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診療所医師の逃散 

知り合いの女医さんが、自分の小児科医院を廃院にするという確かな噂が耳に入った。彼女は、大学時代の同僚で、なかなか優秀な方だった。御主人も開業医なので、もしかしたら、御主人の仕事を手伝うことにしたのかもしれない。2年ほど前に、ピアノを弾く彼女と友人達で、モーツァルトのピアノ四重奏曲を一度合わせて以来お会いしていなかった。

私の仕事場のすぐ近くにある産婦人科、以前にも記した通り、いよいよ産科診療を取りやめたようだ。そこの駐車場はいつも満杯だったのが、閑散としている。

それぞれの理由で、廃院をし、規模を縮小されたのだろうが、これらも医療の崩壊の現象の一部といえるのかもしれない。

マスコミも官僚・政治家も、勤務医の過酷な労働条件を取り上げて、その改善に取り組まなければならないという発言をすることが多くなってきた。それはその通りで、大いに結構なことなのだが、そうした議論には、その費用を捻出するために、診療所への診療報酬を厳しく抑制するという発言も目立つ。

診療所医師に一次夜間救急を担わせるということも、勤務医の労働環境を改善する策として実際に行なわれている。訴訟の陰に怯えながら、専門外の救急を担当し、休日・夜間長時間救急外来に張りついている診療所医師がたくさんいるのだ。

要するに、診療所医師の勤務医化が進行している。一方、現在行なわれようとしている勤務医の労働条件改善策は実効がほとんど期待できないように思える。経済財政諮問会議の八代委員の主張する、低い労働条件への平準化が実現するのだ。

診療所の医師の平均年齢は60歳直前だったはず。私を含めて、そうした医師に勤務医化を甘受せよというのは無理というものだ。それだったら、医療から手を引こうと考えるだろう。勤務医が、過酷な急性期医療からそっといなくなるのと同じように、診療所医師は、医療そのものからそっと手を引くことになる。

地域医療のプライマリーケアを支えてきた診療所の役割は小さくないものと自負しているし、実際そうだったろうと思う。その地域医療の担い手がいなくなると、患者は、今まで以上に病院、特に中核的な医療機関に殺到することになるだろう。そこまで、為政者や官僚は考えているのだろうか。どうも医師不足ならば、医師を増やせという単純な発想でしか考えていないように思えるのだ。

国民・為政者・官僚・マスコミそれに法曹界の人々すべてが、医療を突き動かしてきた。勿論、高度成長の時期は遠い過去になり、高齢化が進んでいるという条件も重なった。それらすべてが医療を崩壊させつつある。その崩壊の過程で、物事をごく一面的にしかみないで対応をとると、さらに崩壊は早まり、激烈になるように思える。特にコストを犠牲にしつつ、クオリティとアクセスをある程度保ってきた、壊れやすいぎりぎりの状態で動いてきた、わが国の医療システムは、官僚達の恣意的な操作を受けて、音を立てて崩れ始めているような気がする。勤務医対策としてとられようとしている対策も、そうした事象の一つになることだろう。

廃院を決めたという知り合いの医師に、一度その経緯をゆっくり伺ってみたいものだ。

コメント

医療費を上げても医師夫人の毛皮になるだけ

医療費毛皮論を語って医師から総スカン食らった収賄厚生次官がいましたね。今の官僚もそう考えてるみたいですね。そもそも診療報酬を下げ続けて病院だけではなく開業医もいじめてきたのに。よほど医療のアクセスを悪化させたいみたいですね。今後医療そのものから手を引く診療所、レセプトオンライン化もその引き金になるかと期待していますw

やっぱり海外か

どうやら診療所を制限するという愚作を実行しそうな雰囲気ですね。私はどうしましょうか。南の国でリタイア人生を送る日本の方を細々と診療しながら、電波飛ばして暮らそうかな。でもまだ子供がこれからなんです・・・・

元外科医さん

そうですね・・・今日、知り合いの代理で救急診療所の仕事をしてきましたが、ご一緒した内科医(50歳代半ばの開業医)も、近いうちに引退をしたいと言っていました。

VVXさん

外国に逃げ出す医師も多くなることでしょうね。若い医師・医学生諸氏は最初から外国に出ることを目指すのではないでしょうか。ドイツやイギリスのように、ね。

診療所が減ったら、病院の外来にあふれている安定している患者さんをどこに頼めばよいのでしょうか。病診連携しないと病院の外来がパンクして救急を診れなくなってしまい本末転倒です。

医療機関の淘汰はオ○ック○とか、○フ○ックとか、いわゆる医療保険業界の要請でもあるようです。

なんてったって医療保険は病気になるともらえるわけではなく、医療機関を受診して、医療を受給されて初めて支払われるお金ですから。

病院だって、診療所だってなるべく少なくなって、病気になってもかかるのに一苦労するくらいがちょうどいいと思っているんでしょう。医療保険にはジャンジャン入って頂いて、医療機関が激減すれば…もうこれは「濡れ手に粟」状態でしょう。

医療機関へのアクセス制限は医療保険業界にとっては重大な意味を持つのです。

よ~く考えよう~お金は大事だヨ~

外資保険屋

であればアクセス制限と混合診療は美味しいとこばかりですね。これは米国の要望でもあり小泉政権以来その路線を着実に進めてます。厚生労働省は皆保険は死守したいようですが本丸があのていたらくでは討ち死には免れないでしょう。

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