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シリアス医療系ドラマは何のために? 

民放のテレビは、ほとんど見なくなった。見るのは、たまにスポーツ中継程度。コマーシャルがうざったいのと、何より、一般の番組の人為的に異様に高められたテンションが、見るに耐えないのだ。BSになったら、ましになるかと思いきや、同じテンションでショッピング番組を流し続けている。これでは、民放の将来は決まったようなものだなと、その放送の様子を無関心に眺めている。

見てはいないのだが、最近目立つのが、医療系のドラマ。一見(といっても、繰り返しになるが見ていないのだが)シリアス路線のようだ。「小児救急」というドラマもそうしたものの一つのようだ。ネットでの情報によると、小児科の開業医の女医さんが、365日24時間救急に対応するという設定らしい。3名の医師がローテートするということのようだ。かなりの重症のケースも、診療所で解決してしまうらしい。所謂コンビニ診療を率先して行い、何でも引き受けるということのようだ。

このような診療が、現実に可能かどうか、少しでも小児科医療の現場に足を運べば、分かりそうなものを、いかにもお手軽なドラマの設定だ。まず、何でもかんでも引き受けることは、出来ない。診療所の能力を超えるだけでなく、何か予期せぬ結果が生じた場合に、医療訴訟になる可能性がある。患児のことを考えたら、重症のケースは、高次医療機関にお送りすることが最善だ。何でも引き受けるという「危ない橋」は、診療所を経営する立場からしても、何としても避けなければならないのだ。

3名の医師のローテートとはいえ、24時間対応するとなると、休日をとるのはほぼ不可能になる。また、医師一人で診療はできない。事務・看護を担当する方を、24時間そろえなければならなくなる。事務員・看護師は、休みなしというわけにはいかないから、日中だけの診療をする診療所の数倍の人数のスタッフをそろえなければならなくなる。これは、経営上も、診療上も不可能なことだ。特に、最近、小児科の診療報酬は実質上大きく減らされている。人件費だけで、すぐに大赤字になりそうだ。

と、あまり具体性のない批判をしても意味ないし、こんな馬鹿げたドラマは、笑って見過ごせばよいだけなのかもしれない。が、「コードブルー」というドクターヘリを題材にしたドラマといい、このドラマといい、政府・官僚の医療政策を先取りする、または持ち上げるためのプロパガンダドラマになっているように思えるところが不気味だ。

「コードブルー」は、ドクターヘリが大活躍するドラマで、ドクターヘリを導入すれば、地域の救急医療の問題は解決とまで言いたげなドラマのようだ。官僚が全国で推進している、ドクターヘリ導入の援護射撃であることは間違いない。「小児救急」は、開業医の労働条件を勤務医と同じにすればよい、コンビニ受診大いに結構というメッセージを発している。これも、「安心な医療」を「安価に」提供するという、政府・官僚の意図に合致している。

民放は、視聴者から飽きられて、こうして政府・官僚の宣伝・・・何も責任をとらない中身のない宣伝・・・をすることに活路を見出そうとしているのだろうか。

コメント

NHKで放映されているアメリカの救命救急医療ドラマ「ER」。
原作と監修はシカゴ大医学部卒の救命救急医。したがって、ドラマの病院もシカゴ大関連病院のERを設定しています。
日本の医療ドラマとちがって、ありえない設定は少ないです。
しかし、5~6年前のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌でCPA(昔はDOA)において、ドラマ「ER」での救命率が高すぎるというarticleが載りました。

東京都のERは石原都知事が、テレビドラマをヒントに都立病院にもER(都立府中病院)を設定しましたが、実際には軽症の患者がコンビに感覚で来院されるほうが多いです。

それに、医者の数、コーメディカルの数もアメリカのERとは比較にならないです。

しかし、アメリカのERにおいてもスタッフ不足で患者の待ち時間が多く、最近では心筋梗塞の患者が診察を待っている間に死亡しました(受診時にはAMI特有の症状ではなく、他の症状で受診)。

シカゴの検察が刑事事件化を視野に入れており、アメリカ救急医学会長が非難の声明を出しています(以前に、先生のブログに記事のURLを紹介いたしました)。
もちろん、そんなことをすれば、医師不足に悩むアメリカの救急医療が崩壊するという主張です。
既にこの事件が起きる前から、医学部卒業の段階で、救命救急医学の専門医トレーニング志望者が減少していますから。

日本には、妄想に基づいた医療ドラマばかりで、現実離れしていますね。

そんなこともあるのですか。米国のERは、普通の医療機関にかかれぬ人々であふれかえっているとは聞いておりました。m3では、英国在住の医師が、NHSの惨状を報告されておりましたね。あちらのERに相当する医療施設でも、救急患者であっても数時間待ちはありふれたことのようです(一方、自費診療では、優れた医療の恩恵を受けられるようですね)。

米国のドラマ「ER」は、比較的良く出来ていると思いましたが、NEJMで指摘された点以外に、患者さんが良くなるにせよ、悪くなるにせよ、決着がつくのにかかる時間が短すぎるという印象がありました。救急医療、ないし急性期医療は、あんなに簡単に決着がつかないと私は思います。やはりドラマの世界だからでしょう。単位時間に起承転結を組み立てなければなりませんからね。

日本の医療ドラマは、シリアス路線は止めていただいて(現場の実情を著しく誤解させますから)、娯楽のお笑い路線だけで行ってもらいたいものです。

「ドクターヘリという特殊性を隠れみのにして国と都道府県から吸い上げた金で生き長らえる吸血鬼たちの実態」なんてサブタイトル付きのドラマがあったら、きっと良い数(視聴率)が取れるはずです。もっとも、ゴールデンタイムのオンエアは無理ですね。ムカムカしてせっかくの夕食が台無しになってしまいますからね。

ドクターヘリを推進させるのに熱心な、行政と政治の裏には何かあるのでしょうね。

栃木でも導入らしいです。一人当たり、数十万円のコストがかかると思うのですが、いつまでその財政負担に地方自治体が耐えられるのでしょうね。

そんなドラマできたら、怖いもの見たさで見てしまうかもしれません。

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