FC2ブログ

『伝説』 

医学部を卒業する頃は、その後の医師としての人生設計を真剣に悩み、情報を
収集し、自分の志向する方向に進んでゆく。勿論、その決断は、その後の医師と
しての人生を決定的に左右するものでは決して無いが、大まかな方向付けをする
ものとなる。

そうした若い医師が将来設計をする上で、官僚や、政治家、それに医療機関の都
合ばかりが優先されることになってはならない。ルールのない無政府状態の研修
制度ではいけないが、若い医師の関心と意気込みを尊重し、それを医療システム
のなかで生かすような制度であって欲しい。

残念ながら、医療を崩壊させた挙げ句に、若い医師の将来を強制的に国家・地域の
意向で決める制度作りが盛んになされようとしている。それは、さらに医療を荒廃さ
せるだけだ。

若い医師が安易な途を選び、すぐに開業するという『伝説』を、北大の中村氏がデータ
に基づき否定している。

こうした根拠のない『伝説』は次から次に出てくる。『伝説』を流布して、医療崩壊の真
の原因から目をそらさせ、自らへの責任追及から免れ、何らかの利権を手にする勢力
がどこかにいるのだろう。



以下、MRICより引用~~~

■□ 医師に関するウワサ(1) □■
        ~若い医者はすぐに開業する~

          北海道大学大学院医学研究科
          医療システム学分野 助教
          中村利仁

 今回から3回の予定で、医師と医療を巡る都市伝説のいくつかを、公開されて
いる統計データによって検証して行きます。どうかお付き合い下さい。

 初回は近年言われることの多い、「近頃の若い医者はすぐに病院を辞めて開業
してしまう」、つまり病院勤務医が無床のビル診療所などで開業するペースが早
まっているというウワサを検討します。

 ここでは年齢別に医師の働いている場所がどのように推移してきているのかを
見てみます。

 検討に当たっては、隔年(2年に一度)12月31日付で医師法の名の下に行
われている医師調査の、平成8年から平成18年までのデータを使用します。

(図1)http://mric.tanaka.md/naka%EF%BC%91.pdf

 図1では、平成18年末(最新)の性年齢別の業務種別割合をグラフ化してい
ます。

 母数は医師総数で、そのうち、大学病院を含む病院や診療所の勤務医・開設者
や介護老人保健施設などなどに性年齢別にどのように分布しているのかを見てい
ます。

 性年齢別に見ると、ほぼ100%が医師人生を病院勤務から歩み出し、年々1
%ずつ程度が診療所その他に移動します。65歳頃までに約60%が病院勤務を
離れて、およそ40%が病院に残っているということが見て取れます。

 もちろん、これは断面調査ですので、現在の25歳の医師が65歳になった時
にどこで働いているのかを意味するものではなく、また、現在60歳の医師がか
つて30歳であったときにどこで働いていたのかを示すものでもありません。

 次に、図2では、平成8年から平成18年にかけて、医師総数の中で病院の従
事者の年齢別割合がどのように変わってきたのかを示しています。

(図2)http://mric.tanaka.md/naka2.pdf

 当初は比較的緩やかな傾きが、35歳頃からカーブを描いて傾きが急峻となり、
55歳頃に再び緩やかな逆S字状となっているのがお判り頂けるだろうと思いま
す。

 少なくとも、50歳未満で大きな変化は見られません。これをみるだけで、
「近頃の若い医者はすぐに病院を辞めて開業してしまう」という言辞に根拠のな
いことが分かっていただけるだろうと思います。

 本研究では、平成8年よりも前の状況との比較はしていません。平成6年以前
のデータと比較すれば、あるいはどこかの時点で急激に病院離れの進んだ時期が
あったのかも知れません。たとえば傾きの変化が40歳頃からだったのかも知れ
ません。

 それでも、あるいは誤差の範囲かも知れませんが、平成18年末調査では、特
に40歳代で病院へ居残る割合が若干増えています。批判されるには当たらない
でしょうし、批判は見当外れと言えるではないでしょうか。

 では、「近頃の若い医者はすぐに病院を辞めて開業してしまう」などという話
がもっともらしく語られた理由は何だったのでしょうか。

 図2をもう一度御覧下さい。50歳代の病院勤務割合がやはりわずかですが低
下していることと、65歳以上の病院勤務割合が大きく上昇していることが見て
取れます。

 まず、「近頃の若い医者」とは50歳代の医師であるのではないかということ
が考えられます。一般社会で50歳代と言えば既に若者扱いされる年齢ではあり
ませんが、90歳を超えて未だ現役という場合のある医師の世界では、さほど的
外れな話ではありません。

 また、65歳以上の医療界のオピニオンリーダーの皆さんが、病院に居残る割
合を増やしているところにも意味がありそうです。65?75歳の年齢層の先生
方の立場からは、自分よりも目下の医師の診療所開業のペースの増加が目につく
だけでなく、先輩に比べて、自分たちのすぐ下の年代層の先生方は開業医の割合
がやや多く、従って部下として居残っている割合が低くなっている
ことが日常生
活の中で経験できることになります。

 オピニオンリーダーの先生方の目に映る現実は、まさに「近頃の若い医者はす
ぐに病院を辞めて開業してしまう」という状況に他ならないのではないでしょう
か。

 さりながら、これは20歳代から40歳代の医師や、卒後臨床研修制度の必修
化とは全く何の関係もない
話です。この辺りの制度を弄ったとて、古き佳き時代
に戻るわけではありません。


 今回のお話は楽しんでいただけましたでしょうか。

 次回は卒後臨床研修制度の必修化によって「研修医は都会の病院に集中した」
という都市伝説を検証いたします。

コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/1304-027ecc7f