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鳴門病院・薬剤取り違え事故 

昨年11月、健康保険鳴門病院で、一人の患者が、薬剤の誤投与によって死亡する事故が起きた。慢性閉塞性肺疾患の70歳の患者が、発熱した。当直の内科医は、非ステロイド系解熱剤が使えないケースだったために、ステロイド剤の「サクシゾン」を投与した積りになったが、オーダーにのったのは、筋弛緩剤の「サクシン」だった。薬剤師・看護師等のチェックがされず、そのままサクシンが投与され、患者は命を落した、ということのようだ。

この事故についての病院の報告書が公表されている。ここ

この事故で不幸にも亡くなられた患者と、そのご家族に哀悼の意を表したい。

この事故の直接の原因は、医師の不注意にあり、それは弁明できることではない。医師は、業務上過失致死罪で書類送検され、現在仕事を辞めている様子だ。

その他にも様々な問題が挙げられている。サクシンという主に麻酔科でしか用いない薬剤が、病棟で用いられるようになっていた、システムの問題。看護師・薬剤師のチェックが働かなかった問題(看護師は、筋弛緩剤であることを認識していたようだが、医師に改めて注意喚起しなかった様子)。複合的な要因が重なって生じた事故といえる。

しかし、一番の問題は、このように紛らわしい薬品名を放置しておいた、行政当局の怠慢だ。この二剤の取り違えは、過去にも生じて、医療事故が起きている。その段階で、この紛らわしい薬剤名のいずれかを、変更するように、製薬企業に指導すべきだった。この事故後、先発であったサクシンを、サクシネートという一般名で販売するように、製薬企業の方で自主的に変更したようだ。厚生労働省担当部署、それに医療事故と、ヒヤリハット事例を収集している日本医療機能評価機構は一体何をしていたのだろう。こうした未然に防ぎうる事故原因を無くすために、何らアクションをとっていなかったとしたら、そうした行政部署・特殊法人は存在する意味が無い。

もう一つ、私が注目したいと思ったのは、事故を引き起こした医師の労働の状況である。事故を起こす半年の間に、130例の入院を担当、10例の死亡例を受け持っていたようだ。死亡例に対応する医師は、その直前1,2週間、ベッドサイドにかかりっきりになるはずだ。夏休み以降は、休みを殆ど取れぬ状態であったらしい。当日、医局で、小児科医に、そろそろ限界なので仕事を辞めたいと語っていたということだ。きわめて過酷な労働状態だったことが分かる。こうした状況だからといって、自らの不注意で起こした事故の責任は免れない。しかし、当該医師が厳しい労働状況にあったことは、十二分に注意を払うべき投与薬品名について「思い込み」を生じさせることに関係しているのではないか、と思えてならない。これも一種のシステムエラーだ。

直接的な原因だけではなく、是非、こうした背後にある問題にも目を向けて、今後の再発防止に向けて対策をとってもらいたい。こうした事例から学習すべきことは、再発防止に向けた方策であるからだ。「注意深く」仕事をせよといった、ありふれた教訓だけに終わらせてはならない。

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