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理解し難い医療訴訟 

医療に関わる民事訴訟には、二つの側面がある。一つは、当事者達の争いを賠償金の有無、その額によって決着をつけることだ。残念ながら、当該ケースの医学的な分析は適切に行なわれないことが多い・・・科学的な議論ではなく、勝ち負けの議論でしかないからだ。

もう一つの側面は、民事訴訟の判決が、その後の医療に大きな影響を及ぼすことだ。最悪の場合、当該医療科目、専門科目の崩壊をもたらす。近年、幾つかの医療訴訟が社会的に注目されたのは、この側面からだったと言っても良い。

この訴訟が提起されたケース。臍帯券絡があり、胎児心音に異常があるとすると、緊急帝王切開の適応になるのだと思うが、入院後1日以上放置されて自然分娩で出生、子に障害が残ったというのが、『原告側の主張』のようだ。この問題が『当時の医療処置に起因することが判明した』のが2006年なのだそうだ。

定期健診で上記異常が指摘され入院になった、ということは、その時点で、原告側は、胎児に異常があることを認識していたはずで、それが子の重たい障害の『原因になった』ことは、出生後それほど時間の経たないうちに分かったはずだ。しかし、原告側にとって『医療処置に起因する』ことが判明したのが2006年とは、不可思議な話だ。

産科の診療録の保存期間は知らないが、一般的に診療録は、診療終了後5年間である。1996年当時の診療録が保存されていないとすると、原告側は何をもとにこの訴訟を維持するのだろうか、また被告側も対応に難渋することが予想される。

マスコミが医療訴訟を報道する際には、最初に述べた二つの側面から、よく訴訟内容を吟味し、少なくとも、提訴の時点で、原告側の主張のみを報道することは慎重であって欲しいものだ。



以下、引用~~~


「出産時放置で三男障害」 岩手県に2億円損賠提訴
09/01/28
記事:共同通信社
提供:共同通信社


 岩手県立病院で出産した際に適切な処置が行われず、三男(12)に重度の障害が残ったとして、県内の両親と三男が27日までに、県に約2億円の損害賠償を求める訴訟を盛岡地裁に起こした。

 訴状によると、母親は1996年2月、同病院で定期検診を受けた際、医師から「胎児の首にへその緒が巻き付いていて心音に異常がある。すぐに帝王切開手術する」と告げられ入院した。しかし約25時間放置されて帝王切開を受けることはなく、自然分娩(ぶんべん)で生まれた三男に重度の知的障害が残った。

 両親側は「へその緒が巻き付いて血流障害が続いて低酸素状態となった。速やかに帝王切開をすれば障害が残ることはなかった」と主張。時効の起算点について、当時の医療処置に起因することが判明した2006年としている。

 県は「訴状の内容を検討し、病院と弁護士に相談して対応を決めたい」と話している。

コメント

難しい件です

時効の起算起点は原告が不法行為を知った時点とされています。とりあえず、2006年時点までは気がつかなかったかを立証する必要があります。

病院側もその点を争うと思いますが、半分以上は裁判官の心証の問題になり、双方の弁護士の力量が問われるところです。

もう一つは産科がらみの事件である事。当然例の団体がお出ましなると考えられます。

情報が原告側の主張のみの報道記事しかないので、判断が難しいのですが、ここのところ旗色が良くない例の団体にとっては失地回復の好機に見えそうです。

後は例の団体にやや距離を取り始めたマスコミがどう乗るかでしょう。尼崎の件では「筋が悪い」と察したのか引き気味の報道になりましたが、今回はどうするかです。

事が大きくなれば醜悪な場外戦が展開されるかもしれません。

2006年時点までは気がつかなかったのは何故なのか、今になって何故訴訟なのかを是非知りたいところですね。

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