FC2ブログ

私の医療崩壊 小論 (8) 

NHKが、先日、ゴッドハンドと言われる脳外科医について報道していたと、家内から聞いた。確か、一人は、旭川赤十字の脳外科の医師。もう一人は、米国と日本を行き来して、手術を沢山こなしているF医師。お二人とも、確かに腕は立つらしい。ものすごいハードスケジュールで手術をこなしているようだ。さらに、旭川のK医師は、患者への説明をするときに、大丈夫助かる、助からなかったら土下座して謝るといった調子で説明するらしい。

しかし、よく考えて欲しい。お二人のような凄腕と言われる外科医が誕生するのに、長いトレーニングが必要だったはずだ。別に特異な例外ではない。さらに、現代医学ではいかに凄腕と言おうとも、救えぬ病気もある。凄腕かどうかの違いは、巷間で考えられているほどは大きくは無い。さらに、結果が悪い場合に、土下座して謝るという浪花節でよいのか。その結果を患者のご家族に理解していただけぬ場合は、民事訴訟、下手をすれば、刑事訴追が待っている現状だ。

先日、同じNHKのクローズアップ現代で、医師不足を特集したことがあった。医師の置かれた過酷な状況を様々に議論した後に、キャスターが漏らした言葉は、いかに過酷であっても、逃げ出すことは許されないということであった。

余りの多忙・激務ゆえに自殺された小児科の中原医師の娘さんが、同じ小児科を専攻することになったことを、以前の番組で美談として報道していたのも、NHKだ。ただし、「父親が、過酷な仕事のために自殺したこと」をまるっきり伏せて・・・。

言ってみれば、これらはマスコミの「赤ひげ」待望論だ。医師数も足りず多忙を極め、経済的にも厳しい状況で、馬車馬・奴隷のように働き続ける医師を、待望するという、一種の社会的な甘えの構造であり、官僚等支配層に対するおもねりだ。医療費を徹底して削減し、ようやく失敗に気づいて舵を取り直している英国、民間資本に医療を開放し、社会的な弱者がまともな医療を受けられず、さらに一旦大病をすれば、破産になる社会が現実となっている米国。これらの悪しき例を、日本のマスコミは伝えようとしない。

こうした厳しい医療の状況を生み出したのは、官僚だ。そして、マスコミが、それを背後から後押ししている。繰り返し申し上げておこう。地域医療は、音もなく崩れていっている。この崩壊によって、痛みを受けるのは、社会的な弱者である病人の方々と、僻地に住む人々なのだ。

ゴッドハンドの医師を、のほほんとお気軽に報道している暇があったら、なぜこうした医療の現実を報道しないのだろうか。そして、国民が気づかないのだろうか。

コメント

赤ひげ…

私が現在携わっているプロジェクト名は「赤ひげチーム医療人の育成」プログラムです。昨年来、県内外のマスコミの方々から取材を受けてきたのですが、彼らが放送するときよく「赤ひげ」と略したがります。あくまでもチームというシステムなんだと説明するのですが、マスコミは属人性を協調したがります。

スーパーマンのようなヒーローが出現して、難題を解決してくれる、と言うおとぎ話を信じたいし、信じさせたいのです。

「Dr.コトー」なんて言うありもしないし、もしいたらそれはそれで潜在的な問題を持つであろう医者像がヒーローのように放映されているあたりからして、このことの難しさを感じる次第です。

「赤ひげ」と、マスコミがはやしたて始めると、あまり良いことがないような気もしますねぇ。QWさんのそのプログラムが、どのような内容なのか分かりませんが、何卒マスコミの諸兄姉に誤解を与えませんように。むしろ地域医療の危機の事実を淡々とお伝えいただきたいものだと思います。傍からずけずけと申し上げて恐縮です。活躍を期待しています。

赤ひげチーム

うちのプログラムは…、
http://www.nuh.niigata-u.ac.jp/cor/index.html
こちらのURLに詳細は記されていますが、要は地域医療が存続できるように大学病院を主体としてチームで地域を支えようというものです。文科省から予算を頂き昨年より開始されました。
取材では、地域医療の厳しい現状をしっかりと伝えてもらえたと思いますし、大学病院を主体にそれを支えようという機運があることも、伝えていただけたと思います。
新潟は比較的県内主要地域を大学病院がこれまで管轄してきた経緯もあり、皆で一丸となって地域医療を支えようという機運を今、盛り上げているところです。
これを用いて研修医の教育にもいい効果がありますし、何とか軌道に乗せたいと考えています。
金科玉条のものではありませんが、一つの取り組みとして試行段階のものです。ご説明まで。

QWさん

赤ひげプロジェクトのご紹介をありがとうございました。地域医療を大学が支えようというプログラムなのですね。少数のスタッフで頑張っている地域医療施設では、とてもありがたいことなのではないでしょうか。大学時代のカンファレンス等つまらないと思っていましたが、今から思い返しますと、貴重な勉強の機会であったと思います。

しかし、やはり「赤ひげ」という名称が、引っかかりますね(笑。「赤ひげ」という言葉には、専門家が仕事の一環として行うというニュアンスとは異なるものを感じます。地域医療を担う医師も、「赤ひげ」ではありえません。こうした活動は、財政的・人的な裏づけを得て初めて軌道に乗ることでしょうし、永続性があるのではないでしょうか。大学の方で、教育・診療・研究以外に、こうした仕事が増えて、大学スタッフに負担にならなければ良いがと考えてしまいます。杞憂であれば良いのですが・・・。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/100-edc0bdb7