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新型インフルエンザへの対処心得・・・神戸大学岩田教授 

神戸大学岩田教授が、研修医への新型インフルエンザ症例への対処方法について発言されている。「新小児科医のつぶやき」の常連コメンテーターである、tadano(ry氏のブログ経由、近畿医療福祉大学勝田教授のブログに掲載されていたもの。岩田教授は、SARS流行時、勝田教授とともに在北京日本大使館付けの医師として仕事をなさった方の由。

実際の対処方法だけでなく、医師としての心構えまで教えられるところが大きい。岩田教授の研修医への思いにも打たれる。


以下、引用(転載自由の由)~~~

豚インフルについて、研修医の皆さんへ

まず、毎日の診療を大切にしてください。呼吸器症状の有無を確 認し、ないときに安易に「上気道炎」と診断せず、旅行歴、シック コンタクト、動物暴露歴など問診を充分に聴取してください。
患者 さんが言わない、ということはその事実がない、という意味ではあ りません。せきをしていますか?と聞かなければ、せきをしている とは言わないかも知れません。原因不明の発熱であれば、必ず血液 培養を検討してください。バイタルサインを大切にしてください。 バイタルサインの重要度は重要な順番に、血圧、脈拍、呼吸数、 (第五のバイタル)酸素飽和度、そして、体温です。極端な低体温 などはまずいですが、発熱患者で大切なのは体温「以外」のバイタ ルサインと意識状態であることは認識してください。発症のオン セット、潜伏期など、時間の感覚には鋭敏になってください。要す るに、ブタインフルエンザ診療のポイントは普段の診療の延長線上 にしかありません。ほとんど特別なものはないことを理解してくだ さい。上記の診療は診療所、大学病院、どこのセッティングでも可 能です。大抵の感染症診療は、大抵のセッティングで可能なのです。

・自分の身を護ってください。とくに初診患者では外科用マスクの 着用をお奨めします。患者の診察前とあとで、ちゃんと手を洗って いますか。
 呼吸器検体を採取するなら採痰ブースが理想的ですが、 理想的な環境がないからといって嘆く必要は少しもありません。 「うちには○○がない」と何百万遍となえても嘆いても、物事は一 つも前に進みません。「うちには○○がないので、代わりに何が出 来るだろう」と考えてください。考えても思いつかなかったら、そ こで思考停止に陥るのではなく、分かっていそうな上の先生に相談 してください。いつだって相談することは大切なのです。
診察室で 痰を採取するなら、部屋の外に出て患者さんだけにしてあげるのも いいかもしれません。日常診療でも、とくに女性の患者は人前で痰 なんて出せないものです。呼吸器検体を扱うとき、気管内挿管時な どはゴーグル、マスク(できればN95)、ガウン、手袋が必要で す。採血時やラインを取るときも手袋をしたほうがよいでしょう。 こういうことは豚インフルに関わらず、ほとんどすべての患者さん に通用する策に過ぎません。
繰り返しますが、日常診療をまっとう にやることが最強の豚インフル対策です。

・あなたが不安に思っているときは、それ以上に周りはもっと不安 かも知れません。自分の不安は5秒間だけ棚上げにして、まず は周りの不安に対応してあげてください。豚インフルのリスクは、 少なくとも僕たちが今知っている限り、かつて遭遇した感染症のリ スクをむちゃくちゃに逸脱しているわけではありません。北京にい たときは、在住日本人がSARSのリスクにおののいてパニックに 陥りましたが、実際にはそれよりもはるかに死亡者の多かった交通 事故には全く無頓着でした。ぼくたちはリスクをまっとうに見つめ る訓練を受けておらず、しばしばリスクを歪めて捕らえてしまいま す。普段の診療をちゃんとやっているのなら、豚インフルのリスク に不安を感じるのはいいとしても、パニックになる必要はありません。

・今分かっていることでベストを尽くしてください。分からないこ とはたくさんあります。なぜメキシコ?なぜメキシコでは死亡率が 高いの?これからパンデミックになるの?分かりません。今、世界 のどの専門家に訊いても分かりません。時間と気分に余裕のあると きにはこのような疑問に思考をめぐらせるのも楽しい知的遊戯です が、現場でどがちゃかしているときは、時間の無駄以外の何者でも ありません。知者と愚者を分けるのは、知識の多寡ではなく、自分 が知らないこと、現時点ではわかり得ないこととそうでないものを 峻別できるか否かにかかっています。そして、分からないことには 素直に「分かりません」というのが誠実でまっとうな回答なのです。

・情報は一所懸命収集してください。でも、情報には「中腰」で対 峙しましょう。炭疽菌事件では、米国CDCが「過去のデータ」を 参照して郵便局員に「封をした郵便物から炭疽感染はない。いつも どおり仕事をしなさい」と言いました。それは間違いで、郵便局員 の患者・死者がでてしまいました。未曾有の出来事では、過去の データは参考になりますが、すがりつくほどの価値はありません。 「最新の」情報の多くはガセネタです。ガセネタだったことにむか つくのではなく、こういうときはガセネタが出やすいものである、 と腹をくくってしまうのが一番です。他者を変えるのと、自分が変 わるのでは、後者が圧倒的にらくちんです。

・自らの不安を否定する必要はありません。臆病なこともOKで す。ぼくが北京で発熱患者を診療するとき、本当はこわくてこわく て嫌で嫌で仕方がありませんでした。危険に対してなんのためらい もなく飛び込んでいくのは、ノミが人を咬みに行くような蛮行で、 それを「勇気」とは呼びません。勇気とは恐怖を認識しつつ、その 恐怖に震えおののきながら、それでも歯を食いしばってリスクと対 峙する態度を言います。従って勇気とは臆病者特有の属性で、リス クフリーの強者は、定義からして勇気を持ち得ません。

・チームを大切にしてください。チーム医療とは、ただ集団で仕事 をすることではありません。今の自分がチームの中でどのような立 ち位置にあるのか考えてみてください。自分がチームに何が出来る か、考えてください。考えて分からなければ、チームリーダーに訊 くのが大切です。自分が自分が、ではなく、チームのために自分が どこまで役に立てるか考えてください。タミフルをだれにどのくら い処方するかは、その施設でちゃんと決めておきましょう。「俺だ けに適用されるルール」を作らないことがチーム医療では大切で す。我を抑えて、チームのためにこころを尽くせば、チームのみん なもあなたのためにこころを尽くしてくれます。あなたに求められ ているのは、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続ける勇者になること ではなく、適度に休養を取って「ぶったおれない」ことなのです。 それをチームは望んでいるのです。

・ぼくは、大切な研修医の皆さんが安全に確実に着実に、この問題 を乗り越えてくれることを、こころから祈っています。

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