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自殺企図患者は、つきっきりで見守ることという判決 

精神科では、希死念慮をもち、自殺企図をされる患者さんを多く扱う。

ある患者さんが、仙台医療センターで1時間かけて診察をうけた。この診察時間の長さは、一般論として、精神科の外来診療では、特に念入りに診療を受けたことを意味する。しかし、その患者さんは、その後、医療機関内で自殺した。ご遺族が、国立病院機構に損害賠償を求めた民事訴訟の判決が仙台地裁で下された。3300万円の支払いを命じる判決だった。

どのような経緯で、患者さんが自殺されたのかが不明だが、「病院職員に見守りをさせる」べきだったという判決内容は、精神科診療の現場に余りに過酷ではないか。希死念慮が少しでも疑われる患者さんが医療機関に滞在する間、病院職員を付きっきりで見守らせるということは、現実問題として不可能だ。マンパワーの面からも、医療経済的にも、不可能だ。

希死念慮を持つ患者さんは、すべて入院させなければならないのだろうか。入院させたとしても、24時間、つきっきりで患者さんを見守るということは不可能だ。

こうした判決が、医療現場をさらに疲弊させ、それは翻って、患者さん自身に撥ね返ることになる・・・。


以下、引用~~~

 仙台医療センター(仙台市)の精神科に通院していた山形県米沢市の女性が2005年、センター内で自殺を図ったのは担当医師の対応が不十分だったためとして、遺族が国立病院機構(東京都)に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で仙台地裁(沼田寛裁判長)は31日、約3300万円の支払いを命じた。

 沼田裁判長は「女性はうつ病か人格障害とみられる症状があり、事故以前にも自殺を図ったことがあった」と指摘。「事故は予見可能で、病院職員に見守りをさせるべきだった」とした。

 判決によると、女性は05年10月、診察室で医師と1時間余り面談していたところ、別の患者から「診療時間が長い」と叱責(しっせき)された。この後、女性の姿が見えなくなり、いったん発見した病院職員が目を離した間に、屋上の出入り口付近のドアノブにハンカチをくくりつけ、自殺を図った。蘇生(そせい)措置が試みられたが女性は低酸素脳症で重体となり、今年1月に死亡した。(共同)

 [2009年8月31日18時13分]

コメント

いつも

いつも楽しく拝見しています.

医療訴訟の結果を見る度に、私たち医療者の見解や医療現場の現実と一般の人が私たちに求めているものが乖離しているのを感じます.

どうしたら分かってもらえるのでしょうか.

本当にそうですね・・・。患者さんが自殺されることは痛ましい、何としても避けたいことであるのは、医療従事者にとっても当然のことなのですが、予見可能だったからといって、こうしたことにまで責任を追及されたら、精神科医療そのものが成立しがたくなります。

この判決は、恐らく精神科医療の世界に激震をもたらすことでしょう。

どうしたら、このような判決がなくなるのか・・・私にも分かりません。小松秀樹氏が言うように、法律の論理が、医療の現状と合わなくなっているということなのでしょうか。それが改善されるためには、国民が、その事実に気付き、なんとかしなくてはいけないと声を挙げるようにならなければならないはずです。その国民の声を「代弁している」はずのマスコミがこの状態ですから、悲観的に成らざるをえないというところでしょうか・・・残念ながら。

いつか問題が国民に理解されるようになるまで、ネットで細々と医療の現状を訴えていくより仕方ないのか、というところです。

いつも感銘を受けつつ読ませていただいております。
私は精神科医ですが、このような精神科の現場に沿った記事を小児科の先生が書かれたことにいつも以上に感銘を受け、驚き、コメントさせていただきました。

自殺には複雑な要因がからんでおり、
そもそも精神科医療だけで自殺をなくすことは不可能ですが、現状のような医療体制では自殺を予防することはなおさら困難であることを強調し、結果の保証ができないことはできない、と表明することは、このような判決がまかり通るような状況では、特に重要だと思います。

某弁護士によると、精神科に受診すれば、あるいは入院すれば自殺は防げるものと考え、それらを正す幾つもの鑑定文が出ても最終的には自らのその考えに沿って判決を下す裁判官もいるらしいです。
産婦人科で正常分娩が当たり前、といった見方をされがちなところと似ているのかもしれません。
他科でも時にみられるように、精神科の学会でも、このような判決には厳重に抗議すべきだと思っています。そういった動きが出ることはほとんど期待できませんが…。

今後も陰ながら応援させていただきます。

匿名さん

コメントをありがとうございます。この判決を知った時に、これは精神科医療に及ぼす影響が計り知れないとすぐに感じました。

患者さんの自殺というのは医師にとっても大きな悲しみであり、喪失ですね。それを防ぐために、精神科の医師はこころを砕いて診療なさっているのだと思います。が、現状の医療体制で、またたとえそれが改善されたとしても、患者さんの自殺を完全には防げません。それを、是非世の中に訴える必要があるように思います。

医師の負い得る責任の範囲、種類は、限られたものである、ということなのだろうと思います。「責任逃れ」でも何でもなく、それが事実なのでしょう。それを、国民の側が受け入れなければ、医療は崩壊するばかりということなのでしょう。

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