三週間入院期間中は、家族がチームを組み、泊まり込みで世話をなさった由。死の病の苦痛はあったかもしれないが、家族に見守られ亡くなられたことは、彼女にとっては幸せなことだったろう。

Hさんにお悔やみを申し上げ、その上で、これからは母上のように医療機関で往生なさることは難しくなると申し上げた。急性期病床をどんどん減らし、在宅医療が推進されているからだ。Hさんは首をかしげておられた。それもそうだ。いくら高齢の方とはいえ、亡くなるというのは大きな事件だ。病気によっては、家族が24時間看護し続けることが必要になる。患者の訴えに対応し続けるのは困難を極めるはずだ。訪問診療等の手助けはあるが、必要な時にいつでも診てもらえるわけではない。看護・介護は、家族に任せられる。今後、高齢者が高齢者を看護するケースが増えるはずだ。

死亡原因の一位を占める悪性腫瘍では、疼痛管理等とくに手間がかかる。本来は、ホスピスで終末期医療を受けるのがベストなのだが、全国にホスピスは7000病床しかない。一年に100万人以上亡くなり、その一番の原因の悪性腫瘍で特に必要なホスピスがこの現状だ。在宅医療で疼痛管理を行うこともあることを知っているが、やはり専門のホスピスが望ましい。

社会保障の充実は、対象を高齢者から若年に移すらしい。それは結構なことなのだが、終末期医療は今後需要が高くなり、それは国民全体の生活の質にも関わる。医療等の社会保障の削減は、引き続き行うと安倍首相は述べている。だが、多死時代を迎えて、終末期医療の充実はどうしても行わなければならない。

調剤バブルの成れの果て 

調剤薬局・院内院外調剤の推移を、日医総研がまとめている。こちら。

院外調剤の伸びが凄まじい。その利益率の伸び率は、医療機関を大きく越えている。調剤関連技術料が一件あたり3千円に近いことにも驚かされる。院内調剤の患者自己負担額は200円台だが、院外調剤では800円台になる。スタッフ一人当たりの収入も、調剤薬局は医療機関の約4倍である。調剤薬局経営者の年収も数億円というところが結構ある。調剤薬局の内部留保は600億円を超えている。

調剤薬局政治連盟、薬剤師会等が、政治献金を盛んに行っている。調剤薬局、院外調剤の伸びは、それと無関係であるまい。もちろん、医師会、様々な医療機関関係の組織も、政治献金を行っているが、最近の調剤薬局の政治活動はとりわけ盛んだ。

社会保障財源が厳しい状況にあり、医療保険も財源が限られている。今後は、限られたパイの奪い合いになるはずだ。その中で、高い利益率を確保してきた調剤薬局が、灰色の業務に手を染めることは十分考えられる。患者の立場になって初めて知ったが、調剤薬局窓口での患者指導も、通り一遍のものにしか過ぎない。オープンな窓口で、尚且つ病名・病気の経過を知らずに、具体的な指導ができるはずがない。で、灰色な業務でも利益が上げられぬとなると、次に手を染めるのは、ブラックな業務になる。下記の記事のような事件はこれから頻発することになる。

社会保障関連業界が政治献金を行うこと自体を禁止すべきだ。今のバブル状態にある調剤薬局についても、その高収益構造にメスを入れるべきだろう。

以下、引用~~~

保険を悪用、社員に割安で薬販売 薬局運営会社
17/09/16記事:朝日新聞

 東証1部上場の医薬品流通支援会社の子会社でチェーン薬局を展開する「シー・アール・メディカル」(本社・名古屋市)が、健康保険制度を悪用し、医療用医薬品を社員に配っていたことがわかった。社員から「欲しい薬」の注文を取り、病院で診察を受けていないのに保険を使って、自己負担分の3割の値段で医薬品を渡していた。業務上のつながりがあった医師が処方箋(せん)を出すなどして協力していた。

 健康保険制度は、国民の税金や保険料を原資として病気やけがをした人の医療費を支え合う共助の仕組み。医療関係会社がこれを悪用し、市販薬を買うよりも割安で薬を手に入れていた形だ。

 シー・アール社は、「メディカルシステムネットワーク」(本社・札幌市)の中核事業である薬局運営で、東海・北陸地区を担当する会社。「なの花薬局」など48店舗(今年8月現在)を運営している。

医療データ法案は情報を匿名化するというが・・・ 

医療データ法案が制定され、匿名化されたうえで、我々の医療データが、企業に手渡されるようになる。保険診療の診断名は、学問的にはあまり意味がないので、疫学研究には使えない。もっぱら、企業が金儲けをするためのビッグデータとなる。

匿名化以前の官公庁での医療情報取り扱いの段階、さらに匿名化をする段階で、個人情報が抜き取られる可能性はないのか。この作業は、当然、民間IT企業が請け負うことになるはずだ。年金情報漏洩等を考えれば、医療情報も、漏洩する可能性が高い。

遺伝子情報を含め、個人の医療情報は、企業がぜひとも知りたい情報だ。米国の共和党の医療保険案では、preexisting conditionsという保険に加入する前に罹っている特定の病気、体質のケースは別建てになる。これは、保険会社が損をしないための仕組みだ。病気のある従業員を抱えると企業には大きな負担になる。また、保険会社が病気になりやすい人を予め選別して、保険商品を売りつければ、保険会社は大きい利益をえる。企業が事業を進める上で、国民の医療情報、特に個別情報は、価値のある情報なのだ。

情報漏洩の徹底した防止対策、漏洩された情報による差別への法的な罰則が必要だ。個人情報をネット回線に載せる、またデータベースにネットからアクセスしうる環境は危険だ。

山本太郎議員が、この問題を国会で質問している。こちら

医療機関の経営苦境 

財務省は医療費を削減する。診療報酬はまた下げられる見通しだ。医療機関は消費税分を患者・支払基金への診療費に転嫁できず、その損税相当分を「地域医療再生基金」として行政が医療を支配する手段にしている。本来医療機関が受けるべき消費税分の収入が、行政によりネコババされているわけだ。

大学病院等、大都市で先進医療を実施する民間医療機関ほど、経営が難しい状況だ。医療事故等が起きると、その困難さは階段を転げ落ちるように悪化する。

上氏の下記の論考にある通り、医療機関の支出で大きいのが、人件費。経営的に苦しい医療機関は、人件費を下げざるをえなくなる。低い人件費が、医療事故の遠因になっている。

国は、戦後30年間ほど続いた福祉国家を目指すという理念をすでにかなぐり捨てた。医療、社会福祉の切り捨ては、その一つの表現だ。企業の成長だけが目的の国家になって久しい。社会的弱者を包摂するためのインフラである、医療が存在し難くなる。

以下、引用~~~

赤字22億円「東京女子医大」の危機的状況

2017年7月6日 9時15分 プレジデントオンライン

小児への使用が原則禁じられた鎮静剤を投与していた問題で、外部評価委の報告を受け記者会見する東京女子医大の吉岡俊正理事長(中央)と同大病院の岡田芳和病院長(右)、林和彦副院長=2014年12月18日、東京都新宿区(写真=時事通信フォト)
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都内の名門私立病院が、次々と経営難に陥っている。東京都新宿区にある「東京女子医科大学病院」は、医療事故を境に、2年間で19万人も外来患者が減った。その結果、3年連続の赤字に陥り、医師への給与も満足に払えない状況となっている。だが、これは女子医大だけの問題ではない。背景には医療制度の構造的な問題がある――。

■賞与は「本給部分の1.6カ月」

東京の医療が崩壊するのは、もはや時間の問題のようだ。前回、聖路加国際病院の苦境を紹介したが、(http://president.jp/articles/-/21994)最近になって、『週刊現代』(7月8日号)が「赤字22億円このままでは名門東京女子医大(以下、女子医大)が潰れる」という記事を掲載した。私もコメントした。

この記事を読んだ友人(女子医大OB)から「以前から聞いていましたが、ここまでひどい状況になっているとは驚きです」とメールが来た。医療関係者の間で話題となっているようだ。この記事は、女子医大の吉岡俊正理事長が、6月7日に教職員へ送った文書から始まっている。

「平成28年度の収支差額は22億円の赤字で3年連続の赤字となりました」
「3年連続の赤字により、現在の本学には現預金の余裕は全くありません」
「これ以上、医療収入が減少しますと、法人存続にかかわる危機的な事態になります」

こうした理由から上半期の賞与は「本給部分の1.6カ月」(前年度は2.35カ月+扶養手当2カ月)だという。

職員宛の文書で、吉岡理事長は「大変厳しい決定ですが、本学の現状を踏まえた判断です」「現状に対する職員の意識を高め、改善・改革のための具体的な行動が必要です。患者さんが戻り、医療収入増加に貢献する、あるいは経費削減により収支改善に貢献することがないか、各職員一人一人が当事者意識を持ち、真摯に考え、行動をしてください」と呼びかけている。

■2歳児に麻酔薬を大量投与

女子医大の転落のきっかけは、2014年2月、2歳の男児が麻酔薬「プロポフォール」を大量投与されて亡くなった医療事故がきっかけだ。

事故を受けて、厚生労働省は特定機能病院の承認を取り消した。事故の前、女子医大の収入に占める補助金の割合は9.3%だった。15年度の決算では4.1%にまで減っている。患者も減った。過去2年間で外来患者は約19万人、入院患者は約7万3000人減った。

だが、女子医大の幹部の危機意識は希薄で、派閥抗争に明け暮れた。吉岡俊正理事長一派は、この事故の責任を問うとして笠貫宏・学長、高桑雄一・医学部長(いずれも当時)を解任し、法廷闘争を仕掛けた。

前出の女子医大OBは「患者を紹介しようとしても、理事長派と学長派の対立が医局の内部部にまでおよんでいるのか、手術をしてもらえませんでした。これじゃ患者も減ります」と嘆く。

女子医大の「身から出たさび」という見方も可能だが、事態はそれほど単純ではない。なぜなら、昨今の医療費の抑制政策が続く限り、都内の総合病院が破綻するのは避けられないからだ。女子医大は、医療政策の被害者という側面もある。背景を解説しよう。

高齢化が進むわが国では、医療費の抑制は喫緊の課題だ。政府はさまざまな政策を打ち出している。

患者は増えるのに、医療費の総額が抑制されれば、医療機関の利幅は薄くなる。この政策が続けば、やがて破綻するところがでてくる。

■女子医大は例外ではない

意外かもしれないが、もっとも「被害」を受けやすいのは首都圏の病院だ。それは、我が国の医療費は厚労省が全国一律に決めているからだ。田舎で治療をうけても、東京の銀座で治療を受けても、医療費は同じなのだ。もちろん、土地代や人件費などのコストは違う。医療費を下げ続ければ、真っ先に破綻するのは、首都圏の病院だ。

私の知る限り、この問題を初めて取り上げたのは、情報誌『選択』の2015年9月号だ。<私大医学部で「経営危機」が続々 破綻寸前の「首都圏医療」>という記事を読めば、女子医大が例外でないことがわかる。

もちろん、この記事でも女子医大は取り上げられている。だが、それ以上に経営状態が危険とされたのは日本医科大学付属病院(以下、日本医大)だ。

■日本医大の経営危機の深刻さ

日本医大は、1876年(明治9年)に越後長岡藩医であった長谷川泰が設立した済生学舎を前身とする、日本最古の私立医大だ。慶應大、慈恵医大とともに戦前に設立された3つの医学部の一つである。現在も東京を代表する医療機関で、都立墨東病院などと並び、脳卒中や交通事故など一刻を争う救急患者を治療する三次医療機関の中心を担っている。

日本医大が公開している財務諸表によれば、2014年度の売上高利益率はマイナス19.4%で、158億円の赤字。総資本を自己資本で割った財務レバレッジは349%と大幅な借金超過で、流動比率(流動資産と流動負債の比)は70%だ。

流動比率は、負債の短期的な返済能力を見る指標のひとつだ。税理士の上田和朗氏は「企業の経営状態を判断する際のもっとも重要な指標の一つ」と言う。流動比率は、流動資産が流動負債より多いか否かを示し、通常は120%以上あるのが望ましいとされている。日本医大の経営危機がいかに深刻かご理解いただけるだろう。

日本医大は経営再建に懸命だ。2016年度の財務諸表によれば、医療収入は747.7億円で対前年比2.4%%(17.6億円)の増だった。支出は賞与や時間外勤務を減らし、予算対比で12.5億円も減らした。この結果、決算は黒字となった。

ただ、それでも固定比率は292%もあり、有利子負債は629億円だ。前出の上田氏は「人件費を削り、医療収入を増やしている。経営は改善されつつあるものの、借り入れ体質は変わらない」という。日本医大の苦戦は続きそうだ。

なぜ、最近になって、首都圏の一流病院が経営難に陥ったのだろう。

きっかけは2014年の消費税増税だ。病院は医薬品などを仕入れる際、病院は消費税を負担するが、患者には請求できない。このため消費税が「損税」となってしまうのだ。

■開業医が優遇され、病院が割を食う

これは、自動車など輸出企業の置かれた状況とは対照的だ。輸出品は海外での販売時に課税されるため、消費税が免除されている。多くの企業は仕入れなどで消費税を負担しているため、その差額を政府から還付される。2015年8月24日の朝日新聞に掲載された<病院経営「8%」ショック>の記事の中で、税理士で元静岡大学教授の湖東京至氏は、大手自動車メーカー5社が14年度に受け取った還付金の総額を約6000億円と推計している。

もちろん、厚労省も損税問題を認識している。損税を補填するため、2014年に診療報酬を全体で1.36%引き上げた。しかしながら、これでは不十分だ。特定の診療行為の値段を上げるだけで、損税問題を解決できるはずがない。必ず不公平が生じる。一般論だが、日本医師会の中核を占める開業医が優遇され、病院が割を食う。

19年10月には消費税が10%に上がる。財務省は診療報酬の減額を目指している。今後、診療報酬が大幅に増額されるとは考えにくい。生き残るには、必死にコストをカットするしかない。

病院経営での最大のコストとは何だろうか。それは人件費だ。多くの病院でコストの50-60%を人件費が占める。その中でも、特に問題となるのは看護師の人件費だ。看護師は、病院スタッフでもっとも多い職種であり、一般的に高給取りだからだ。

■都内看護師の平均年収は約523万円

『看護師になる2016』(朝日新聞出版)によれば、都内の総合病院に勤務する25歳の看護師の給与は、額面で37.1万、ボーナスは約100万円だ。年収にすると約550万円となる。ちなみに日本人の給与所得者の平均年収は420万円(平成27年分民間給与実態統計調査結果)だ。

看護師の給与には大きな国内格差がある。「都道府県・看護師税込推定給与総額(円)」という図をご覧いただくと、関東から近畿地方にかけて高く、東北地方や九州・四国・中国地方が安いことがわかる。

日本看護協会によると、東京都の看護師の平均年収は523万円。全国平均の473万円より1割ほど高い。病院の利益率は通常数%程度だ。看護師のコストがこれだけ違うと勝負にならない。このデータは2008年のもので少し古いが、この傾向は現在も変わらないだろう。

なぜ首都圏の看護師の人件費が高いのだろうか。それは首都圏で看護師が不足しているからだ。「都道府県別物価補正後の看護師月給と看護師数」という図では、人口当たりの看護師数と看護師の給与の関係を示している。なお看護師の給与は都道府県の物価で補正している。

病院経営は工場経営に似ている。首都圏のように人件費の高いところは不利だ。最近、九州や東北地方の病院が首都圏に進出しているが、これは地方病院のほうが財務力に余裕があるためだ。

では、首都圏の病院は、どのようにしてコストを切り詰めているのだろうか。実は、もっとも切り詰めているのが医師の人件費だ。東京には大勢の医師がいる。特に大学の場合、教授や准教授になりたい医師は掃いて捨てるほどいる。供給が多ければ、価格は下がる。ここにも経済原理が働く。

■准教授の手取りは30万円代

東京大学医学部の後輩の40代の医師で、現在、都内の大学病院の准教授を務める人物は「手取りは30万円代です」とこぼす。彼の妻は専業主婦で、2人の子供がいる。家賃、食費、教育費を稼がねばならない。

彼は生活のために、アルバイトにあけくれている。毎週1日は都内のクリニックで外来をこなし、週末は当直を務める。これで月額50万円程度を稼いでいる。

こんなことをしていると、肝心の診療がおろそかになる。最終的に、そのツケは患者が払うことになる。前出の医師は、「昼間、病棟には研修医しかいません。スタッフは外来、手術、そしてアルバイトに行かないといけないからです」と言う。これでは、入院患者の治療は二の次になる。

その結果が、2014年2月に女子医大で起こった医療事故だ。頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳の男児が、3日後に急性循環不全で亡くなった。その後の調査で、人工呼吸中の男児が暴れないように、小児への使用が禁止されている麻酔薬プロポフォールを用いたことが判明した。成人用量の2.7倍も投与されていたそうだ。女子医大が依頼した第三者委員会は「投与中止後すぐに人工透析をしていれば、男児の命は助かった可能性があった」と指摘している。

■組織改革では医療事故はなくならない

さらに、女子医大では、小児に対するプロポフォールの過量投与が常態化していたことも明らかになった。14歳未満の55人に対し、合計63回投与されていた。今回の医療事故は氷山の一角だったのだ。

女子医大は、医療安全体制を見直し、2015年2月6日には「平成26年2月に発生いたしました医療事故の件」という声明を発表した。この中で、「法人組織での『医療安全管理部門』の設置」や「病院長直属の外部委員により構成する病院運営諮問委員会の新設」などの15項目の提言を行っている。だが、事態を重くみた厚労省は、女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。

私は、このような組織改革や厳罰では、医療事故はなくならないと思っている。むしろ、ますます医療安全体制は損なわれるだろう。承認の取り消しは、女子医大の経営を悪化させるだけだ。

実は女子医大では2002年にも特定機能病院の承認を取り消されている。2001年3月、12歳の患者が人工心肺装置の操作ミスで死亡するという医療事故を起こしたからだ。この事故は、操作を担当した医師が逮捕されるという刑事事件にもなった。女子医大は、今回と同様に安全管理体制の改善に努め、遺族の理解も得られたため、2007年8月に再承認を受けている。ところが、この時に議論された安全対策は、その後、有効に機能しなかった。

私は当たり前だと思う。女子医大に限らず、首都圏の私大病院において、医療安全対策の最大の課題は「アルバイトの合間に診療する無責任体制」だからだ。ところが、これは女子医大の経営を考えれば、やむを得ない。医師の給与を下げるかわりに、アルバイトを許可しなければ、やっていけない。

■東京の高度医療を担う私大病院の危機

女子医大は名門病院だ。普通に診療していれば、スタッフ医師が今回のような過量投与を見落とすはずがない。「患者の安全性よりアルバイト」という医師の都合が優先されたため、急変時の対応が後手に回ったのだろう。この問題は、組織論や職業倫理だけでは改善しない構造的な問題だ。解決するには医局員の立場にたった実効性のある対策が必要だ。

東京の医療の中核を担っているのは、私立の大学病院だ。東京都に本部を置く医学部は13あるが、このうち11は私立医大だ。

こんなに私大病院が多い地域は東京だけだ。東京の次に私大病院が多いのは神奈川県と大阪府だが、いずれも3つだ。東京の高度医療は、私大病院が担っていると言っても過言ではない。だが、私大病院は、経営が悪化すれば「倒産」するしかない。女子医大や日本医大は、その瀬戸際にある。

このまま無策を決め込めば、いくつかの東京の医大は必ず破綻に追い込まれる。経営者の責任追及だけでなく、患者保護の視点から建設的な議論が必要だ。

(医療ガバナンス研究所 理事長 上 昌広 写真=時事通信フォト)

小林麻央さんの死に際して思うこと 

小林麻央さんが、乳がんとの闘病を経て他界された。まだ幼いお子さんを残し、ご本人はどれほどの無念だったことだろうか。ご家族も在宅での医療を続ける負担は大きかったことだろう。彼女を失ったご家族には、お悔やみ申し上げたい。

彼女の闘病そして死を伝えるニュースで、あまり触れられていないことがある。それは、彼女が最初に乳がんと診断されたときに、乳がんの標準治療を受けず、1年半の間、民間療法に頼ったという事実だ。これは正確な情報なのか確認できてはいないが、診断当初は、二期であったという。ところが、1年半後には、四期にまで進んでしまっていた。これは彼女とご家族の選択であり、傍からとやかく言うべきことではないが、彼女の闘病生活を自身の闘病と重ね合わせておられた乳がんの患者さんが多数おられるはずで、そうした方々にはぜひ知っておいてもらいたいことだ。民間療法・代替え療法をすべて否定するつもりはないが、なかにはがん患者に不当な金銭的負担を負わせたうえ、効果が期待できない「治療」を提供する詐欺まがいのものが結構ある。

がんは、まだまだすべて克服できたとは言い難いが、早期発見し、現代医学の標準治療を行うことが、対応としてもっとも推奨できる。民間療法、代替え療法を取り入れる場合も、主治医にぜひ相談して頂きたいものだ。小林麻央さんも、最初にそのようにしておられたら、もしかしたら違った予後だったかもしれない。亡くなった方を非難する積りはなく、ただ彼女に自分を投影しておられた同じ病の方々には、不用意に不安に陥ることなく、これまでの治療を続けて頂きたいものと念願している。

産科医療事故 

医療事故が起きた時、関与した医療従事者は、大きな自責の念に捕らわれることが多い。そうでなくても、周囲から批判の目に晒される。故意に起こした犯罪的なものでなければ、医療従事者の情報は秘匿されるべきである。それが、医療事故の真相を明らかにし、次の事故を防ぐためになる。2005年WHOのガイドラインにはそのように記されている。こちら。

坂根医師は、下記の記事で、いわば医療従事者の「過失」を追及し、社会的にそれを示す懲罰的な対応をする、日本産婦人科医会と日本医療機能評価機構の問題を論じている。彼女の述べる通り、医療事故当事者の医療従事者は保護されなければならないのは、最初に述べた通りだ。両者が、産科医療の萎縮をもたらし、産科医療を危機に陥らせている、と警鐘を鳴らしている。

ここでは、天下り組織である日本医療機能評価機構の産科補償制度について検討してみたい。

日本医療機能評価機構は、補償金の掛け金と、補償金の差が大きく、莫大な内部留保をため込んでいる。同機構のウェブサイトを見ても、財務状況が公開されていない様子なので、大まかな推測をここでしてみる。

同機構のウェブには、掛け金について以下のように記されている。

『本来必要となる掛金の額は、1分娩あたり24,000円となりますが、本制度の剰余金から1分娩あたり8,000円が充当されるため、分娩機関から支払われる1分娩あたりの掛金は16,000円となります』

4年前に、掛け金が30、000円から16、000円に引き下げられた。内部留保が、おそらく数百億円のオーダーで溜まっていると想像されるが、そのごく一部を掛け金の値引きに宛てているようだ。また、ウェブでは、同機構のこの産科医療補償制度に加入している医療機関が99.9%であると繰り返し述べられている。

年間出生数を大まかに100万人とすると、掛け金の総額は 16、000円/出生一人x100万人/年=160億円/年

一方、補償金を給付するケースはここ数年減少してきている。少子化の進展とともに、補償金給付条件を厳しく出産前後の原因不明の脳性麻痺に限定しているためだろう。平均して200人前後のようだ。補償金は、一人当たり3、000万円(20歳まで分割されて支払われる)である。

補償金総額は 3,000万円/一人x200人/年=60億円/年 

かなり大まかな概算だが、年100億円前後が内部留保としてため込まれている可能性が高い。

これだけの内部留保を保持する特殊法人は、それほどないことだろう。同機構が、医療事故の情報をマスコミに流し、医療事故は医療機関、医師の過失である、という世論を誘導するのは、同機構が存続する理由作りのように思える。これでは、医療事故の本当の原因究明に寄与しないばかりか、医療を萎縮させることによって、国民に大きな損害を与えているということになる。

日本産婦人科医会、日本医療機能評価機構は、医療事故対応を根本的に改めるべきである。

以下、引用~~~

産科医療補償制度と日本産婦人科医会は産科医をリスクにさらしていないか

現場の医療を守る会世話人代表              
つくば市 坂根Mクリニック 坂根 みち子

2017年6月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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このところ、産科医療事故の報道が続いている。最初は、2016年12月12日だった。愛知県の産婦人科診療所で3年間に2人の妊産婦死亡があり、日本産婦人科医会が直接指導に乗り出したとの報道で、15日には同会常務理事の石渡勇氏が記者会見を開いた。ネット上では早速診療所の同定とバッシングが始まった。その診療所は、医会より分娩停止を指導され、結局閉院している。

そして、年が明けて2017年4月17日からは、ターゲットが無痛分娩になった。麻酔を使った「無痛分娩」で13人死亡・・厚労省急変対応求める緊急提言というものであった。

読売新聞(yomiDr.)の記事を良く読むと、厚労省の提言ではなく、厚労省の一研究班(池田班)のもので、2010年1月から16年4月までに報告された298人の妊産婦死亡例のうち、無痛分娩を行っていた死亡例が13人(4%)あったというものだった。うち、麻酔が原因でなくなったのは1人。これを「無痛分娩」で13人死亡し、厚労省が緊急提言した、という見出しで出したのだ。

嫌な予感がした。

この後も報道が続く。特に読売新聞のyomiDr.では詳細で持続的な報道が続いた。

5月10日 読売
「無痛分娩」妊産婦死亡など相次ぎ・・・件数や事故状況、実態調査へ
麻酔で出産の痛みを和らげる「無痛分娩」をした妊産婦に死亡を含む重大事故が相次いでいるとして、日本産婦人科医会が実態調査に乗り出した。(中略)医会の石渡勇常務理事は、「無痛分娩そのものが危険なわけではないが、実施には十分な技量と体制整備が必要で、希望者が安全に受けられる仕組みを整えたい」と話している。
5月27日 産経
医療ミスで出産女性が死亡 神戸の産婦人科病院長を刑事告訴 業務上過失致死罪で(以下筆者)この事例では、示談金を支払い後に遺族が刑事告訴している。
5月31日 朝日
「無痛分娩」全国調査へ 妊産婦死亡受け、産婦人科医会
医会の石渡勇常務理事は「人員配置が不足していないかなどを調べた上で、安全対策のマニュアル整備や、安全性を担保する認定制度が必要か検討したい」
6月6日 読売・報知
帝王切開時の麻酔で母子に重度障害・・・報告せず
京都府の産婦人科診療所が昨年、帝王切開で同じ方法の麻酔をして母子が重度障害を負う例があったにもかかわらず、日本産婦人科医会に報告していなかったことがわかった。
6月12日 朝日
無痛分娩の麻酔で母子に障害 京都の医院、別件でも訴訟
この医院では昨年5月にも同じ麻酔方法で母子が重い障害を負っており、日本産婦人科医会が調査を始めている。
(以下筆者)この事例は、産科医療補償制度で有責とされ、原因分析報告書と3000万円の補償金のうち初回の600万円を入手後、9億4千万円の損害賠償を求める訴訟が起こされている。

一体何が起こっているのだろうか。

まず最初に確認しておきたいが、日本の妊産婦死亡率は妊婦10万人あたり4人前後で推移しており、年間死亡数は40人から50人と世界トップクラスの低さを維持している。

筆者は産科については全くの門外漢であるが、医療事故調査制度については多少なりとも関連を持ってきた。そして今回の一連の報道で感じている問題点を3つ挙げる。

1.妊産婦死亡の自主的な報告を集めている日本産婦人科医会が、記者会見をして事故について公表した点。これにより報告した当事者が大きな不利益を被った。

日本産婦人科医会への妊産婦死亡の報告は、今後の医療のために各医療機関から自発的に行われているものである。当然の事ながら報告するからには、WHO医療安全のためのドラフトガイドラインを遵守して、有害事象の報告制度の1丁目1番地、「報告者の秘匿性と非懲罰性が担保され」なければならない。

ところが、日本産婦人科医会の石渡常務理事は記者会見して公表してしまったのである。そして、医療機関、医師情報は、メディアにより詳しく報道拡散され、医療者は世間からバッシングを受け、身内の医療界からも断罪され、さらに遺族からは民事でも刑事でも訴えられている。

この展開は、群大腹腔鏡事件のデジャブのようである。

2.産科には、日本初の無過失補償制度が出来たと聞いていたが、産科医療補償制度が実際には無過失補償制度ではなく、かつ、訴訟を防ぐ制度設計になっていないために、高額の訴訟を誘発してしまった点。

この制度について調べると驚きの連続だった。

産科医療補償制度に申請すると、行った医療の評価が報告書に記載され、それが患者遺族にも渡され、インターネットで公開されている。報告書は、個人が識別出来てしまうような内容が記載されており、新聞報道と併せて誰でも詳細な情報を知り得る。この制度では、事故の当事者である医師が、機構の評価に対して異議申し立てをする機会は与えられていない。報告書を公表する前の確認さえない。そして、過失があったとされた場合は制度で補償されない。つまり自分で支払わなければいけない。さらに支払われた補償金を着手金として訴訟を起こされ、報告書が鑑定書として裁判で使われている。

当事者の産科医には、何とも気の毒としか言いようのない根本的に大きな問題を抱えた制度だと知った。

有害事象が起こってしまった時、患者家族と同様に医療従事者も、精神面、業務面ともに大きな影響を受け、最終行為者は「第2の被害者」と言われており、専門的なサポートを必要とする。それがないと、その後の医療に悪影響を与えると、アメリカのハーバード病院のマニュアルには10年も前から明記してある。ところが、日本では当事者が「第2の被害者になりうる」という認識さえされておらず、産科医療補償制度ではサポートするどころか、当事者を精神的にも金銭的にも社会的にも追いつめ、ベテラン医師の現場からの立ち去りを誘発している。

明らかな人権侵害である。

産科医療補償制度には、日本産婦人科医会の石渡常務理事も深く関わっておられるが、制度の委員に真の医療安全の専門家がいないのではないか。そうでなければ、これほどの欠陥が放置されるわけがない。

3.無痛分娩が危険であるかのような報道がなされた点。

アメリカやフランスでは60~80%を超える無痛分娩だが、日本では数%と極めて少ない。理由の第一は医療資源不足。日本では産科医も麻酔科医も圧倒的に足りず、麻酔を必要とする無痛分娩まで手が回らない。また日本では出産を取り扱う医療機関の規模が小さいところが多く、麻酔科医を置かずに、産科医が麻酔も担当するために、無痛分娩の取り扱いに限界があるのである。医療資源不足は大病院といえども同様だが、それに加え日本では従来「出産は痛みに耐えてこそ」という精神論が幅をきかせており、麻酔科のそろった大きな医療機関でも「痛みを取るため」の無痛分娩に対する優先順位がなかなかあがらないのである。

筆者は、20年前にアメリカで無痛分娩により出産した経験がある。その時は日本のお産事情と比較するために敢えて無痛分娩を選択した。もちろん医療費の高い米国でその時の加入していた保険が出産をカバーしていたから可能であった。無痛と言っても痛みは残る。だが、それまでの出産に比べて1/10程度の苦痛で済んだ。そして計画的に無痛分娩を選択した場合の最大のメリット
は、体力の温存である。1泊2日(今は2泊3日が多いと思われる)で退院して、すぐに上の子供たちを含めた育児が始まるので、出産で疲弊しないで済んだ事は大変有り難かった。

その時入院した病院で読んだ雑誌に、日本の無痛分娩率の低さを取り上げて、日本女性は痛みを感じないのか、という特集記事が組まれていたのを思い出す。もちろん選択肢が与えられていないだけである。それから20年、ようやくその機運が持ち上がってきたところで、今回の一連の報道である。

今回報道された事故では、確かに不幸な転帰となり、改善すべき点はある。だが、いずれの医療機関でもほとんどの分娩はきちんと行われてきたのであり、医師たちは出産と言う奇跡をサポートするために全力を尽くしてきたはずである。世界的に見て少ない医療資源で非常に優れた成績を収めてきたのは誇るべき事実である。今の世界の医療安全の考え方は、「レジリエンス・エンジニア
リング」といって普段上手くやっている事から学び、それを増やすという臨機応変型のシステムが推奨されている。

もちろん、失敗から学び、各医療機関の情報公開や分娩体制の改善がなされる事も必要である。ただし、それらは各医療機関が自ら行うべきものであって、上から目線で指導するものではない。どういったサポートが必要か、各医療機関を訪ねてコミュニケーションを取るところから始めて、ボトムアップしていくのが、本当のサポートである。

確かに、大きな医療機関で複数の産科医と麻酔科医がいて、チームで分娩をサポート出来る体制が理想である。そうはいっても、大野病院事件をきっかけに分娩施設は15%減少したままであり、各地で医師は高齢化し、少子化は進行している。筆者が日本でも無痛分娩という選択肢が増える事を願った20年前から、状況は全く改善していないどころか悪化の一途である。

このような現実を直視せず、日本産婦人科医会は、「報告させ、調査、指導し、分娩中止を勧告」しているのである。そしてこの先は認定制度を作るのであろう。産科医たちはよくもまあ黙ってこれに従うものだ。この数ヶ月であっという間に、医師1人の医療機関で無痛分娩を取り扱うのは許されない、と言う空気になってきたが、そんな無い物ねだりを声高に叫んでも国民が望む医療体制になる前に現場の産科医たちの心が折れてしまうだろう。さらにアメリカ型の高額の訴訟費用に堪え兼ねて分娩から撤退してしまう可能性が高い。

石渡氏のお膝もとの茨城では医師不足が深刻(常時全国ワースト3にランクインされる)で、医師数が全国平均を越えるつくば市でさえ、分娩出来る医療機関は3カ所しかなく、皆出産場所を求めて右往左往している。無痛分娩だろうが、自然分娩だろうが選択肢は多い方が良いのだが、それどころではないのである。

今ある医療資源を有効活用して、どうやってより安全に国民のニーズに応えてくか、絶妙なバランス感覚が必要である。求め過ぎてこれ以上現場を潰してしまったらこの国に未来はない。

2011年、医療事故調査制度と無過失補償制度が完備したスウェーデンでは、医療事故の裁判は激減し、その分野における弁護士の仕事もなくなったが、無駄な争いで国民も医療現場も疲弊する事もなくなった。かの地ではメディアにも守秘義務があり、患者側からだけの一方的な報道はされない。

メディアも日本産婦人科医会もそろそろ学ぶ時期ではなかろうか。

緩和ケア病床について 

がんは、老化現象と密接に関係する。したがって、高齢化が進むに従い、がんによる死亡は増え続ける。

がんによる死亡者数は、2014年の時点で368103名。がんも種別、悪性度、早期発見によって助かる可能性が高いが、これだけの患者が「がんの末期」を経て亡くなることも事実だ。

末期がんの時期に、数週間から数か月からにわたり、激しい痛みなどがんに固有の問題に患者は悩まされる。患者が、そうした悩み、苦しみに煩わされずに、人生の最後の時間を有意義に過ごせるようにすべきだ。それを可能にする施設が、緩和ケア病床だ。

ところが、緩和ケア病床の現状があまりに貧弱だ。2016年時点で累計施設数378、累計病床数7695に過ぎない。単純計算で、がんによる死亡者のうち緩和ケア病床を利用できるのは、約48名の内の1名だけに過ぎないことになる。

緩和ケア病床、施設数の推移が、こちらに掲載されている。この3、4年、新たに届けられた緩和ケア病床数、施設数が、横ばいか、微増に留まっている。緩和ケアは、人手がかかり、施設としても高度なものが要求される。医療スタッフへの負担も大きいと聞く。

経済的な面に着目すると、医療費削減政策を反映してか、長期間入院の患者に対する診療報酬は、むしろ下げられている。長期間入院の必要性のある場合もあるのだから、長期間入院で診療報酬を下げ続けるのは止めるべきだ。緩和ケア病床の回転率を高めようというのは、悪魔的な発想だ。また、以前にも指摘したことがあるが、施設要件として、地域のがん医療機関病院であるか、日本医療機能評価機構の評価を受けている、またはそれに準じていることが要求されている。日本医療機能評価機構は以前から記している通り、天下り組織であり、その機能評価は医療機関の正しい評価を下すものではなく、同機構が無視できぬ額の対価を医療機関に要求することが大きな問題だ。緩和ケア病床の診療報酬上の認可要件として、同機構の評価があるのは、緩和ケア医療機関への経済的な負担になっているはずだ。その意義も乏しく、即刻その認可要件を取りやめるべきだろう。

がんの緩和ケアは、医療費がかかる。だが、これだけのがんによる死亡があるのだから、緩和ケアの必要性は高い。上記の日本医療機能評価機構の評価等、医療機関にとって負担になることを減らして、緩和ケア病床を何としても増やす必要がある。在宅で緩和ケアを実施するということも聞くが、患者家族にとっては、負担が大きすぎるのではないだろうか。やはり専門の施設で緩和ケアを受けることの方が、患者にはメリットが大きいように思える。緩和ケアの充実は待ったなしだ。

がん末期の方の要望が公になることは少ない。これから老いを迎える我々自身が、がんにかかり根治が期待できない時に、どのような生活を期待するか、よく考えておくべきではないだろうか。四人に一人弱の方ががんで亡くなる時代なのだから。

ある後期研修医の自殺 

後期研修医が自殺した。明らかな過労死だ。労災認定は当然のことだろう。だが、それで彼女が戻ってくるわけではない。これで終わりにして良いわけがない。

医師になって4年目。それも、記事によれば、看護助手をしながら医学部を目指し、入学なさったのは27歳だったようだ。医師になり、医療に従事することを念願しておられたのだろう。医師としてこれからという時期の出来事であり、この若い医師の死に言葉を失う。

カルテを長時間見ていたのは、自分の勉強のためと言ってはばからない「病院側」の人間は、一体医療の現実を知っているのだろうか。前期研修医が待遇面で改善されたために、後期研修医の労働条件が厳しくなっているとも聞く。後期研修医がどれほどの労働条件下にあるのか、この病院側の人間が現場に入り見るべきではないか。

もう一つ、この病院も日本医療機能評価機構の評価認定を受けている。以前から繰り返し記してきたが、同機構は、医療機関の設備等については微に入り細に渡ってチェックするが、医療従事者の労働条件については殆ど見ようとしない。労働基準法違反が横行しているのを放置している。それで、医療機関から認定料等と称して、数百万円の料金をかすめ取っている。もちろん、同機構は、天下り組織である。こうした天下りは、やりたい放題だ。

この病院のサイトには;

2006年2月20日 日本医療機能評価機構・付加機能(救急医療機能)認定 (Ver.1.0)

とあった。同機構は、評価認定する際に、一体何を見ていたのだろうか。労働集約産業である医療なのだから、従事者の労働条件・環境をこそまず観察し、評価すべきだったのではないか。意味のない医療機関評価を行っている、日本医療機能評価機構は提訴されるべきだ。医療従事者の労働条件が劣悪な医療機関が、良い医療を提供できるわけがない。こうした医療機関評価で甘い汁を吸っている連中は、罰せられるべきだ。

その他、彼女の死の理由には、様々な要因があることだろうし、それら各々が彼女にとってどれほどの重みをもっていたか、傍からみても分からない。関係者は、ぜひこうした悲劇が起きた理由、原因を突き詰めてもらいたい。同じような若い医師の悲劇を再び招かぬために。

木元文さんのご冥福を祈りたい。

以下、引用~~~

<新潟市民病院>「過労が原因」女性研修医自殺、労災認定へ
毎日新聞 6/1(木) 7:01配信

 ◇新潟労基署が方針 遺族「残業最多で月251時間」

 2016年1月、新潟市民病院(新潟市中央区)の女性研修医(当時37歳)が自殺したのは過労が原因だったとして、新潟労働基準監督署は31日、労災認定する方針を決めた。遺族に対しても、方針を通知している。【柳沢亮】

 亡くなった研修医は木元文(あや)さん。看護助手をしながら医師を目指して勉強を続け、2007年、新潟大医学部に合格。卒業後の13年から研修医となったが、15年4月に後期研修医として同病院に移ると、救急患者対応の呼び出し勤務が激増。16年1月24日夜、行き先を告げず一人で自宅を出たまま行方不明になり、翌朝、家族が自宅近くの公園で遺体を発見した。

 新潟県警によると、死因は低体温症で、遺体のそばには睡眠薬と飲み終えた酒が落ちていた。自殺前、家族に「人に会いたくない」と漏らしていたといい、県警は自殺と判断している。

 木元さんの夫は16年8月、「長時間労働による過労と精神疾患が自殺の原因」などとして同監督署に労災を申請した。木元さんの電子カルテの操作記録から月平均時間外労働(残業)時間は厚生労働省が「過労死ライン」と位置付ける80時間の2倍を超える約187時間、最も多い月では251時間に達していたと主張した。

 一方、病院側は木元さんが自己申告していた残業時間は月平均約48時間だったと反論。「電子カルテの操作記録の多くは医師としての学習が目的で、労働時間に当たらない」と説明していた。

 木元さんの夫は毎日新聞の取材に「労災認定され安心したが、亡くなった人は戻らない。過労死は病院による殺人に等しい」と話した。「全国過労死を考える家族の会」東京代表で、自らも医師の夫を過労死で亡くした中原のり子さんは「勤務医の過労死は全国的な問題。聖職者意識や犠牲的精神など個人の力で解決できるものではなく、社会的な支援をすべきだ」と話している。

在宅医療推進は果たして可能か 

下記の記事の機能別入院病床の予測数を厚労省のデータから示す(単位 万 病床)

         2014年7月現在  2025年

高度急性期   19.1        13.0

急性期      58.1        40.1

回復期      11.0        37.5

慢性期      35.2        24.2~28.5 

急性期、慢性期ともに減らし、回復期だけは増やす、という方向が見て取れる。トータル10万病床前後の減で、とくに高度急性期・急性期病床が24万病床の減で、現在の3割減少となる。地域によって増減に差がでるのだろうが、この減少は大きい。

一方、予測死亡者数(単位 万人)は

2010年      119.7
  15        131.1
  25        153.7
  40        166.9(予測数の最大)

患者の希望として55%が在宅での医療介護を希望している、とあるから、厚労省の計画通り、在宅医療を推し進めると、およそこの半数が、在宅で最後を迎えることになる。死亡の原因としてはガンが多く、また認知症も増えてゆく。おそらく数百万人の単位で、在宅医療になることだろう。

問題は、地域包括ケアで在宅医療を進めるとなっているが、在宅ケアの担い手、すなわち家族が、存在するのか、それに耐えられるかということだ。いくら多職種のチームで支えるといっても、在宅で患者のケアを担うのは、家族になる。高齢核家族化の状況で、それが可能かという深刻な問いを抱かざるを得ない。また、今後生産年齢人口が減少し続けるが、在宅医療は働き盛りの国民が担うことになり、生産年齢人口減少を加速させることになる。恐らく、数百万人規模で、在宅医療を担うことになるのではないだろうか。

在宅医療の進展にともない、急性期医療の需要が高まる。それを、医療サイドが供給し続けられるのだろうか。おそらく、在宅診療所にかなりの部分を任せる積りなのだろうが、現在医師の高齢化が進んでいる診療所に、24時間体制の在宅医療の救急対応も担わせるのだろうか。

この先見えてくるのは、在宅医療で苦労する患者・家族の姿であり、また生産年齢人口の減少から加速度的に国力が低下し続ける状況だ。医療現場も、急性期医療は、恐らく数日待ちとなる。救急でかかろうにも、すぐには診てもらえない、という状況が現実になる。

現在も、政府は、医療費を中心に、自然増を毎年2000億円以上減らし続けている。この入院病床削減・在宅医療増の政策も、医療介護費の削減の一環だ。一機200億円以上といわれるオスプレーを17機導入し、さらに効果に疑問のあるミサイル防衛のために数千億円を費やす。そちらをこそ削減すべきではないのか。
 
以下、引用~~~

長期入院減らし、在宅加速へ=25年の地域医療構想-厚労省
17/05/10記事:時事通信

 厚生労働省は10日、各都道府県が2025年の医療提供体制を示した「地域医療構想」の分析結果を公表した。構想は複数の市町村で構成する全国341の区域ごとに推進。その約8割に当たる270区域で、長期療養向けの入院ベッドが15年度より減る見通しだ。入院の必要性が低い高齢の患者を在宅医療に移す流れを加速させるという。
 
 構想は、団塊の世代が全て75歳以上になる25年を前に、効率的な提供体制を整えるのが目的。在宅医療を推進して医療費の膨張を抑える狙いもある。
 
 15年度より長期療養向けベッドが減る見通しの区域は、訪問診療や介護サービスの充実など、退院した高齢患者の受け皿整備を急ぐ計画を立てている。救急医療や先進医療を担う「高度急性期」と「急性期」のベッド数も、離島の1区域を除く340区域で減少する方向だ。
 
 一方、リハビリ患者らが入る「回復期病床」は、高齢者のニーズが高まるため、336区域で増加。増加分は、急性期のベッドなどの機能転換により賄うとしている。 【時事通信社】

がんの「免疫細胞療法」 

アマチュア無線の友人で、数年前、肝臓がんで亡くなられた方がいる。一度、私の仕事場にも訪ねてきてくださった。病状をお伺いすることしかできなかった。その後、治療を重ねておられたが、聞くところによると、最終的に治療が効かなくなり、下記記事にある「免疫細胞療法」を受けるようになった。効果は得られず、一方、その経済的負担でご家族も困られたように伺った。彼は、どのような状況でも、理性的に対応する方だと思っていた。そのような方でも、いよいよ人生の最後が迫ってくると、理性的な行動を取れないものなのか、と慨嘆したものだった。彼のことを批判する積りはない。誰でもそのように行動する可能性はあるのだ。

最近、ネットで、「免疫の力でがんを治す患者の会」という団体の宣伝を何度か目にした。坂口元厚生大臣が代表を務める団体だ。彼らの言う免疫療法とは、下記の記事にある免疫細胞療法のことだ。自由診療で、高額の治療費がかかる。その治療を行っている「医療機関」のサイトを見てみると、一回の治療に数十万円以上かかる。治療効果は、効果があったというケースが、1、2割である。この効果判定も、治療者が行っているため当てにならない。下記の記事でもある通り、この免疫細胞療法は、1990年代から多くの自由診療施設で行われてきたが、著効したという話を聞いたことがない。坂口氏のケースも、リンパ節転移のあった大腸がん術後に、免疫細胞療法を受け、8年間再発していない、というだけで、メインの治療は標準治療たる手術だ。坂口氏は、善意での行動なのかもしれないが、元厚生大臣という肩書を利用して、治療の当てがなくなりがん難民となった患者を意味のない治療に誘導すべきではない。

免疫細胞療法自体に詳しくないのだが、細胞障害性T細胞(CTL)、ないしNK細胞を、in vitroで培養、増殖させても、患者の持つ腫瘍に特異的に反応するCTLを増やすわけではなく、また増やされたNK細胞がどれだけ抗腫瘍活性をin vivoで示すか分かっているわけでもない。免疫療法と言えるだけの根拠がない。

免疫調整剤による治療など、本当の免疫療法の進展を期待したい。だが、現在の免疫細胞療法は、治療法とは言えない金儲けの自由診療でしかない。末期のがん患者が、緩和医療を含め適切な治療を受けられるようになることを切に望む。

以下、MRICより引用~~~

がん難民を食い物にする自由診療クリニック -患者はなぜ受診するのか、被
害を避ける処方箋とは-

この原稿はJBPRESS(3月16日配信)からの転載です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49421

内科医川崎市立井田病院?かわさき総合ケアセンター?緩和ケア内科
小杉 和博

2017年5月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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あなたがもし「がん」になったらどんな治療を受けたいですか?

現在、全国の病院で一般的に提供されているがんの治療法は、「標準治療」と呼ばれるものです。
「標準」と聞くと、「普通」や「並」と思われるかもしれませんが、これまで行われてきた数多くの臨床試験の結果導かれた、現時点での最も有効性の高い治療法のことを指します。標準治療は手術、放射線、抗がん剤の3つを組み合わせたものがほとんどです。
一方、そうした従来の医薬品とは全く異なる「再生・細胞医療」が新たな治療法として大きな期待がかけられ、今後の成長分野として大きく注目されています。2012年にノーベル賞を受賞した「iPS細胞」を利用した治療もこの1つです。
残念ながらこうした再生・細胞医療の多くはまだ研究段階ですので、一般的な治療に導入されるような安全性や有効性は確認できていません。

●推奨されない治療に1000万円請求も

しかし、そうした研究段階の医療が実は、保険適用外の自由診療の名のもとに日本では数多く行われているのです。

主な対象疾患は「がん」で、行われているのは「免疫細胞療法」という治療法です。2015年時点の再生・細胞医療市場は約140億円。その約8割は免疫細胞療法が占めています*1。
免疫細胞療法とは患者さんから採取した免疫細胞(リンパ球)を体外で培養・活性化させ、体内に移植しがん細胞を攻撃する、というものです。

古くから行われている治療法ですが、昨年12月に発表された日本臨床腫瘍学会のガイドラインでは、適切な臨床試験が行われていないため、治療法として推奨されないとされています*2。
にもかかわらず免疫細胞療法を提供するクリニックは全国で300か所以上あり、受診する患者さんが後を絶ちません。治療の1回あたりの費用は50万~60万円、複数回受けることが勧められており、総額では300万~500万円かかります。
1000万円を越える事例もあるようです*3。当然、保険適用外ですので費用はすべて自己負担。患者さんは身体的、精神的にも辛い状態に加えて、経済的にも大きなダメージを負ってしまうのです。

このような効果が不確かな治療を、患者さんはなぜ高額な費用を払ってまで受けるのでしょうか?
その原因の1つには、現代日本のがん治療と緩和ケアの深い溝が関係しています*4。

がんは発生した臓器や組織型によって治療法や経過が異なりますが、一般的に早期がんであれば、多くは前述の標準治療により治癒(完全に治ること)が目指せます。
一方、進行がんになってしまうと治癒の可能性は急激に下がります。また、転移や再発がんでは多くの場合、治癒を目指すことは困難になりますので、抗がん剤などでがんの進行を抑えながら「がんとの共存」を目指すことになります*5。

しかし、抗がん剤の効果も永続的なものではないので、投与中に効果がなくなったり、あるいは副作用による辛い症状のため継続が難しくなったりして中止せざるを得なくなります。
そうなるとがんへの直接的な治療ではなく、がんによる辛い症状を和らげる「緩和ケア」へ移行することになります。

●転院先がなく難民となるがん患者

通院中の病院に緩和ケアの専門家がいないと、「もううちでできることはない」「早く次の病院を探しましょう」と半ば追い出されるような形で、転院させられる方も少なくありません。
このようなケースは「がん難民」とも呼ばれ、お聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか。

一方、転院先となる専門的な緩和ケアを提供できる病院は全国的に不足しています。緩和ケア病棟を持つ病院は全国で308しかなく、1年間にがんで亡くなる約37万人(2015年統計)のうち緩和ケア病棟で亡くなった人は、10%しかありません。
また在宅で亡くなるがん患者も約10%と報告されており、全国的には約8割のがん患者は一般病院で亡くなっているのです。
緩和ケア病棟での死亡割合は下の図1に示すように地域格差が大きく、トップの高知県は26%、次いで福岡県の24%、熊本県22%に対して、福島県4%、埼玉県3%、最低の和歌山県は2%しかありません*6。
http://expres.umin.jp/mric/mric094_kosugi.pdf

私が働いている神奈川県では緩和ケア外来の受診まで1~2か月程度かかることもあり、受診を待っている間に亡くなってしまうことも珍しくありません*7。
先日も血液内科の先生から「2月に緩和ケアがある病院へ患者さんを紹介したら、外来受診は5月になると言われた。それまで持たない」と相談を受けました。

また「緩和ケア」=「死が近い」という負のイメージが強く、緩和ケアへの移行を拒否されることもしばしばです。私も抗がん剤で治療中の患者さんに緩和ケアへの移行の話をしたら、「先生、それだけは言わないで」と泣かれたこともあります。
もうできる治療はないと追い出され、がん難民となった方が、緩和ケアへは行きたくないし、待ち時間も長い。何かできる治療があるはず、と必死になって治療法を探した結果、たどり着くのが実は免疫細胞療法なのです。


●遅まきながら国も法整備に乗り出す

そのような患者さんにとって治療の有効性や費用などは大きな問題ではないのかもしれません。
これまで国はこうした免疫細胞療法を提供する自由診療クリニックに対して、規制を設けていませんでした。しかし、2014年に「再生医療安全性確保法」が制定されたことで状況が多少変わってきています。
この法律は再生医療の安全性を確保するため、再生医療を提供する医療機関に対して国への治療計画の提出を義務づけ、細胞加工施設の要件などを定めたものです。

昨年10月、法律で定められた基準を満たさない無許可施設で細胞を加工し、治療を行ったなどとして、厚生労働省は都内の自由診療クリニックに治療の一時停止と細胞製造の停止を命じました*8。
このような安全性に関する規制は必要ですし、弱みにつけ込んだ営利目的の自由診療で損をするような患者さんが減ることを切に願います。

しかし、規制を強化したところで問題の根本的な解決にはならず、患者さんの希望が満たされるわけではありません。そのような自由診療を希望してやまない患者さんの気持ちを、標準治療を提供している一般の医師はもっと真摯に受け止めなければならないと思います。
がん難民を生んでしまう、現代日本のがん治療と緩和ケアの深い溝を埋める方法がもっと必要なのではないでしょうか*4。

1つには、専門的な緩和ケアを提供できる医師・病院が圧倒的に不足している状況の改善が必要です。緩和ケアの専門医は全国でわずか136人しかいません。いまだに県に1人もいないところもありますし、他領域の学会専門医が1000人単位であることと比較しても圧倒的に少ないのです。
また、がん難民の94%が医師の説明に不満を持っており、がん難民はそうでない患者さんと比べて治療の説明時間が有意に短かった、という報告があります*9。つまり、医師と患者さんの間のコミュニケーション不足も一因となっているのです。

医師と良好なコミュニケーションを取るにはどうしたらよいでしょうか?
正直これはかなり難しい問題です。がんの検査結果や治療の選択肢などはすべて医師側が把握しています。例えるなら、医師はスポーツの先生のようなもので、新しい競技を教え、そのルールや道具の使い方を教えるのも医師なのですから、患者は受け手になるしかありません。
その結果、「先生にお任せします」という方が多くいらっしゃいます。しかし、最近は「自己決定を尊重する」ということが医療界の大前提とされており、「それでは困る、自分で決めなさい」と、突然提示された選択肢を選ぶよう医師から迫られます。


●納得できるまで医師に相談する

腑に落ちないまま選んではみたものの、それが医師の考えと合わないと嫌な顔をされ、時には怒り出す医師もいるようです。患者側が完全に不利な状況で、医師とどのようなコミュニケーションを取ればいいのでしょうか?

結論を言えば、納得できるまで医師に説明を求めて、納得できる治療を選んでいくしかないと思います。

本当はいろいろと聞きたいことはあるが忙しそうなので相談しにくい、また何を聞いたらよいか分からない、と遠慮されてしまう方もいらっしゃるでしょう。そんなときでも、その心配な気持ちを思い切って医師に伝えてみてください。治療を受けるのは自分なのですから遠慮する必要などありません。
それでも答えてくれないようなら、ぜひセカンドオピニオンやがん相談支援センターを利用して治療について納得するまで相談できる医師を探しましょう。

私は、納得できないまま治療が進み、後悔をされる方に多くお会いしてきました。また医師と患者も人間同士ですから、どうしても合う合わないはあると思いますし、そういう私も、考え方が合わず離れていってしまった患者さんは何人もいらっしゃいます。
がんと戦う、共存するのは簡単なことではありません。余計な人間関係でストレスを抱えず、ご自身が納得できる治療を受けられる、それが当たり前の世の中になってほしいと思っています。
ただ最後に1つお願いがあります、同じ検査を何回もやることは身体にとって負担になってしまいますので、別の医師を受診するときは、必ず紹介状をもらうようにしてください。


*1=シード・プランニング. 再生・細胞医療研究の現状とビジネスの展望?-
調査結果-2016-9-27
*2=日本臨床腫瘍学会編. がん免疫療法ガイドライン. 金原出版,2016,118p
*3=選択. 2017,3月号,p104-105
*4=Kosugi K, Tsuda K, Higuchi A, et al. Bridge the deep chasm between
patients with cancer and palliative care in Japan. BMJ Supportive & P
alliative Care 2017. doi: 10.1136/bmjspcare-2017-001329
*5=勝俣範之. 「抗がん剤は効かない」の罪. 毎日新聞社,2014,198p
*6=ホスピス緩和ケア白書2015,http://www.hospat.org/white-book_2015-top
.html
*7=ハフィントンポスト.2016-07-12.http://www.huffingtonpost.jp/kazuhir
o-kosugi/terminal-care_b_10935710.html
*8=厚生労働省. 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令
について. 2016-10-31
*9=日本医療政策機構. 政策提言vol.5「がん患者会調査報告-『がん難民』
解消のために-」https://www.hgpi.org/handout/2010-04-16_34_317692.pdf<
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