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社会保障・医療の切り下げはさらに進む 

先日、厚労省地域医療構想WGは公的病院1400超の内、400超を統廃合すべしと答申した。私立病院3000にも統廃合をかんこくすることになるらしい。

衆院での予算委員会、さらにm3での議論を見聞きすると、この統廃合の根拠は主に外科手術の件数によっているらしい(WGは6つの指標に基づくとしているが)。さらに、北海道等の地方で大きく削減される傾向がある。北海道は、半数が統廃合の対象。また、この統廃合対象選定にはどうも各個病院、その周囲の政治的な動きがからんでいる、即ち地域でのニーズの多寡を科学的に分析しているようには思われない。

日本では、入院病床が外国に比べると多く、急性期病床を中心に削減する方向で検討することはやむを得ないことなのかもしれない。

だが、医療事情の良くない地方を統廃合のメインの対象とするのは、地域医療を破壊することになる

高齢化が進展中で、今後急性期病床のニーズは高まる。

急性期を脱したその後の受け皿が貧弱。どうも厚労省はさらに在宅医療を進める積りらしい。だが、その担い手はどうする積りなのか。

こうした問題を放っておいて、ただ医療費削減のための病院統廃合、急性期病床削減に突き進むのは大きな問題だ。

政府は何しろ社会保障・医療のコストを削減することを目指している。

その一方で、関電疑惑のような国民の財・税金の私物化の問題はそのまま。政治家は、違法な企業献金を世間に知られぬように受け取っている。

さらに問題だと思うのが、安倍首相が外遊のたびに外国にばら撒く援助・・・総額55兆円に達するという。この背後には、援助にわが国の企業が関与し、そのキックバックが政権与党に回っているのではないかという疑惑がぬぐえない。聞くところでは、対外援助に伴う企業から政治家へのキックバックは3%。兆の単位のキックバックを政権与党政治家達は手に入れているのではないか。この対外援助と国内の社会保障の切り下げとは明らかにバランスを欠いている。

社会保障を政府はさらに切り下げる。

以下、引用~~~

政府、社会保障1300億円圧縮
薬価引き下げや介護負担増

2019/10/12 21:00 (JST)
©一般社団法人共同通信社

 政府は2020年度予算で高齢化に伴う社会保障費の伸び(自然増)を例年並みに1300億円程度圧縮する検討に入った。自然増は5千数百億円になる見込みで、薬の公定価格(薬価)の引き下げなどにより4千億円台に抑える。複数の政府関係者が12日、明らかにした。厚生労働、財務両省が年末の予算編成に向け調整する。

 社会保障制度の支え手である20~64歳の現役世代の人口は減少し、高齢化の進行で医療や介護、年金などの社会保障費は膨らみ続けている。

日米FTAは医療保険分野にも拡大される 

日米FTAでは、サービス分野が近い将来俎上に上る。米国が1990年代から要求してきた、医療保険分野での参入、それに伴い公的保険の縮小が実現することになる。

その時には、安倍首相は何と言うのだろうか。「ウィンウィンの関係」であると強弁するのだろうか。

医療の選択肢として、米国の先進的な医療技術が増えた、というのかもしれない。

だが、それにアクセスできるのは、ごく限られた富裕層、または/かつ、高額な米国保険資本の医療保険を買える層だけだ。

一旦、国の形を変えたら、容易に後戻りはできない。他の国の通商貿易条約では外されることが多くなった、ISDS条項が含まれているからだ。

農業分野で全面降伏ともいえる譲歩をした、現在の日米FTA、ウィンウィンとは、一体誰がウィンしたのか良く調べるべきだ。

歯科インプラントの問題 

日本の歯科医療は、あまりの低コストのために、かなり「危ない」状況にある。良心的に診療すればするほど、歯科診療施設の収入が少なくなる傾向にある。

診療を小分けにして、患者を頻回に通院させるのは、そうしないと歯科医院の経営が成立しないためだ。

最近、歯科で多く実施されるインプラント医療のリスクを、歯科医の方が述べている。こちらMRICというサイト、9月9日付の津曲雅美氏による記事だ。

「Vol.156 社会の歯科界への介入、審判を皆さんにお願いします」 

考えてみると、原則無菌環境である体内は、皮膚などの強固なバリアーで、無菌ではない外部環境と隔別されている。ところが、インプラントは、その隔別を人為的に破壊する行為なのだ。人為的に病的な状態を作り出していると言ってよい。いわば、人為的に開放創を作り出していることになる。血行の少ない骨は感染には弱く、一旦感染が起きると治癒するのに手間取る、ないし治癒が難しいこともある。

インプラントは、自費診療になるために、歯科で広く行われるようになってきている。この歯科医の方は、インプラントの危険性と、同時に歯科医療の診療報酬体制の貧しさを指摘したいのだろう。

これは、歯科以外の医療界にとっても、他山の石で済ますべき問題ではない。医療全体がぎりぎりまで、診療報酬の実質的な引き下げによって搾り上げられている。

政権の意向では、自費診療を増やし、公費負担を減らす方向である。医療界が生き延びるために、このインプラントと同じようなことを始める可能性が高い。さらに、公的保険がカバーする範囲が減れば、国民は民間保険に入らざるを得なくなる。すでに何度か記している通り、民間医療保険は米国発のグローバル資本だ。日米FTAは、医療等のサービス分野にも拡大される可能性が高い。民間医療保険加入が近い将来必須になる。

あの老後資金に2000万円必要だという金融庁の諮問委員会の発表は、事実そのもの。そして、あの試算には、医療介護の費用が含まれて「いない」。

社会保障にも大きな格差が生まれることになる。それは、命に係わることなので、経済合理性を超える。すなわち、必要とあれば、破産するところまで自分の資産を費やすことになる。

あまり想像したくない未来ではある・・・。

HPVワクチンの安全性 

昨日か今日のNHKの朝のワイドショー、朝いち、で、HPVワクチンを取り上げたらしい。

あるSNSで、その番組について、母親になりたての方が語っていた。その番組が言うには、「HPVワクチンには副作用がありうるので、受ける際は、自己責任で!」というのが結論だったようだ。

間接的な情報なので、この通りだったかどうかは分からない。だが、少なくとも視聴者の一人が、このように受け止めた内容だったということは重大だ。

何となれば、HPVワクチンは、一時問題とされた慢性疼痛のような副作用は、コントロール群と比べて有意差がない、すなわちワクチンで多く生じるということはない、というコンセンサスがすでに得られているから、だ。

一方、HPVワクチンで子宮頸がんの7割が予防可能で、9価の新しいワクチンだとそれが9割まで上がる。子宮頸がんによる死亡者は毎年2000人で、発症率が一時下がったものが最近再び増えている。こうしたことから、HPVワクチン接種は、必須といえるほど重要になってきている。

HPVワクチンの安全性については、WHOの予防接種の安全性を教宣する委員会GACVSが、確認し、接種を勧めている。下記のサイト3ページには、日本での「副作用問題」が根拠のないもので、接種者と非接種者にそのような症状が生じる率は変わらないことを述べている。

こちら。

NHKには医療保健に詳しい解説者がいるのだろうに、何故、最初に述べた様な誤解を生じうる放送を行ったのだろうか。

まさか、HPVワクチン勧奨に腰が引けている厚労省への忖度ではないだろうな?

歯科医療の現状は、医療全体の近未来像 

現在の歯科医療の状況は、医療全体の近未来だ。

歯科医師が増産され、その一方歯科医療のコストは抑えられ続けてきた。その結果、歯科医療は薄利多売、歯科技工はコストカットを求めて海外へ発注である。こう言っては語弊があるかもしれないが、「安かろう、悪かろう」へ一直線である。歯科医師会幹部は、間接選挙であり、一般会員の要望ではなく、行政の要望に従う傾向がある。

優良な技術を持つ歯科技工士が枯渇するという事態も驚きだったが、自殺者を出すまでに現場の歯科医師を追い詰め、個別指導という行政支配の手段を用いて、あくまで医療機関の診療報酬を減らそうとする行政に静かな怒りを感じる。

政府は、社会保障予算を、自然増分を含めて毎年5000億円、機械的に減らし続けている。それが歯科医療、さらには、医療全体にジワリと効いてくる、ということだ。現政権を支持するということは、政府・行政それに業界上層部のやりたい放題を認める、ということだ。

以下、MRICより引用~~~

現在とこれからの歯科界を担う皆さんへ

津曲雅美

2019年5月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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現在とこれからの歯科界を担う皆さんへ

4月の所属群市区歯科医師会の例会で、以下の要望を出すつもりでしたが、出すのは止めました。どうにもならないと考えたからです。それより、不特定多数の皆さんに届ける方が得策だと考えました。歯科技工士は近い将来、実質的にはいなくなると思います。滋賀県歯科医師会の会立歯科技工士専門学校は定員20名のところ学生数4名まで落ち込み、今年3月に閉校になりました。知る限
りでは、歯科技工士の技術は落ちました。人手不足で、いい技工士さんが来ないそうです。いっとき、あれだけ騒がれた中国への技工物委託、その結果とんでもない技工物が患者さんの口に入る、歯科医師も生活に困窮し、安い中国に委託する、まずは売り上げ至上主義に陥る、長らくこの世界に居た者として、阿鼻叫喚の地獄絵図を見る日がそこまで迫っていると感じます。ある私立歯科大学に合格し、ある歯科衛生士専門学校は落ちた方がいるそうです。歯科医師の質も落ちたと感じます。

時局対策委員会設置の要望

国民は税金を払い、国会議員、地方の首長と議員に選挙権と被選挙権をもっています。構成員全員が平等な基本的権利をもつ、これが近代社会の鉄則です。我々は日歯と県歯と群市区歯の個人会員です。県歯などには一応基本的権利がありますが、日歯に対しては会費を払うだけで、基本的権利は全くありません。日歯代議員は会員から見れば間接選挙、日歯会長は間接の間接選挙で、こういうのは「ない」というのです。金だけ払って無権利、皆さん、こんなことをよく我慢していますね。個人的と言われても、私には考えられないことです。

日歯は個人会員をもたない連合体ではありませんし、社会的には日歯の歯科医療に対する意思決定は、歯科医師の歯科医療に対する意思決定です。役員は会員の審判を受けないから、やりたい放題してきました。京都贈収賄事件、日歯連事件、東歯大同窓会贈収賄事件そして2007年の技官の恫喝による都歯会員の自殺事件のときの日歯と都歯の黙殺・・・これらは役員がやった犯罪で、会員は全く無関係です。会員が無権利だからチェックが効かないのです。

また、そうだから平成16年の東北歯会連絡協で福島県の安斉専務が「日歯が保険医の指定を行うよう主張すべきだ」と発言しています。平成17年の都道府県歯科医師会会長会議では井堂日歯会長が「歯科医師免許更新制導入に関し、日歯が主導権をとり、そのために日歯生涯研修を重用するべき」と発言しています。

2009年の千葉県歯の代議員会で「集団的個別指導について、点数が下がらなければ個別指導だと威圧的な指導が行われている。会員擁護の立場から県歯は千葉厚生局とどのように対応しているのか」との藤本代議員の質問に、大河原理事は「日歯はこの問題に触れると更に厳しくされる、との懸念をもっている、政治的なアプローチが必要だ」と腰の引けた回答をしています。

そして2007年技官の恫喝による都歯会員自殺事件では、桜井議員と小池議員、保団連と東京歯科協などがあれだけ闘ってくれたのに、日歯と都歯は完全に無視しました。こんな犯罪ばかり起こして、会員に対して権力を持とうとして、そして会員擁護はしないのです。まさに無責任状態です。

これが日歯の現状です。無権利でお任せするのと、権利をもったうえでお任せするのは、意味が違います。日歯会員が日歯会長、日歯代議員に直接選挙権をもつべきです。

ある方が「厚労省は日歯の言うことしか聞かない。一人一人の歯科医師の意見を聞いていたら、きりがないから」ということでした。私も二度厚労省を尋ねましたが、面会拒否でした。保団連が厚労省と話し合いの場をもてるのは、主に共産党の国会議員の紹介があるからで、日歯は議員の紹介なしで厚労省と話し合えます。個人や小グループで国や国民にアッピールしている方がいます。
勇気ある行動で敬意を表します。だが、歯科医療のことを本当に考えるなら、職域代表団体である日歯にモノを言わせるのが正道だと思いますし、それに手を付けないで・・というのは大きな片手落ちだと思います。まずは日歯を変えることです。

また、中医協で多数決で負けるのは仕方ありません。改定点数はもらっておかないと、もっと悪くなりますから、もらうべきです。その上で「しょうがないから受けますが、これでは、こんな低報酬では物理的にできません。どうなってもしりませんよ」と毎回言っておくべきです。そうでないと、認めます、それでOKですということになります。

日歯会長、日歯代議員の直選を実現させ、日歯を会員のための組織にする、中医協でどうなっても知りませんよ、とダメ押しをする、これら二つは、歯科医療、歯科界が生き残るための生命線です。今でも99%歯科界は凋落すると思いますが、これら二つができなければ、歯科界の再生は完全に断たれます。

以上の理由で、本会や滋賀県歯に仮称時局対策委員会を設置して、日歯などに直接要望する事を要望します。私は歯科界を去る身です。関係ないと思ってます。しかし、一生の職業として歯科医師を選んで、そして生きてきました。愛着はあります。歯科医療を守るためにお考え下さい。

国保料値上げ、国保料滞納、国保証取り上げ 

国民健康保険は、主に自営業者、無職の方等が加入しており、財政がひっ迫している。2019年度に、各都道府県が提示する「標準保険料率」をもとに市町村が国保料を改定する。その結果、8割の自治体で平均4万9千円の値上げになると予想されている。その結果は、この記事にある通り、国保料の滞納が増える可能性が高い。滞納が1年間以上になると、国保証が取り上げられ、一旦すべてが自己負担になることがある。

新聞赤旗から引用~~~

国保料滞納269万世帯 3分の1 国保証取り上げ
18年度厚労省調査

 国民の4人に1人が加入し、自治体が運営する国民健康保険制度で、2018年度に保険料・税(国保料)を滞納していた世帯は、全加入世帯の15%近い約269万世帯であることが、厚生労働省の調査で分かりました。また、国保料滞納世帯の3軒に1軒は、滞納を理由に正規の被保険者証(国保証)を取り上げられ、安心して医療を受けられない状況にありました。

~~~引用終わり

で、実際に国保証を取り上げられるケースがどれほどいるのか、そのような方々が医療を受けられるのかが、福岡県議会で議論されている。

こちら。

自分は大丈夫と思っていても、いつ何時、病気に冒され仕事を失うかもしれない、または他の理由で国保料を支払えなくなる可能性がある。誰にでも起きるリスクだ。

そうすると、医療に満足にかかれないということになる。国保加入全世帯の5%は、保険証を取り上げられ、そうした事態に現になっている。今後、高齢化が進行し、この状況は悪化する。

それを黙って見過ごしていて良いのか。

年2000時間の時間外労働 

途方もない残業時間である。医師には、年に2000時間までの残業を認めようと厚労省が言っている。

1990年代に、厚労省は、それまで充足しているとしていたのを急に不足していると、医師数の見方を180度変え、医師育成数を増やす方向に舵を切った。救急医療等での医師不足を解決するために、医学部を増やし、定員を大幅に増やした。医師数は、その後4割弱増加した。

だが、医師不足が叫ばれている救急医療・地域医療の中核を担う、外科・小児科の医師は減少傾向にある。

これは、厚労省の医師数をただ単に増やす政策が失敗だったことを意味する。

厚労省は、専門医資格を取る際に、地域医療従事を義務化しようとしているが、それもうまく機能しない可能性が高い。

まずは、人手不足の医療現場の労働環境・待遇を改善することだ。医師数を増やしたり、強制人事を行うことで解決しない。

その上、この非人間的な時間外労働の認可となると、救急医療・地域医療はますます崩壊することだろう。

以下、引用~~~

朝日新聞デジタル

医師ユニオンと過労死遺族、残業年2千時間案に反対
姫野直行 2019年1月17日23時40分

 医師の働き方改革を検討する厚生労働省が、一部の医師の残業上限時間を年1900~2千時間とする案を示したことを受け、勤務医の労働組合「全国医師ユニオン」が17日、緊急声明を出した。憲法や労働基準法に違反する可能性がある働き方改革は許されないとしている。

 声明は、厚労省案が法の下の平等を定めた憲法14条や「生存権」を定めた憲法25条のほか、労働基準法にも違反すると指摘。「医師不足や医師の偏在は医療政策の失態。医師個人に責任を転嫁することは言語道断」と批判した。同ユニオンが2017年に行った勤務医労働実態調査で4割の医師が健康に不安をもっており、51・6%が労働時間規制に賛成していたという。

 過労死した医師の遺族も反対を表明した。小児科医だった夫を過労自殺で亡くした「東京過労死を考える家族の会」の中原のり子共同代表が会見に同席。遺族からの「働く医師たちの命を守るためではなく病院が罰則を受けないでいいように検討された案にしか思えない」や「医師の過酷な勤務を知っていたら娘を医師などにはさせなかった」などの意見を紹介した。(姫野直行)

医師の過重労働 

医師の過重労働を軽減することは、医療の安全のために必要なこと。ひいては、国民のためになることなのだ。

行政も、司法もさらに医療の機能を評価すると豪語している医療機能評価機構も、この問題については沈黙している。

医療事故に対して、医師や他の医療スタッフの過重労働という観点から分析がされてきただろうか。医師・医療スタッフを叩きさえすれば良いという発想がないかが、厳しく問われている。

以下、引用~~~

「君死にたまう事なかれ」 ~医師の過重労働は許容限度を越えている~

つくば市 坂根Mクリニック
坂根みち子

2018年12月19日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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この半年で、身近にいる医師が3人突然死した。一人は同級生で、彼には中高大学生の子供が3人、後輩にはまだ小さい2人の
子供が残された。遺族は哀しみの只中にいて、グリーフケアを受けることもなく、ひたすら耐え、目の前の子供を育てることで精一杯の日々を過ごされている。

後輩の医師を研修医の頃から育ててきた直属の上司は、忘年会の挨拶で、人格者でもあった彼について語りながら、言葉に詰まり、自分を責めた。ご自身もずっと過重労働の中で、たくさんの患者の命を救ってきたドクターである。誰もが、やり切れない思いを抱えながら、どこかに贖罪の意識を抱えながら、それでも目の前の患者を救うために立ち止まることが出来ない。そして、次は自分の番だと心の中では思っている。

一体これは、各医療機関で解決出来る問題なのだろうか。奈良県立奈良病院産婦人科医師らが「宿直は月8回以上、日直は通常勤務から連続で32時間以上」などという過酷な勤務が常態化しているとし、改善を求めて提訴し最高裁で勝訴したのが2013年。訴訟はその後も繰り返され、その度に医師側が勝訴しているが、奈良県は、抜本的な解決は一地方団体では無理と言うことで匙を投げている。

現在、全国の医師の1割は、年間1920時間を越える時間外労働に従事している。4割の医師は、過労死基準の年間960時間を越える時間外労働(週60時間を越える労働)をしている。厚労省は、このような医師の働き方が、全業種を通じて最大のブラック状態だと認めている。ところが、自ら定めた労災基準(1)がありながら、医師の時間外労働の上限について、医師不足の地域などでは例外として年間1920時間、月の平均に換算すると160時間まで認める方向だという。12月13日NHKニュース(2)
このような恣意的な行政判断が許されるものなのだろうか。厚労省の医系技官は、遵法精神が乏しいのか、あまりに現場知らずなのか。SNSが発達した今は昔と違う。流石に医療現場には怒りの声が溢れている。

日本の医療界は、労働団体は無いに等しい。現場の医療を守るべき日本医師会を始めとする各医療団体は、まず経営者の視点でものを考える。厚労省の諮問機関は、利害関係調整の場となり、予定調和を乱す意見の持ち主は呼ばれない。他の労働団体、患者団体も、医師の過重労働はあまり問題にしない。ましてやそれが国民の医療安全を損なっているという認識はされていない。ヨーロッパや北欧が、医師の労働時間を週48時間程度に厳しく制限しているのは、患者安全のためでもある、とはっきり認識しているのと雲泥の差である。

勤務医中心の団体である全国医師連盟が厚労省の長時間労働容認の方針に反対する緊急声明を出した(3)。その中で、特に以下の2点は、重要である。*地域医療の維持と長時間労働改善を両立させる唯一の抜本的方法は、急性期病院の集約化による一病院当たりの医師数増加を基盤とした交代制勤務の導入である。*厚生労働省、日本医師会、各病院団体は医療提供体制維持が不可能である現状を放置してきたことを率直に詫び、医療の持続、安全性確保のため、急性期病院の集約化、再編が必要であることを国民に説明し、そのロードマップを明示すべきである。

現場の医療者を守るのは誰か。残念ながら厚労省も医師会も医療団体もあてにならない。メディアも医師の働き方改革は5年先延ばしされ、長時間労働が容認されるという垂れ流し報道しかしない。その背景にある深刻な問題に踏み込むのが、メディアの真骨頂であろうに。日本の司法はどうだろう。医療事故が起きたとき、他の先進国のように、医師の過重労働という背景要因まで分析して判断してきたことがあったのだろうか。そして、医療安全団体はいったい何をしているのか。「過労死ラインを超えて医療安全は守れない」となぜ言わない。この期に及んでなぜ声を上げないのか。この国はどこかおかしい。

(1) 脳心臓疾患の労災認定
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325
-11.pdf?fbclid=IwAR2_u6GFWI1IOClyRpVj37JcMwpHw1v4OZ5sggNSDNHg7l5iqyetX
3CNflY
(2)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181213/k10011745141000.html?fbc
lid=IwAR39Nnj_Kwmyaant1iu4Y9A5j9uTDV-IAsUTpGSy2wxEYRnhrm_Vd4UP6pQ
(3)一般社団法人 全国医師連盟 理事会 緊急声明
医療安全を脅かし、勤務医の過労死基準超の長時間労働容認に断固として反対
する 平成30年12月14日
http://zennirenn.com/news/2018/12/-301214-2.html?fbclid=IwAR1XP-amwEct
k18eYKAvi2zjQExXLjBYqRAybQmwRv6q173cQvrJT-kh1nY

妊婦加算廃止に思う 

小泉進次郎が、診療報酬上妊婦加算が少子化対策に反すると問題提起し、厚労省は、あっさり同加算を凍結した。きっと年度替わりの時期に、同加算を廃止する積りなのだろう。

臨床現場では、妊婦への配慮はいろいろと手間がかかる。投薬一つとっても、妊娠時期に応じて、種類、投薬量を加減しなくてはいけない。医師のその技術に対する貴重な診療報酬を、いとも簡単に廃止する、そのセンスが理解できない。

この加算の診療報酬は、初診時75点、再診時38点だそうだ。自己負担は250円から128円程度である。この負担増が、少子化を促進するのか。納得できない。

妊婦へ対処する手間を技術料として評価した貴重な診療報酬だったが、ポピュリスト政治家の下らぬ言で、廃止になる。

現在の政権が推進している金融緩和政策によって、国家財政はどんどん悪化している。経済学者、エコノミストの多くが、近い将来国家財政破綻が来ると予測している。その際に、最初に破たんするのが医療。そうすると、128円、250円どこの話しではなくなる。そうでなくても割安な医療のコストが跳ね上がり、さらに保険が効かなくなる。小泉進次郎のようなポピュリスト政治家達が、そうした事態をもたらすように政策を推し進めている。

いつかは明確に予測できないが、近い将来、国家財政の破綻は確実に起きる。国債の未達が少しずつ増えてきている。国債を引き受ける投資家がいなくなる、ないし/かつ国債を爆買いしている日銀のバランスシートが毀損されることにより、円の信用が落ちる=極端な円安に傾くことによってインフレが進行する。それで医療制度が破たんする、という道筋が見えてきている。

医療機関初診料値上げは適切 

医療機関の初診料を、消費税増税とともにわずか(数十円単位?)で上げることが議論されているようだ。

それに対して、SNSでは、また値上げかと医療機関に反感を示すような議論が多い。

だが、この値上げを批判するのは間違いだ。

そもそも、消費税は、医療機関にとって損税。医療機関は、物品購入などに対して消費税を支払うが、収入たる窓口収入・診療報酬では消費税は上乗せされていない。正確に言うと、ごくわずか上乗せされているのだが、下記の基金にその分の資金を「分捕られている」のだ。

この地域医療介護総合確保基金は、地域の医療介護施設の維持・発展のために用いられることになっているが、配られる資金の大部分は「箱物」建設に用いられている。行政が、この基金の差配を支配することで、利権を得ている構図が見えてくる。地域医療介護は、財政的に極めて厳しい状況にある。消費税分の診療報酬は、直接各々の医療・介護機関に支払われるべきなのだ。

こちら。

このわずかな初診料値上げが行われても、大部分は、この基金に吸い上げられてしまう可能性が高い。問題は、このピンハネ構造にある。

また、もともと診療報酬における「技術料」は、国際的にみてもきわめて低い。診察料は、その技術料の中核部分だが、それを低いままにしておいて良いはずがない。

こうして、医療費を抑えることにより、やがて国家財政が破たんするときには、まず最初に医療制度が立ち行かなくなる。小林慶一郎編著「財政破綻後 危機のシナリオ分析」において、国家財政破たんがまず社会保障の崩壊、医療機関の財政破綻をもたらすことが述べられている。それは遠い将来の見通しではない。すぐそこまでやって来ている。

この程度の技術料の見直しに、硬直的な反対を示すことは見当外れであり、本当の問題を見過ごすことになる。