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ヒヤリ・ハット事例の数だけを問題にするのはピントはずれ 

医療は医療従事者による作業が多いために、医療従事者のエラーが、事故に結びつきやすい。事故に結びつきうるような事象を、ヒヤリ・ハット事例として、検討し、再発防止に寄与する作業がが行なわれている。

日本医療機能評価機構という特殊法人が、全国の病院(一部の病院)から、そうした事例の報告を受け、解析している。同機構が、そのような事例が20万件以上あったと公表した。それを、毎日新聞が報じている。

このようなヒヤリ・ハット事例の報告、その報道には、ほとんど意味が無く、さらに国民を不安に陥れるのが関の山だ。

第一に、ヒヤリ・ハット事例は、数の多寡だけを問題にするのか、問題解決を遠のかせる。そうした事例の原因をこそ突き詰めて、その原因を除くのでなければ、同じ問題が繰り返される。医療は労働集約的なのであるから、医療従事者がエラーをする原因に、労働条件の問題がないのか。同機構のヒヤリ・ハット事例の解析では、この点の追及が極めて甘い。医療というシステムのエラーをこそ問題にすべきなのに、個々の医療従事者の個別問題にしてしまっていることが多い。

同機構は、医療機関を認可する事業を行なっていて、重箱の隅をつっつくような検査をするのに、医療従事者の労働条件についての検討は極めておざなりである。現実を厳しくチェックしようとしない。同機構が、ヒヤリ・ハット事例の背後にある、医療システムのエラーを突き詰めようとしないことと、認定事業における医療従事者の具体的な労働条件の検討に関して、無関心であることは、同根の問題だ。注意喚起の情報を出すだけのは全く無意味だ。

さらに、上記のような問題をはらむヒヤリ・ハット事例を、その多寡という点だけを報道するマスコミ・・・この場合は、毎日新聞であるが・・・にも大いに反省してもらいたい。ヒヤリ・ハット事例は、医療従事者がサボっているために起きている、注意が不十分なために起きている、医療従事者よしっかりせよ、というだけの報道なら、全く無意味である。一つのヒヤリ・ハット事例の背後には、多くの問題が横たわっており、個別的に検討すべきことなのだ。さらに、多くの場合、医療システムのエラーが隠れている。ケースによっては、医療行政の瑕疵までを追及しなければならない。それなのに、20万件超という報告数だけを読者に訴えかける報道姿勢は、大いに問題だ。

同様の内容の過去のエントリー。ここ。同じ毎日新聞の清水記者・・・勉強をしていないのかな・・・。


以下、引用~~~

<医療事故>「ヒヤリ・ハット」事例が20万件超 07年
8月13日18時41分配信 毎日新聞


 厚生労働省の関連団体の日本医療機能評価機構(東京都)は13日、07年の医療事故報告の収集結果をまとめ、事故の一歩手前の「ヒヤリ・ハット」事例が初めて年間20万件を超えたと発表した。うち4分の1以上が調剤など薬に関する事例で、ミスに気付かなければ患者の命にかかわる危険があったケースも1000件以上あった。

 同機構は「注意喚起の医療安全情報を出した後に同様の事故が繰り返されるケースも目立っており、医療機関は事故情報をもっと活用してほしい」と話している。

 事故情報収集は同機構が04年10月から取り組んでいる。07年に規模や地域別に抽出した全国240病院から報告があったヒヤリ・ハットは、前年より1万3607件多い20万9216件。内訳では(1)薬の処方、準備、調剤(27%)(2)医療器具(チューブ類など)の使用・管理(17%)(3)療養上の世話(9%)--の順に多く、当事者は看護師が73%を占めた。

 全体の65%はミスがあったが患者に影響はなかったケース。逆に3689件は事前にミスに気付いたが、見過ごされていれば患者の生命に影響した可能性があり、うち1059件が薬の関係だった。

 薬のヒヤリ・ハットは準備段階での薬剤名や量の間違い、投与中の点滴速度間違いなどが多く、同機構は「薬剤師、看護師、医師らの役割分担が複雑なため、ミスが起こりやすい」と分析している。

 一方、07年に実際に起きた医療事故は、報告義務のある273病院から前年より30件少ない1266件の報告があり、うち死亡は142件だった。【清水健二】


最終更新:8月13日18時54分

コメント

ブレーキ掛けた回数

みたいなものでしょう。ヒヤリハットっていうのは、うまくカバーして止めた数ですよね。この網にかかっていなければもっと重大事故件数が増えてるはず。人間が関わる部分が非常に多い医療では一定の確率でミスが起きます。注意を喚起するだけと言うのは最悪の対策です。出来るだけ人手を介さないシステム作りが正しい解決法だと思うのです。でも一番事故が減らせるのは、そもそもそのような危険な医療行為をしないこと、でした。言葉を換えれば不要な(エビデンスのない)検査、投薬、治療、処置はしないと言うこと。最近はDPCでこれを促進してるそうです(笑)

個人的にはこういうデータをどんどん患者側に出した方がいいと思います.
ミスや事故を含めて医療行為なのだということを理解してもらわなければなりません.
ちょっと前にくも膜下出血の数%が見落とされるという記事がありましたが、
出産で健康な母が年間何人死亡したかとか
そういうデータも
どんどん出すべきできではないでしょうか?

元外科医さん

最終的には、そうした一種の萎縮医療になってしまうのでしょうか。しかし、ご存知の通り、エヴィデンス云々をいっていられない修羅場が、臨床の現場ですからね・・・。

医療機能評価機構がネットで、ヒヤリハット事例の分析結果を公表していますが、表面的な分析に終わっていると思います。

医療事務員さん

別に隠し立てすることはないと思うのですが、大切なことは、これだけのヒヤリハット事例を起したという後ろ向きの検討だけではなく、各々の事例の原因が何であったのかを徹底的に調べて、その原因を除く努力を将来を見据えて行なうことです。特に、医療制度そのものに内在する原因を疎かにしてはなりません。個別の事例を起した個人の責任追及であってはならないのです。医療のシステムエラーを追及し正すことがなおざりにされているように感じています。

恒例行事

ヒヤリハットは報告が多ければ論外に叩かれ、少なければ隠蔽と酷評されるテンプレが出来上がっています。毎年同じで批評する気もおきません。

活用?

されているそうですよ。例の病院機能評価で、おっそろしく手間ひまかかる確認作業が導入されていると聞きます。たしか、

 1.医師が指示を書いて署名捺印
 2.看護師が支持を受領して署名捺印
 3.投与する看護師が確認して署名捺印
 4.投与した事を医師が確認して署名捺印

こんな感じだったと思います。机上の完璧さを求めたのでしょうが、現場に出来たのはハンコの山と負担の山だそうです。

またヒヤリハットが減っていないようですから、さらに確認作業のヤマが高くなると予想されます。そのうち婦長から総婦長、診療部長、院長も全員稟議書に署名捺印が必要になるかもしれません。

それでも減らなければ・・・外部からの第3者委員会の承認と署名捺印になっても驚きません。まあ、夜中に急変したら稟議書持って走り回るんでしょう。

う~~んと唸ってしまいますね。日本医療機能評価機構の評価をする機関が必要だと本当に思います。

今日エントリーしました、リハの医療事故についての同機構の担当者の発言にも開いた口が塞がりません。

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