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子供の末期医療指針 

小児科医にとって、重症疾患患児に終末期をどのように迎えていただくかは、かなり難しい問題だ。小児は、生命にあふれ、より大きく成長し、発達するのがありうべき姿というのが、本人・家族それに医療者にとっても、前提となっている。その対極の状況が、終末期医療だ。それは大きな不条理であり、本人・ご家族はもとより、医療を行なう者にとっても、とても辛い状況になる。

大学時代には、何人もの患児を主治医としてお見送りした。その中で一番鮮明な記憶に残っているのが、Kちゃんだ。私が研修医になってすぐに受け持った、4歳の女児だった。未分化型の白血病で、様々なプロトコルの化学療法を試みたが、寛解導入ができなかった。化学療法に伴う苦痛の連続で、彼女はいつも悲痛な表情を浮かべていた。用いるべき化学療法がなくなり、分化誘導療法と称する、ある抗癌剤の少量持続投与療法を試みた。化学療法の苦しみから一時離れ、輸血によって、一時的にも気分が良くなったのだろう。数ヶ月主治医をしていて、初めて、彼女がにっこり微笑んだのだった。輝くような笑顔・・・。しかし、それも長く続かず、1,2週間もすると容態は悪化し始め、ほどなく昇天された。その前後で、お母さまも精神的に失調をきたされた。本人は当然のことながら、ご家族にとっても、とても辛いことだったろうと思う。

主治医といえ、治療法を決定することは出来なかったのだが、思い返すと、あのように化学療法を続けることが彼女にとって良いことだったのかどうか。小児科医が、患児の終末期に直接向き合うべきだったのではないか。あの笑顔を浮かべた患児の時間を、患児とご家族のためにもっと長くすることができなかったか。痛切な思いで、何度も自分に問いかけたことだった。

小児科学会が、子供の末期医療のための指針を作るようだ。死を明確に受容することは、子供にとって難しいことだ。さらに最初に述べた、小児期という人生の時期特有の問題もある。指針を作ることは、容易なことではないかもしれないが、終末期にある患児とそのご家族が、有意義な時間を苦痛少なくできるだけ長く過ごすことができるような指針を作って欲しいものだ。さらに、そうした患児に残された時間を実りあるものにするために必要な医療スタッフ・施設の充実を望みたい。



以下、引用~~~


子供の末期医療指針作成へ 小児科学会が1年かけ
08/09/22
記事:共同通信社
提供:共同通信社

 日本小児科学会(会長・横田俊平(よこた・しゅんぺい)横浜市立大教授)は21日、子どもの終末期医療の指針づくりを進めることを明らかにした。既に医師のほか法律や生命倫理の専門家らで構成する作業部会を設置しており、担当理事の土屋滋(つちや・しげる)東北大教授は「1年後をめどにまとめたい」と話している。

 学会によると、今年2月に日本医師会が終末期医療の指針を作成したが、子どもの場合は意思決定能力が不十分で、親の虐待が疑われる事例もあるなどの問題があることから、独自の指針が必要と判断した。

 今後の検討では、子どもの意思をどうとらえるかや、医師と患者家族の話し合いの進め方などが課題になるとみられる。

 子どもの終末期医療をめぐっては、国立成育医療センター(東京)が、2002-07年にかけ、重い病気やけがで小児集中治療室に運ばれ、心肺停止が予測された84人のうち30人について、両親と医療チームの話し合いに基づいて延命治療を中止したことを公表するなど、議論を求める声が強まっていた。

コメント

重症新生児の延命治療の中止の指針として、先生もご存知の有名なフローニンヘン・プロトコールがありますよね。

The New England Journal of Medicineから。
The Groningen Protocol — Euthanasia in Severely Ill Newborns
http://content.nejm.org/cgi/content/full/352/10/959

オランダのフローニンヘン大学が作った指針。
オランダは自由と寛容の国として知られており、ベルギーやスイスなどと並んで、重症患者の安楽死を法的に認めた国。
子供の延命治療の中止も、いち早くガイドラインを作りました。

参考資料:オランダ保健省の安楽死に関するHP
http://www.minvws.nl/en/themes/euthanasia/default.asp

不勉強にも、それらの指針は知りませんでした・・・終末期医療から離れてしばらく経ちますので・・・。後で精読させていただきます。

医学的問題として、どのような時期に積極的な治療を行なわなくするのか、それに患児本人にどのように伝えるのか、死への準備をしてもらうのか、という二つの問題がありますね。

いずれにせよ、重たい問題です。

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