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時代の趨勢 

ウェブで自作の小説を公開しておられる医師がいる。

医療崩壊後の自費診療の世界をリアルに記した、「2018地中海病院」が良く書けている。文学的な評価は別として、リアリティに富む。医療の現状を知るものとしては、読んでいて、手に汗を握るような気持ちになる。

しかし、医療関係者以外の国民にとっては、こうした凄まじい医療が目の前に来ていることは実感されないのかもしれない。

一つには、自分や、家族が深刻な病気にかかるはずがないと、こうした状況を意識の外に追いやっているためだ。これは生きてゆくうえでの、一つの知恵なのかもしれないが、現実はそうではない。人は病を得、いずれかの時に死んで行くという運命ほど明らかな事実はないのだ。しかし、自分と家族は、その例外にあると、無意識のうちに思い込んでいる。

もう一つ、これまでの公的な保険制度が何時までも維持されるという思い込みがあるのだ。保険証さえあれば、何時でも何処でも低廉な料金で医療を受けられる時代を、この30年間以上、国民は経験してきた。それが、当然のことと思ってきた。しかし、それは砂上の楼閣であり、楼閣を押し倒そうという勢力が、現政権と財界・官僚のなかで多数を占めている。彼等は、公的保険を取りやめ、民間保険だけにするメリットだけを喧伝し、増大する医療費が国家財政を破綻させるとして、自費診療を導入させる運動をし続ける。国民は、それが真実である、それしか選択枝がないと信じ込ませられる。これまでの制度へのナイーブな信頼を利用されて、自費診療への道を歩むことになる。恐らく、制度の問題は、制度が変えられてから初めて国民に理解されるのだろう。後期高齢者医療制度が持ち込まれて初めて反対の声があがったのと同様に、だ。

この医療制度の更なる改悪には私は反対だ。しかし、もうどうしようもない状況になっており、「2008地中海病院」で表現された医療制度が実現するまでは、政財界の既定路線で進むのだろうと、私は考えている。

ここで私が記していることは、大した内容ではないが、時代がこうした方向に進んでいることだけは明言しておこう・・・。

コメント

考えさせられました…

2018地中海病院…たいへん面白いものでした。そして、いろいろと考えさせられました。まさに日本が進もうとしている医療システムの目指す先が、そこにあるように感じました。
恐ろしいことです。

そして医者も、この地中海病院に勤めるような医師と、公立病院に勤めるような医師とに2部されて行くであろうことも容易に想像できました。

ありとあらゆるところに格差を抱え、ぎすぎすした中で他人を蹴落とすことに躊躇しない社会、そんな社会は幸福な社会ではない、と感じます。

そうでしょうか? 人それぞれの個性や価値観の違いを認めず、ルサンチマンに満ちた中で結果平等を強制し、他人の足を引っ張ること、他人に対して結果責任を追及することばかりに専念する社会、そんな社会に幸福はないと感じます。

QWさん

あ、医師の視点で読まれましたか・・・私は、半分患者の視点で読んでいました・・・もうすぐ、患者の立場になりますものね。

terra cottaさん

初めまして。すると、米国社会のように、個性や価値観の違いを尊重し、それが格差につながることも致し方ないというお考えなのでしょうか。健康・生死に関しては、できれば平等であって欲しいものだと、私は思います。医療資源の有限性などの問題はありますが、医療が市場化されるのは好ましいことではないように思います。

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