ナチスのやり方を真似て 

トルコでは、あのクーデーターを機に、反大統領派の大規模な粛清が始まっている。NHKのニュースで、トルコのマスコミが体制に従順であるといったニュアンスのことを流していたので、苦笑してしまった。そう言うNHKはどうなのか、と反射的に思ったのだ。憲法の改変、条項書き加えに関して、わが国のマスコミは、政権への批判的報道は少ない。政権の意向を慮ることが横行している。わが国のマスコミは、トルコの独裁政権を云々できる立場にはない。

国家緊急権を憲法に書き加えようと、安倍首相は考えている。表向きの理由は、自然災害時の対応のためだ。自然災害時、様々な国家統治機能をすべて内閣、内閣総理大臣に帰する、という条項である。

この国家緊急権の「加憲」は、自然災害だけを想定したものではないことは明らかだ。重大な自然災害に対しては、すでに、参議院の緊急集会、政令への罰則付与等の対応策があり、様々な現実的対応がきめ細かくなされる規定がある。

基本的人権の制限を想定し、国家統治機能のすべてを内閣、ないし内閣総理大臣に帰する制度は、独裁そのものである。いかに緊急時とはいえ、戦前・戦争中の体制への復帰、さらにそれ以上に過酷な体制の出現である。2012年自民党が公表した改憲草案には、国家緊急権について 1)発動要件を法律で定める・・・ということは、多数を占める政権与党の思うがままということだ 2)緊急事態の期限に制限がない・・・いくらでも緊急事態を延ばすことができる 3)内閣は法律と同等の政令を制定できる 事後に国会の承認を得るという規定があるが、当該政令が国会で承認されない場合に失効するとは定められていない 4)政令で規定できる対象に限定がない・・・基本的人権が制限されることは、自民党憲法憲法草案の内容から当然予想される。これは、戦時中の国家緊急権の規定よりもさらに内閣に権力を集中させる内容である。

ネットでの書き込みなどや、政権与党政治家の口からは、ドイツなどにすでに国家緊急権が憲法に規定されているという意見が聞こえてくる。ドイツは、州立国家であり、重大な自然災害時に、州境をまたいで、警察・軍・消防等が機能するために、その規定がある。立法権の移転・人権制限の規定等はない。それを、安倍首相が考えている国家緊急権と同一視することは、無知のためか、意図的に世論を誘導するためとしか思えない。

安倍首相は、安保法制導入の議論で、最初に、在外邦人が外国で有事に巻き込まれ、彼らを救い出す米軍を援助するため、という理由づけを行った。だが、それは米政府のアナウンスで、ありえない事態であることが判明した。次は、ホルムズ海峡掃海を例に出した。だが、それがまったく現実味のない例であることは、その後のイラン・米国関係の進展をみても明らかだ。現実には、自衛隊が、内戦状態に再び入っている南スーダンで、駆けつけ警護という名目で内戦に参加する作戦が、この法制に基づく自衛隊の初めての軍事行動になる。安保法制制定に際して、安倍首相は国民に対してあからさまな嘘をついた。安保法制は、米軍の世界戦略に自衛隊とわが国を参画させるための法制だったわけだ。国民にその説明は一切ない。

同じことが、国家緊急事態権を憲法に加えることでも行われる。同権がもっぱら自然災害に対応するためという理由づけがその一つだ。国家緊急事態権の憲法への書き加えの必要性が、国民にとっては受け入れやすい自然災害に対応するためという触れ込みで宣伝される。実際に、政権の提灯持ちの評論家やマスコミが、その線で同権の必要性を訴え始めている。

実際に、国家緊急事態権が憲法に書き加えられたら、その時には、憲法は廃棄されたのと同じである。

麻生財務大臣がしばらく前に、ナチスのやり方を真似たらよいと言っていたことが現実になろうとしている。ナチスは、国家緊急権を根拠に反対勢力を国会から排除し、ナチス独裁をもたらす授権法を制定し、ワイマール憲法を実質的に廃棄した。

そうなってからでは遅い。

安倍政権の目指すもの 

改憲は緊急事態条項の創設から行うと安倍首相が国会で言明した。。

緊急事態条項とは、戒厳令のことである。戒厳令は、内乱等にともない、国民の基本的人権を制限し、国家、すなわち時の政権が財政、行政、警察、軍事を掌握し、それらを自由に執行できることを可能にする。内乱等は、時の政権が規定する。もっとも民主的と言われたワイマール憲法から、ナチスが生まれたのは、この条項をナチスが利用したからである。様々な国家で軍事クーデーターが起きるのも、この条項によってだ。

時の権力者に全権を委任するということだ。

その条項創設を、安倍首相は改憲で最初に行うと言明した。

権力の暴走を抑制し、阻止するはずの憲法が、その機能を果たさなくなる。

政権は、緊急事態条項は、自然災害などに対処するために必要だ、と宣伝することだろう。だが、自民党改憲案に、同条項がいかなるものであるか、明確に記されている。

戦争法制の必要性を、有事の際に在外邦人を退避させる米軍艦船を援護するために必要だ、というありえない立法事実の説明を安倍首相は行った。

成立した戦争法案によって、自衛隊がまず派遣される任務は、石油利権に絡んで大国が代理戦争をしている南スーダンでのPKO活動である。このような議論は、戦争法案の国会審議中にはほとんどされなかった。

政府が述べる緊急事態条項の必要性には、同じようなゴマカシがある。これは、戒厳令創設そのものだからである。国民に知られたくない本質を隠すゴマカシである。

こちらに、安倍政権の目指す緊急事態条項の説明がわかりやすく載っている。