FC2ブログ

「不正請求」 

診療報酬支払い基金(以下基金と省略)から、医療の対価を求める請求書であるレセプトが何通か戻ってきた。マスコミの言う「不正請求」というやつである。マスコミに言わせると、医療機関が、金儲けをするために、不正に診療報酬を請求したということになるものだ。

さて、何が不正と判断されたのかというと、

1)急性気管支炎に患者に、気管支拡張剤の吸入薬を投与したものが、「適応」にはないとして、削られてきた。院外処方といって、当院では処方箋を出すだけだから、この薬の対価は何も受け取っていないのだが、「不正」な処方だから、薬代を当院に返せと言ってきた、ということだ。

確かに、この薬は、経口薬では、急性気管支炎の適応がある(使える)が、吸入薬は気管支喘息とその類縁疾患に限られている。適応症を杓子定規に考えれば、私の「不正」投与ということになる。しかし、咳の酷い気管支炎では、背景に気管支喘息の素因があることが多く、これまで急性気管支炎の病名で用いてきたし、それで保険請求も通っていた。

2)保湿剤を「湿疹」の病名でだしたが、やはり「適応外」であるとして、保湿剤の薬剤費を、当院が支払えという。アトピー性皮膚炎と他の疾患の鑑別がつかず、一応保湿剤を用いてよいと思われるケースだったので、「湿疹」という広い病名で、保湿剤を投与したのだが、やはりこの薬の適応症に湿疹がないということで削られたものだ。

アトピー性皮膚炎だとしても、乾燥性皮膚炎、皮脂欠乏症というより詳細な病名を加えぬと、この保湿剤は「切られる」という、メーカーの営業担当者の話だった。

基金の担当者の話しでは、各企業の健康保険が、薬の適応症にない病名であると、一律に支払いを拒絶する傾向がある、ということだった。薬の能書にある適応症は、絶対なものではない。しかし、それを絶対な根拠として、院外処方の医療機関収入には関係のない、薬のコストを医療機関に負わせようとしてきている。

仕方ない。能書通りの適応症だけを、病名として用いよう・・・これは、所謂「保険病名」として、実態から乖離することもあるのだが、仕方ない。

咳の酷い急性気管支炎に交感神経刺激剤の吸入を用いる場合、喘息関連の病名をつけても良いのだが、以前、アレルギー・喘息関係の病名が「多すぎる」と、基金の審査担当者(医師)から「注意」を受けたことがある(もともと、喘息をメインに診てきたので、喘息の患者さんが多いのだ)と、基金の担当者(専任の事務の方)に話した。そうしたことはないように、審査担当者に申し送るという返答だった。

要するに、(企業)健康保険は、我々が行う医療を、薬の能書だけを根拠に「不正」なものとして切って捨てる、ということが改めてはっきりした。そして、その「不正」の対価として、薬の費用を医療機関に求める。院外処方の場合、薬の費用は、薬局・製薬会社の収入になるのに、である。

こんなことは以前から分かっていたことだが、患者のためにと思って行う医療が、書類の上だけで形式的に判断されて、「不正」請求とされる、ということを、非医療者の方々に理解してもらいたいと思って、恥を忍んで記してみた。


何でこれが「不正」なのか・・・あぁ、士気は落ちる一方である(苦笑。

コメント

ふぇ~

吸入のβ刺激剤が削られましたか・・・当方ではまだありませんが、蔓延するのは時間の問題かと思うので覚悟しておきましょう。

それと御指摘の保湿剤の「保険病名」の件は去年段階から当方には回っていました。杓子定規と思うのですが、あちらが全権を握っていて問答無用ですから「しょうがない」としか言い様がありません。

そのうちBf-R出しても「薬剤性消化不良症」が必要になるかもしれません。もちろん多すぎる病名に対して「厳重指導」のオマケ付で!

支払い基金によるとも思いますが、当院所在地はやかましいといわれており、病名は薬が必要とするだけ付けています。また紹介や他院での薬を引き継ぐ場合はなるべく症状詳記もあわせておこないます。
手間でも用心にこしたことはないと。

仮想空間と思って

いわゆる保険病名については時にムッとしてしまいます。しかし、ここはグッと堪えて仮想空間のルールとして保険病名をつけています。組合の方も仮想のルールと思って(勝手にルールを変えたりしますが)削ってくるわけで、こちらも同じルールにのっかっていく必要があります。スポーツと実戦の違いです。

評判のいい先生の所を探してたどり着いても、薬はそこらの医院と同じでは、患者の状況を無視した医療保険ですね。

当院では初期から電子カルテを使ってますので、病名落ちはチェックできるんですが、保険病名が10個くらい並ぶのはざらです。そういえば開院当初のの集団指導で病名を整理しろと盛んに言われたなぁ。

皆さん、コメントをありがとうございます。私も、これは書類上の一種の「遊び」であることはよく理解していた積りなのですが、杓子定規に「能書収載の適応症」以外は、一切問答無用で削る、という保険者の動きが、いよいよハッキリしてきたな、と感じたことでした。

ここ数日、県の医師会のMLで、統合失調症とうつ病の薬の併用を認めぬという、支払い基金審査部の方針が出されて、困惑しているという議論がなされていま。

今後、この方向での医療費削減がさらに進められるのでしょう。・・・馬鹿馬鹿しいと思いながら、病名をズラズラ並べることになりそうです。

堀尾さん、その件、薬局で、先発品の薬剤が、後発品に変えられたということでしょうか。だとすると、それもこの春から始められた制度です。処方する医師が、処方した薬を後発品に変更することを認めぬと処方箋に書かないと、薬局のレベルで、後発品に変えられてしまうことがあるのです。これも、ただただ薬価の安いものにさせる、医療費削減策の一つなのです。後発品には問題があることがあり、厚生労働省もようやくその問題点を検討し始めたということのようです。

保険病名

書いたら書いたで「違う病名も勝手につけられて、余計に金とられた!」と噛みついてくるやついるし、困ったもんです。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/1088-c34c6d96