FC2ブログ

NHKは、出鱈目な医療を改革する・・・らしい 

昨日のNHKクローズアップ現代。日本の医療が、これまで出鱈目なものだった、質の高い医療を目指して改革すべきだという内容であった。患者在院日数の短縮という、米国ばりの物差しで医療の質を判断する。手段は、DPCデータの公開、治療法の標準化である。お手本は、かの悪名高き(笑)英国のNHSである。

治療成績の比較は、極めて厳密な対象との比較が必要だ。重症患者を多く受け入れている施設では、一見治療成績が悪くなる。番組中でこの点も言及していたが、DPCデータを拡充すれば、医療施設の成績比較が可能だという。

治療方法の標準化等はある程度意味のあることかもしれないが、すべての症例に機械的に当てはめられるほど臨床医学は単純ではない。胆のう炎の標準治療が、腹腔鏡手術になるべきという論調だが、同手術療法にもリスクはある。上手くいかなければ、即開腹手術になるはず。少し単純化しすぎではないだろうか。

私はDPC病院で仕事をしたことがないのだが、想像するに、入院期間の短縮が第一の目標になり、医師やスタッフは同じ人数のまま独楽鼠のように働かされ、一方、ペーパーワークが激増するという状況なのではないだろうか。症例のデータを詳細にあげることにはかなり無理があるのではないだろうか。

ここでコメントをしている、国際医療大学池田教授と言う方は、経歴からすると臨床を2,3年してすぐに公衆衛生・病院管理学畑に進んだ方だ。このような方が、これまでの医療は出鱈目だったというのを耳にすると、臨床一筋で仕事をしてきた者としては、かなり違和感を抱く。

先日のNHKスペシャル「うつ病の治療 常識が変わる」も、今回のクローズアップ現代も、結局、厚生労働省の意向を先取りした番組作りである。NHSのような官僚組織が全国の医療機関を支配し、医療は低医療費を実現するために、医療の生産性を上げる(経済財政諮問会議による定義)=入院期間の短縮をあくまで追求する、という制度設計のようだ。これが、より質の高い医療を実現することになるのだろうか

そもそも、4,5年前まで、日本の医療の達成度は世界で一番とWHOが認定していたのではなかったか。


以下、m3でアップされていた、番組要旨を引用~~~

厚生労働省で病院の医療データが公開がいま行われている。治療成績を示す在院日数、再入院率などについて1400以上の治療内容が見られる。

より質の高い医療を目指すために、イギリスでは病院に対して4段階の評価がつけられ、すべての国民がデータを見ることができるようになっている。データの公開は医療を変え ていくか?

具体的に、去年公開したデータの一部として、前立腺肥大症の入院日数について最短の3日から28.3日まで9倍の差を横軸が日数のグラフを上から下に病院名ごと並べてにし て図示する。単純に早く退院させるだけが全てではないというが、これほどの差があるということを示す。

このデータは全国の緊急医療などを手掛ける規模が大きな病院1428施設を対象に、治療の成果について初めて公開。こうしたデータを利用して医療の質を改善に用いようとい う動きがある。

病床470床あまりの長野県にある相澤病院、内科、外科、整形外科のほか全37科の総合病院。この診療データについてすべての患者を薬や検査など回復の程度が記録されてお り、全国共通のデータ形式なので他の病院と比較ができる。

診療情報管理課には課長をはじめとする7人の専門職が全国のデータに目を光らせている。
胆のう炎の入院期間について相澤病院では平均在院日数も長いことが課長らの指摘で明らかになる。

相沢病院の平均14.6日。 全国平均10日の1.5倍。同じ県内の佐久病院が7.6日。半分の日数しかかかっていない。胆のう炎の治療をする責任者の消化器病センター長の元に出向いて相談。「長い? 」なんでこんなに長いの?医師自身もわからない。

佐久病院の成績を見ながら「こんなに早く帰れるわけない。これは不可能だよ。」

相澤病院では常に自院の治療内容を洗い直し。胆のう炎については注射の投与方法やスケジュールなどに着目。相澤病院では抗生剤で炎症を治療させるような内科的治療が主。し かし、医師によって投与期間や薬の使用量にばらつきがあって、標準化が遅れている。

以前DPCデータを使って肺炎の治療もバラバラで、採血検査のタイミングなども医師ごとに不統一であった、これを4日後とし、さらに最初に投与する薬を統一化。この肺炎治 療のモデルを作ったことで、患者は平均してほぼ10日早く退院できるようになった。

今回、胆のう炎でも最も効果的なモデルを作ることに。何らかの客観性があるデータがないと職員は動かない。入院期間が半分の佐久病院も検討。しかし治療内容を見ると治療方 法がまったく違う。

相澤病院では内科的治療は47件なのに、佐久病院では9件。これについて調査をしてみると佐久病院は内科治療するのはとても少ない。9割近くが外科的治療を受けていた。内 科の治療はわずか11.5%。何でだろ?

佐久総合病院でも以前は内科的治療が主流だった。もちろん外科手術では患部とりきれたが、開腹手術では侵襲が大きく、回復まで時間がかかっていたのが難点であった。しかし 最近は腹腔鏡手術の技術が発達し、それに合わせて治療方法を外科主体に切り替えていた。

佐久病院では患者さんの病名が胆のう炎と早期に診断されたら、なるべく早く安全に手術する。

この検証をもとに、相澤病院では胆のう炎の標準治療方法について、外科と内科、そして看護師らとともに相談した。問題は手術室の体制。急性期病院である相澤病院でも手術件 数が多くすでに稼働率が高いため、手術室の体制を整える必要性が出てきた。さらにオペ室に年間60-70件の手術を余計に受け入れられない。

内科系の医師に向けて、誰かが現在の内科的治療では再発を繰り返す患者もいる。感触として繰り返す人はおおいから、最初から手術しておいた方がいいのは事実ですよね。

会議の結果、外科と内科の連携を強化し、手術室を増やして対応することになった。

相澤病院の医師談「以前だったら、いろいろ言われても動かなかったが、今は現場がデータをくれという。患者だったらどっちがいい?」って。

<スタジオ:なぜ起きる医療水準の差>

医療の質の池田俊也 国際医療福祉大学 教授に対して

「医療の質にこれだけ大きな差があるという背景は?」

これまで患者が自分の受けている治療内容について知るような客観的データが存在しなかった。他の看護師、薬剤師の意見などを聞き入れる医師ばかりではなかった。ひとりよが りの医療だったが、これは現在のチーム医療という考え方と相容れない。

「病院の実力を比較できるようになったのは?」

6年前からDPCの仕組みで支払いを受けるために詳細なデータを国に報告するのが義務付けられている。診療内容について病院同士比較する。82病院だったのが1400病院 以上に広がっているため病院の実力比較に役立っている

「このような動きはいいことばかりでしょうか?そもそも医療費の支払の新しい仕組みなのに…たとえば成績を 作りだそうとしたりする悪影響は?出ていませんか?」

そういうこともあると思います。もちろんデータの独り歩き。重症患者ばかりなら再入院率も在院日数も延長。重症患者さんを大勢引き受けている病院は実力があるが逆に成績が 悪くなってしまうこともありえる。
データを比較するには条件を厳密にそろえる必要。重症度、治療成績などより適切に質を評価する必要性がある。

<イギリス>
イギリスではすべての医療機関に適応。国民誰もが病院選びに活用できるようになっている。NHS Choices

ロンドン郊外の夫婦。アレルギー体質の娘のかかる施設。NHSの地域ごとに病院が表示。
それぞれ、weak、fair、good、excellentの4段階評価がついている。さらに最新の医療技術か?患者の要望に合わせた病院か?63項目について掲載。

患者談:「近くの病院は評価があまり良くなかったので、遠くの病院にしました。いつも重宝しています。」

これらのデータの集積についてはイギリスにある、NHS情報センターが全ての病院に義務付けている。年間のデータは7000万件にのぼる。その分析は日本のように各病院が ばらばらに行うのではなく、国が一括して行っている。

実際に、治療方法を間違っていたり、死亡率が高い病院については実名があげられ、厳しい指導がなされる。

ブライアン・デリー情報サービス課長談:改善が目的です。そして改善を多くの病院で共有することです。

この仕組みはさらに開業医ら医師の収入をも左右している。

開業医の収入は医療の質に応じて、収入の半分が左右される。診察室で実際に音叉を手に糖尿病患者に「振動を感じますか?」と振動覚について診察している姿、この他、網膜の 病変などについても18の指標が定められている。それを元に開業医の評価を元に収入が増減する仕組み。
この医師の場合、収入が10%も上がった特に患者にとってメリットが多い。どの診療所でも満たされるようになった。

<日本>
医療の質の評価については日本ではまだ始まったばかりだが、早くもほころびが見えだしている。東京医科歯科大学の川渕教授の研究室。PCの画面を前にDPCデータの活用を 記入のもれ、正確なデータ評価が空欄のまま(重症度など)。患者さんのがんの状態がわからない。

病状のステージ分類9段階が不明。入院期間などが左右されるため不可欠。厚生労働省はこうした必須項目から外している。基本的な診療の指標が記入が必要なのに記入しない医 療機関が増えている。
なぜ記入漏れが増えているのか?これは厚生労働省が病院側の人手と負担を軽減するために必須項目を減らし、簡素化しているからである。

蓄積された5年間のデータを利用して医療の質と効率化のために役立てられるのに、これでは国の不作為でしかない。

ーーーーーーーーーーーーー
スタジオ。逆行するようなのはどうしてなのか?

病院にとってDPCデータの収集に多額の費用と人手。データ入力を軽減してほしい。DPCデータが医療の質の評価に活用しやすいものになるようにしたい。

ひとつの案としては治療成績や合併症の発生率が正しく提出した施設には補助金を出るなどの仕組みも必要。

イギリスのどんなところを参考にして

医療情報収集分析公開を国が一貫していいる、また治療成績や質についても積極的に踏み込んで公開している。

日本は現時点では限られた項目しかオープンしていない。今後、専門学会など中立的な組織を作って各病院が利用しやすいように仕組みを作る必要がある。
医療の質を改善させる方策として今後はさらに検討価値がある。公正で正確なデータ入力と評価ができる体制が必要。

日本の医療について、”昔のようなでたらめの医療がおこなわれないように”とDPCデータのように公開されている客観的なデータを元に、患者と治療方針を決める時に活用で きるようにしていく必要があると締めくくりました。

コメント

No title

小生もあの番組見ました。DPC礼賛でしたが、負の面の評価が甘すぎるように感じました。そもそもシステムが違うのに英国と比較するのはおかしいですよね。個人的には包括制度は否定しませんし、医療のアウトカムの公表はもっとすべきだと考えます。しかしそれを行う人を雇うカネを出してから言って欲しいですね。

No title

小生は診療の標準化というのは必要なプロセスであろうと思います。でも、これを成し遂げるのは膨大な手間隙がかかるはずで、それは直接費用に跳ね返ってきます。そんなことは薬の治験を考えてみればすぐ分かる。おそらく米国のNIHのような国家機関が必要なくらい金のかかることではないでしょうかね。それを一銭もかけずにやろうとしても挫折するのは当たり前です。しかも動機が不純です。世界的にも非常に少ない医療費を、さらにケチるのが目的ですから。

No title

治療の標準化は、どこまで出来るようになるのか、私は少し疑問に感じています。関心をもってこれまで診療してきた、気管支喘息は明らかに病因が複数ある症候群であって、それに対して、「治療を拘束する」統一したガイドラインを作るのは無理です。ガイドラインは、あくまでガイドラインにしか過ぎません。

ガイドライン通りの治療をすることが、医療の質を改善するという効果は、かなり低いレベルでの改善効果ということになるのではないでしょうか。

何しろ、この「医療の質を改善する」というキャッチフレーズは、ただただ医療費削減のためなので、受け入れ難いところです。

今日の午後も、青森の小さな公立病院で、院長が、スタッフ全員総合医化し、さらに治療の標準化をしている様子を、NHKは「好意的に」放映していました。元消化器内科医の院長が、うつ病の患者を診る様子は、傍で見ていても「危ない」なと感じさせるものでした。上手く行っている間は良いが、一旦結果が悪ければ、彼はどのようになるのか・・・。

当然のことながら、医療機関毎の治療成績は、この番組でも少し言及されているように、条件を厳密に同じにしないと比較できないように思います。下手すると、ハウトゥ物の書籍みたいに、根拠のないデータが一人歩きしかねません。DPCデータを充実して、どれだけのことを言えるようになるのでしょうか。

それと、治療成績なり、形式的な患者対応なりをインセンティブに用いることは、医療を倫理的に荒廃させるような気がします。マスコミが、英国の実情をトータルに伝えずに、都合の良いところだけを持ってきているのもおかしなことですね。彼等には、知性が欠けています。

マスコミって

>都合の良いところだけを持ってきている

それは彼らの習い性ですから、変更不能です(大笑)

No title

NHKスペシャル「うつ病の治療 常識が変わる」を観て、自殺企図をしたうつ病の患者さんがいたと、精神科医のMLで話題になっているようです。NHKもしたり顔にいい加減なことを報道しないで欲しいものです。

うつ病患者の投薬数が多すぎるから、一旦薬を全部切ったほうが良い等と、素人の私にしても可笑しいと思うことを、某大学の精神科教授が、この番組で言っていました。それに、認知行動療法で、うつ病が簡単に治るかのようなことも(あぁ、これも英国のケースでした)。

無責任極まる報道でした。

ささやかな対策

NHKに対して、抗議のメールならびに受信料で対応しています。

No title

放置医さん

抗議メール、私も出したことがありますが、何の反応もありませんね。ペースメーカー会社の抗議には敏感に反応するようですが(笑。いえ、我々視聴者の声もまるっきり無視はできないでしょうから、機会をみつけて、抗議し続けるつもりではいます。

私は、ことあるごとに、外来でご家族にマスコミの問題について話しています。

NHKといい、新聞各社といい、医療を特定の方向に導こうとする勢力と結託しているような気がしますね。国民が気づかなければ、その意図が実現するのでしょう。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

JA1NUT先生、いつも拝見し、勉強させていただいております。
私も外来などで機会あるごとに「厚労省が・・・」「小泉首相以来特に・・・」「NHKも含めマスコミは・・・」「自民党と公明党の政策で・・・」とお話しさせてもらっています。(もちろん治療に関連して患者さんに少しでも良く理解・納得していただくためにお話ししています。急に話題を変えて話したりはしませんし、したくてもそんな時間はありません。)
悲しいかな患者さん・ご家族の反応は今ひとつですが、倦むことなく続けてゆきたいと思っています。

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/1312-1fb9f1a4

【DPCデータ】についてブログの検索結果をまとめると…

DPCデータ についてブログの検索結果をまとめると…

  • [2009/03/12 12:28]
  • URL |
  • 最新キーワードチェック! |
  • TOP ▲