安倍首相は真実を語っていない 

2015年4月に、官邸で、今治市および愛媛県担当者、加計学園幹部が、首相秘書官と会った。今治市への獣医学部誘致に関する話し合いであることは間違いない。事業主体が加計学園になる、ということもすでに決まっていたことだ。首相秘書官の背後には、もちろん首相がいる。秘書官の独断で、彼らを官邸に招き相談したとは考えられない。

この事実が明らかになっても、安倍首相は今年1月20日まで、加計学園が今治市に獣医学部新設をすることを知らなかったと言い張るのか。

安倍首相が、丁寧に真実を説明するというのは、口先だけのことのようだ。このような人物が首相を務められるということ自体が不思議だ。

以下、引用~~~

加計幹部、首相秘書官と面会 新学部提案前に官邸で
2017年8月10日05時00分

 学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設をめぐり、愛媛県と同県今治市の担当者が2015年4月、協議のため首相官邸を訪れた際、加計学園事務局長が同行していたことがわかった。また、面会の経緯を知る関係者は、官邸で対応したのが当時の柳瀬唯夫・首相秘書官(現・経済産業審議官)だったと朝日新聞に認めた。

 この面会は、愛媛県と今治市が獣医学部新設を国家戦略特区に正式に提案する2カ月前にあたるが、その時期に、県、市だけでなく事業主体の加計学園が首相に極めて近い立場の首相秘書官と会っていたことになる。安倍晋三首相は国会で、県、市の特区申請は知っていたが、加計学園の獣医学部計画を知ったのは今年1月20日だったと答えた。だが、その約1年9カ月前、首相秘書官の柳瀬氏が県、市の計画が加計学園と一体であることを認識していた可能性がある。

 今治市がこれまでに公開した文書によると、市企画課長や課長補佐が15年4月2日、首相官邸を訪問。目的は「獣医師養成系大学の設置に関する協議」と明記されている。ただ、面会相手とみられる部分は黒塗りだった。また、愛媛県の中村時広知事は今月1日、記者団に、この面会に愛媛県の担当者が同行したと述べた。面会相手や内容は明らかにしなかった。

 関係者の証言などによると、この面会に県や市の担当者のほか、加計学園事務局長も同席。首相官邸で対応したのは柳瀬氏だった。柳瀬氏は当時、国家戦略特区やTPP(環太平洋経済連携協定)、地球環境問題などを担当していた。

 面会での具体的なやり取りは不明だが、面会から2カ月後の15年6月、県と市は国家戦略特区での獣医学部新設を国に提案。16年1月に今治市が特区に指定され、17年1月に加計学園が獣医学部新設の事業者に認められた。

 加計学園の獣医学部新設をめぐっては、内閣府から「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」などと言われたと記録された文部科学省の文書が存在している。また、前川喜平・前文部科学事務次官が、和泉洋人首相補佐官から昨年秋、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」と言われ、獣医学部新設を早く認めるよう求める趣旨だったと発言。首相や首相官邸の関与があったかどうかが、国会審議での焦点になっている。

     ◇

〈首相秘書官〉 首相に政権運営や政策で助言するほか、与党や各省庁との連絡、首相の国会答弁のチェックなどを担う。国内外への出張にも常に同行するなど、首相とは密接な関係にある。安倍内閣では6人おり、外務、財務、経済産業、防衛、警察の各省庁から派遣された5人の事務担当のほか、首相の政権運営や政治活動を支える政務担当がいる。

安倍首相が加計学園獣医学部新設を何時知ったのか? 

昨日の衆議院閉会中審査で驚かされた安倍首相の答弁の一つが、「加計学園が獣医学部を新設することをいつ知ったのか?」という質問に対して、「今年の1月20日(国家戦略特区で加計学園獣医学部新設が決まった時)」という答弁。

国家戦略特区は、トップダウンの制度であり、安倍首相が同区諮問会議議長を務めているわけで、昨年以来急ピッチで獣医学部新設が進められ、加計学園がそこに食い込んだことを知らないわけがない。

昨年9月以降、和泉首相補佐官が、当時の前川文科省事務次官と接触して、前川氏に加計学園獣医学部新設を促している。昨日の閉会中審査では、和泉首相補佐官は、それまであやふやな証言しかしなかった前川氏との接触があったことを述べた。首相に命じられたからではないという彼は、地方創生担当だったので、この問題に関心があったと述べた。だが、獣医学部新設の直接担当ではない首相補佐官が何度も文科省事務次官を呼び出して、せっつくものか。これは明らかに、首相サイドからの働きかけだろう。和泉氏は、「記憶にないから言ってない」とうやむやにしているが、前川氏が以前から証言している通り、「これは総理が言えないから、代わって私が言う」と前川氏、文科省に加計学園獣医学部新設を急がせたのは事実だろう。総理が背後で前川氏をせっついていたわけで、総理が知らなかったでは済まされない。

それよりも、安倍首相が今年1月以前に、加計学園が獣医学部新設を目指していたことを知る、もっと直接的な証拠も出てきた。

平成25年、参議院、福島瑞穂議員の質問主意書に対する答弁書。こちら。

福島議員に、4年前、「加計学園が獣医学部新設を知ったのは何時か」と問われて、その時点で知っていたと答えている。

以上の通り、安倍首相が加計学園獣医学部新設の動きを知ったのは、今年1月などということはあり得ない。昨年だけで7回も、腹心の友加計孝太郎氏と会い、食事を共にしている。その際に獣医学部の獣の字も出なかったことはありえない。おそらく、安倍首相は、1月20日の国家戦略特区会議で加計学園獣医学部の全体像を初めて知った、等という言い訳を今日するはずだ。大いなる詭弁である。彼が、誠心誠意説明したいという低姿勢は、まやかしだ。

このような詭弁で、国民の理解を得ようとするのは、国民を愚弄していることに他ならない。ここで安倍首相に続投させると、さらなる愚弄を我々に行う・・・そうだ、憲法を改訂し、国家を国民よりも優先する制度の実現が行われる。

獣医学部全国展開は、姑息な疑惑隠し 

獣医師の需給を緩めて、さらに多数の獣医師を養成する、と安倍首相は言い始めた。供給が増えれば、獣医医療が改善するという単純さには呆れる。法科大学院の失敗から何も学んでいない。教育、特に専門教育は、社会的共通資本であり、きわめて注意深く扱わないと、その専門領域が破壊されてしまう。

獣医学部の全国展開は、安倍首相の加計学園疑惑を隠そうとする姑息な手段だ。国の大切な専門教育システムを、自分の犯罪的行為を隠すために破壊しようとしている。安倍首相には、自分が良ければ、国がどうなっても構わないという明白な利己的動機しかないようだ。

岩盤規制とは一体何なのか。岩盤規制を守ろうとする抵抗勢力、それを打破する改革者という、ステレオタイプで単純化した構図は意味がない。岩盤規制撤廃という掛け声で、特定勢力、特定個人が甘い汁を吸っている。岩盤規制の撤廃は、小泉構造改革で竹中平蔵等が主張してきたスローガンだ。竹中平蔵等が、構造改革特区でどれだけ悪辣なことをしてきか、国家に対する犯罪だ。

獣医学の領域では、既存の大学が人員・予算が足りずに四苦八苦している。加計学園等という政治にもぐりこみ利権を得ようとする組織が、最先端のライフサイエンスを担えるはずがない。これまで地道に研究活動を続け、経済的・人的に苦境にある既存の大学、学部を援助すべきではないか。

以下、引用~~~

安倍総理の「全国に展開」発言に獣医学関係者が反発
テレビ朝日系(ANN) 6/30(金) 17:23配信
 安倍総理大臣が獣医学部の「全国展開を目指す」と発言したことに反発しています。

 全国大学獣医学関係代表者協議会:「安倍総理は獣医学部新設の全国展開を目指したいと驚愕(きょうがく)すべき発言に対して強い危機感を抱いた」
 安倍総理の発言を受けて、記者会見を開いた獣医学の教員や研究者らの団体は、「獣医師養成の現状と本質的な問題を理解していない」と批判しています。また、国家戦略特区を用いた学部新設が「獣医学教育の現状や需要動向について適切な検討なしに進められた」とも指摘しています。

安倍首相の嘘 

獣医学部新設の経緯を安倍首相は、先日神戸の「正論」講演会で

『獣医師会からの強い要望を踏まえ、1校だけに特区を認めた。この中途半端な妥協が国民の疑念を招く一因となった。』

と述べた。それを受けて、獣医師会の北村顧問は

『去年の11月までにそんな条件を迫った事実はない。』

と、安倍首相の発言を明確に否定した。

そもそも、獣医師会は、獣医学部新設の議論は、国家戦略特区には馴染まないと言っている。どちらが嘘をついているか、明らかだろう。

安保法制、特定秘密保護法、集団的自衛権容認それに共謀罪法等の制定に際して、安倍首相は、あからさまな虚偽の発言を繰り返してきた。政治に嘘はつきものとは言うが、国の形、進路を大きく変えることがらで、平気で嘘をつく彼は、政治家として失格だろう。まさに、posttruthの時代の政治屋である。

このように嘘を平気でつく首相が、憲法改正をするというのは、ブラックジョークだ。

安倍首相の自爆 

郷原信朗氏のこの発言に、なるほどと膝を打った。こちら。

安倍首相が、加計学園疑惑追及に対して「頭にきて」言った(某テレビ局の番組)という、「獣医学部を全国に!」発言、内容も滅茶苦茶だが、論理的に見ても自爆だ。

この人物は、法治国家を自分の独裁国家にしようとしているのか、それともこんな滅茶苦茶な論理が通じると考えるほど知性に欠けているのか、どちらだろうか。

別な形の政治の私物化 

加計学園獣医学部新設によって、「岩盤規制に穴を開けた」という説明では、加計学園疑惑で追い詰められた自らの窮状を脱せないと思ったのか、突然、「特区を全国展開する」と安倍首相。

それじゃ特区ではないではないか。

こんなことで、加計学園疑惑は晴れない。

獣医師の需給見通しを検討し、その結果によって、必要があるのであれば、増やす、とか言うならまだしも、特区を全国展開するなぞ無責任極まる。追い詰められた自分を助けようとする、別な形の政治の私物化だ。

前川氏を個人攻撃してみたり、特区の大安売りを始めたり、安倍首相・その取り巻きは、政治家として終りですな。

以下、引用~~~

獣医学部新設の特区を全国展開と安倍首相

2017/6/24 13:50

安倍首相は、国家戦略特区に関し「全国展開を目指したい。意欲があれば獣医学部新設を認める」と述べた。

出来レースの記者会見で逃げ切るわけには行かない 

今夕6時から安倍首相の記者会見がある。

彼の記者会見は、質問者が事前に決まっており、事前に寄せられた質問に安倍首相があたかも即興で答えているかのように見せる、出来レースなのだ。それでは、徹底した真相解明はできない。

安倍首相は、かようなマスメディア対策を行っている。その対策に乗っているマスメディアの記者たちも情けない。

安倍首相を侮辱したとして籠池氏を証人喚問したのだから、前川氏が存在を証言した文書を怪文書と誹謗し、また前川氏の根拠のない個人攻撃を行った菅官房長官、その部下の副官房長官(特に萩生田光一)、現在の警察庁刑事部長を、政府は証人喚問すべきだろう。安倍首相自身も証人喚問を受けるべきだ。前川氏は、証人喚問されれば受けると言っている。前川氏は、人生を賭けて、加計学園疑惑の真相解明に寄与しようとしている。証人喚問で偽証すると、罪に問われるのだ。

彼らを証人喚問しないでおいて、出来レースの記者会見だけでことを収めることは無理というものだ。

以下、岩上安身氏のtweetを引用~~~

「行きますよ。いくら手をあげても当たらないけど。民主党政権時代、鳩山、菅、野田と総理が変わっても当たり続けたけど、安倍内閣になってからぱったり。今はもう、記者を指す順番も事前に決まっていて、あらかじめ質問取りした回答を書いたプロンプターを、安倍総理はさもアドリブかのように読むだけ。

引用終わり

岩上氏は、ネットジャーナリズムサイト、IWJを主宰している独立ジャーナリスト。

4年前、安倍、萩生田、加計の三氏はBBQを一緒に楽しんでいた 

萩生田光一官房副長官のブログに、彼が安倍首相、それに加計孝太郎加計学園理事長とビール片手に懇談している画像が載っている。2013年の記事。こちら。

萩生田氏は、安倍首相と加計理事長との関係は、最近報道で知ったと述べていたのである。彼は、国会で加計氏との関係を尋ねられて、それまでは、「(加計学園の大学の)客員教授就任前に加計氏とは付き合いが無かったとした上で、就任後も大学の全体行事の前に控室で会う程度の事しかなかった」と返答している。そのような見え透いた嘘はつかずに、「加計さんのこと、彼と安倍首相の親しい関係は、以前からよく知っていた。安倍首相が望んだから、加計学園が獣医学部を新設できるように、文科省に圧力をかけただけだ。数の力で、安倍首相の思う通りに「決める政治」を推し進める。それのどこが悪い?!」と彼は開き直るべきなのだ。国家戦略特区は、安倍首相の思いを実現し、安倍首相の取り巻きの事業を推し進めるための仕組みなのであって、地域経済の底上げ等どうでもよいのだ、と本音を語るべきなのだ。彼がブログに記した「決める政治」は良いだろう、しかし、何をどのように決めるのかが問われる。

萩生田官房副長官は、加計学園への便宜供与に関して、国会で証人喚問を率先して受けるべきだ。

安倍首相は行政を、国の形を歪めた 

今年1月、文科省の天下りが報じられたとき、あぁ、やはりやっているなと思った一方、なんで文科省だけなのかとチラッと考えたことを覚えている。だが、それ以上の情報はなく、追及しようがなかったし、この問題は、記憶から薄れて行ってしまった。

あの天下り報道で、文科省は叩かれ、当時の前川事務次官は辞めることになった。二日前、15日になってようやく、政府は国家公務員法に違反する他の省庁の天下りを、ひっそりと公表した。2008年以降、「少なくとも」12省庁で27件に上ったということだ。

ただ、この数はかなり少なめの評価だ。許認可、財務関係を握る省庁では、もっと多いはず。ちなみに、wikiの記述では、国家公務員法改正前の状況として、下記のように記されている。

引用~~~

2004年8月31日の閣議決定によれば、中央省庁の斡旋や仲介で民間企業に再就職した国家公務員は2003年までの5年間で3,027人にのぼっている。省庁別では、国土交通省の911人をトップに法務省629人、総務省313人、文部科学省261人、財務省251人、農林水産省245人、警察庁127人、防衛庁85人、会計検査院64人、経済産業省46人、人事院29人、公正取引委員会23人、厚生労働省19人、宮内庁17人、内閣府3人、外務省2人、内閣官房・金融庁0人であった。

引用終わり

昨年から政府が行ってきた、文科省の天下り問題調査は、文科省だけを狙い撃ちするものであったことを前川氏が証言した。他の省庁の天下りは、何も手を付けない、という明らかな意思表示をし、それが実行されている。筋を通して加計学園獣医学部新設に批判的だった吉田高等教育局長が辞めさせられ、さらに前川氏も事務次官を辞任せざるをえなくなった。政権が官僚の人事権によって、自らに都合の良いように行政を歪めたのだ。

身近な人物が推進していた「明治日本の産業革命遺産」指定についても、安倍首相が、批判的な審議委員を文科省審議会から外させて、実現させたことを、前川氏は証言している。

『一見正当な手続きを踏んだかたちをとって、実態としては特定の件を特別扱いすることを正当化する』という前川氏の批判に、安倍首相はどう応えるのだろうか。

以下、引用~~~

前川前次官が「官邸から内閣府の天下り隠蔽を指示された」と証言! 文科省だけ天下り摘発は加計問題抵抗官僚への報復

2017年06月16日 08時00分 リテラ

「週刊朝日」(朝日新聞出版社)6月23日号より

「総理のご意向」文書を"本物"と証言して以降も、さまざまなメディアで数多くの証言を続ける前川喜平・前文科事務次官だが、さらなる衝撃的証言が飛び出した。それは、前川氏が事務次官を辞任するきっかけとなった「文科省天下り」に関する"官邸の隠蔽工作"だ。

 文科省の天下り、再就職あっせんは、今年1月にNHKの報道で明らかになったのだが、じつは前年から、内閣府の再就職等監視委員会が調査しており、この調査によって事務次官だった前川氏が引責辞任しただけでなく、歴代の事務次官8人を含む43人が処分された。つまり、政権が率先して不正を明らかにした非常に珍しいケースだった。

 だがこの天下り問題について、前川氏は今週発売の「週刊朝日」(朝日新聞出版)6月23日号で、驚くべき証言を行っているのだ。それは昨年12月当時、文科省がまさにその内閣府再就職等監視委員会による厳しい調査を受けていたときのことだったという。

〈監視委は文科省職員のメールを片っ端から提出させていたが、その中に外務省と内閣府OBが問題に関わっていたことを示すメールがあった

 文科省の天下り問題に外務省、そして監視するはずの内閣府関係者が関与していたというのだ。しかし問題はそこからだ。他省庁OBに関するメールも含め、すべてを監視委に提出せざるを得ないと、その意向を関係省庁に伝えていたが、昨年12月28日夜、官邸の杉田和博官房副長官から急な呼び出しを受けたという。その要件は驚くべきものだった。

〈杉田氏は、私が監視委に出す前にこのメールの存在について杉田氏への報告がなかったことに怒っており、その場で「とにかく外務省と内閣府に関わるメールは出すな」と言われました。つまり、再就職等規制違反問題は文科省内だけに限定して、他省庁に及ぶ証拠は出すなということです。そこからズルズルと他の役所にも被害が及んだら困る、というわけです〉

 杉田官房副長官といえば、前川氏が在任中の昨年秋の時点で"出会い系バー通い"を厳重注意した人物であり、警察庁警備局長を務め"公安のドン"とも称される元エリート公安警察官僚だ。さらに現在は官邸の危機管理担当を担い、出身母体の公安警察の秘密部隊を動かし、政敵や官邸に従わない官僚を徹底調査しているといわれる。そんな"官邸のゲシュタポ"に、前川氏は他省庁の天下りの証拠隠蔽を命じられていたのだ。

 文科省天下りが発覚した当時、"再就職あっせんはどの省庁もやっており、この程度で規制委が調査に入るなら霞ヶ関全体にまで波及するのではないか"と指摘されていたが、結局、文科省以外の天下り問題は一切表に出てこなかった。

 表に出てこないのは当然で、文科省追及の裏で、官邸は他省庁の天下りを握り潰していたというわけだ。

 この事実は、たんに官邸が不正を隠していたというだけではない。加計問題が勃発して以降、ずっとささやかれてきた噂を裏付けるものだ。それは、文科省の天下りあっせん調査が、加計学園認可に反対していた文科省幹部への報復、狙い撃ちだったという噂だ。

 前川氏は天下り処分と加計問題との関わりについては一切コメントせず、ひたすら自らの責任を認める発言を繰り返しているが、たしかにこの天下りは発覚の経緯自体が非常に不透明だった。

 前述したように、文科省の天下り問題は17年1月18日、NHKがこの事実をスクープし、世間に発覚したことになっている。表向きは、NHK報道の直後、菅偉義官房長官がいち早くその事実を認め「遺憾」の意を表明。さらに翌日には、官邸周辺から、当時事務次官だった前川氏の責任論が浮上し、20日には前川氏が辞任に至ったという流れになっている。

 しかし、実際はその前年から官邸主導のもと、内閣府の再就職等監視委員会が率先して文科省の天下り調査を実施し、前年末には調査内容を確定させていた。政権が文科省の天下りを徹底調査し、これを受けて、前川氏も1月5日に事務次官辞任の意向を杉田副長官に伝えていた。

 ところが、官邸はこの事実を一切公表せず、NHKに情報をリーク。世間の批判を煽って、前川氏を辞任させたとかたちにしてしまったのだ

 これは、おそらく、この調査の本当の意図を隠すためだろう。官邸が文科省の天下り問題調査でターゲットにしたのは、15年8月に退職した吉田大輔高等教育局長が、2カ月後に早稲田大学に再就職したことだった。しかし、吉田局長が教育局長の椅子を追われたのはそもそも、加計学園の獣医学部新設に強硬に反対していたからだという。

〈高等教育局が大学などを所轄するわけですが、早稲田大学の教授になった局長は、加計学園の獣医学部新設には強硬に異を唱えていました。そのため、安倍官邸が、その首を挿げ替えたとも言われているのです〉(「週刊新潮」6月1日号/新潮社)

 つまり、文科省は吉田局長が官邸に首を切られたため、早大に再就職あっせんしたわけだが、官邸は逆にこの事実をつかんで、抵抗派一掃に利用しようと目論んだ。前川氏をはじめ、加計学園の獣医学部新設に抵抗していた幹部たちに天下りの責任を追及し、粛清に動いたのである。

 ところが、その過程で、当の内閣府や外務省がこの天下りあっせんにかかわっていることが明らかになった。そこで慌てて、隠蔽を命じたということだろう。官僚OBもこう語る。

「そもそも文科省しか出てこないというのが不自然。経産省なんていまも、文科省の何倍もの規模で天下りあっせんをやっている。それを放置しながら、文科省だけを率先して調査し、処分したというのはどう考えても、狙い撃ちしたとかし思えない」

 抵抗する官僚に対してはスキャンダルと人事権を使って報復し、他の官僚を問答無用で従わせ、強引に"総理のお友達"への利益誘導を実現させる――。そのやり口は恐怖支配そのものだが、じつは前川氏は、この天下り隠蔽以外にも、官邸が人事権を使って総理のお友達の利益誘導を推し進めたケースを暴露している。

 それは、2016年に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」をめぐってのものだ。

 前川氏はこの「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産の国内候補にするために、和泉洋人首相補佐官が候補を決める文化審議会の委員から反対派の委員を排除するよう圧力をかけてきたと、同誌で証言したのだ。

「和泉氏は文化庁の幹部に対し、文化審議会の委員から日本イコモス委員長(西村幸夫氏)を外せ、と言ってきた。日本イコモスは産業遺産の推進に消極的だった経緯があり、とにかくけしからんから外せ、と。結局、西村氏は委員から外れました」

 世界遺産登録直後に本サイトでも指摘していたが、「明治日本の産業革命遺産」は幼少時から安倍首相と家族ぐるみの付き合いで、加藤勝信一億総活躍担当相の義理の姉でもある加藤康子氏が中心になって推し進めていたプロジェクト。「週刊新潮」15年5月21日増大号に掲載された彼女のインタビューによると、自民党が野党に転落していた頃、安倍氏は「明治日本の産業遺産」の世界遺産登録への熱意を語った康子氏にこう語ったという。

「君がやろうとしていることは『坂の上の雲』だな。これは、俺がやらせてあげる」

 そして、安倍首相は総裁の地位に返り咲いた3日後、彼女に電話をかけ、「産業遺産やるから」と、決意を語ったという。

 ようするに、お友だちの願いをかなえるために、和泉首相補佐官を使って、現場に圧力をかけていたのである。これは加計学園とまったく同じ構図ではないか。

 前川氏は記事のなかで、安倍政権下の「ゴリ押し案件」をこう分析している。

「加計学園の件にしても産業遺産の件にしても、大がかりな仕掛けの中で、一見正当な手続きを踏んだかたちをとって、実態としては特定の件を特別扱いすることを正当化する。こういう手法がすごく増えてきているように感じます」

 なりふり構わないお友達への利益誘導と政治の私物化を強行し、意のままにならないものへは徹底した攻撃と排除を加える。こんな異常な政権、そして総理大臣をこのまま放置しておいて本当にいいのか。いまなお安倍内閣を支持し続ける人々はそのことをもう一度、自分に問い直してみてほしい。