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異状死議連への疑問 

異状死議連という集まりが、国会議員により立ち上げられて、「異状死」の死因究明を充実させるために、法整備を行うことを目指すようだ。

下記は、その議連の一人、議連の課題等を説明する橋本岳氏のMRICへ投稿文。

ざっと読んでみて、いくつか疑問点がある。

○異状死は、自然死の対立概念だと割り切っているが、割り切れないというのが、医療現場の実感ではないだろうか。特に、医療訴訟が増えている現状では、医学的には自然死と考えられるケースが、異状死だとして訴追されることが多い。

○議連の指す「異状死」とは、診療に関連する死のみを対象とするものではない、ということは、診療関連死も対象として含まれるということだ。それは医療現場は受け入れがたい。

○この議連の目指す組織は、司法的な観点から犯罪捜査にも関わるとしているが、死因究明と、責任追及が同組織によって行われると機能しない。それは、立ち上がったら、死因究明の機能はそこに移すとされる、医療事故調についても同じことだ。

○議連は、「死因究明医療センター」の設立が目的なわけではないというが、結局、監察医務院にせよ、保健所にせよ、結果として行政組織の肥大化が生じる。厚生労働省の権益拡大と、法医学会の勢力拡大の意向が一致し、それに乗る形で議連が動き出したのではないか。

○医療現場の声を聞く作業は、これから行うのかもしれないが、本来、医療現場の声をまず聞くべきことなのではないだろうか。異状死の定義の問題・医療事故による死であるとしても、直接死因だけではなく、システムエラーに起因する問題等を検討しなければならない。

さて、宇都宮済生会病院中澤氏のこの議連に対する疑問・批判に、橋本氏がどれだけ応えたか、大いに疑問だ。


以下、MRICより引用~~~


       ■□ 異状死議連に関する誤解を解く □■

                       衆議院議員 橋本岳


■はじめに

 先般、MRIC臨時号vol.45において「異状死死因究明制度の確立を目指す議員連
盟が発足しました」として、議連の検討経緯等について情報提供を行った。その
直後に、MRIC臨時号vol.46にて「後出しじゃんけんを法律で認める国」として医
療制度研究会・済生会宇都宮病院の中澤堅治先生が、明示的ではないがおそらく
本議連のことと思われる活動について、批判的に記事を書かれている。

 個人的には、中澤先生が提起されている問題に共感する面もあるが、しかし本
議連については誤解もあるように思われる。振り返って反省すれば、私自身の記
事も必ずしも議連のテーマを的確に述べているとは言い難い。そこで、あらため
て私個人として、本議連にて議論すべきテーマや課題を記し、捕捉させていただ
きたい。なお以下の記述は、現時点での私個人の認識および提案であり、議連の
成果結果等に結び付くかどうかは今後の検討による。しっかりお目通しいただい
た上で、ご支援やご叱責を賜れば幸いである。

■異状死とは

 おそらく中澤先生がもっとも引っかかったのが「異状死」という言葉ではない
か。確かにこの言葉は、昨今の議論では医療との関連で議論されることが多い。
ただ、本議連で指す「異状死」とは、診療に関連する死のみを対象とするもので
はない。

 ここで指す「異状死」とは、「自然死」の対義語としての「異状死」と考えて
いる。ご家族や医師の看取りのもと老衰や病死のため明らかに自然の節理の中で
亡くなった方以外のすべての死
を含む広い概念である。具体的に言えば、殺人、
自殺、事故死、そして孤独死等死因が不明な死体を含むものであり、家や野山や
街中や海岸等で発見された死体ほぼすべてを指す。司法的な観点から、一般的に
犯罪捜査的な側面も十分に確保されることが必要だ

 中澤先生の記事は、おそらく医療事故等を念頭に、犯罪捜査的側面を指して本
議連を「後出しじゃんけん」と批判されているが、まずこの「異状死」の範囲に
ついて誤解があるものと思われる。

■医療との関係

 とはいえ、医療の現場において「異状死」の概念があいまいであることは事実
だ。日本法医学会と日本外科学会等で、診療に関する異状死について見解が異な
。その中で、結果的に無罪になったとはいえ福島県立大野病院事件など医師法
21条違反で逮捕・起訴された例があることから、これは医療現場にとっては極め
て切実な問題でもある。

 また診療に関連する死については、現在第三者機関の設立が検討されており、
厚労省案や民主党案、またそれをベースにした井上清成弁護士の案等が存在する。
よって診療に関する異状死については、何らかの形でこれらの活動と切り分けて
適切に分担をすべき
ものと考えている。実際に、民主党が衆議院に提出している
死因究明に関する法案では、診療に関する死については別途定めることとなって
いる。こういう点は学ぶべきであろう。

 ただし、たとえば救急車で心肺停止状態で病院に到着した場合、すべていちい
ち警察を呼んでいるわけではないということは、医師が事件性の有無の判断を事
実上行っていると考えなければならないのではないか。突然搬送されてきた既に
亡くなっている方に対し、ご遺族の話や既往症等により死因を推定し、死亡診断
書を書くことは珍しくないものと思われる。しかしそれは医師法第20条の後半但
し書きが想定している場合に含めて良いのかどうか、個人的には議論の余地があ
ると考えている。虐待等犯罪の見逃しにつながってはいないか。また「心不全」
等曖昧な死因が統計上増える原因になっていないか
。今後、家庭や施設等から病
院に運び込まれて死を迎える例がさらに増えることが予測される
中で、この点は
もっと注目されるべきだ。中澤先生が書かれたように、「殺人かどうかの判断は
本来医療とはまったく異質のもの」なのだ。だからこそ、ここは論ずべき点と考
えている。かといってすべて解剖するというのはあまりにも非現実的である。よ
ってAiは前向きに考えられるべきである。また、死亡診断書または死体検案書の
記載に関する検査や作業に対するコストの公的負担の在り方も、検討しなければ
ならないだろう。

■「死因究明医療センター」の設立が目的なわけではない

 そもそも、発見された現場には死体があるだけで、異状死か自然死か誰かが判
断しなければならない。或いはそういう判断ができない死体が「異状死」なので
あって、そこから犯罪か非犯罪か、そして死因は何かを鑑別していくプロセスが
死因究明である。現行制度では、医師の検案または検察(実際には警察)の検視
という体表からの死体検索と、それでもわからない場合は犯罪の疑いがある場合
は司法解剖、犯罪の疑いがない場合は地域によっては監察医による行政解剖がで
きる、という状況である。犯罪でないと判断された場合、あまりにも扱いが雑で
あり
、死者の尊厳の確保や公衆衛生の点で問題である。また時津風部屋事件のよ
うに、犯罪の見逃しの可能性も指摘されている。まさにこのような問題意識に立
って、本議連は設立されたものだ。

 日本法医学会の提案は、その最終手段である解剖の実施体制が危機に頻してい
ることを念頭に、解剖体制の再構築を提言したものである。しかし、死因究明の
プロセスやその背景となる制度そのものに言及したものではなく、ただ「死因究
明医療センター」を全国に設置すれば、解剖率の向上は期待できるであろうが、
上記の問題がすべて解決するというものでもない。なお言えば、一部報道等にて
本議連の目的が「死因究明医療センター」の設立にあるような表現も見受けられ
た。設立総会の講師として中園一郎・日本法医学会理事長にお越しをいただき、
提言についてお話を伺ったが、だからそれをそのまま実現をするのだというほど
単純な話ではない。キャリアブレインにて民主党足立信也議員が同様に法医学会
提案と本議連の趣旨を混同した批判をされているが、これも同様な誤解に基づく
ものであろう。

 そもそも、大学の法医学教室、なお言えば医療そのものも崩壊の危機にある中
で、法律をつくったからといってすぐ実現できるものでもない。人材教育から手
当てが必要だ。また予算確保の枠組みや目処があるわけではない。内閣府は検討
会を行っているが、現時点では何を考えているか議連に対して明らかにしていな
い。これらの問題点を一つ一つ積み上げ、より改善するプロセスを考えなければ
ならない。中澤先生は「全国厚生局に担当部署を置き」云々と書いてあるが、ど
こにそんなことが書いてあったのだろうか。

 もちろんアイディアがないわけではない。個人的には監察医制度の全国拡充と、
地方交付税による都道府県への財政措置が考えられるのではないかと個人的には
思っている。監察医制度同様に都道府県事務(但し政令指定都市と中核市は市の
事務)である保健所のスキームが参考になるのではないか。そういったこともこ
れからの議論だ。

 なお個人的には、このテーマは政党的対立にふさわしいものとは思わない。本
議連で自民党・公明党としての案をまとめつつ、時期をみて衆院法務委員会等で
民主党提出法案とのすり合わせを行い、よりよい制度の実現に結び付けたい。

■まとめ

 いずれにせよ、本議連には実に誤解が多い。こちら側の情報提供の仕方にも問
題があったものと反省している。ただ、まだ二回勉強会を開いただけで、まだ一
度も議連としての取りまとめも行われていない中で、断片的な発言等に基づいて
報道が行われ誤解を含む批判が出るというのは、誰にとっても幸せなことではな
い。本議連の会合ははオープンであり、前回は議員以外の来場者にも意見を求め
た。ご都合がつけばぜひご参加をいただければ幸いである。議論を重ねれば当然
議連としての提案等も公開されるであろう。私たちも、引き続き情報提供させて
いただく所存である。ぜひとも各方面からご意見、ご指導を賜りたい。

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