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丁寧な診療は、遠くなり・・・ 

今日も、午前中、数名の患者さんの親御さんから連絡があり、10時過ぎに仕事場に向かった。普段、別な医療機関にかかっている患児の家族の受診要請には、よくお話して、かかりつけ医療機関に行って頂くようにしている。

二人の乳幼児を抱えたお母さんがどうしても診て欲しいということで断りきれずに、診せていただいた。咳と鼻水が止まらず、夜も眠りにくいということだった。別な医療機関では、抗生物質と去痰剤等を投与されていた。鼻腔所見から、アレルギー性鼻炎はほぼ確実。同じ症状を繰り返しており、運動によって咳が生じることから、気管支喘息の一種が疑われた。母子家庭であり、母親が、その両親と同居しているらしい。家族何人かがタバコを嗜んでいる。

症状を記録すること、咳や鼻水を「風邪」の一言で片付けないこと、小児科医に診てもらうこと(私の仕事場に続けてくる必要はないこと)、咳が酷いときは、夜間部屋を暖め加湿すること、受動喫煙の害について説明したうえ、受動喫煙は是非止めること、投与する薬の説明等々をじっくりした。ご家族のことも詳細に伺った。40分は優にかかっただろうか。あまり混んでいない休日だったから、これだけ時間をかけられる。

しかし、通常のウィークデイの外来ではこれほど詳細にはなかなか説明できない。患者さんが多く、こんなことをしていたら、収拾がつかなくなる。さらに、これだけ時間をかけると、経営上やってゆけないのだ。私が、一人の患者さんに費やす時間は、私だけがその患者に時間を費やしているのではない。いわば、仕事場のスタッフ全員が、その患者さんに拘束されていると考えるべきなのだ。それに対応する診療報酬が、あまりに少ない。

丁寧な診療を行なえと官僚は言うが、それを心がけても、そうした診療を実行するための経済的な担保がないのだ。私自身は仕事上の借金はすべて返済し、もう引退を考える時期にきているので、そうした経済的な観点を第一にする必要は、幸いなことにないのだが、一般論で言えば、現在の診療報酬体系では、「丁寧で、出来る限り安全な医療」を提供することは難しくなってきているのではないか、と感じている。

中医協で、健康保険組合側の委員は、理不尽な「5分間ルール」だけを検討することはしない、むしろ診療報酬、特に診療所の診療報酬を引き下げることを検討すべきだと表明している。恐らく、その方向で診療報酬がさらに引き下げられていくことだろう。

結局、官僚と財界は、国民への医療を窮乏化させようとしている。それなりの医療だけで良いのだ、というのが彼等の意向なのだ。

その先には、国民の資産・収入に応じて松竹梅の医療メニューが準備されることになるのだろう。そうした方向に医療を進めようとしていることは、国民には知らされていない。

患者さん一人一人のバックグラウンドをよく理解し、状況に応じて丁寧な説明をし、経過を的確に把握し、診療する・・・そうした医療をいつも行いたいものだが、それは現状では到底無理なことなのだ。

そういえば、「5分間ルール」をでっち上げる際の「根拠」は、「救急外来における診療時間」だったけなぁと思い出し、苦笑いしたのであった。

コメント

おつかれさまでした

休日の救急診療、おつかれさまでした。
それにしても、(応急処置だけでも有り難い)休日なのに丁寧な診察をなさるんですね。
先生みたいなかかりつけを持っていると、安心です。
持病もあるせいで私もよく医院のお世話になります。
日本は、症状によって色んな医院を受診出来てありがたいです。
医院の良い所は、院長先生の個性が出る所だなあと思います。
フレンドリーな医師、腰の低い医師、30秒診察の医師などなど、沢山の先生に出会ってきました。
でも、40分も診察時間があった事はないですねー。
まあ、日本ではそんな診察、先生がご指摘のように無理ですもんね。
医師の先生や看護師さんが納得出来るくらい、丁寧な対応が出来て、それで医院の経営がやっていけるような診療報酬にするべきですね。
今の行政は、開業医の診療報酬と勤務医の診療報酬を対立概念として考えてる点でダメだと思います。

去年の年末か今年の年始か忘れましたが、先生は休日に診察をなさってブログにその時の模様をお書きになりましたよね(^_^)
あの時もそうだったのですが、本当に頭が下がります。
そういう誠実な対応がその地域の安心を作り出してるんだなあとつくづく感じます。

些細な訂正

>「5分間ルール」をでっち上げる際の「根拠」は、「救急外来における診療時間」だったけなぁ

あれは救急外来の調査には間違いありませんが、利用されたのは正規の診療時間数と正規の診療時間内での患者数での単純な割り算だったかと思います。

保険医協会が目的外使用で頑張ってましたが、厚労省は黙殺で応じて結局藪の中になりましたね。

たかさん

そうでしたっけ・・・同じようなことを繰り返し、同じことを書いているんですね、私。

救急外来も、縮小しようと思っています。私を信頼してかかり続けてくださる患者さんにだけは出来るだけのことをしようと思っています。

日中の普段の仕事も規模縮小してゆかなければ行けないなと思っています。

少しネガティブ思考回路ですが(笑、年齢的にも、医療の状況からも仕方の無いことでしょう。

ま、もう一頑張り・・・。お互いにぶっ倒れない程度に、ぼちぼち参りましょう。

Yosyanさん

この「5分間ルール」、その内、官僚が診療報酬を削減するのに用いる伝家の宝刀にしそうな気がします。打出の小槌ですから、ね。

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