年金受給開始年齢が引き上げられそうだ 

しばらく前に、年金受給資格が「10年間以上の加入」に緩和された。政府は大盤振る舞いしたな、と思っていた。

そうしたら、高齢者の定義を70歳以上に引き上げる、というニュースが飛び込んできた。この定義に従って、年金受給年齢を徐々に75歳程度まで引き上げるのではないだろうか。とすれば、「10年間以上年金に加入していれば、受給資格が得られる」という政策は、大盤振る舞いでも何でもないことになる。ただ単に、年金加入者を増やす手段ということだろう。

現在国民年金の納付率は約6割20歳代だと、2から3割にまで下がる。納付していない人々が仮に納付することになったとしても、その9割が納付の減免ないし免除対象になるという。国民年金は、すでに実質破たんしている。厚生年金も、徐々にその財政状況は、高齢化の進展に伴い悪化するはずだ。

そこで、上記の通り、受給年齢引き上げによって、給付総額を減らす方針が出てきたのだろう。賃金の減少に合わせて、年金額を下げることも、先ごろ国会を通過した法案で実現している。受給年齢引き上げは、ただ単に年金を高齢になるまでもらえないだけでなく、その年齢まで年金保険料を支払い続けなければならないことを意味する。

もし年金給付開始年齢が75歳にまで引き上げられると、健康年齢の平均が70歳前後であるから、数年間は病気をおしてでも払い続けることになるのか。また、平均寿命は80歳前後だから、大多数の方が年金をもらえるのは数年間だけということになりかねない。

私は、年金の受給資格を厳しくし、給付を減らすことは、現在の年金財政では仕方ないと思う。だが、それと同時に行うべきことが幾つもある。

一つは、高齢化が到来することはとっくに予測されていたのに、こうした事態に至るまで放置した責任を明確にすること。特に、積み立て方式がいつの間にか賦課方式に変えられていたこと、さらに年金基金を貪った天下り団体がかってあったこと、その責任を明確にすることが必要だ。高度成長期に、高齢化人口減少社会を見据えて、年金財政の面の準備をすべきであったのに、何もしてこなかったことは、当時の政権政治家・官僚の失態だ。

二つ目は、国民年金に税をもっとつぎ込むことだ。国民年金だけでは生活できないのは明白であり、税金によってその額を増やさないと、結局、生活保護等の社会的なコストが多くなる。

三つ目、議員たちは、議員年金を再び実現しようとしている。これは絶対反対だ。議員年金を確保したら、国民の年金問題を議員は自分の問題として考えなくなる。国民の年金の枠内で彼らも年金を受給すべきだ。

四つ目、国の税金の使い道をもう一度考え直す必要がある。防衛予算が毎年増やされている。国内経済の退縮を考えると大きな伸びだ。特に、「米国政府の言いなりの値段で」高額な武器・軍事機器を購入していることに対処すべきだろう。米国の世界戦略に積極的にコミットする政策も、財政面から維持できなくなるはずだ。再び増え続ける公共事業も見直すべきだ。それに、現在、政治が監視すべきなのにしていない、官僚の天下り法人への助成金がどれほどあるのだろうか。医療関係の特殊法人も、この数年で雨後の筍のように増え続けている。海外へのODA、援助の類も今のまま続けるべきではない。

五つ目、タックスヘヴンの問題。今年春大きな話題になったパナマ文書で示唆された、税金逃れの海外投資を徹底的に洗い出すべきだ。その後の報道では、オフショアの口座の大多数は、偽名ないし個人情報の盗用によるものらしい。それ自体犯罪行為だ。それを政府は追及すべきだが、何も追及する気配はない。企業役員、官僚、政治家が、税金を逃れて蓄財している可能性があるのではないか。

六つ目、大企業が恩恵を被る法人税減税を元に戻すこと。むしろ増税すべきだ。大企業は、すでに様々な税の控除の恩恵を受けており、諸外国と比べて、公的な負担は決して高くない。大企業の内部留保は、400兆円に達している。その一方で、公的な負担を軽減され続けている。適切な法人課税で、年金財政のハードランディングを避けることができる。

現在の高齢者たちは、年金に依存しなくても生活できるのだろうか。このまま政権政治家と官僚が年金をずたずたにするのを見過ごして良いはずがないと思うのだが・・・。

以下、引用~~~

高齢者「70歳以上に」 内閣府、定義引き上げ提言
2016/12/20 1:22日本経済新聞 電子版

 内閣府は技術革新などがなされない場合、2030年には生産年齢人口が1%減少し、日本で低成長が定常化するとした分析をまとめた。高齢者の定義を70歳以上に引き上げることも提案。定年延長や、医療や介護サービスで、高所得の高齢者の負担を増やすといった施策を想定する。構造改革の基本的考え方として、政府の経済政策に反映させる。

高齢者、社会保障負担増、給付減 

ある程度の収入のある高齢者の社会保障給付を減らし、社会保障負担を増やすらしい。ある程度の収入のある高齢者の場合、こうした処置は受け入れざるを得ない。が、年金額が、現役世代の給与水準に合わせて減らされる可能性もあり、インフレが進むと厳しくなるかもしれない。それに、財務省は、こうした国民への負担増を、際限なく続ける可能性もあり、注意が必要だ。消費税の増税も、現在の国の財政からすると不可避だろう。

以下、引用~~~

現役並み収入の高齢者ら、医療費負担増へ 来年度から
16/11/16記事:朝日新聞

 厚生労働省が来年度から実施する医療や介護の負担増の大枠が固まった。現役世代並みの収入がある70歳以上の人は医療費の自己負担上限が上がり、新しく75歳になる人は保険料の軽減特例がなくなる。大企業の会社員らは介護保険料の負担が増える。さらに対象を広げるか財務省と調整し、年内に最終決定する。
 
 医療費では、年収に応じて自己負担月額の上限を定める「高額療養費制度」を見直す。年収が370万円以上で70歳以上の人は、上限を現役世代並みに引き上げる。年収370万円未満で住民税を払っている人も含めるかどうかは調整する。
 
 75歳以上の後期高齢者には年収が低い人を対象に保険料を軽減する特例があるが、来年度から新たに75歳になる人を対象に廃止する。すでに75歳以上の人は3年かけて段階的に廃止することも検討する。
 
 現役世代の介護保険料は、医療保険の被保険者の収入総額に応じて割り当てる「総報酬割」を来年度から数年かけて段階的に導入する方針。健保組合の約7割と共済組合のほぼすべてで保険料が上がる見通しだ。
 
 厚労省はこうした負担増などによって、来年度で約1400億円の社会保障費の抑制をめざす。
 
■医療や介護で固まった負担増
 
【医療】
 
・現役世代並みの収入がある70歳以上の毎月の自己負担上限引き上げ
 
 例)年収370万〜770万円で外来医療費が月100万円の場合=約4万4千円→約8万7千円

ブログ主コメント;
年収370万円で、外来医療費100万円以上かかっている場合、扶養家族なしとして、所得税と介護保険料でおおよそ年20万円、残りは250万円(以下)。月20.8万円(以下)の手取りとなる。持ち家の場合は良いかもしれないが、ローンを抱えていたり、借家の場合は、結構厳しいかもしれない。介護を必要となったり、重篤な病気を抱えた場合も、さらに厳しくなることだろう。もちろん、現役世代でも非正規雇用の方などは、これよりも厳しい財政状況の方が多いのかもしれないが・・・。

 
・新たに75歳になる人の保険料の軽減特例を廃止
 
 例)年金収入が80万円以下=9割軽減→7割軽減
 
【介護】
 
・大企業の会社員や公務員の保険料引き上げ
 
・一般的な収入の人の毎月の自己負担上限引き上げ
 
 課税所得145万円未満で市区町村民税課税世帯=約3万7千円→約4万4千円

もっとも期待できないことを期待し続ける 

参院選前の最新世論調査で、比例で自民党へ投票する者が32%、安倍政権支持率が5割を超えているらしい。国民の最大の関心事は、医療年金等の社会福祉であるという。

国民は、安倍政権に「もっとも期待できない」ことを期待している。「企業が活躍しやすい環境をわが国に作る」ということを、安倍首相は経済政策の一番の目的に挙げている。国民の社会保障を第一に考える、とは決して言わない。企業の収益が上がれば、その利益の一部が国民に流れ落ちてくる、というのだ。それが、まったく実現していないことがこの3年半の安倍政権の政治から明らかだ。企業収益は、内部留保になってしまい、国民に回ってくることはない。税収が上がったというが、それを社会保障に重点的に回しているということもない。

小泉政権以来、いやその前高度成長が終わりを告げてから、自民党政権は、国民を包摂し、社会保障のセーフティネットを維持することを放棄した。安倍政権の社会保障政策も、決して国民のことを考えたものではない。

年金資金の最大6割を博打(それも負けることの分かっている博打)のような株式市場に投資し、目減りすることが確実だ。これは株式の値上がりという表面的な経済効果を狙うものだ。今回の英国のEU離脱に伴い株式は暴落し、年金資金の損失は20数兆円に膨れるのではないかとの試算もある。年金資金が減れば、年金支給額を減らさざるを得ないと、政府は明言している。今年前半の年金資金運用成績は、選挙の終わる7月下旬に公表される。これも意図的な損失隠しだろう。

TPPが施行されると、医療の混合診療化が必至だ。TPPとは、加盟国の市場、その最大は日本市場なわけだが、それを米国の資本が自由に行動できる市場とすることを目指すものだ。米国の保険資本が狙っているのが、わが国の国民の資産だ。安倍首相は、現在の公的保険診療を堅持するとは言うが、混合診療の拡大を行わないとは決して言わない。米国保険資本が医療現場に入り込み、国民の資産を吸いつくすことを許す積りなのだ。米国では、自己破産の大きな理由が、医療費負担だ。そうした社会をわが国にもたらそうというのが、TPPである。TPP絶対反対といっていた安倍政権は、TPP批准に向けて前のめりになっている。

日銀に国債を引き受けさせる政策は、麻薬のようだ。どんどん日銀の資産バランスシートが悪化し、やがては国債と円の評価が暴落する可能性がある。本来、日銀による国債引き受けは、禁じ手だった。どうしても行うとしても、短期間で止めるべき非常手段であった。ところが、出口の見つからない麻薬中毒のような状況になっている。この金融政策は、経済活性化に寄与していないだけでなく、ハイパーインフレを引き起こす可能性が極めて高い。高度のインフレになるとまず困窮するのが、年金生活者、低賃金で働く人々だ。現在の金融緩和・財政出動で一時的なユーフォリアに浸っていると、後で手痛いしっぺ返しが来る。そうした金融財政政策を続けているのが、安倍政権だ。

こうした見解は、このブログでも繰り返してきた。だが、国民は、安倍政権を支持し続ける。安倍政権にもっとも期待できないことを期待し続けているのだ。

老後の生活破綻 

今日アップしたひとつ前の記事内容、この記事の後半部の記載を頭において、この記事の前半を読むと深刻な老後の状況が迫ってくる。

有料老人ホームでは、ところにより空室があると言う。年金のみでは、そうした施設を利用することはまずできない。経済的に困窮する老人の多くが、生活保護を受けることになるのだろうか。それは、国の経済を圧迫し、さらに需要を減らすことにもなる。

国家財政が厳しいのは分かるが、社会保障にだけしわ寄せするのは、間違っている。

以下、引用~~~

老後の蓄えあっても家族の介護で下流老人に転落する恐れ
2016年3月14日(月)16時0分配信 NEWSポストセブン

 立命館大学・産業社会学部教授の唐鎌直義氏(社会保障論)が厚労省の国民生活基礎調査をもとに世帯構造別の貧困率を独自に試算したデータが反響を呼んでいる。最低限の生活を送る境界線として生活保護受給者(東京都新宿区在住の単身者で1か月の受給額が13万3490円)と同程度の年収160万円を設定。それを下回る収入の高齢者を「貧困層」と位置付けた。

 世帯数から貧困高齢者数を割り出すと、2009年の679万人から2014年には893万5000人と、5年間で約214万人も急増。およそ4人に1人が生活保護水準以下の収入で暮らす「下流老人」になっていることになる。「老後の蓄えはそれなりにある」と安心していたのに、「妻の介護」などの予期せぬ事態を機に、下流に落ち込むケースもある。

 東海地方に住む須賀隆弘さん(仮名、68歳)は地元の自動車関係の中小企業に新卒で入社。定年まで40年余り勤め上げた、典型的な団塊世代だ。

 年金は夫婦合わせて年間250万円と、厚労省が試算する平均的な年金受給者である。

「退職金で住宅ローンも完済していたし、1000万円ほどの貯蓄もありました。悠々自適とまではいかないものの“ゆっくりとした老後を過ごせるだろう”と考えていたのですが、甘かった」(須賀さん)

 昨年、妻が脳溢血で倒れ、半身不随になったことで下流への転落が始まった。妻の治療や入院費だけで100万円を超える出費を強いられた。妻は「要介護5」と認定され、自宅での介護はすぐに断念。退院して1か月後、近隣の老人福祉施設に入所させたが、毎月の利用料10万円弱の負担がのしかかる。年間250万円の収入から妻の施設利用料120万円を引くと、130万円しか残らない。

「年金収入の半額近くを施設利用料や妻の治療費に回し、日々の生活費で足りない部分は貯蓄を取り崩しています。酒もタバコもやめ、食費などを極力切り詰める節約生活で友人とも疎遠になった。でも、“このままだと10年もしないうちに貯金が底をつく……”との恐怖と不安から眠れない日が増えています。

 妻はこれ以上良くなることもないでしょう。だけど、見捨てるわけにもいかない。私の老後に明るい未来は一切ない」(須賀さん)

 リタイア後の高齢者にとって収入の柱となる公的年金は、今後さらに減額されることが予想される。

 2015年度から導入された「マクロ経済スライド」が、その原因だ。物価や賃金の上昇率より年金給付額の伸びは抑えられることになる。 “年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。

「年金は物価や賃金に合わせて受給額が調整されます。この制度は物価や賃金の上昇率から『スライド調整率』を引いた改定率を適用して、年金額を決めるものです。

 2015年度の場合、名目手取り賃金変動率(※注)2.3%に対し、スライド調整率0.9%が引かれ、実質マイナス受給になりました。この調整率は厚労省が2110年まで発表しており、2030年頃までは概ね1%前後のカットですが、その後は大きくなり1.5~1.9%のカット率が約80年間続きます。現在、夫婦合わせて25万円の年金をもらっていても、30年後の受給額は現在の価値に直すと17万円ほどに減額される計算です」

【※注/年金受給額の改訂方法に用いる手取り賃金の変動率。前年の物価変動率に3年前の実質賃金変動率、可処分所得割合の変化率を掛けて算出したもの】

※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号

一人親家庭に援助をしっかり措置した?? 

政府は、大企業、公務員等には大盤振る舞いだが、ひとり親家庭には厳しい。子育て給付金を廃止することがひっそりと報じられている。

以下、引用~~~

子育て給付金廃止=来年度から-政府・与党
2015年12月16日(水)19時49分配信 時事通信

 政府・与党は16日、子育て世帯の経済的負担軽減のために支給している「子育て世帯臨時特例給付金」について、2016年度から廃止する方針を決めた。
 自民党が「一人親家庭への支援などは同年度当初予算案でしっかり措置した」として廃止を求めたのに対し、公明党は存続を主張。与党内で調整を続けていたが、同日午後の与党政策責任者会議で予算案に経費を盛り込まないことで合意した。 

引用終わり~~~

ここで報じられている子育て世帯臨時特例給付金については、このサイトに記されている。消費税増税によるひとり親家庭への負担を軽減するため、一度限り子供一人に3000円を支給するというものだ。

この給付金も、焼け石に水状態だったのではあるまいか。ここで記されているように、ひとり親世帯、ことに母子家庭の相対貧困率は50%を超えている。一人親世帯への支援策は、就業支援、自立支援が主体だが、就職を希望しても大多数は就職できない、できたとしても非正規雇用が主体になる。正規雇用につけたとしても、子育てと仕事との両立は厳しいに違いない。年収130万円以下の一人親家庭に4万円程度の児童扶養手当を支給しているが、これもスズメの涙である。

政府は、法人税を前倒しで引き下げ、公務員給与は上げる。インドへの新幹線工事にかかわる円借款では、1兆円以上を極めて低い金利で半世紀にわたって貸す(ということは実質無償借款と同じ)。自動車税の各種減免と同様、これは、実質的に日本企業への経済援助に他ならない。

それでいて、政府は、スズメの涙にわずかに加算した子育て給付金をバッサリ切る。政府が、どこを向いて政策を実施しているのか、わかろうというものだ。記事にある「しっかり措置した」という内容を是非知りたいものだ。