たばこの「損益計算」 

たばこによる健康被害が、医療費ベースで1・5兆円に達するという記事。

これだけの被害が出ているのに、財務省はたばこ税を大幅に増やすという政策を取らない。その理由の一つは、その税金をある程度確保したいとの思惑があるのだろう。たばこがあまりに値上がりしてしまい売れなくなると、税収が減る、それを望まないということだ。

もう一つ、よりブラックな事実だが、禁煙が広まることで、国民の寿命が延びる、すると年金など社会保障の需要がさらに増える、ということもあるのではないか。医療社会学のテキストの一つに、その可能性が記されていた。今後、年金財政はさらに厳しさを増すはずなので、この推測もあながち誤りではないだろう。

喫煙する本人、周囲で受動喫煙に晒される人々が、健康被害にあって苦しむことを考えたら、たばこはすぐにでも止めさせる方向に政策の舵を切るべきなのだが・・・。

以下、引用~~~

たばこで医療費1・5兆円 がん、脳卒中、心筋梗塞で 厚労省研究班
18/01/15 記事:共同通信社

 たばこが原因で2014年度に100万人以上が、がんや脳卒中、心筋梗塞などの病気になり、受動喫煙を合わせて1兆4900億円の医療費が必要になったとの推計を、厚生労働省研究班が15日までにまとめた。国民医療費の3・7%を占めるという。

 05年度の推計と比べると、喫煙率の減少に伴い1千億円余り減少した。ただ受動喫煙に関しては、因果関係が判明した心筋梗塞や脳卒中の患者を新たに対象に加えた結果、医療費が倍以上の3千億円超に膨らんだ。

 研究班の五十嵐中(いがらし・あたる)・東京大特任准教授は「脳卒中などの循環器系の病気は、たばこの対策を取れば比較的早い効果が期待できる。受動喫煙の防止策を早く進めるべきだ」としている。

 研究班は、たばことの因果関係が「十分にある」ことが分かっている、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気に着目。これらの病気の治療に使われた40歳以上の人の医療費や、たばこによる病気のなりやすさに関するデータを基に試算した。

 その結果、喫煙で1兆1700億円、受動喫煙で3200億円の医療費が発生したとみられることが判明。患者数は喫煙が79万人、受動喫煙が24万人だった。

 喫煙者では、がんの医療費が多く、7千億円を超えた。心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患や脳卒中などの脳血管疾患の医療費も、それぞれ2千億円だった。

 受動喫煙では、がんによる医療費が300億円。虚血性心疾患は1千億円、脳血管疾患は1900億円と推計した。

 経済的な損失額も試算。病気による入院で仕事ができなくなったことによる損失は喫煙と受動喫煙を合わせて2500億円、勤務中に喫煙するために席を離れることによる損失は5500億円と見積もった。

 ※たばこと健康リスク

 喫煙者が吸うたばこの煙には約70種類の発がん性物質があるとされ、受動喫煙で周囲の人が吸い込む副流煙にも発がん性物質やニコチンなどの有害物質が数多く含まれている。厚生労働省のたばこ白書によると、喫煙者がなりやすい病気には、肺がんや胃がんなど多くのがんや、運動時の呼吸困難を引き起こす慢性閉塞(へいそく)性肺疾患、脳卒中があり、妊娠中では低出生体重児の原因になる。受動喫煙では脳卒中や肺がん、心筋梗塞になりやすくなるほか、乳幼児突然死症候群の危険が高くなる。

新専門医制度が地域医療を破壊する 

新専門医制度が、医療全体、とくに地域医療を破壊する、という議論は、すでに何度も取り上げてきた。ここに、地域医療現場からの声を載せる。

この新専門医制度は、行政と学会・大病院経営陣のために考案されたもので、メジャー科の研修に問題があり、女性医師の生涯キャリアー形成にも障害となる。また、大都会での研修が有利となるために、医師の地域的偏在をさらに助長することが指摘されてきた。

この論者の意見では、地域医療現場で医師を教育し、地域医療の担い手を育てることが難しくなることが指摘されている。それに対して、新専門医機構は対応していない。

社会的共通資本である医療制度を、特定の人々・グループの利益のために改変することが現に行われているわけだ。それは社会的共通資本を破壊することに他ならない。

大学医局から人事権を奪った行政が、地域医療を立ち行かなくさせ、さらに行政が主導したこの新専門医制度が医療制度を破壊する。

以下、MRICより引用~~~

なぜ新専門医制度が地域医療を崩壊させるのか

安城更生病院副院長
安藤哲朗

2018年1月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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新専門医制度で公表された一次募集の結果は、内科激減、東京の大学一極集中という衝撃的なものであったが、これは十分予想された結果であった。少なからぬ研修医は、内科の新専門医制度が自分の将来にとって不具合であることや、地方では専門医資格を取得するのに苦労しそうなことを察知して、合理的な選択をした。まさに「上に政策あれば、下に対策あり」である。私の病院や近隣病院の研修医で、進路を内科とマイナー科を迷っていた研修医のほとんどがマイナー科を選択した。内科は専門医取得まで無意味にハードルが高くなったのに対して、マイナー科は従来とそれほど変わらないと考えたようだ。今までならば内科を選択してくれそうな素養を持っている研修医が、ことごとくマイナー科を選んだことに私は衝撃を受けた。

専門医機構と内科学会は、この結果を真摯に受け止めて、速やかに大胆な改善をするべきである。ところが、専門医機構は「偏在はない」と、内科学会は「内科志望者は減っていない」と合理的根拠を示さずに主張している。これでは制度の改善はままならない。

専攻医の内科激減、東京の大学一極集中による直接的な地域医療への悪影響も重大であるが、実は今後の日本の地域医療に対してもっと重大な悪影響を及ぼすことが二つある。

一つめは、地域医療に役立つ医師を育てるのが難しくなったことである。バトルフィールドに役立つ能力を身につける最も効果的な方法は、そのバトルフィールドに入って学ぶことである。忙しい地域医療現場では、たくさんのcommon diseaseの患者を効率よく診療する能力が必要で、その能力を身に着けるには、地域医療の現場に直接入って学ぶのが効果的である。都会の大学病院に入れば都会の大学で役立つ能力は身に着けやすいだろう。しかしその能力が必ずしも地域医療の現場で役立つ訳ではない。もちろん指導医の存在は重要で、地方の病院の中でも指導医の能力によって、研修効果は差があるだろう。その点で都会の大学病院には指導医が豊富にいるからよいという反論も予想される。しかし都会の大学病院の少なからぬ指導医は、専攻医教育よりも自分の研究業績をあげることに関心がある。総体的に、地域医療現場で後期研修をする医師が減少したことは、将来の地域医療を担う人材が減少したと言ってもいい。

二つめは、使命感を持って地域医療を担いながら研修医教育に努力してきた指導医達の士気を奪っていることである。日本各地の市中病院には多くの志の高い指導医がいる。しかし、新専門医制度によって施設基準のハードルが上がり、後期研修医を採用できなくなる場合もあり、強制的な循環型プログラムやローテートで教育や診療がしにくくなる。また新専門医制度のために大量の書類仕事の増加が見込まれ、時間を奪う形式的な委員会も増える。このような状況ですでにやる気をなくしつつある医師もいるだろう。社会共通資本としての医療は、医師集団の使命感、志に支えられているところが大きい(1)。かつてサッチャー政権時に医師達がmotivationを失ってイギリスの医療が崩壊したように、日本の医師達がこのままmotivationを失ったら、それを取り返すのは容易ではない。


超高齢社会、縮小社会に突き進む日本は重大な転換点に来ている。この局面でこの新専門医制度は日本の医療に致命的なダメージを及ぼす危険性がある。今後の日本の医療を守るために、速やかな制度の再検討が必要である。

参考文献
(1)宇沢弘文:人間の経済.新潮新書、2017.

ピンピンコロリは理想のように見えるが・・・ 

某SNSで、「死に方」について議論されていた。いわく、癌で苦しむのはいやだ、ボケて何も感じなくなって死んでゆきたい、という意見。

主観的な希望として、その気持ちはわからぬでもない。だが、死亡の原因からして、確率の高い死因はやはり悪性新生物である。認知症になったとしても、最終的に亡くなる直接の病因は、悪性新生物・感染症他であり、認知症自体ではない。記憶が障害されているとしても、疼痛や苦痛のコントロールは必要だ。また、その前に、認知症の経過中には、大きな不安感と孤独感に襲われるもののようだ。認知症になって亡くなるのも、それ以外の経過の死亡と同じような問題を抱えるのだ。

脳血管障害、虚血性心疾患等で、瞬時に死ぬことができれば、本人にとっては良いのかもしれない。だが、残された家族にとって、それはぬぐい難い喪失感をもたらすだろう。やはり、時間をかけて身辺整理をし、周囲の人々・家族に別れを告げて亡くなる方が、残される人々にとっては良いのではないだろうか。それに、この二疾患群では、「助かって」後遺症を残し、残りの人生を歩むことになる可能性の方が多い。

こうした議論をしていて、強く感じるのは、社会的な死の視点が欠けていることだ。

今後、しばらくは悪性新生物で死亡する可能性が最も高いのであるから、それに対応する社会基盤の形成が必要になる。ところが、以前のポストにも記した通り、毎年100万人死亡するこの時代に、その半数以上を占める悪性新生物他の患者にターミナルケアを施すホスピスの絶対数が足りない。たった、7000床しかないのだ。この病床が、年に2人、3人の方に利用されるとしても、絶対数が圧倒的に不足している。

ホスピスの診療報酬の算定要件に、日本医療機能評価機構の「評価」が必要とされていることは繰り返し述べた。この「評価」なるものが、形式的で意味のない内容であり、結局、同機構が悪性新生物患者を人質にとって、利権を貪っている構図である。この天下り団体のこの悪行が社会的に問題にされることがない。天下りの最悪の側面が、このホスピス診療報酬問題に表れている。

さらに、厚労省は、在宅医療をがむしゃらに推進している。悪性新生物末期の患者も、在宅医療で対応させる積りのようだ。疼痛コントロール、その他の身体管理、さらに精神的なケアを、家族を失いつつある家族構成員に24時間体制で行わせる、それが一体可能なのだろうか。在宅医療自体が困難を極めるのに、末期患者のケアとなれば、とても可能とは思えない。

自分は楽に死ねたら良いと希望を語るのは結構だが、現実は厳しい。後の世代のためにも、この「多死」の時代にあるべきターミナルケアのインフラを整備するように政治・行政に強力に働きかけるべきなのではないだろうか。

医療を破壊する新専門医制度 

新専門医制度が、東京一極集中、基幹専門科である内科・外科の専攻医の減少を招いている。

新専門医制度は、各科専門医のレベルを同一にするためとして計画された。だが、行政、関係学会・大病院経営陣等の意向が入り込み、いつの間にか、専門科・地域毎の医師の偏在を是正するという名目が加わった。

専門医専攻の実務は学会に丸投げで、大学病院・大病院の労働力確保が優先された。専門医機構の面々は、今後の若い医師から吸い上げる、専門医認定・継続による収入を見込んで、金を使い込み、制度の徹底した議論を行うことなく、新制度を見切り発車させた。

その挙句が、この様である。

今後、新専門医資格を餌にして、地方への医師の強制配置、専門科の強制移動を行わせるのだろうか。その強制は、憲法違反の可能性が高く、少なくとも現在の資格取得によるメリットでは若い医師にアピールしない。今後飛躍的に増える女性医師のキャリアー形成が、この制度では難しくなる。彼女たちのかなりの数が、キャリアー形成をあきらめて、医療の前線から姿を消す可能性がある。生じるであろうことは、基幹科目の専門医が減少し、地方での医師が激減する状況。まさに医療崩壊である。

若い医師諸君の向上心を、医療の現実に必要とする医師の在り方に組み込み、より良い医療制度を立ち上げる、そうした方向に徐々に改善してゆくことが求められたはずが、こんな歪な制度になってしまった。行政が枠組みを作り、関連する学会・医療機関の上層部が、自らに都合よく作りあげた制度が、医療制度そのものを危うくしている。

若い医師諸君も、災難なことだ。若い医師諸君は、こうした行政・業界の都合だけで決められる制度にもっと発言をしてゆくべきではないだろうか。

結局は、国民がこうした制度の破壊的変更による、痛みと不便とに苦しむことになる。こうした本末転倒の姿が、我が国の行政、政治のいたるところで見られる。国民は、その破壊が身辺に及ばないと、気が付かないのだろう。

以下、引用~~~

東京一極集中を招いた新専門医制度の弊害 ~医師偏在対策は予想通り大失敗


専門医制度の「質」を守る会共同代表          
つくば市 坂根Mクリニック 坂根 みち子

2018年1月5日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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来年度から始められる新専門医制度が大変なことになっている。

専門医の質の担保より偏在対策を優先させ、医療現場から挙った多くの反対の声(1)を押し切って開始した新専門医制度の一次登録(専門医の卵:以下専攻医で統一)が締め切られ、大勢が判明した。
結果、全科で専攻医の地域偏在が拡大し、内科の激減、東京の一極集中が顕著となった。
2012年~14年の全国専攻医(人口比)の平均地域最小最大格差が3.09倍だったのに対し、今回の地域格差は4.67倍(!)にもなっている。特に東京の登録数は、過去に比べて50%増え、東京の一人勝ちとなった。(ただし正確には、都会の基幹病院から地方へ派遣される場合は、今回のデータでは都会でカウントされるのでその分は割り引く必要がある)
医学部の増員により、医師国家試験合格者数は前記の時期に対応する2010年-12年平均が7637人に対して、2016年は8630人、13.0%増えているが、今回、内科希望者は実数で123人減り、相対的には-15.2%と激減した。外科は実数ベースで767人と横ばいだが、相対的には-10.7%と大幅に希望者を減らした。つまり、内科外科離れが著明なのである。反対に数を増やしたのは、眼科、耳鼻科、泌尿器科などのいわゆるマイナー科である。それぞれ、相対的に24.5%、16.5%、16.0%も増加している。

問題は、偏在の拡大により、専攻医数が極めて少なくなった県である。内科は、希望者が集中した東京が520名に対して、高知県5人、宮崎県9人、福井県11人、島根県12人、この人数で一体どうやって医療システムを継続させていくのだろう。
外科を見てみよう。高知県・山梨県・群馬県は、外科の希望者全県でたった1人である。宮崎県・島根県・福井県・奈良県も各2人ずつしかいない。
小児科に至っては、希望者数0の件が2県(徳島県・佐賀県)、岩手県・山形県 富山県・山梨県も希望者が1人しかしない。
産婦人科もたった1人しか希望者がいない県が、7県もある(岩手県・福井県・鳥取県・徳島県・香川県・大分県・宮崎県)
これらの県では、社会的共通資本である医療体制がこのままの状態でいけば、若い人を呼び込んで子供を産み育てることがかなり厳しくなるだろう。

そもそも研修施設数に対して、専攻医数が絶対的に少ないのは、当初より医療現場からは指摘されており(2)、この事態は想定出来たのである。それでも日本専門医機構はごり押しした。一応特定の地域に集中しないようにキャップもかけていた、はずだった。
具体的にいうと、5都道府県は、専攻医数の制限がかかっていたはずである。
それが何故これほどの集中と偏在をもたらしたのか。この結果から考えるに、機構は科別の過去5年間の平均専攻医数すら、きちんと把握していなかったのではないか。そうでなければ、なぜ機構はデータを一切公表しないのだろうか。

機構はガバナンスが欠如している。今機構を仕切っているのは、日本医師会と各学会の幹部であり、機構はこれらの団体から借金している身の上で、独立した第三者機関どころか、全依存状態である。筆者は借金の形にこの制度を強行するにしても、これからの医療を担う若い医師達のためにせめて以下のことだけはやって頂きたいと主張してきた(3)。同様の意見は他の多くの現場の医師達からも出されていた。

「質」を担保するための統一基準を公表し、「質」が担保されるのであれば、単独施設での研修も認めること
基本領域の選定再議論も平行して進めること
基幹施設となる大学病院の理不尽な仕打ちや不自然な循環型プログラムを拾い上げ具体的な改善策を示すこと
専攻医の身分保障をすること
・機構の議事録をはじめとする情報を速やかに公開すること
・機構は、制度の検証?改善という仕事に特化すること

残念なことに、機構はどれひとつとして、手をつけていない。
今、専攻医の登録をしていない研修医に対して、機構からすぐ登録をして志望先を決めるように連絡が来ているそうだ。誰もが専門医になる必要があるわけでもないのにそれ自体随分強引な話だ。ところが、さらに驚くべき事に機構はどのプログラムが定員いっぱいでどこが空いているかを公表していないのだ。
二次応募の研修医のことを全く考えていないのだろう。
他にも、基幹病院に希望者がたくさん集まり過ぎたところでは、1年待つように言われたり、民間病院に行くように言われたりといった、所謂キャリーオーバーが発生しているという。これらについても、機構は一切公表していない。
あちこちで挙っている制度のほころびを拾い集め検証することをせず、小手先の帳尻合わせに躍起になっている、何とも情けない事態である。
そして医療の質の担保より、偏在対策を優先させたにもかかわらず、偏在はさらに悪化してしまった。機構の詭弁に弄された全国知事会、市長会はこの結果をどうとらえるのだろうか。

何度も繰り返してきたが、本制度には現場の医師達、特に指導医、若手、女性医師の意見が反映されていない。制度設計を高齢・男性医師で占められている機構のメンバーだけに任せてはいけない。この制度が医療崩壊の最後の一手を打ったと言われないために、機構は現場の声を聞き、改善のために最大限の努力をすべきである。このままでは、医療の未来のみならず国民の未来も危うい。

出典
厚生労働省公式ホームページ「新たな専門医の仕組みについて」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/323.pdf
日本専門医機構公式ホームページ「専攻医一次登録採用数について」
http://www.japan-senmon-i.jp/news/doc/ichjitourouku.pdf
仙台厚生病院 医学教育支援室 遠藤希之 消化器内科 齋藤宏章 作成デー
タ http://stop-it-shin-sen-mon-i.webnode.jp/
(参考)
(1)新専門医制度の2018年度開始に反対、1560人分の署名『専門医制度の「質」を守る会』、厚労相宛に提出 https://www.m3.com/news/iryoishin/547029
(2) 日本専門医機構が固執する「循環型研修」は、地域医療の崩壊を招く遠藤 希之 氏(仙台厚生病院 医学教育支援室 室長)
https://epilogi.dr-10.com/articles/2254/?mr=abcs
(3) Vol.164 これから専門医を取ろうとしているドクターへ この制度の問題点を知ろう
http://medg.jp/mt/?p=7749

医療の現実 これから向かう方向 

新年そうそう、MRICに同サイトの主催者である上昌広氏の記事が掲載された。いささかショッキングな内容だ。

大都会から医療が立ち行かなくなる、というのは納得できる指摘だ。国民の多くは医療とは無縁で過ごしているが、この現実を目の当たりにして、驚かされることだろう。これが、残念ながら現実なのだ。

ただ、混合診療の推進以前にやるべきことがまだまだある。国の予算で、医療を含めた社会保障に回す予算はまだあるはずだ。トランプに肩を叩かれて、一基1000億円以上のイージスアショアを二基ポンと購入する安倍首相は、国民の安寧と福祉を考えていない。ますます酷くなっている官僚の天下り、彼らの天下り企業と、それに政権の仲間に垂れ流す国家予算はどれほどあるのか見当もつかない。

今春の診療報酬改定で、医療は0.54%の引き上げだと喧伝されているが、消費税増税でその増加分はすぐに消え、医療機関は、さらなる経営不振に陥ることだろう。消費税分の診療報酬は、地域医療を推進するためとして、行政の立ち上げた特殊法人会計に組み込まれ、医療機関の自由にはならない。

混合診療が進められると、医療費が下がると上氏は述べているが、それは新自由主義経済の論者が盛んにこれまで述べてきたことで、そうはならない。自分の生命・生活の質に直結する医療は、経済の論理が通用しないからだ。混合診療・自費診療の本場、アメリカの医療費を見ればよい。先日も、カリフォルニアの友人が報告してくれたところでは、奥様がアレルギー診療を三回某有名大学で受けたら、それだけで200万円かかったと嘆いていた。過日、アリゾナに住む友人のお嬢様が、心臓の不整脈治療でablationを受けたところ1000万円請求され驚いたと述べていた(以前にこちらにポストした)。米国だけではない、他の国々の医療費も少し調べれば、我が国の医療費が低廉であることがすぐに分かる。市場原理を持ち込むことで、それがさらに下がるというのは幻想か、それによって利益を上げる人々のデマである。

正直に言えば、現在の国民皆保険がそのまま続けられるとは到底思えないのも事実。なし崩し的に、実質的な混合診療が進められている。公的扶助の範囲もどんどん狭められている。当局は、高齢者の高額医療費補助制度を大幅に縮小する(現在の1/5になる)ことを検討している。高度先進医療が、普通の人々にとって手が届かないものになる事態がすぐそこに来ている。

だが、医療制度を持続可能な形にする上で、国の統治機構、予算配分の仕方を変えるために、国民の意見が尊重されるべきだろう。まずは、医療が高額なものになり、普通の人々が受けられなくなる状況がすぐそこに来ていることを知るべきなのだ。

以下、MRICより引用~~~

2018年新年によせて

上昌広

2018年1月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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明けましておめでとうございます。新しい年を迎え、いかがお過ごしでしょうか。
お陰様で、2004年1月に始まったMRICは、今年で14年目を迎えます。ここまで続けることができたのは、皆様のお陰です。この場をお借りし、感謝申し上げます。

さて、今年はどのような年になるでしょうか。私は、医療崩壊が加速すると考えています。

高度成長期に確立した国民皆保険制度、医系技官制度、医局制度は、高齢化・情報化・グローバル化した世界に適合していません。新たな仕組みを確立するまでの産みの苦しみが続くと思います。
では、具体的にどこが問題となるでしょうか。私は、今春の診療報酬改定に注目しています。立ちゆかなくなる医療機関が出てくるでしょう。
年末の予算編成で、診療報酬本体が0.55%引き上げられたことが話題になりました。安倍総理、横倉義武・日本医師会会長のリーダーシップなしでは実現できなかったでしょう。医療界にとっては福音です。
ただ、医師・看護師不足などの理由で人件費が上がっている昨今、この程度では焼け石に水です。
このままでは、都心部の医療機関の破綻は避けられないと考えています。

なぜ、都心部に限定するかと言えば、我が国の診療報酬が全国一律に厚労省によって決められているからです。診療報酬が抑制されれば、物価が高い都心の医療機関がもっとも影響を受けます。後述するように解決策は自明なのですが、幾つかの病院が破綻するまで、合意が形成できないでしょう。
では、どのような医療機関が特に危険なのでしょうか。それは総合病院です。
不採算の診療科を切り捨て「選択と集中」ができず、どうしても収益性が上がらないからです。

既に東京女子医科大学、日本医科大学、聖路加国際病院のような有名病院でさえ大赤字を出していることが、メディアでも大きく報じられています。最近になって、千代田区の財閥系の有名病院が債務超過であることも判明しました。
この状況は東京の医療にとって、極めて危険です。それは、東京の急性期医療を、私立大学の附属病院を中心とした民間医療機関が担ってきたからです。
東京には13の医学部がありますが、11は私立大学です。中国・四国・九州には21の医学部がありますが、17が国立であることとは対照的です。民間病院は赤字が大きくなれば、「倒産」するしかありません。補助金で穴埋めされる国公立病院とは違います。どうすれば、東京で民間病院が生き残っていけるか、本気で考える時期がきています。
ただ、この問題の解決が難しいのは、診療報酬を上げれば、保険財政は破綻してしまうからです。

医療費を抑制しながら、東京の医療を救うには、診療報酬を東京は1点12円、僻地は1点9円のように傾斜配分するのが、一つの解決策ですが、これは政治的に困難です。
医療機関は、基本的に地方ほど、特に医師不足の地方都市ほど儲かります。都心の病院が経営難に喘ぐ中、東北地方や九州の病院は都心に進出しているなど、その証左です。
地方の医療機関の経営者の多くは、地元の名士です。同時に国会議員の有力な支援者です。これは与野党を問いません。有力な後援者の不利益となる政策を主導するはずがありません。
このままでは近い将来、医療財政は破綻するでしょう。ある厚労官僚は、そのタイミングを「5年以内」と言います。
どうすればいいのでしょうか。国民皆保険の体制維持のためにも、健康保険がカバーする範囲を制限すること(免責)を議論すべきです。

厚労省も保険の免責を進めています。ただ、厚労省が主導すれば、真っ先に免責されるのは政治力が弱い中小の民間病院が担っている慢性期医療からです。
製薬企業は資金力があります。彼らが開発した抗がん剤には、数ヶ月延命するくらいしか効果がないのに、年間に数千万円の支払を認めています。一方で「在宅医療推進」という美名のもと、慢性期病院から強制退院させられる患者が後を絶ちません。多くの国民がおかしさに気づき始めています。
今後、私たちがしなければならないのは、どこまでの医療を公的保険でカバーし、どれを外すかです。風邪薬、先進医療、高齢者の慢性期ケアの何れを保険から外すかは、価値観の問題です。官僚、医師会、製薬企業でなく、国民が決めるべきです。

我が国では「有効性が証明された医療行為は、すべて健康保険でカバーされている」という前提に立っていましたが、保険を免責すれば、一部の患者から「有効だけど、優先順位が低い医療行為」を受ける権利を奪います。こうなると、混合診療規制を緩和しなければならなくなります。これは東京の医療を再生するきっかけになる可能性があります。
それは、東京には多くの医療ニーズがあり、付加価値があれば対価を払おうとする「市場」があるからです。ところが、現在の保険制度は、このような多様なニーズに応えることができていません。それは、混合診療が規制され、少しでも保険外の医療を併用すれば、保険がカバーする分まで自費で支払わなければならないからです。

一部の医師は「混合診療を解禁すれば、金持ちしか医療を受けられなくなる」と言いますが、それは何の根拠もない屁理屈です。混合診療規制があるために、保険外の医療サービスを受けることが出来るのは富裕層だけになっています

都内では富裕層を対象とした?完全自費サービス?が急成長しています。
例えば、私が社外取締役を務めるワイズ社(東京都中央区)は、健康・介護保険でリハビリがカバーされない急性期の患者を対象に、自費でのリハビリサービスを提供しています。首都圏を中心に9施設展開しており、利用者は3年間で2,000人を超えました。「パソコンができるようになりたい」、「楽器が演奏できるようになりたい」、「料理ができるようになりたい」といった個々の目標に応じたパーソナルなリハビリを提供しており、多くの利用者の状態が改善しています(自費ですから、状況が改善しないと、すぐに止めてしまいます)。費用は月額約30万円で、応募者は後を絶ちません。
また、当研究所の研究員である坂本諒さん(看護師)は、在宅看護を研究しています。24時間の完全看護を自費で受ける場合、都内では「年間に5000万円以上支払う患者が少なくない」と言います。

都内では高付加価値サービスの「市場」が急成長しているのがわかります。このような新規事業が立ち上がったのは、厚労省がリハビリ実施日数、入院期間などを短縮して、保険から免責した領域です。
興味深いのは、このようなニッチ領域に飛び込んだのが、これまで医療界をリードしてきた大病院でないことです。彼らは、保険医療と自費医療を併用することで、混合診療の規制にひっかかることを怖れています。患者の医療ニーズは変わりつつあるのに、大病院は厚労省の規制のために、旧態依然とした姿のままです。

戦後、厚労省は医療サービスの供給量と価格を統制し、どんな病院も「倒産」しないように守ってきました。ところが、保険財政が破綻目前となり、この「護送船団システム」は継続できません。このままでは体力の弱い東京の総合病院から破綻します。
医療機関は自らの努力で生き残るしかありません。そのためには、患者から評価される高付加価値サービスを提供するしかないと考えています。

ところが、彼らは「混合診療禁止」という規制で手足を縛られています。混合診療規制を緩和すれば、「悪徳医師が患者を騙す」と主張する人もいます。確かに、その可能性は否定出来ません。ただ、私は、そのリスクは低いと考えています。その理由は、メディアの医療報道が増え、患者の医療知識が増えていること、医師が多い東京では、医師間の競争が熾烈で悪徳医師は淘汰されるこ
と、混合診療を対象とした保険商品が開発され、保険者が悪徳医師をチェックするからです。

私は、混合診療規制が緩和されれば、むしろ医療費は下がる可能性が高いと考えています。都心部の医療機関は激しく競争しています。広告やコンサルタントに依頼するなど、様々な手を使って患者を集めようとしています。
ところが、患者集めも厚労省が規制しています。最大の規制は「値下げを認めていない」ことです。皆さんがクリニックを受診した際には、2-3割の自己負担を支払います。不思議なことに、医療機関は、この自己負担を受け取ることが厚労省から義務化されています。患者に経済負担をかけたくない院長がいて、この自己負担だけ受け取らなければ、処分されます。どのような背景で、
このような規制が出来たかは、誰でもお分かりでしょう。そこに患者視点はありません。

もし、混合診療規制が緩和されれば、風邪の診療などで価格破壊をもたらす医療機関も出てくるでしょう。現在、風邪の診察は数分で4000円程度の収入となります。これを2000円でやろうとするクリニック経営者もいるでしょう。
赤字に悩む健保組合は、組合員をこのようなクリニックに誘導するでしょうから、結果として医療費は抑制されます。
このような規制緩和には、日本医師会が猛反対し、厚労省も同調せざるをえないでしょう。記者クラブ制度が続く限り、マスコミからも、このような問題意識はでてこないでしょう。
どうやったら、我が国の医療が持続可能か、そろそろ、本気で考える時期がきています。私は、このような議論をするプラットフォームとして、MRICがお役に立てればと願っています。

本年も宜しくお願い申し上げます。

急性期病床の3割削減のインパクト 

急性期病床の3割削減のインパクトは、医療従事者には明白なのだが、一般市民にとっては病気・医療制度は当面の自分の問題ではなく、他人事なのだろう。

今後、高齢化がピークに達し、病気に罹患する人が急激に増える。そこで、急性期病床を大幅に削減することは、実質的に病床をさらに多く削減することを意味する。

65歳以上の高齢者は、2015年時点で、約3390万人。それが2040年まで増え続け、2040年時点で約3868万人になると予測されている。約14%の増加。高齢者は、急性期、重篤疾患にかかる可能性が、他の年代よりも高いので、この高齢者の人口増加は、急性期病床の必要性をおそらく20から30%程度引き上げる可能性が高い。すると、急性期病床の3割削減は、実質5割削減程度に相当することになる。

急性の重篤疾患でも入院ができない、一旦入院しても手術などの処置が終わればすぐ退院させられる、術後処置のために病院近くに宿をとり、そこから通う、手術等は数週間、週か月待ちになる、といった状況になる。

それに、大量増産した看護師と医師は、給与などの労働条件の悪化に直面する。

そうした状況になって初めて、国民は、この医療制度を破壊する政策の痛みを知ることになる。今の働き盛りの世代が、高齢化した時に、医療の崩壊の現実に直面することになる。

以下、引用~~~

金子勝氏twitter

【看護師大量首切り】選挙直後に、自公政権のいいだした38万床の急性期病床3割削減を亜急性期にして、もし看護師7:1から15:1にすれば、11万4千床減で、看護師は1万6千人から7千人へ。9千人の首切り。人手不足解消のつもりか?

終末期医療の充実を 

庭の仕事を一手に引き受けて下さっていた、Hさんがしばらくの休みを経て、昨日から復帰してくださった。何しろ田舎のだだっ広い一軒家なので、彼の助けがないと、庭の大きな仕事が片付かない。しばらく前に母上の介護が必要なので、休みたいとの連絡を頂いていた。昨日伺うと、三週間ほどの病ののち、今月上旬に亡くなられたとのこと。感染症から肺炎を起こし、皆に看取られつつお亡くなりになったらしい。御年96歳。大往生と言ってよいのだろう。三週間入院期間中は、家族がチームを組み、泊まり込みで世話をなさった由。死の病の苦痛はあったかもしれないが、家族に見守られ亡くなられたことは、彼女にとっては幸せなことだったろう。

Hさんにお悔やみを申し上げ、その上で、これからは母上のように医療機関で往生なさることは難しくなると申し上げた。急性期病床をどんどん減らし、在宅医療が推進されているからだ。Hさんは首をかしげておられた。それもそうだ。いくら高齢の方とはいえ、亡くなるというのは大きな事件だ。病気によっては、家族が24時間看護し続けることが必要になる。患者の訴えに対応し続けるのは困難を極めるはずだ。訪問診療等の手助けはあるが、必要な時にいつでも診てもらえるわけではない。看護・介護は、家族に任せられる。今後、高齢者が高齢者を看護するケースが増えるはずだ。

死亡原因の一位を占める悪性腫瘍では、疼痛管理等とくに手間がかかる。本来は、ホスピスで終末期医療を受けるのがベストなのだが、全国にホスピスは7000病床しかない。一年に100万人以上亡くなり、その一番の原因の悪性腫瘍で特に必要なホスピスがこの現状だ。在宅医療で疼痛管理を行うこともあることを知っているが、やはり専門のホスピスが望ましい。

社会保障の充実は、対象を高齢者から若年に移すらしい。それは結構なことなのだが、終末期医療は今後需要が高くなり、それは国民全体の生活の質にも関わる。医療等の社会保障の削減は、引き続き行うと安倍首相は述べている。だが、多死時代を迎えて、終末期医療の充実はどうしても行わなければならない。

調剤バブルの成れの果て 

調剤薬局・院内院外調剤の推移を、日医総研がまとめている。こちら。

院外調剤の伸びが凄まじい。その利益率の伸び率は、医療機関を大きく越えている。調剤関連技術料が一件あたり3千円に近いことにも驚かされる。院内調剤の患者自己負担額は200円台だが、院外調剤では800円台になる。スタッフ一人当たりの収入も、調剤薬局は医療機関の約4倍である。調剤薬局経営者の年収も数億円というところが結構ある。調剤薬局の内部留保は600億円を超えている。

調剤薬局政治連盟、薬剤師会等が、政治献金を盛んに行っている。調剤薬局、院外調剤の伸びは、それと無関係であるまい。もちろん、医師会、様々な医療機関関係の組織も、政治献金を行っているが、最近の調剤薬局の政治活動はとりわけ盛んだ。

社会保障財源が厳しい状況にあり、医療保険も財源が限られている。今後は、限られたパイの奪い合いになるはずだ。その中で、高い利益率を確保してきた調剤薬局が、灰色の業務に手を染めることは十分考えられる。患者の立場になって初めて知ったが、調剤薬局窓口での患者指導も、通り一遍のものにしか過ぎない。オープンな窓口で、尚且つ病名・病気の経過を知らずに、具体的な指導ができるはずがない。で、灰色な業務でも利益が上げられぬとなると、次に手を染めるのは、ブラックな業務になる。下記の記事のような事件はこれから頻発することになる。

社会保障関連業界が政治献金を行うこと自体を禁止すべきだ。今のバブル状態にある調剤薬局についても、その高収益構造にメスを入れるべきだろう。

以下、引用~~~

保険を悪用、社員に割安で薬販売 薬局運営会社
17/09/16記事:朝日新聞

 東証1部上場の医薬品流通支援会社の子会社でチェーン薬局を展開する「シー・アール・メディカル」(本社・名古屋市)が、健康保険制度を悪用し、医療用医薬品を社員に配っていたことがわかった。社員から「欲しい薬」の注文を取り、病院で診察を受けていないのに保険を使って、自己負担分の3割の値段で医薬品を渡していた。業務上のつながりがあった医師が処方箋(せん)を出すなどして協力していた。

 健康保険制度は、国民の税金や保険料を原資として病気やけがをした人の医療費を支え合う共助の仕組み。医療関係会社がこれを悪用し、市販薬を買うよりも割安で薬を手に入れていた形だ。

 シー・アール社は、「メディカルシステムネットワーク」(本社・札幌市)の中核事業である薬局運営で、東海・北陸地区を担当する会社。「なの花薬局」など48店舗(今年8月現在)を運営している。

医療データ法案は情報を匿名化するというが・・・ 

医療データ法案が制定され、匿名化されたうえで、我々の医療データが、企業に手渡されるようになる。保険診療の診断名は、学問的にはあまり意味がないので、疫学研究には使えない。もっぱら、企業が金儲けをするためのビッグデータとなる。

匿名化以前の官公庁での医療情報取り扱いの段階、さらに匿名化をする段階で、個人情報が抜き取られる可能性はないのか。この作業は、当然、民間IT企業が請け負うことになるはずだ。年金情報漏洩等を考えれば、医療情報も、漏洩する可能性が高い。

遺伝子情報を含め、個人の医療情報は、企業がぜひとも知りたい情報だ。米国の共和党の医療保険案では、preexisting conditionsという保険に加入する前に罹っている特定の病気、体質のケースは別建てになる。これは、保険会社が損をしないための仕組みだ。病気のある従業員を抱えると企業には大きな負担になる。また、保険会社が病気になりやすい人を予め選別して、保険商品を売りつければ、保険会社は大きい利益をえる。企業が事業を進める上で、国民の医療情報、特に個別情報は、価値のある情報なのだ。

情報漏洩の徹底した防止対策、漏洩された情報による差別への法的な罰則が必要だ。個人情報をネット回線に載せる、またデータベースにネットからアクセスしうる環境は危険だ。

山本太郎議員が、この問題を国会で質問している。こちら

医療機関の経営苦境 

財務省は医療費を削減する。診療報酬はまた下げられる見通しだ。医療機関は消費税分を患者・支払基金への診療費に転嫁できず、その損税相当分を「地域医療再生基金」として行政が医療を支配する手段にしている。本来医療機関が受けるべき消費税分の収入が、行政によりネコババされているわけだ。

大学病院等、大都市で先進医療を実施する民間医療機関ほど、経営が難しい状況だ。医療事故等が起きると、その困難さは階段を転げ落ちるように悪化する。

上氏の下記の論考にある通り、医療機関の支出で大きいのが、人件費。経営的に苦しい医療機関は、人件費を下げざるをえなくなる。低い人件費が、医療事故の遠因になっている。

国は、戦後30年間ほど続いた福祉国家を目指すという理念をすでにかなぐり捨てた。医療、社会福祉の切り捨ては、その一つの表現だ。企業の成長だけが目的の国家になって久しい。社会的弱者を包摂するためのインフラである、医療が存在し難くなる。

以下、引用~~~

赤字22億円「東京女子医大」の危機的状況

2017年7月6日 9時15分 プレジデントオンライン

小児への使用が原則禁じられた鎮静剤を投与していた問題で、外部評価委の報告を受け記者会見する東京女子医大の吉岡俊正理事長(中央)と同大病院の岡田芳和病院長(右)、林和彦副院長=2014年12月18日、東京都新宿区(写真=時事通信フォト)
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都内の名門私立病院が、次々と経営難に陥っている。東京都新宿区にある「東京女子医科大学病院」は、医療事故を境に、2年間で19万人も外来患者が減った。その結果、3年連続の赤字に陥り、医師への給与も満足に払えない状況となっている。だが、これは女子医大だけの問題ではない。背景には医療制度の構造的な問題がある――。

■賞与は「本給部分の1.6カ月」

東京の医療が崩壊するのは、もはや時間の問題のようだ。前回、聖路加国際病院の苦境を紹介したが、(http://president.jp/articles/-/21994)最近になって、『週刊現代』(7月8日号)が「赤字22億円このままでは名門東京女子医大(以下、女子医大)が潰れる」という記事を掲載した。私もコメントした。

この記事を読んだ友人(女子医大OB)から「以前から聞いていましたが、ここまでひどい状況になっているとは驚きです」とメールが来た。医療関係者の間で話題となっているようだ。この記事は、女子医大の吉岡俊正理事長が、6月7日に教職員へ送った文書から始まっている。

「平成28年度の収支差額は22億円の赤字で3年連続の赤字となりました」
「3年連続の赤字により、現在の本学には現預金の余裕は全くありません」
「これ以上、医療収入が減少しますと、法人存続にかかわる危機的な事態になります」

こうした理由から上半期の賞与は「本給部分の1.6カ月」(前年度は2.35カ月+扶養手当2カ月)だという。

職員宛の文書で、吉岡理事長は「大変厳しい決定ですが、本学の現状を踏まえた判断です」「現状に対する職員の意識を高め、改善・改革のための具体的な行動が必要です。患者さんが戻り、医療収入増加に貢献する、あるいは経費削減により収支改善に貢献することがないか、各職員一人一人が当事者意識を持ち、真摯に考え、行動をしてください」と呼びかけている。

■2歳児に麻酔薬を大量投与

女子医大の転落のきっかけは、2014年2月、2歳の男児が麻酔薬「プロポフォール」を大量投与されて亡くなった医療事故がきっかけだ。

事故を受けて、厚生労働省は特定機能病院の承認を取り消した。事故の前、女子医大の収入に占める補助金の割合は9.3%だった。15年度の決算では4.1%にまで減っている。患者も減った。過去2年間で外来患者は約19万人、入院患者は約7万3000人減った。

だが、女子医大の幹部の危機意識は希薄で、派閥抗争に明け暮れた。吉岡俊正理事長一派は、この事故の責任を問うとして笠貫宏・学長、高桑雄一・医学部長(いずれも当時)を解任し、法廷闘争を仕掛けた。

前出の女子医大OBは「患者を紹介しようとしても、理事長派と学長派の対立が医局の内部部にまでおよんでいるのか、手術をしてもらえませんでした。これじゃ患者も減ります」と嘆く。

女子医大の「身から出たさび」という見方も可能だが、事態はそれほど単純ではない。なぜなら、昨今の医療費の抑制政策が続く限り、都内の総合病院が破綻するのは避けられないからだ。女子医大は、医療政策の被害者という側面もある。背景を解説しよう。

高齢化が進むわが国では、医療費の抑制は喫緊の課題だ。政府はさまざまな政策を打ち出している。

患者は増えるのに、医療費の総額が抑制されれば、医療機関の利幅は薄くなる。この政策が続けば、やがて破綻するところがでてくる。

■女子医大は例外ではない

意外かもしれないが、もっとも「被害」を受けやすいのは首都圏の病院だ。それは、我が国の医療費は厚労省が全国一律に決めているからだ。田舎で治療をうけても、東京の銀座で治療を受けても、医療費は同じなのだ。もちろん、土地代や人件費などのコストは違う。医療費を下げ続ければ、真っ先に破綻するのは、首都圏の病院だ。

私の知る限り、この問題を初めて取り上げたのは、情報誌『選択』の2015年9月号だ。<私大医学部で「経営危機」が続々 破綻寸前の「首都圏医療」>という記事を読めば、女子医大が例外でないことがわかる。

もちろん、この記事でも女子医大は取り上げられている。だが、それ以上に経営状態が危険とされたのは日本医科大学付属病院(以下、日本医大)だ。

■日本医大の経営危機の深刻さ

日本医大は、1876年(明治9年)に越後長岡藩医であった長谷川泰が設立した済生学舎を前身とする、日本最古の私立医大だ。慶應大、慈恵医大とともに戦前に設立された3つの医学部の一つである。現在も東京を代表する医療機関で、都立墨東病院などと並び、脳卒中や交通事故など一刻を争う救急患者を治療する三次医療機関の中心を担っている。

日本医大が公開している財務諸表によれば、2014年度の売上高利益率はマイナス19.4%で、158億円の赤字。総資本を自己資本で割った財務レバレッジは349%と大幅な借金超過で、流動比率(流動資産と流動負債の比)は70%だ。

流動比率は、負債の短期的な返済能力を見る指標のひとつだ。税理士の上田和朗氏は「企業の経営状態を判断する際のもっとも重要な指標の一つ」と言う。流動比率は、流動資産が流動負債より多いか否かを示し、通常は120%以上あるのが望ましいとされている。日本医大の経営危機がいかに深刻かご理解いただけるだろう。

日本医大は経営再建に懸命だ。2016年度の財務諸表によれば、医療収入は747.7億円で対前年比2.4%%(17.6億円)の増だった。支出は賞与や時間外勤務を減らし、予算対比で12.5億円も減らした。この結果、決算は黒字となった。

ただ、それでも固定比率は292%もあり、有利子負債は629億円だ。前出の上田氏は「人件費を削り、医療収入を増やしている。経営は改善されつつあるものの、借り入れ体質は変わらない」という。日本医大の苦戦は続きそうだ。

なぜ、最近になって、首都圏の一流病院が経営難に陥ったのだろう。

きっかけは2014年の消費税増税だ。病院は医薬品などを仕入れる際、病院は消費税を負担するが、患者には請求できない。このため消費税が「損税」となってしまうのだ。

■開業医が優遇され、病院が割を食う

これは、自動車など輸出企業の置かれた状況とは対照的だ。輸出品は海外での販売時に課税されるため、消費税が免除されている。多くの企業は仕入れなどで消費税を負担しているため、その差額を政府から還付される。2015年8月24日の朝日新聞に掲載された<病院経営「8%」ショック>の記事の中で、税理士で元静岡大学教授の湖東京至氏は、大手自動車メーカー5社が14年度に受け取った還付金の総額を約6000億円と推計している。

もちろん、厚労省も損税問題を認識している。損税を補填するため、2014年に診療報酬を全体で1.36%引き上げた。しかしながら、これでは不十分だ。特定の診療行為の値段を上げるだけで、損税問題を解決できるはずがない。必ず不公平が生じる。一般論だが、日本医師会の中核を占める開業医が優遇され、病院が割を食う。

19年10月には消費税が10%に上がる。財務省は診療報酬の減額を目指している。今後、診療報酬が大幅に増額されるとは考えにくい。生き残るには、必死にコストをカットするしかない。

病院経営での最大のコストとは何だろうか。それは人件費だ。多くの病院でコストの50-60%を人件費が占める。その中でも、特に問題となるのは看護師の人件費だ。看護師は、病院スタッフでもっとも多い職種であり、一般的に高給取りだからだ。

■都内看護師の平均年収は約523万円

『看護師になる2016』(朝日新聞出版)によれば、都内の総合病院に勤務する25歳の看護師の給与は、額面で37.1万、ボーナスは約100万円だ。年収にすると約550万円となる。ちなみに日本人の給与所得者の平均年収は420万円(平成27年分民間給与実態統計調査結果)だ。

看護師の給与には大きな国内格差がある。「都道府県・看護師税込推定給与総額(円)」という図をご覧いただくと、関東から近畿地方にかけて高く、東北地方や九州・四国・中国地方が安いことがわかる。

日本看護協会によると、東京都の看護師の平均年収は523万円。全国平均の473万円より1割ほど高い。病院の利益率は通常数%程度だ。看護師のコストがこれだけ違うと勝負にならない。このデータは2008年のもので少し古いが、この傾向は現在も変わらないだろう。

なぜ首都圏の看護師の人件費が高いのだろうか。それは首都圏で看護師が不足しているからだ。「都道府県別物価補正後の看護師月給と看護師数」という図では、人口当たりの看護師数と看護師の給与の関係を示している。なお看護師の給与は都道府県の物価で補正している。

病院経営は工場経営に似ている。首都圏のように人件費の高いところは不利だ。最近、九州や東北地方の病院が首都圏に進出しているが、これは地方病院のほうが財務力に余裕があるためだ。

では、首都圏の病院は、どのようにしてコストを切り詰めているのだろうか。実は、もっとも切り詰めているのが医師の人件費だ。東京には大勢の医師がいる。特に大学の場合、教授や准教授になりたい医師は掃いて捨てるほどいる。供給が多ければ、価格は下がる。ここにも経済原理が働く。

■准教授の手取りは30万円代

東京大学医学部の後輩の40代の医師で、現在、都内の大学病院の准教授を務める人物は「手取りは30万円代です」とこぼす。彼の妻は専業主婦で、2人の子供がいる。家賃、食費、教育費を稼がねばならない。

彼は生活のために、アルバイトにあけくれている。毎週1日は都内のクリニックで外来をこなし、週末は当直を務める。これで月額50万円程度を稼いでいる。

こんなことをしていると、肝心の診療がおろそかになる。最終的に、そのツケは患者が払うことになる。前出の医師は、「昼間、病棟には研修医しかいません。スタッフは外来、手術、そしてアルバイトに行かないといけないからです」と言う。これでは、入院患者の治療は二の次になる。

その結果が、2014年2月に女子医大で起こった医療事故だ。頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳の男児が、3日後に急性循環不全で亡くなった。その後の調査で、人工呼吸中の男児が暴れないように、小児への使用が禁止されている麻酔薬プロポフォールを用いたことが判明した。成人用量の2.7倍も投与されていたそうだ。女子医大が依頼した第三者委員会は「投与中止後すぐに人工透析をしていれば、男児の命は助かった可能性があった」と指摘している。

■組織改革では医療事故はなくならない

さらに、女子医大では、小児に対するプロポフォールの過量投与が常態化していたことも明らかになった。14歳未満の55人に対し、合計63回投与されていた。今回の医療事故は氷山の一角だったのだ。

女子医大は、医療安全体制を見直し、2015年2月6日には「平成26年2月に発生いたしました医療事故の件」という声明を発表した。この中で、「法人組織での『医療安全管理部門』の設置」や「病院長直属の外部委員により構成する病院運営諮問委員会の新設」などの15項目の提言を行っている。だが、事態を重くみた厚労省は、女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。

私は、このような組織改革や厳罰では、医療事故はなくならないと思っている。むしろ、ますます医療安全体制は損なわれるだろう。承認の取り消しは、女子医大の経営を悪化させるだけだ。

実は女子医大では2002年にも特定機能病院の承認を取り消されている。2001年3月、12歳の患者が人工心肺装置の操作ミスで死亡するという医療事故を起こしたからだ。この事故は、操作を担当した医師が逮捕されるという刑事事件にもなった。女子医大は、今回と同様に安全管理体制の改善に努め、遺族の理解も得られたため、2007年8月に再承認を受けている。ところが、この時に議論された安全対策は、その後、有効に機能しなかった。

私は当たり前だと思う。女子医大に限らず、首都圏の私大病院において、医療安全対策の最大の課題は「アルバイトの合間に診療する無責任体制」だからだ。ところが、これは女子医大の経営を考えれば、やむを得ない。医師の給与を下げるかわりに、アルバイトを許可しなければ、やっていけない。

■東京の高度医療を担う私大病院の危機

女子医大は名門病院だ。普通に診療していれば、スタッフ医師が今回のような過量投与を見落とすはずがない。「患者の安全性よりアルバイト」という医師の都合が優先されたため、急変時の対応が後手に回ったのだろう。この問題は、組織論や職業倫理だけでは改善しない構造的な問題だ。解決するには医局員の立場にたった実効性のある対策が必要だ。

東京の医療の中核を担っているのは、私立の大学病院だ。東京都に本部を置く医学部は13あるが、このうち11は私立医大だ。

こんなに私大病院が多い地域は東京だけだ。東京の次に私大病院が多いのは神奈川県と大阪府だが、いずれも3つだ。東京の高度医療は、私大病院が担っていると言っても過言ではない。だが、私大病院は、経営が悪化すれば「倒産」するしかない。女子医大や日本医大は、その瀬戸際にある。

このまま無策を決め込めば、いくつかの東京の医大は必ず破綻に追い込まれる。経営者の責任追及だけでなく、患者保護の視点から建設的な議論が必要だ。

(医療ガバナンス研究所 理事長 上 昌広 写真=時事通信フォト)