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政治と行政の無責任さ 

今回の「事業仕分け」は、財務省主導で行なわれた。民主党は、財務省にこの重要な作業を丸投げした。民主党は、政権をとって間もないのだから、拙速に結果を出そうとしないで、現場の声に耳を傾けるべきだった。財務省主導で行なったこの「事業仕分け」を、恰も民間と政治が主導して行なったかのように言う、藤井財務大臣は、罷免すべきだ。

財務省が、政権政党のマニフェストに反してまで、これまでの路線を踏襲しようとしている理由には、一つには、国家財政の悪化があるのだろう。何故、そのように国家財政が悪化したのかを点検し、そこから議論を始めなければならない。しかし、この一見尤もらしい理由も、実体をみると少し薄弱のようにも思える。

政官業のトライアングルを維持するためかとも思ったが、市場原理主義的な小泉政権以来の政治体制によって、この強固なトライアングルも一部の業種・業界を除いて、崩壊しつつあるようだ。結局は、官僚、特に財務官僚の利権確保ということが、一番の理由のように思える。

この「事業仕分け」には、財務省の利権が絡む事業・特殊法人が殆ど対象にされていないことが、その根拠である。国家全体に痛みを要求するのであれば、財務省は、真っ先に自ら血を流すべきなのだが、むしろ自分の痛みだけは避けようとしている。

医療費の国庫支出をどうしても削減するなら、下記の全国医師連盟代表の発言にもある通り、これまで通りの医療制度は維持できないことを、国が明言すべきだ。コスト削減と、医療の質・医療へのかかり易さは、並立しない。医療費削減で生じるであろう、医療の質・かかり易さの低下の責任を、医療現場に押し付けてはならない(これまで、そうした医療現場への責任転嫁を、政治家・官僚は意識的ないし無意識に行なってきた)。

さらに、政治家と官僚、特に財務官僚の利権の制限を徹底しなければならない。これは、事業仕分け以前に、政治家・官僚自身が行なうべきことだ。それを行なわなければ、この「事業仕分け」の結果など到底受け入れられない。

以前のエントリーにも記したが、財務省が「事業仕分け」をお膳立てし、「仕分け人」という得体の知れない人々に財務省のシナリオを読ませ演じさせたのは、ショー化して大衆にアピールすること以上に、結果責任を負おうとしない、官僚の無責任さだった。政権与党の政治家も、自らの能力・経験不足を隠すために、官僚に丸投げしたことも、無責任と言えるだろう。佐々木毅氏の書かれた「政治の精神」(岩波新書)に、1949年に丸山真男が記した論文が取り上げられている。第二次世界大戦に突入していった、政治家・官僚の問題を個々の人物の問題ではなく、政治体制ないし政治的なエートスの問題として捉えた論文のようだ。戦前の政治家・官僚全般に見られた特徴の一つが、「無責任さ」だった、というのだ。

現在の、自己目的化した官僚制度の問題を、一つの切り口だけで説明することは難しいかもしれないが、「責任を取ろうとしない、責任を回避する」体制であることだけは間違いなさそうだ。小坂井 敏晶著「責任という虚構」(東京大学出版会刊)に、官僚機構の特質は、「分業体制」であると繰り返し述べられている。その分業とは、責任を回避するための制度なのだろう。

こうした無責任な官僚政治体制下で、大衆は物事の本質を理解せず、見せ掛けの統合対象に扇動されて動かされて行く、という状況なのだろうか。マスコミは、時の権力に良いように利用され、この大いなる扇動に乗っかり、さらには積極的にその扇動に加担する。その扇動の特徴は、専門的な知識の否定、専門家の否定だ。物事を単純化し、大衆の感情に訴えることによって、扇動は達成される。

この「事業仕分け」は、この事態を端的に示しているのではないだろうか。


以下、MRICより引用(下線はブログ主が引いた)~~~

 ▽ 行政刷新会議と財務省にみえる政権党の公約違反の動きに抗議する ▽

    全国医師連盟 代表 黒川衛

2009年11月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

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 新政権を担う民主党は、「暮らしのための政治、ひとつひとつの命を大切にする社会」を訴えて政権交代を果たしました。しかし、行政刷新会議による事業仕分けのとりまとめと、財務省の予算編成の動きには、政権党としての重大な公約違反の兆候が現れています。全国医師連盟は、これらの動きに対し、強く抗議いたします。

 国民的な観点から、国の予算、制度その他国の行政全般の在り方を刷新すると謳う行政刷新会議には、国民の大きな期待が集まりました。事業仕分けは、業界トップの意を汲んだ族議員が、担当官僚と非公開で協議し予算要請するこれまでのものと異なり、透明性の点で優れていました。また、仕分け作業によって、補助金の中に、天下り機関の維持を目的としたものがあること、事業本来の目的に使われていない無駄な部分があることなどが判明しました。

 しかし、行政刷新会議の実態は準備不足が目立っており、政治主導ではなく、財務省主導とも言うべき内容となっています

1 国家ビジョンとの整合性のなさ
 刷新会議による事業仕分けは、新政権が日本経済の成長戦略として謳った、「内需主導への転換、科学技術の促進、医療介護を雇用創出産業に育成する」といった国家ビジョンから離れ、コストと投資の区別が出来ず、本来の事業仕分けとは異なる削減目的のパフォーマンスに陥っています

2 対象事業選定における政治の責任
 事業仕分けの対象事業は、全事業の15%に過ぎず、その対象には、財務省の一般会計と所管の四つの特別会計の事業の多くが除外されるなど、刷新会議には対象事業選択を行ううえでのリーダーシップが欠けています。

3 仕分け人選任の無計画
 仕分け人(評価者)の選任に際して、本来の目的に沿った人選がなされておらず、国民新党が指摘するように市場原理主義を推進した有識者が選ばれています。また、仕分け人同士の間でお互いの専門分野が理解されておらず協調関係が構築できていません。

4 財務省主計局による主導
 財務省主計局による論点シートは、恣意的で問題のある資料を用いていました。仕分け作業は、実質上、この査定シナリオに沿って論議され、評決されるまでの間、刷新会議側議員は独自の文書を準備せず、司会進行役にとどまっていました。

 全国医師連盟は医療領域に関わる事業仕分けの作業を見守ってきました。医療現場に過重労働が横行することが医療安全上の重大な問題となっていますが、仕分け人はこの認識に欠けていました。また、財務省の行った論点説明には、医療費抑制政策を実施した前政権下の財政制度審議会での資料が引用されていました。仕分け人は、財務省主計局による一方的な統計資料を信頼し、短時間の論議で評決しており、この点でも評価の正当性を欠くものとなっています。

 財務省主計局によると、診療所と特定診療科への診療報酬配分の減額による財源を捻出することで、病院勤務医対策を補填すれば、新たな医療費財源を増やさずに医療崩壊を食い止めることが出来るとの主張を展開しています。こうした医療費抑制政策の維持は、民主党のマニフェストに逆行するものです。

 医療費には無駄があるどころか、現在の医療は勤務医の異常な長時間労働によって漸く支えられ、また莫大な勤務医への不払い賃金があることを、私達は指摘しています。(参考文献、全医連提言、ユニオン声明)

 また、開業医の診療報酬を削減することには多くの問題があります。前回までの診療報酬削減により、多くの診療所が疲弊しています。個人開業医の事業収支差は、零細企業である診療所の事業所の所得であり、従業員のボーナス積立金や退職給与引当金、土地建物・設備投資の為の借入金の元本返済等を含んでおり、これを院長の給与として勤務医と比較することは非科学的です。全国医師連盟は開業医の報酬を削って勤務医に廻すことには反対します。

 全国医師連盟は、増加する一方の医療需要を支えるためには、現在の予算、人員では限界があることを主張してきました。医療レベルを維持したいのであれば、政権公約通り、医療費の大幅な増加に転じることを現政権は明らかにすべきでしょう。政府は、これ以上の財源が出せないのであれば、医療サービスの低下を国民が受け入れるよう説得すべきでしょう

 事業仕分けは、本来、削減ありきの作業ではないはずです。評価に際して、日本医療の国際的到達点(最高レベルの医療を先進国中最低の医療費と過酷な労働環境で達成している)や医療福祉予算の経済的波及効果、雇用創出効果など前提となる重要な認識を欠いた議論が展開されたことは誠に遺憾です。

 財務省は、19日、平成22年度予算編成に際して、他領域に先んじて医療予算に対する方針をまとめ、「医療費全体の増額をせずに、医療崩壊を食い止めるべき」と発表いたしました。民主党政策集INDEX2009には、「累次の診療報酬マイナス改定が地域医療の崩壊に拍車をかけました。総医療費対GDP(国内総生産)比を経済協力開発機構(OECD)加盟国平均まで今後引き上げていきます。」と明示しており、このままでは明確な公約違反となります

 私達は、26日に100人超の民主党の衆参両議員で結成した「適切な医療費を考える議員連盟」の動きを歓迎いたします。

 鳩山政権は、政治主導でなく財務省主計局主導で行った事業仕分けのとりまとめ結果を【見直し】、リーダーシップに欠く行政刷新会議を【刷新】するべきです。また、民主党の公約違反となる医療予算方針を表明する財務省幹部に対して直ちに修正を促す事を求めます。

参考文献

臨時 vol 365 「事業仕分けへの疑問」
医療ガバナンス学会 (2009年11月25日 06:15)
http://medg.jp/mt/2009/11/-vol-365.html#more

中医協炎上、「激しく、時には優しく」と長妻厚労相
(2009年11月14日 09:27) |
http://lohasmedical.jp/news/2009/11/14092716.php

持続可能な医療体制を実現するための全国医師連盟の五つの緊急提言
http://www.doctor2007.com/teigen090806.html

新政権への医療現場からの要望
http://www.doctor2007.com/teigen090914.html

全医連と全国医師ユニオンは、11/22に共同記者会見を行い、【医療機関における36協定全国調査結
果】を発表致しました。
http://www.doctor2007.com/unikyou.html

「医療機関における全国的な労働基準法違反および勤務医への賃金不払いに抗議する」 全国医師ユ
ニオン声明
http://homepage3.nifty.com/zeniren-news01/union.htm

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