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老いゆけよ,我と共に! 最善はこれからだ 

昨日朝、救急診療所の仕事にでかける時に、母の面倒を見に来てくれていた姉に呼び止められた。W先生が、若年性アルツハイマー病と診断され、その事実をカミングアウトされたという話だった。彼は、まだ61,2歳であり働き盛りの年齢にある。

『医学界新聞』でその記事を読むことができる。

私が高専から医学部受験を目指していた頃、ある無教会主義の集会で彼と初めてお目にかかった。白皙の好青年だった。彼は、受験のことなどを私にいろいろと教えて下さり、また激励をしてくださった。私のことを、恰も弟に接するように、親しく付き合ってくださったことは、当時自分の精神的な所属が宙ぶらりんであった私にとって、とても嬉しいことだった。彼は、東大の理科二類から医学部への進学というとても競争の厳しい進学過程を無事進まれ、医学の勉強を始められたばかりだった。目黒にある今井館という小さいが静謐な場所で一緒に読書会に参加させて頂いたり、彼の婚約式に出席させて頂いたりしたことが、昨日のことのように想い起こされる。

その後、彼は基礎研究を行いつつ臨床の研鑽も詰まれ、台湾等東南アジアを含め、世界各国にJOCS等から派遣され、現地での医療協力をなさったこられた。1999年には、母校の教授に招聘され、これから充実した人生の総仕上げの時期を過ごされるものと期待して眺めていた。が、その3,4年後に上記の病気に冒されたとのことだった。

医師として、どれほどの葛藤があったことだろうか。彼のキリスト教信仰に裏打ちされ、与えられた能力をフルに発揮して走りぬけてこれたこれまでの人生を思うと、この事態に、何故という問いを抱いたであろうことは想像に難くない。沖縄でしばらく療養し、さらにアリセプトともう一つの新薬を併用して、小康状態を保っておられる様子だ。カミングアウトされた対談に掲載された彼の写真は、とても穏やかな表情の彼であった。

その対談の冒頭に記された、ブラウニングの言葉が、こころに迫る。奥様ともども、平安な年を重ねていただきたいものと切に願っている。

「老いゆけよ,我と共に! 最善はこれからだ。人生の最後,そのために最初も造られたのだ。我らの時は聖手の中にあり。神言い給う。全てを私が計画した。青年はただその半ばを示すのみ。神に委ねよ。全てを見よ。しかして恐れるな!」

ロバート・ブラウニング作「ラビ・ベン・エズラ」より

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