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懐かしきフォーレ 

今週月曜日、都内某所で室内楽の練習をした。フォーレ ピアノ五重奏曲1番1楽章。メンバーの平均年齢が50歳代後半?主にネットを介して知り合った方々。

この曲は、長い間、譜面が絶版になっていたために、弾くことができなかったのだ。フォーレのピアノの加わる室内楽の常として、ピアノのアルペジオによって、開始される。その美しいアルペジオに乗って、2ndバイオリンが、楚々とした佇まいの美しい旋律を奏で始める。1stではなく、内声の2ndから始まるところが、フォーレらしい。ついで、チェロがそれに加わり、他の弦も順次加わってゆく。さらに、弦に決然とした旋律が現れる。その二つの旋律と、それから派生した動機が、織物を形作るように音楽を形作って行く。この時期、フォーレは、聴覚の異常を自覚するようになり、それまでの上品な官能性が表に出た作風から、人生の苦渋を込めた作品群に変化してゆく時期だったようだ。この曲にも、そこかしこに、ひそやかに、しかし決然と苦悩と相対するかのような旋律と響きを聞くことができるような気がする。

この曲、縦の線もあまり揃わず、また転調も多い。アマチュアが弾くには、やはり結構な難物だったので、どうなるかと思っていたが、それなりに形になってホッとした。一回だけで空中分解とはならずに、12月下旬にもまた練習することにした。2,3楽章もおいおい合わせることにした。練習の合い間に、練習会場のホワイエでお茶をした。学生時代に戻ったかのようだった。

ピアノの方に、フォーレの「エレジー」を伴奏して下さるようにお願いした。この曲は、結構な難曲なのだが、チェロを弾くものにとっては、憧れの曲の一つ。学生時代から何度かチャレンジしてきたが、満足の行くように弾けたことがない。昨夜、トルトゥリエの弾く「エレジー」を寝るときに、CDで聴いた。このチェリストは私がチェロを弾き始めるようになったきっかけを与えてくれた方なのだが、聴き返すのは、久しぶり。芯があり、高潔な印象のチェロ。だが、テンポを自在にゆらす。特に、高潮する中間部分では、ピアノを後において一歩前に踏み出すほどだ。音楽としての形式感が崩れるのではないかと思うほどに、テンポを上げてゆく。

同じCDに、フォーレの「夢のあとに」も収められていた。フォーレの有名な歌曲作品を、かのカザルスがチェロとピアノのために編曲したもので、この編曲版、チェロが、歌詞はなくても、甘く切なく歌う。素晴らしい曲だ。トルトゥリエは、「夢のあとに」の冒頭の主題から、緊張感を持って弾き進める。1オクターブ上で、同じ旋律をリフレインするところでは、多くの奏者は、ダイナミックを一段落として弾くのだが、トルトゥリエはむしろ、テンポもダイナミックも一段上げる。ピアノがここでも置き去りにされそう・・・。失恋の思いを、叩きつけるかのように、フォルテで歌う。最後の数小節、曲を終えるところで、ようやく落ち着き、消え入るように終わる。

「夢のあとに」の演奏で、学生時代に良く聴いたものは、FM放送からカセットに落とした、トルトゥリエと岩崎淑の演奏だった。彼が来日した時のライブ録音版だったと思う。このリフレインするところを、やはり感情をぶつけるかのように、アッチェランドかつクレッシェンドしてゆくのだ。A線のDesからD線のFに動くところで、少しリズムを崩しかけるのだが、それがむしろ緊張感をたかめるように聞こえたものだ。懐かしい「夢のあとに」だ。

・・・と、そんなことを思い出していたら、眠れなくなってしまった。「夢のまえに」になってしまった。

「エレジー」もどこまで弾けるか分からないが、これが恐らく最後の機会。楽しみながら、一生懸命練習しよう。

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