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医療機関初診料値上げは適切 

医療機関の初診料を、消費税増税とともにわずか(数十円単位?)で上げることが議論されているようだ。

それに対して、SNSでは、また値上げかと医療機関に反感を示すような議論が多い。

だが、この値上げを批判するのは間違いだ。

そもそも、消費税は、医療機関にとって損税。医療機関は、物品購入などに対して消費税を支払うが、収入たる窓口収入・診療報酬では消費税は上乗せされていない。正確に言うと、ごくわずか上乗せされているのだが、下記の基金にその分の資金を「分捕られている」のだ。

この地域医療介護総合確保基金は、地域の医療介護施設の維持・発展のために用いられることになっているが、配られる資金の大部分は「箱物」建設に用いられている。行政が、この基金の差配を支配することで、利権を得ている構図が見えてくる。地域医療介護は、財政的に極めて厳しい状況にある。消費税分の診療報酬は、直接各々の医療・介護機関に支払われるべきなのだ。

こちら。

このわずかな初診料値上げが行われても、大部分は、この基金に吸い上げられてしまう可能性が高い。問題は、このピンハネ構造にある。

また、もともと診療報酬における「技術料」は、国際的にみてもきわめて低い。診察料は、その技術料の中核部分だが、それを低いままにしておいて良いはずがない。

こうして、医療費を抑えることにより、やがて国家財政が破たんするときには、まず最初に医療制度が立ち行かなくなる。小林慶一郎編著「財政破綻後 危機のシナリオ分析」において、国家財政破たんがまず社会保障の崩壊、医療機関の財政破綻をもたらすことが述べられている。それは遠い将来の見通しではない。すぐそこまでやって来ている。

この程度の技術料の見直しに、硬直的な反対を示すことは見当外れであり、本当の問題を見過ごすことになる。

厚労大臣が医師の人事権を握る 

医師のサイトm3をしばらく訪れていなかったら、「凄い」法改正が行われていた。

厚労大臣が、各学会に向けて、専門医の配置を指示できる仕組みが出来上がりつつあるのである。

専門医機構を介するのは面倒だ、厚労大臣が直接指示するようにしよう、ということなのだろう。

これは既定の路線だったのかもしれない。専門医機構は、専門医試験の事務だけを担当し、医師の人事権を行政が直接握るというスキームである。

かくて医師は、高額な専門医試験受験費用、資格維持費用を専門医機構に払いつつ、学会に学会費を払い続けなければいけなくなる。その上、行政による人事権により仕事・居住地まで指示されることになる。

だが、行政の思い描く、官製医局というか、行政による徴医制は、思い通りには実現しないだろう。

その理由はいくつもあるが;

〇職業選択の自由を侵す制度となる。憲法の基本的人権にも抵触する。
〇医師の身分保障、労働環境の整備まで、行政は行わない・・・人事権の美味しいところだけを行政がつまむことになる。確かに、ドイツ等では、行政の指示により、医師は一定期間地域医療に従事することになっているが、その背景には手厚い医師の身分の保証がある。医師からは、すべての医師を公務員化するようにとの要求がでるかもしれないが、医療費削減の強い要請のあるなか、そのようなことは決して行われない。 
〇日本医療機能評価機構という天下り先を潤し、行政の権益にのみ資するような、この制度に囚われることを嫌悪する雰囲気が若い医師の間に蔓延する可能性が高い。
〇公的医療保険はおそらく高齢化の進展のための財政難、貧弱な医療政策により、ジリ貧になる。すると、この新たな制度と相まって、自費診療、さらには関連別業種に医師が向かうことになる。
〇行政と直接関係のない、任意団体である学会と厚労大臣の関係も法的に不明確。厚労大臣が、学会に「命令を下す」ことができるのだろうか。学会の抵抗が予想される。

機を見るに敏な優秀な学生たちは、きっと医学部を敬遠するようになることだろう。現在の医学部人気は、一種のバブルだから、それが沈静するだけでも良いのかもしれない。

高校生の諸君には、この行政による医療支配の進展をよくよく見て、自らの将来を決めてもらいたいものだ。

それにしても、専門医機構とは一体何のため?

以下、m3より、このニュースの一部を引用~~~

 先の通常国会で成立した改正医師法で、新専門医制度において、国が日本専門医機構等に対し、意見を言う仕組みが新設された。地域医療に重大な影響が及ぶ懸念がある場合など、特に必要があると認めるときなどは、「必要な措置」の実施を要請することができる。その対象は同法上、「医学医術に関する学術団体その他厚生労働省令で定める団体」となっている。省令案では、日本専門医機構だけでなく、基本領域の18学会を加え、計19団体とした。厚労大臣が、同機構を通さず、学会に直接要請ができる枠組みが誕生することになる。

終末期医療の法制化 

終末期医療を原則的に患者本人の意思に基づいて決定すること、最終的には尊厳死を認めることは、現在の医療にとって重要な課題である。急増する医療費の多くが、終末期医療に費やされていることにも我々は関心を向ける必要がある。

だが、延命中止・尊厳死を法制化するのは慎重であるべきだ。とくに、現在の政権のように基本的人権を抑圧する傾向の強い政権政党が、そのような立法に携わるのは問題が多い。

人が死ぬ状況は、様々だ。各々が生きてきた人生、周囲の状況によって大きく変わるからだ。患者本人・家族それに医療現場の意向が、最大限に尊重されるべきだろう。ホスピス等終末期医療の体制を充実させなければならない。

以下、引用~~~

終末期医療:延命中止、意思確認に力点 自民、新法検討

2018年09月16日 06時30分 毎日新聞

 自民党は、終末期医療のあり方を規定した新法作成の検討に入った。終末期医療を巡っては2012年に超党派の議員連盟が尊厳死法案をまとめているが、本人の意思に反して延命措置が中止されることへの懸念が根強い。同党は、法案を抜本的に見直し、継続的に本人の意思を確認するなど手続きに力点を置いた新たな法案への練り直しに着手。与野党各党の賛同も得て早ければ来年の通常国会への提出を目指す。【酒井雅浩】

 末期がんや老衰により回復の見込みがない患者に対し、人工呼吸器の装着や人工透析などの延命治療を施すのは、患者の苦痛や家族の介護負担などを考慮すると必ずしも患者のためにならないとの考え方がある。一方で、現行法では医師の延命措置の中止が刑事責任を問われる恐れもあり、医療従事者を中心に法整備を求める声が出ていた。

 12年の法案は「終末期」について患者が適切な医療を受けても回復の可能性がなく、死期が間近と診断された状態にある期間と定義。延命措置を中止できるのは、患者が書面などで意思を表示している場合とした。ただし、この規定に従わずに延命措置を中止することもできるとしている。

 だが、終末期患者の7割は、意識不明や認知症などのため自分の意思が伝えられないとのデータもある。障害者の団体などからは「意思を示すことができない患者が尊厳死に追い込まれるのではないか」などの懸念が示された。法案は国会提出に至っていない。

 そこで、自民党の終末期医療に関するプロジェクトチームは8月29日の会合で、法案をゼロベースで見直すことを決めた。

 近年、医療現場では、最期の迎え方を患者本人と家族、医師らが継続的に話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)の取り組みが進んでいる。継続的に話し合うので本人の意思の変化も反映できる。

 同党は新法案にACPの考え方を盛り込み、患者の意思決定のあり方の透明化を医療現場に促し、国民の理解を得たい考えだ。

産科医療補償制度が、脳性麻痺医療訴訟を増やしている 

私自身、臨床から離れたこともあり、産科医療補償制度のことは意識の外になってしまっていた。同制度が、立ち上げ時に、心配された医療訴訟の増加をもたらしている。

この制度は、不幸にして分娩時に脳性麻痺にかかったお子さんを経済的に救うことを目的に作られた制度だ。

だが、その制度が、脳性麻痺の責任を医療機関・医師に求める訴訟を増やしている、というのだ。

脳性麻痺は、1000出生に1から2例、一定の割合で必ず生じる。その内、9割は胎内で生じる、すなわち分娩の問題で生じるのではない。こちら参照。この制度の「原因分析」によって、脳性麻痺訴訟が増えることは、本旨ではないし、脳性麻痺の発症機構からして、医学的に大きな問題を孕む。

この制度を運用する日本医療機能評価機構は、莫大な内部留保を蓄えている。一年で100億円程度余剰金を得ている。ご存知の通り、同機構は、巨大な天下り組織である。

行政が、不適切な医療行政を行い、利権をえる一方、医療はおそらく根拠のない医療訴訟の増加に直面している。

以下、引用~~~

脳性麻痺訴訟の提訴が急増している

この原稿は月刊集中6月末日発売予定号からの転載です。

井上法律事務所所長 
弁護士 井上清成

2018年6月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1.脳性麻痺に関する紛争・訴訟の増加
平成30年(2018年)4月11日、日本記者クラブにおいて、公益社団法人日本産婦人科医会の医療安全部会が、「産科医療補償制度の現状と今後の課題」に関して記者懇談会を行い、その要旨が日本産婦人科医会報5月号に掲載された。目に付いたのが、「紛争・訴訟の減少」という項目である。もちろん、文字通り本当に紛争・訴訟が減少しているのならば、喜ばしい。「紛争・訴訟の減少」の項目では、「近年の産婦人科の訴訟件数の推移は減少傾向にある。産科医療補償制度開始後にはその傾向は顕著であり、10年前に比べて3分の1になっている。本制度の補償対象事例において、本制度とは別に損害賠償請求等がされたのは、補償が決定した2,233件のうち97件(4.3%)にすぎず、このうち訴訟提起事案は51件であった(平成29年12月末における集計)。」などと述べられていた。そのまま記者発表の額面通りの評価でよいのならば誠に喜ばしいことであるけれども、残念ながら、客観
的な動態の数値はそうではない。実際は、産科医療補償制度の補償対象事例となった重度脳性麻痺に関する紛争や訴訟は、近時になって急増しているのである。

2.産科医療補償制度の9年間の推移
確かに、近年の「産婦人科」全体の「訴訟件数」の推移は、減少傾向にあると言ってよい。平成24年(2012年)の年間59件以降、平成29年(2017年)までの5年間は年間56件・60件・50件・52件・54件とほぼ50件台で推移し、低位で安定していた。ほぼ3倍であった平成18年(2006年)の年間161件、ほぼ2倍であった平成19年(2007年)の年間108件の頃とは隔世の感がある。もちろん、訴訟減少の最大の要因は、脳性麻痺のみを対象とする産科医療補償制度のためなどではなく、産科医の逮捕と刑事責任追及が行われた福島県立大野病院事件での無罪判決(平成20年〔2008年〕8月20日福島地裁)の強烈なインパクトのためにほかならない。

さて、それはともかく、ここでの最も重大な問題は、産科医療補償制度のお蔭で、脳性麻痺の紛争(損害賠償請求事案)や訴訟提起事案が果たして本当に減少したのかどうかということであろう。引用した日本産婦人科医会報の「平成29年(2017年)12月末における集計」だけでは、どちらであるとも全くわからない。そこで、平成25年(2013年)時点における資料(平成25年11月27日付け公益財団法人日本医療機能評価機構産科医療補償制度運営委員会「産科医療補償制度見直しに係る報告書」40頁・参考5「紛争の防止・早期解決に係る状況」)と併せて考えることにしよう。
産科医療補償制度は平成21年〔2009年〕に開始したので、平成30年〔2018年〕である本年が制度開始10年目となる。そこで、産科医療補償制度のこれまでの9年間の推移を、前半期(平成21年〔2009年〕~平成25年〔2013年〕。ただし、正確には、統計時点の都合上、平成25年〔2013年〕5月末までの4年5ヶ月間)と後半期(平成26年〔2014年〕~平成29年〔2017年〕12月末まで。ただし、正確には、統計時点の都合上、平成25年〔2013年〕6月1日からの4年7ヶ月間)との2つの時期に分けて見ることとする。

3.後半期は件数2倍・割合3倍に激増
前半期における「産婦人科」すべての「訴訟事件」は合計370件(ただし、ここは丸々5年間の件数)で、そのうち重度脳性麻痺に関する紛争(損害賠償請求事案)は33件で、さらにそのうちの訴訟提起事案は17件であった(平成25年11月27日付けの前掲資料より)。つまり、「重度脳性麻痺に関する訴訟件数」の「産婦人科すべての訴訟件数」における割合は、4.6%である。ところが、後半期における「産婦人科」すべての「訴訟件数」は合計216件(ただし、ここは丸々4年間の件数)で、そのうち重度脳性麻痺に関する紛争(損害賠償請求事案)は64件で、さらにそのうちの訴訟提起事案は34件であった。つまり、「重度脳性麻痺に関する訴訟件数」の「産婦人科すべての訴訟件数」における割合は、15.7%である。 
したがって、後半期は、前半期と比べて、重度脳性麻痺に関する訴訟件数が17件から34件に倍増してしまった。さらに、産婦人科全般に占める重度脳性麻痺の訴訟件数の割合も、4.6%から15.7%へと3倍にも増加しているのである。
前半期と比べて後半期には、産婦人科全般の訴訟件数のみならず全診療科目の訴訟件数も明らかに減少しているにもかかわらず、重度脳性麻痺に関する訴訟提起事案(もちろん、紛争全般も。)だけがひとり全く逆方向に激増してしまった。件数が2倍、割合は3倍にもというのでは、たとえ諸原因による誤差を十分に考慮したとしても、それらだけでは済ませられない。尋常でない増加ぶ
りと評価してよいであろう。
誠に残念なことではあるが、これこそが客観的な数値である。到底、産科医療補償制度関連だけは、「紛争・訴訟の減少」はしていない。

4.産科医療補償制度の現状と今後の課題   
産科医療補償制度は、確かに開始当初の前半期には重度脳性麻痺に関する紛争・訴訟を減少せしめた(と思いたいところではある。ただし、ひいき目に見ないとすると、全診療科目や産婦人科全般の大きなトレンドと並行しただけだとも評しうる)。しかし、いかように捉えようとも、産科医療補償制度が浸透した後半期になって、急激かつ大幅に、紛争・訴訟が増加してしまった。これこそが、産科医療補償制度の現状であり、確かな事実なのである。
そうすると、今後の課題は、「紛争・訴訟の増加」の原因を取り除いて「紛争・訴訟の減少」に転じさせるべく、改善策を講じることにほかならない。
産科医療補償制度が浸透した後半期になってからの「紛争・訴訟の増加」であることからして、最も有力に考えられる原因の筆頭は、やはり「原因分析のあり方」である。現状の「原因分析のあり方」では、その一から十まで「紛争・訴訟の増加」の誘因になっていると考えられもしよう。そうすると、その原因分析の本質は尊重しつつも、諸々の技術的な「あり方」については全面的に改善する方がよい。
丁度良い改善のモデルがある。院内事故調査を中心として、非懲罰性と秘匿性の原理に導かれた「医療事故調査制度」が、まさにそれであろう。全診療科目に普遍的な制度として現に施行されている「医療事故調査制度」を見習って、産科医療補償制度だけに特有な「原因分析のあり方」の現状を改善していくべきである。

前沢医師、講演会、於札幌市 

このブログの前沢先生、若いころちょっとしたことで存じ上げた。

北大地域医療学の教授を定年退官され、今も地域医療で良い仕事をなさっていらっしゃる。明日、彼が札幌市で講演をなさることが予告されている。

こちら。

茨城県県西部の病床削減 

私の仕事場だった地域、茨城県県西部の医療機関再編が報じられている。

県西総合病院(299床)、筑西市民病院(173床)、民間の山王病院(79床)の3病院を再編統合し、地方独立行政法人の茨城県西部メディカルセンター(250床)、公設民営のさくらがわ地域医療センター(128床)にする。

ということらしい。この再編による総病床数の変化は、551から378病床への減である。もちろん、他の医療機関の病床が増えるわけではないので、173病床の純減になる。3割以上の大幅減である。

この病床減の受け皿として、行政は、在宅医療を考えているのだろう。高齢化、核家族化が進んでいるこの地域で、果たしてそれが可能なのかどうか・・・患者、その家族にとって、きわめて困難な状況になることは見えている。

そもそも、米国などの病床数と比較してわが国の病床数が多すぎるという議論では、米国などで病床という場合、急性期病床であることが見過ごされている。慢性期病床は、病院以外の形であるのだ。ただ医療費削減だけを目指して、病床を減らすことは、市民に多大なしわ寄せを起こす。

このようなプランを策定する官僚、政治家は、希望すればいつでも医療機関に入院できる特権を持っている。患者、その家族の問題を自分の問題として考えられないのだろう。

がん拠点病院の指定要件に「医療安全管理部門」の設置 

最近、医療関連のニュースを取り上げることが少なくなってしまった。このニュースを読んで、そうした自分の変化に苦笑するとともに、厚労省のやることは相変わらずだと思った。

医療安全が医療安全管理部門の新設で確保されるのだろうか。少なくとも、千葉がんセンター事件では、内部告発に対する上層部のもみ消し、さらに内部告発者へのパワハラが、問題の根幹にあった。群馬大学事件は、医療安全管理部門が存在したのに生じた。この二つの施設の問題点をより掘り下げないと、同じ問題が繰り返される可能性がある。

新しい医療技術の導入に際しての医療安全の問題もあるが、見落とされているのは、医療従事者の労働環境の劣悪さから生じる医療事故。医療事故手前の事象について、日本医療機能評価機構が毎年情報を集め公開している。だが、彼らは医療従事者の労働環境について検討しない。医療事故についても、当事者が免責される、非公開という原則が守られていない。

それに、もっとも腹立たしいのは、「緩和ケアの実施件数も要件に加え」ていること。緩和ケアの診療報酬上の施設要件に、日本医療機能評価機構の評価を受けていることがある。日本医療機能評価機構は、がん患者を「人質」にとり、自らの権益を確保している。

政府から虐められる行政、そして国民から蜜を吸い上げる行政・・・最終的な被害者は、国民である。

朝日新聞デジタルより引用~~~

がん拠点病院の指定要件に「医療安全」追加 厚労省
黒田壮吉2018年4月12日06時00分

 全国に400以上あり、地域のがん医療の中心となる「がん診療連携拠点病院」の指定要件に、常勤の医師や薬剤師がいる医療安全管理部門の設置などが加わることになった。厚生労働省の有識者検討会が11日、まとめた。拠点病院だった群馬大病院や千葉県がんセンターなどで死亡事故が起きたことを受け、議論してきた。

 どこにいても適切ながん医療が受けられるよう、厚労省は2002年以降、がん診療連携拠点病院を指定している。年400件のがん手術数や、化学療法の延べ患者数が年1千人以上などが現在の要件。指定されれば、診療報酬上の加算やがん専門医研修への補助金などが受けられる。原則、4年ごとに更新する。

 群馬大病院と千葉県がんセンターで14年、がん患者らが腹腔(ふくくう)鏡手術後に死亡したことが問題になった。拠点病院の指定要件に医療安全に関する事項はなかったが、安全管理体制が不十分などを理由に厚労省は15年の更新時に両病院を拠点病院に指定しなかった。

 検討会は、医療安全管理部門を設け、常勤の医師や薬剤師、看護師の配置を定めるとまとめた。責任者には医療安全に関する研修の受講を求める。医療安全上に重大な疑義がある場合は、指定の取り消しを検討する。

 ほかに患者の心身の苦痛を和らげる緩和ケアの実施件数も要件に加え、外来や院内で実施した緩和ケア件数の報告を求める。保険適用外の「がん免疫療法」の実施は原則、安全性を評価したうえで臨床研究として行うよう見直す。新たな要件を満たす拠点病院は、今年度中に指定する予定。

新専門医制度は地域医療を破壊する 

新専門医制度は、医師の研修制度以外に、地域への医師の配置が目的となっていた。それが、地域医療を崩すという指摘は昨年来行われてきた。こちら。

だが、そうした指摘に対して、きちんと対処することなく、新専門医制度が動き出した。それへの批判が下記の論考だ。この厚生労働大臣は感話でもっともなことを述べているが、こうした制度のモーメントには利権がからんでおり、いったん動き出したら止まらない、ということなのか。

以前から述べている通り、こうした利権組織が現実を無視して突っ走る現象はいたるところで起きている。それを監視し、訂正しまたは停止させるのが、立法の役目だと思うのだが。行政、学会、大病院経営者の一部にとっては、医師の人事権はのどから手が出るほど欲しい利権なのだろう。

以下、引用~~~

新専門医制度:今こそ厚生労働大臣談話に立ち返るべきである

安城更生病院 副院長 
安藤哲朗

2018年2月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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平成29年8月2日に当時の塩崎厚生労働大臣が、「新たな専門医制度」に対する厚生労働大臣談話を発表した(1)。その内容は「新専門医制度には、地域医療への悪影響の懸念、専攻医が望む研修ができなくなる懸念がある。日本専門医機構および各学会は、この懸念に真摯に向き合い、運用の中で問題があれば速やかに是正が行われる必要がある。そして万が一新たな専門医制度によって地域医療に影響を及ぼす懸念が生じた場合には、厚労省は医療法上の国の責務に基づいて実効性のある対応を求める。」と要約できる。

この談話を受けて、専門医機構の松原謙二副理事長は平成29年8月4日の機構理事会後の記者会見において、「機構は2018年4月から新しい専門医制度を開始する。ただし、途中でいろいろな議論で問題が出てきた時には、私たちは真摯な態度で対応する。各学会や厚生労働省とよく相談しながら、適切な形で決して地域医療に偏りが出ないように対応する。それを前提として開始したいと思う」と説明した(2)。

つまり、厚生労働大臣談話における2つの懸念が真摯な態度で対応されることが前提条件として、1年間延期された新専門医制度の2018年4月からの開始が決まったのである。逆に言うと前提条件が崩れた場合には、開始すべきでない。それではこの2つの懸念に対応がされているかどうかを検証してみよう。

一番目に、「地域医療への悪影響の懸念」については、すでにいくつかのメディアから検討結果がでている(3,4,5,6,7)。それに対して専門医機構の松原氏は、「大都市集中、内科激減は間違い」と言っているが、その根拠となるデータは示していない。内科が15人以下の県が9県もあり(高知5人、宮崎9人、福井11人、島根12人、山口・香川13人、秋田・鳥取・徳島14人)、外科が5人以下の県が14県もある(群馬・山梨・高知1人、福井・奈良・島根・宮崎2人、青森・香川3人、山口・佐賀4人、山形・徳島・愛媛5人)。これらの県の友人の医師達に聞くと、地域医療の維持に大変な危機感を持っている。私の病院のある愛知県は内科志望者をみると132人と数は多いが、従来の平均と比べての減少人数は全県で一番多いと推定されている。実際に近隣の中核病院の状況を聞くと、例年の半分程度しか内科志望者があつまっていないところが多い。その一方で、東京の大学病院の友人達に聞くと、例年に比べて増えているところが多いようだ。東京はシーリングがかかっていたはずなのに専攻医全体が例年の50%増というのはどのように理解したらいいのだろうか?しかし、不思議なことに機構の松原副理事長は、「偏在はない。内科は減っていない」と根拠を示さずに繰り返しコメントしている(8)。

二番目に、「専攻医が望む研修ができなくなる懸念」についてはどうか。愛知県では、初期研修から後期研修まで一貫して同一の市中病院で研修して、その後医師不足の病院に1年前後赴任してから大学に帰局するというシステムが40年以上前から出来上がっている。屋根瓦式の研修制度が、今までもっともうまく機能していた地域であるが、それが今回の循環型プログラム研修で危機的状況に陥る危険性がある(9)。愛知県の研修医達が口をそろえて言うことが「循環型プログラムが困る。何とかして欲しい。」という希望である。彼らは様々な不安を持っている。まだ内科医として一人前になる前の時期で、subspecialtyも固まってない時期に、指導医や教えてくれる先輩医師のいない病院に半年から一年間移動することは、重要な研修時期を無駄に過ごすことになる可能性が高いのでは?身分保障はどうなるのか?引っ越しをしなくてはいけないことになるのでは?その病院のシステムや電子カルテになれるのに半年から1年かかるので研修の実があがらないし、地域医療に貢献もできないのでは?機構も内科学会も現在までのところ循環型プログラムの原則を崩す姿勢を見せていない。これは、「専攻医が望む研修ができなくなる」状況と考えられる。

さらに、シーリングのかかった眼科で起こった事態を耳にした。ある大学では一次募集のときに眼科専攻医の定員を減らせと言われて、何人かの研修医に、今年はプログラムに入らずに市中病院で研修して、来年のプログラムに入れるという約束をしたそうだ。すでに眼科などでは少なくないキャリーオーバーが発生しているのだろう。これを、「専攻医が望む研修ができなくなる」状況と言わずして何と言うのだろうか。

2点の懸念を検討してみると、もはや新専門医制度開始の前提条件は崩れている。残念ながら機構には「真摯な態度の対応」が期待できない。となると厚生労働省に「医療法上の国の責務に基づいて」対応していただくしか、医療崩壊を阻止する方法はないように思う。プロフェッショナルオートノミーの原則からみて、厚労省の関与を嫌う医師もいるかもしれない。しかし、専門医機構がやっていることは「プロフェッショナルオートノミー」ではなく、一部の重鎮達の独断専行である。機構は愛知県病院協会の要望書(10)に対しても全く対応せずに無視している。国民も医師も迷惑極まりない新専門医制度を根本的に見直すには、多くの国民の声を受けて厚労省に強権を発動してもらうしかない

引用資料
(1)「新たな専門医制度」に対する厚生労働大臣談話(厚労省HP:2017年8月2日)www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000173575.html
(2)新専門医制度2018年度開始、「地域医療等に配慮」が前提(m3.com:2017年8月4日) https://www.m3.com/news/iryoishin/549804 (医師限定HP)
(3)専門医研修、地方は低迷、外科「10人未満」27県 (共同通信:2018年1月28日)https://this.kiji.is/330245957391041633
(4)「内科15.2%減、外科10.7%減」、専攻医の領域別割合(m3.com:2018年1月4日)https://www.m3.com/news/iryoishin/578074(医師限定HP)
(5)京都50.8%増、東京50.0%増、専攻医の地域差は拡大(m3.com:2018年1月13日)https://www.m3.com/news/iryoishin/578909(医師限定HP)
(6)「新専門医制度」は医師にも患者にも“迷惑”だ(東洋経済on line:2018年2月9日)http://toyokeizai.net/articles/-/207487
(7)上昌広:内科・外科志望医が激減、眼科志望医ゼロの県も…新専門医制度失敗で地方の医療崩壊(Business Journal:2018年2月8日)http://biz-journal.jp/2018/02/post_22256.html
(8)「大都市集中、内科激減は間違い」、日本専門医機構(m3.com:2018年1月20日)https://www.m3.com/news/iryoishin/581029(医師限定HP)
(9)安藤哲朗:愛知県の救急医療は新専門医制度により崩壊する(MRIC:2016年7月19日)http://medg.jp/mt/?p=6874
(10)新専門医制度に関する緊急要望書(愛知県病院協会HP:2017年7月11日)www.byouin-k.jp/aichi/?p=713

たばこの「損益計算」 

たばこによる健康被害が、医療費ベースで1・5兆円に達するという記事。

これだけの被害が出ているのに、財務省はたばこ税を大幅に増やすという政策を取らない。その理由の一つは、その税金をある程度確保したいとの思惑があるのだろう。たばこがあまりに値上がりしてしまい売れなくなると、税収が減る、それを望まないということだ。

もう一つ、よりブラックな事実だが、禁煙が広まることで、国民の寿命が延びる、すると年金など社会保障の需要がさらに増える、ということもあるのではないか。医療社会学のテキストの一つに、その可能性が記されていた。今後、年金財政はさらに厳しさを増すはずなので、この推測もあながち誤りではないだろう。

喫煙する本人、周囲で受動喫煙に晒される人々が、健康被害にあって苦しむことを考えたら、たばこはすぐにでも止めさせる方向に政策の舵を切るべきなのだが・・・。

以下、引用~~~

たばこで医療費1・5兆円 がん、脳卒中、心筋梗塞で 厚労省研究班
18/01/15 記事:共同通信社

 たばこが原因で2014年度に100万人以上が、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気になり、受動喫煙を合わせて1兆4900億円の医療費が必要になったとの推計を、厚生労働省研究班が15日までにまとめた。国民医療費の3・7%を占めるという。

 05年度の推計と比べると、喫煙率の減少に伴い1千億円余り減少した。ただ受動喫煙に関しては、因果関係が判明した心筋梗塞や脳卒中の患者を新たに対象に加えた結果、医療費が倍以上の3千億円超に膨らんだ。

 研究班の五十嵐中(いがらし・あたる)・東京大特任准教授は「脳卒中などの循環器系の病気は、たばこの対策を取れば比較的早い効果が期待できる。受動喫煙の防止策を早く進めるべきだ」としている。

 研究班は、たばことの因果関係が「十分にある」ことが分かっている、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気に着目。これらの病気の治療に使われた40歳以上の人の医療費や、たばこによる病気のなりやすさに関するデータを基に試算した。

 その結果、喫煙で1兆1700億円、受動喫煙で3200億円の医療費が発生したとみられることが判明。患者数は喫煙が79万人、受動喫煙が24万人だった。

 喫煙者では、がんの医療費が多く、7千億円を超えた。心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患や脳卒中などの脳血管疾患の医療費も、それぞれ2千億円だった。

 受動喫煙では、がんによる医療費が300億円。虚血性心疾患は1千億円、脳血管疾患は1900億円と推計した。

 経済的な損失額も試算。病気による入院で仕事ができなくなったことによる損失は喫煙と受動喫煙を合わせて2500億円、勤務中に喫煙するために席を離れることによる損失は5500億円と見積もった。

 ※たばこと健康リスク

 喫煙者が吸うたばこの煙には約70種類の発がん性物質があるとされ、受動喫煙で周囲の人が吸い込む副流煙にも発がん性物質やニコチンなどの有害物質が数多く含まれている。厚生労働省のたばこ白書によると、喫煙者がなりやすい病気には、肺がんや胃がんなど多くのがんや、運動時の呼吸困難を引き起こす慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、脳卒中があり、妊娠中では低出生体重児の原因になる。受動喫煙では脳卒中や肺がん、心筋梗塞になりやすくなるほか、乳幼児突然死症候群の危険が高くなる。

新専門医制度が地域医療を破壊する 

新専門医制度が、医療全体、とくに地域医療を破壊する、という議論は、すでに何度も取り上げてきた。ここに、地域医療現場からの声を載せる。

この新専門医制度は、行政と学会・大病院経営陣のために考案されたもので、メジャー科の研修に問題があり、女性医師の生涯キャリアー形成にも障害となる。また、大都会での研修が有利となるために、医師の地域的偏在をさらに助長することが指摘されてきた。

この論者の意見では、地域医療現場で医師を教育し、地域医療の担い手を育てることが難しくなることが指摘されている。それに対して、新専門医機構は対応していない。

社会的共通資本である医療制度を、特定の人々・グループの利益のために改変することが現に行われているわけだ。それは社会的共通資本を破壊することに他ならない。

大学医局から人事権を奪った行政が、地域医療を立ち行かなくさせ、さらに行政が主導したこの新専門医制度が医療制度を破壊する。

以下、MRICより引用~~~

なぜ新専門医制度が地域医療を崩壊させるのか

安城更生病院副院長
安藤哲朗

2018年1月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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新専門医制度で公表された一次募集の結果は、内科激減、東京の大学一極集中という衝撃的なものであったが、これは十分予想された結果であった。少なからぬ研修医は、内科の新専門医制度が自分の将来にとって不具合であることや、地方では専門医資格を取得するのに苦労しそうなことを察知して、合理的な選択をした。まさに「上に政策あれば、下に対策あり」である。私の病院や近隣病院の研修医で、進路を内科とマイナー科を迷っていた研修医のほとんどがマイナー科を選択した。内科は専門医取得まで無意味にハードルが高くなったのに対して、マイナー科は従来とそれほど変わらないと考えたようだ。今までならば内科を選択してくれそうな素養を持っている研修医が、ことごとくマイナー科を選んだことに私は衝撃を受けた。

専門医機構と内科学会は、この結果を真摯に受け止めて、速やかに大胆な改善をするべきである。ところが、専門医機構は「偏在はない」と、内科学会は「内科志望者は減っていない」と合理的根拠を示さずに主張している。これでは制度の改善はままならない。

専攻医の内科激減、東京の大学一極集中による直接的な地域医療への悪影響も重大であるが、実は今後の日本の地域医療に対してもっと重大な悪影響を及ぼすことが二つある。

一つめは、地域医療に役立つ医師を育てるのが難しくなったことである。バトルフィールドに役立つ能力を身につける最も効果的な方法は、そのバトルフィールドに入って学ぶことである。忙しい地域医療現場では、たくさんのcommon diseaseの患者を効率よく診療する能力が必要で、その能力を身に着けるには、地域医療の現場に直接入って学ぶのが効果的である。都会の大学病院に入れば都会の大学で役立つ能力は身に着けやすいだろう。しかしその能力が必ずしも地域医療の現場で役立つ訳ではない。もちろん指導医の存在は重要で、地方の病院の中でも指導医の能力によって、研修効果は差があるだろう。その点で都会の大学病院には指導医が豊富にいるからよいという反論も予想される。しかし都会の大学病院の少なからぬ指導医は、専攻医教育よりも自分の研究業績をあげることに関心がある。総体的に、地域医療現場で後期研修をする医師が減少したことは、将来の地域医療を担う人材が減少したと言ってもいい。

二つめは、使命感を持って地域医療を担いながら研修医教育に努力してきた指導医達の士気を奪っていることである。日本各地の市中病院には多くの志の高い指導医がいる。しかし、新専門医制度によって施設基準のハードルが上がり、後期研修医を採用できなくなる場合もあり、強制的な循環型プログラムやローテートで教育や診療がしにくくなる。また新専門医制度のために大量の書類仕事の増加が見込まれ、時間を奪う形式的な委員会も増える。このような状況ですでにやる気をなくしつつある医師もいるだろう。社会共通資本としての医療は、医師集団の使命感、志に支えられているところが大きい(1)。かつてサッチャー政権時に医師達がmotivationを失ってイギリスの医療が崩壊したように、日本の医師達がこのままmotivationを失ったら、それを取り返すのは容易ではない。


超高齢社会、縮小社会に突き進む日本は重大な転換点に来ている。この局面でこの新専門医制度は日本の医療に致命的なダメージを及ぼす危険性がある。今後の日本の医療を守るために、速やかな制度の再検討が必要である。

参考文献
(1)宇沢弘文:人間の経済.新潮新書、2017.