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オバマ大統領(当時、候補)の医療政策 

昨年10月、米国の大統領選で、オバマ現大統領が、New England Journal of Medicineに、医療政策を寄稿している。大統領候補が、米国を代表する医学雑誌に、自らの政策を寄稿することに素直に驚かされる。医療者の批判に耐えるだけの政策を打ち出さなければ、大統領候補として失格の烙印を押されてしまう。

医療情報産業への投資を促進するという意図が全体を通して見られるが、それは無駄を省き、患者の予後の改善に資するためという目的に限定されている。医療の無駄を省くことが、即診療報酬削減ではない。診療報酬はむしろ手厚くする。技術革新によって、無駄を省き、さらに民間保険の非効率にメスを入れる、医療訴訟の問題にも取り組む、疾病予防に力を注ぐ(禁煙と肥満対策)といった内容だ。

自分の母親が、癌で死の床にありながら、保険会社と給付の件でやりあわなければならなかった経験等を語り、好感が持てる。臨床医が、診療報酬や事務的な手間の点で厳しい状況にあること、さらに医療訴訟の恐れを抱きながら仕事をせざるを得ないこと等の現場の問題も良く理解しているようだ。

医療の無駄を省くことと言えば、即診療報酬の抑制、さらに予防医学に力を入れるといいつつ、タバコの値上げは見送り、タバコ税は確保する、さらに医療へのペナルティを強化し、医療訴訟抑制等全く眼中に無いどこかの国の政府要人にはよく読んで欲しい内容である。

米国でも、市場経済原理主義のもたらした未曾有の経済恐慌状態にあり、オバマのこうした医療政策がどれだけ実行できるものか、注意深く見守りたい。


以下、抄訳~~~

公約は三つ。第一にすべてのアメリカ国民が、現代医学の恩恵に与れること、だ。第二に、医療の無駄を省く。正しい情報を欠くために繰り返される検査や処置、それに裁判に訴えられることを恐れて不要な治療を行う医師達に対応する必要がある。第三に、疾病を予防し健康を増進するための公衆衛生上のインフラを整える必要がある。

第一の公約を実現するために、既存の民間医療保険の保険金額を下げる、雇用に基づく民間保険に入っていない国民には、大企業の民間保険と同等の保険に入れるようにする。民間保険の競争を促すために、国会議員・その家族の保険と同等の適用範囲を持つ新しい公的保険を患者に供与する。

すべての民間保険会社は、医療上のいかなる病歴に関係なしに、保険に加入させるべきだ。余りに多くの米国国民と同じく、彼の母親は、癌のために死の床にいるときに、保険給付について民間保険会社と言い争わなければならなかった。こうしたことは、起きてはならない。貧困層のためのMedicaidや、各州の小児健康保険制度の拡充を行う。

こうした改革の財源は、無駄を省くことと、ブッシュ(前)大統領が行った富裕層への減税を元に戻すことで得られる。

民間保険の現状には、チェリーピッキング、手続きの煩雑さ、さらにカバー範囲が狭いといった問題がある。

臨床医は、手続きの煩雑さに追われ、その煩雑さは、その分診療費用を上げているが、診療の質を上げることは殆どない。診療費の支払いは、手技と使用した医療機器に対して行われるが、診療に費やした時間や、診療上の紹介・協同作業に対しては行われていない。若い臨床医は、プライマリーケアに進む動機を持ちえない。また、臨床医は、常に医療訴訟を心配しながら診療せざるをえなくなっている。

診療の流れを近代化するために、根本的な改革を行う。それが、結果として患者の予後に良い影響をもたらす。医療情報技術に対して、年に100億ドルの支出を行う。これはただ財政面での支援だけではない。患者の情報・経営の新しいシステムを確立するために必要な技術的な援助を、臨床医に対して行う。この投資は、医療過誤や不必要な検査・治療の重複を減らすことにより、医療システムの長期的なコストを下げることだろう。

診療への支払い方法も改革する必要がある。協同して行われる医療、症例の治療それに革新的な医療提供の方法に対して、十分に支払うべきだ。民間保険やメディケアは、臨床医に対して十分な支払いを行うべきだ。支払い方法の改革によって、患者の予後が改善し、不要な医療を減らし、適切な医療に手厚く報いることによって、全体のコストを下げることができるだろう。臨床医への支払いを減らすことには反対する。医師に対してペナルティを与えることで医療改革を始めることは出来ない。

米国の医師養成機関は世界で最も素晴らしいものだが、医師が生涯に亘って医学の進歩に関する情報を容易に得られるようにすべきである。製薬企業や、医療機器企業が情報提供するのではなく、患者への効果を注意深く独立して評価する機関が、そうした情報を発するべきだ。

医療過誤を第一に防止することを目的にする。情報、意思決定支援技術他の患者安全性に関わる独創的な技術等へ投資することによって、医療訴訟につながる医療過誤や医療上の見過ごしを減らす。医療訴訟を抑制し、医療賠償保険の掛け金を減らすために、他のいかなる方策も実行する用意がある。医療行為が、再び報いられるものにしなければならない。

予防も、私の改革案の主要な事項だ。医療従事者のできることは限られている。患者、雇用主、地域すべてが健康増進に寄与する。患者は、禁煙・運動・食事による適切体重維持等にさらに努める必要がある。雇用主は、健康な労働環境のために投資し、被雇用者が活動的で、健康な生活スタイルを維持できるようにすべきである。

政府にも役割がある。喫煙や肥満といった住民の主要な健康問題に対する地域社会の施策に対して、新たな予算をつける。首尾一貫した国民の公衆衛生のための方針を作るために、州および地方自治体の政府と協同する。

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