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未熟児医療のドタバタ 

NICUの勤務は、ハードだ。分娩時から、NICU医師の仕事は始まる。リスクの高い分娩では、分娩室・手術室に入り、出生直後の赤ちゃんの蘇生を受け持つ。その後、赤ちゃんに付き添ってNICUに搬送。気道確保(これは分娩直後に行なうことが多い)・呼吸管理・血管確保等の処置を分の時間単位で行なう。多胎の場合等は、その忙しさは倍増する。こうした処置が、赤ちゃんのその後の経過に大きく影響するので、全く気が抜けない。赤ちゃんの状態が上向くまで、2,3日泊り込みで、徹夜に等しい仕事が続くことも多い。

それでも、治療効果が上がると、赤ちゃんは持ち前の生命力ですくすくと育ち、ご両親から感謝されることが、NICUの医師の生きがいなのだろう。しかし、そうはならずに、何週も悪戦苦闘が続くことも多い。

NICUの第一線でのハードな仕事は、50、60歳になってまではとても続けられないと思う。管理職になる医師もいるだろうが、多くの場合、未熟児医療の現場を離れて、開業をするのではないだろうか。ところが、小児科の開業は、現在冬の時代である。小児科を専攻し、未熟児医療を専門とすることは、一人の医師の生涯設計の観点からは、かなり厳しい選択になるのではないかと思われる。

一方、NICUベッドが足りないから、その病床建設に金をつぎ込んだ、しかし人(小児科医)が集まらないという自明の経過であたふたしている埼玉の状況が、下記の報道だ。

まず考えるべきは、小児科医をいかに招聘するのか、ということなのに、役所のやることは、箱もの作り、またはそれに順じた作業だ。川口市立医療センターの方の言う、コントロールセンターというものがどれだけ有用なのかは分からないが、NICUに従事する医師の絶対数が足りないということには変わらないのではないか。

一方では、医師の生涯設計の観点からは、小児科医をとてつもなく厳しい状況においておいて、一方では、NICUに従事する小児科医の不足を嘆く。不謹慎ではあるが、何か可笑しくなってくるようなドタバタではある。


以下、引用~~~

埼玉県内のNICU事情 常に満床、医師不足で休止も
08/11/25
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社


妊婦受け入れ拒否死亡:県内のNICU事情 常に満床、医師不足で休止も /埼玉


 ◇県の補助施設、稼働せず 現場は「まず限られた資源活用を」

 東京都で脳出血を起こした妊婦が8病院に受け入れを断られて死亡した問題で、断られた理由の一つに新生児集中治療室(NICU)が満床だったことが挙げられている。県内も、埼玉医科大などに計83床あるが、常に満床状態。県はNICUの増床を打ち出したものの、新たに設備を整えても今度は医師不足で稼働できない病院が現れるなど、深刻な状況が続いている。【稲田佳代】

 自治医大さいたま医療センター(さいたま市大宮区)に今年3月新設された南館4階のNICUは、完成から8カ月たった今もがらんとしている。今年度から地域周産期母子医療センターとして活躍が期待されていたが、肝心の医師が集まらないためだ。

 センターによると、NICUは最低6床を予定し、24時間医師が付きっきりの体制を取るため、稼働させるには小児科医、産婦人科医がそれぞれ約20人必要という。現在は小児科医4人、産婦人科医9人。川上正舒(まさのぶ)センター長は「医師の取り合いで、来ると思っていた人が急にやめることがあり、人員をそろえるのが難しい。できるだけ早くスタートさせたいのだが」と語る。

 センターのNICU整備が決まったのは03年10月。県は20億円の制度融資と、施設建設と設備の補助を06年度に計約6125万円行っており、「5年前から進めてきた計画なのに、まだ開設できないとは」とため息を漏らす

 県の試算によると、県内のNICUは最低あと39床が必要。しかし、今年2月にも埼玉社会保険病院(同市浦和区)が医師不足のため10床を休止し、状況は悪化している。上田清司知事は10月28日、東京都の問題を受けて09、10年度にNICUを10床ずつ増やし、11年度までに120床を目指すと発表。「県としても予算をつけて支援したい」と述べた。

 これに対し、川口市立医療センターの栃木武一病院事業管理者は講演会で、「医師不足なのに、こんな絵に描いた餅ができるなら東京都も困っていない。(今年度の)7000万円の予算も少なすぎる」と批判。むしろ、広域で搬送先を決定するコントロールセンターの構築を急ぐよう訴え、「どこの地域でもいいからモデル的に始めるべきだ。医師を増やすにも10年かかる。今の少ないマンパワーと限られた周産期医療の資源を活用する方法をもっと考えるべきだ」と話している。

コメント

患者の集中という点で都道府県単位をはずしてみればいいのですが、それができないんですよねえ。アメリカだととんでもない僻地がありますので、アメリカの感覚だと車で6時間までが近所、(これだとドクターヘリが意味ありますね)というわけですから、集中治療室は各エリアにひとつということになっていきます。
 即日に緊急医療がうけられるというのは先進国でもけっこうめぐまれた環境なわけですねえ。

思いで

NICUの研修は無茶苦茶辛かったのだけは覚えています。ちょうど医師になって6ヶ月~1年の間がそうだったのですが、医師人生がここで挫折するんじゃないかと思うほど辛かった経験でした。

当時も常勤医の寿命としては40歳代前半ぐらいが普通で、以降は管理職になって病棟にほとんどタッチしない役回りにならないと、体力的には到底無理とされていましたし、現実もそうであったかと思います。

あれから少しは改善されたのでしょうか、それとももっと厳しくなっているのでしょうか。

Madiさん

医療機関の集中ですか・・・医師のとりわけ少ない科ではやはり必要になるのかもしれませんが、現場の事情と、医師の意思(だじゃれじゃなく)をよく聞いて、調べてからにして欲しいものです。

江東区では、今回の妊婦死亡事例が生じたことをきっかけに、民間医療機関を誘致するらしいです。人口43万の区に総合病院が一つだけという状況らしいです。都の土地を譲り受けて、恐らく安く土地を民間に提供するのでしょう。単なる歯小物作りに終わらなければ良いのですが・・・先に、墨東のスタッフへの手当てや労働条件の改善をすべきではないかと思うのですがねぇ・・・。

Yosyanさん

いえ、私が新生児をやったのは、貴兄よりも大分前なのではないかと思います。経皮モニターのプローべを3時間おきに張り替えていました時代でした。今は、まさかそんなことをしてないとは思いますが、当直というとまずは一睡も出来なかったですね・・・。

技術の進歩でマンパワーが少なくて済むという側面はあるでしょうが、一方、極小未熟児が助かって当たり前といった雰囲気になって(それはそれで医学の発展のポジティブな側面なのでしょうが)、ハードさは変わらず、ないし新生児を専門とする医師数はほとんど変化なしか、減少傾向でしょうから、さらにハードになっている可能性があるような気がします。

あのレスピレーターとモニターの乾いた音が、まだ耳に残っているような気がしますね・・・。

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