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人生は旅 

昨日は、朝ゆっくりできるかと思ったが、患者の一人から電話があり、草むしりや、野菜の世話をそこそこに仕事場に向かった。いつもは車で1時間ほど離れた場所に住むお孫さんを、祖父母にあたる方が連れてこられた。お孫さんを大切そうに扱うお二人に思わず微笑んでしまう。祖母にあたる方は、かるい片麻痺がある様子だった。

昼食をとり、車で30分ほどかけて、Tさんのお宅に伺う。数週間前からお願いしていた、室内楽を合わせるためだ。小奇麗に整頓され、ピアノが二台置かれたレッスン室。譜面台もすでに準備されていた。ピアニストが到着するまでの小一時間、弦だけで合わせた。ピアノの方が、演奏の仕事を終えて駆けつけ、1楽章だけ合わせた。少しゆっくり目のテンポ。最後に、二度ほど通し、それを録音した。

Tさんのことは何度か記した記憶があるが、娘がバイオリンを習っていた頃、同じ先生の門下生で優秀なバイオリニストであった。今回、しばらくぶりに室内楽の相手を引き受けてくださり、また来年1月に地元で行われるアマチュア奏者の発表会に、この曲を持って参加してみないかと声をかけて頂いた。仕事のお邪魔かなと思っていたが、とても快くお引き受けいただき、その上、このような申し出も頂戴し、恐縮至極。

最初にお目にかかった頃、まだ高校生だったTさんは、専門教育を受けられ、充実した20代を過ごしておられる。いろいろなことに関心を抱き、周囲に気配りをし、生きるエネルギーに満ちておられる。生きることは、自分の成長と、事業の充実そのものなのではないだろうか。

一方、入院し寛解導入療法を受けている白血病の友人Nさんと時々電話で話をする。50歳代半ばで、人生の先行きの見えぬ状況に置かれている。1クール目の化学療法の効果が、もう一つだったそうで、骨髄移植も視野に入れて置くように主治医に言われたらしい。

彼とは、もともと冗談ばかりを言い合うような仲だったので、病状を訊く以外は、いつもと同じ調子で話しをするようにしている。が、彼のこころの葛藤はいかばかりかと何時も思う。これからの見通し、それに無菌室に隔離されていることへのストレスが、彼を苛んでいるのだろう。心理面のフォローをしてくださるスタッフもいて、精神安定剤の助けも借りている様子だ。しかし、人生の終末を迎えるかもしれぬという、人生から彼への根本的な問いかけは変わらない。

生命が輝き、自分を伸ばす時期を生きるTさん。Nさんは、人生の終末を見据えて生きることを余儀なくされている。

人生の二つの異なる相を、彼等の生に見る思いがする。人生は旅なのだ。願わくば、Tさんの輝きに満ちた人生にはこころからの祝福の気持ちを抱くことができるように、そしてNさんには、できるだけ寄り添うことの出来るように・・・。私も同じように歩んできた。そして、人生の終末に向けて歩いているから。

コメント

No title

祖父母と孫と、若芽の勢いと峠から下る旅人と…。いつも感心していますのは、管理人様のブログの行間にある、やさしさと湛えられている自然体。個人的には癒しの風を感じます。
私にはできない楽器と電鍵がその湧水なのでしょうか?年齢は私よりやや上のように想像するですが、尊敬と親しみを感じます。

No title

雪の夜道さん

身に余るお言葉、ありがとうございます。今年は、白血病にかかったという、この友人、それに若年性アルツハイマーをカミングアウトした若い頃からの先輩医師(大学教授をなさっていた方でした)と、立て続けに、こころを震撼させる知らせを受けました。人生の様々なありようと、それが一つにつながっていることを痛切に感じるようになりました。

このようなコメントを頂き、また拙い感想ですが、綴ってゆきたいと思い直しました。ありがとうございます。

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