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私の「医療崩壊」小論(1) 

このブログを立ち上げた、大きな理由の一つが、現在密かに、また公然と進行しつつある、「医療の崩壊」について記すことだった。一介の田舎の小児科医が、ネット上のこうしたささやかな場所で、問題提起したところで何が変わるか、という思いはあるが、それでも書いておかなくてはならないと思うようになった。

まず私の生い立ちと、医師になった経緯を簡単に記そう。それが、医療の現状への私の見方、関わり方に大きく関係するからだ。自分の過去を述べて、それを誇示したり、自慢したりしようという積りは毛頭ない。医療の崩壊に直面して、その問題提起をするためでなければ、取るに足らぬありふれた田舎医者の半生記に過ぎない。

私は、北関東の田舎で、終戦後結核サナトリウムで働く両親の元に生まれた。キリスト教徒であった母方の伯母が、第二次世界大戦前に、身寄りがなく、当時死の病であった結核の患者と生活をともにし、看取るための場所として小さなサナトリウムを作ったのだった。きわめて貧しい施設であった。松林のなかに、食堂と伯母の生活する建物、わが家、それに患者さんの生活する一部屋の小さな小屋が、点在するだけだった。看護師の資格をもつ伯母、私の母が患者さんの世話をしていた。父は、様々な雑用を一手に引き受けていたようだ。全国のキリスト教徒の知り合いから物心両面の支援を受けていたようだ。私の物心ついてからの最初の思い出は、松林を吹き抜けてくる、そよ風と、それに乗って聞こえてくる賛美歌の歌声である。

戦後、ストレプトマイシンなどの結核の特効薬が現れて、そのサナトリウムの必要性がなくなり、閉鎖することになった。私が生まれてしばらくたったころのことだった。

閉鎖することになった理由は、必要とする患者さんが減ったこともあるが、不正な医療行為を行っていると、某全国紙上で大々的に叩かれたことが実際の契機であったらしい。詳細は知らないが、新聞紙上で悪口雑言で罵られたらしい。そのことを幼い頃に聞かされて、強く印象に残っていた。戦前は、公的保険もなく、医療施設も完備されていなかった。死に行く病と恐れられていた、多くは身寄りの無い結核の患者さんを、ひっそりと、しかし熱い心で看取ってきた伯母達。如何に無念であったことだろうか。この出来事は、現在のマスコミに対する私の見方を方向付ける大きな要素の一つになっている。

続く・・・少し間隔があくかもしれません。

コメント

続編を期待します

鬼澤さんの熱い想いを感じつつあります。医療崩壊への序曲が聞こえつつある昨今、大学にあって様々な問題を見聞きし感じ、嘆かずには居られません。どうすればいいのか、何をしたらよいのか、暗中模索ではありますが、私も医療関係のblogを立ち上げ、小さな声で嘆き、発信し、自己主張しております。何かの足しになれば幸いです。

QWさん、今晩は。いつものブログ以外に作られたのでしょうか。

私も、田舎の医師さらに近い将来医療を受ける側になる立場から、知りえたことを記してみたいと思っています。

QWさんは、崩壊しつつある医療現場に現にいらっしゃる方ですから、より生々しい発言をできる立場にいらっしゃいますね。

正直に言えば、マスコミのあの対応、それに当事者以外の国民の無関心から、この崩壊過程は、すでに既定のものになっているのかもしれないなと感じています。

それでも、言うべきことは言っておかないと、という気持ちです。ま、あまり悲壮になってもしかたありません。淡々と、しかし明確に、これからやってくるであろう、医療事情の見通しを、現実にたってお話できたらと思います。少し、大風呂敷を広げてしまったかもしれませんが、時間をかけて・・・。

今晩は blog開設されたとの事 早速拝見しました。
鬼澤さんらしい しっとりとした装いですね。
当方の稚拙なblogにリンクさせて頂きましたので
御了解願います。娘のことで御相談したいことも
あるのですが・・・

近所の医院から小児科の文字が消えました。小さな
子を持つ者として一抹の不安を感じます。

JR7OEFさん

暖かいコメントをありがとうございます。そちらのブログも、時々読ませて頂いています。往年のリグに灯がともっている写真、素敵ですね。

後ほど、こちらからもリンクを張らせて頂きますね。

医療の問題は、深刻だと思います。それと気付かぬ内に、進行してしまうのが、こうした問題の特徴なのでしょう。僻地の切捨て、急性期医療の崩壊、そして激烈な格差社会の到来が、目の前にあります。それを自分の言葉で記して行きたいと思っています。惜しむらくは、既にそちらの方向に大きく動き始めた様子ですが・・・。

娘さんの件、私にアドバイスできることであれば、何なりとメールまたはこの場ででも・・・。

今後とも宜しくお願い致します。

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