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私の医療崩壊 小論 (9) 

小児科医、特に勤務医・大学スタッフは忙しい。それが小児科医の本来の属性といってもいいだろう。それを承知で、この科を選んだと言っても良い。

しかし、近年、その忙しさが量・質ともに変化してきているように思える。小児科医は、絶対数が足りず、さらに都市部に偏在している。これは医師全般にも言えることだが、小児科医ではその傾向がより強い。患者サイドの変化としては、少子化・核家族化故に子供の病気に際して心配されるご家族が増えたこと、小児科医に診察してらいたいという専門志向、さらに親が共稼ぎのために夜間救急を利用することなどがあり、小児救急を利用する患者が増えている。

まず、小児科医が足りているのかどうか、の問題だ。

別な機会に記すことがあると思うが、厚生労働省官僚は、医師数が医療費と正の相関関係があると思い込んでいる、またはそう考えているように振舞っている。その正の相関は、既に医療経済学的にほぼ否定されているのに、だ。それで、医師数を削減する、すくなくとも増やさぬ方針でやってきた。これまでの日本医師会は、同業が増えると競争が激化するのを危惧してか、その政策に乗ってきた。

小児科医数はどうか?昨年6月、公表された厚生労働省班研究報告書「小児科・産科若手医師の確保・育成に関する研究」等で、わが国の小児科医数は決して少なくは無いと結論付けている。

少し細かくなるが、その根拠はこうだ;

単位人口当たり小児科医数は
日本 15歳未満人口10万人当たり 79.5人
米国 18歳未満人口10万人当たり 56.5人

この母集団の違うデータを持ってくるところが、おかしいと思った。昨年、ミシガン大学から、2000年の米国での小児科医数データが報告された。

それによると;

米国 小児(15歳以下と思われる)人口10万人当たり 106.2人

である。

上記の厚生省のデータがいつの数字であるか不明だが、ここ数年間の小児科標榜医数は、ここ数年減少傾向にあることが分かっている。従って、日本の小児科医数は、米国のそれのほぼ75%にしかならないことが分かる。厚生労働省は、医師数は増やしたくないというドグマから、こうしたいい加減な比較により、日本の小児科医数が不足していない結論を導き出したとしか考えようがない。日本の小児科医の絶対数は足りない。

さらに、偏在の問題がある。小児科医は、他の科と同様に、大都市に偏在している。これは、さまざまな要因があるが、小児科医も良い労働条件で仕事がし易く、自分の医師としてのキャリアーを高めることができる場所で仕事をしたいと考える。小児科の医業収入は、ことに入院施設のある病院の場合、大体は赤字となる。地方では、さらにその傾向が強い。こうしたことから、小児科医の大都市への集中が起きるのだ。

小児科医の過酷な労働条件と、診療報酬の低さによって、小児科医は都市に集中し、さらに絶対数についても足りないことが明白なのだ。

医師全体を増やす中で小児科医を増やすこと、小児科医の過酷な労働条件を把握し改善すること(労働基準法を遵守する職場にせよ)、小児科をはじめ急性期医療に付きまとう医療事故の問題をすべて医療側の責任とせず、公平に判断する専門家からなる第三者機関を設置すること、こうした改革のために必要な医療費の国庫負担を引き上げること、これが緊急に必要なことだ。

官僚は、様々な方法で情報操作を行う。小泉純一郎氏が、厚生大臣だった頃、老人医療費に自己負担を導入した。その直前に、彼は、診療報酬の不正な請求が、「9兆円」あるとぶち上げた。これは明らかに事実と反する。その後、日本医師会等が抗議したがうやむやのまま終わった。患者の自己負担が増える変更が行われるたびに、医療機関の不正やら、不正請求が、でっち上げも正しいニュースも取り混ぜて、報道にのる。これは、国民の不満を医療機関に転嫁するための、情報操作に他ならない。タウンミーティングの「やらせ」のようなことが、官僚の発する情報には、とても多いことに留意する必要がある。

国民の方々には、官僚・政治家(特に政権に属する政治家)から出たマスコミの報道については、十分注意して受け取って頂きたい、そして、そうした報道の背後にある官僚・政治家にとって都合の良い意図は何かを把握して頂きたいものだ。

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