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医療現場を無視した愚策がまた一つ 

診療明細、全患者に無料で…10年度に義務づけ
10/02/05
所謂レセプト並みに詳細な診療明細書の発行が、大多数の医療機関に義務づけらることになる。

記者クラブに胡坐をかき、国から補助金を得ようとしている新聞社ごときに、医療の透明化がこれで達成できるなどと言われるのは大いに心外だ。まずは、新聞社の経営内容、それに官僚・政治家との癒着を透明化させよ、と声を大にして言いたい。

確かに、医療内容とその費用が、患者に理解できるようになるのは理想かもしれない。が、克服しなければならない多くの課題がある。それらの課題を何ら検討することなく、医療過誤訴訟支援団体の勝村氏等の要望に官僚が乗って、中医協でこの診療明細書の発行が安易に決められた。医師会の代表とされる人物も、明細書発行のソフトがこれで安くなる、などとピンボケなことを言っている。彼も、官僚の根回しにまんまと乗せられたのだろう。

これは、医療現場に新たな負担を強い、混乱を招くものだ。

解決されるべき課題とは;

○診療報酬明細書は、診療報酬規則の則って作成されている。その規則が、煩雑を極めている。この煩雑になった理由の大きなものは、診療報酬によって、政策を誘導し続けてきたことである。診察料は、初診・再診の違いはだけでなく、時間帯・年齢によって異なり、医療機関の規模によっても異なる。初診・再診の算定も、医学的な判断とは異なるあるルールに則っている。様々な指導料の算定要件も種々であり、例外規定なども多い。指導料は、初診後1ヶ月間はとれないものと取れるものがあり、その後も月に一度だけ算定できるものと、二度算定できるものがある、簡易な処置は外来管理加算に含まれる等々。これらの規則が簡略化されなければ、何も知識のない患者さん・その親御さんには到底理解不可能だ。

○診療明細書には当然診断名が付くのだが、その中に所謂レセプト病名が含まれることがある。薬剤には適応症が決まっていて、通常はそれに基いて投薬される。が、適応外でも、患者さんのためにどうしても使わなければならない薬がある。そうした薬の適応症の一つを、診療情報明細書に記さないと、その薬剤の「適応外」投与として、医療機関の責任にされ、医療機関にその薬の費用が回ってくる。院内処方であっても、薬価差益は実際上ない。院外処方であれば、どの薬を処方しようが、医療機関には経済的なメリットは何も無い。この適応外処方は、医学的にどうしても必要と医師が判断して投与するのだ。診療明細書の載ったレセプト病名に、患者さん・そのご家族が不信を抱くことになりうる。すると、必要な薬が処方できないということになる。医学的な根拠の明確な薬の適応外投与を、まずは認めることが先決だ。

○診療明細書に記された診断名が、患者さん・そのご家族に知られるとすると、全ての病名を直裁に告知することが必要になる。悪性疾患・精神科疾患・その他予後が絶対不良の疾患でも、告知が原則化されて良いのだろうか。

○診療明細書を発行するのに必要な費用、人件費を全く考慮しないのは何故なのだろうか。特に、明細書の説明には、上記の複雑な内容があり、専門的なスタッフが時間をかけて行なう必要が出てくる。小規模な診療所では、それにスタッフがかかりきりになると、仕事の流れが止まってしまう。小規模医療機関では、通常受け付け・会計は、一人ないし二人で行なわれる。その内、一人が、診療明細の説明に当ると、受付事務がストップするのだ。診療明細を説明するスタッフが新たに必要になる。その人件費は、どこから湧いてくるというのか。大体において、役所で証明書の類を発行してもらうだけでも、数百円の費用を取られる。詳細な書類の発行と、それに付随する説明を、民間ないしそれに準じる公的な医療機関が行なう場合、無料にしろというのは無茶な話だ。

このように問題山積の診療明細書発行を強行する行政当局の意図は何か。

まずは、一部の患者団体に押されたということがあるだろう。勝村氏は、この明細書発行で「散らかった部屋を、(患者と医療者が)一緒になって片付けようということだ」と語った由だが、散らかった部屋とは一体何のことなのだろうか。極めて稀に、法の網をかいくぐった医療を行っている医療機関があるかもしれない。それを念頭においてのことなのだろうか。そうした違法、ないし違法すれすれの医療行為を行なう医療機関は、こんな書類上の手続きをかいくぐる方策をすぐに見つけ出すことだろう。この一部の患者団体は、医療を良くすると主張しつつ、多くの医療機関に負担を強い、医療を破壊することになるのを気付いていないのだろうか。

行政当局自身にとって、診療報酬明細の発行を医療機関に義務付けることによって、行政の意図をより容易く実現できるようになると踏んでいるのではないだろうか。箸の上げ下ろしまで医師に強制させることが、彼らの目的なのだ。その強制に違反する医師には、彼らは罰則を科することが出来る。また、医師の「箸の上げ下ろし所作」を少し変えるだけで、医療体制と医療費を思うように動かせると考えているのではないだろうか。

この施策は、患者さんのことも、医療機関のことも疎かにした愚策だ。医療は、さらに窮状に陥る。そして、医療現場の意欲は大きくそがれることになる。

以下、引用~~~

記事:読売新聞
提供:読売新聞

 2010年度の診療報酬改定を議論している厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会(中医協)」は5日、患者が受けた医療の詳しい費用の内訳がわかる「診療明細書」を、原則として全患者に無料発行するよう医療機関に義務づけることで合意した。

 例外を除き10年度から実施され、医療の透明化が一歩進むことになる。

 診療明細書は、医療機関が健康保険組合などに医療費を請求する際に作成するレセプト(診療報酬明細書)と同等の詳しい内容。受けた診療の単価だけでなく、検査や投薬の中身が記録されている。06年度から発行は医療機関の努力義務となり、08年度には400床以上の大病院で義務化されているが、患者が求めた場合に限られ、手数料の徴収も認められていた。

 全患者への無料発行が義務づけられるのは、レセプト請求を電子化している全医療機関。厚労省によると、病院と調剤薬局の9割、診療所の半分が当てはまる。ただし、発行機能がついていないコンピューターや自動入金機を使っている医療機関は、すぐに対応するのが難しいことに配慮し、例外となる。



コメント

レセプト病名は

保険診療上では使用してはいけないと思います。
たとえば解熱鎮痛薬と一緒に胃薬を処方する場合など、胃炎という病名をつけるわけですが、これは保険病名ではありません。解熱鎮痛剤により生じる胃炎のための治療薬になります。
レセプト病名や保険病名という概念は、結局のところ、医師みずからを束縛することになります。

明細書の発行により、医師の裁量権、処方権がきちんと理解されるようになると思います。
技術料や医療材料費をきちんと請求できるようにしてほしいと思います。たとえば明細書に入っていないから別に徴収するとか・・・。

明細書を発行するには手間がかかりますが、料金体系の見直し、ということでは評価できると思います。

コメントをありがとうございます。

レセプト病名などあってはならぬことという原則はよく分かります。が・・・

oldDrさんのご専門が何か分かりませんが、現実にレセプト病名をつけざるを得ない「科」があるのは事実です。私の専門とする小児科では、レセプト病名は使う必要がありません。何度も強調しますが、これは、違法行為ですが、医学的に必要なことです。こうした明細書が出されるようになれば、どのような混乱が起きるか、とても心配しています。必要な薬が、適応外であるということで出されなくなるという事態が必ず出現します。

行政が、医療の進歩の後追いで硬直化していることと、医療費削減だけしか念頭に無いことで生じる悲劇です。最終的に、必要な薬を処方されぬ患者さんにツケが回されます。

後期高齢者医療制度・5分間ルール等々、医療現場に負担と混乱をもたらした制度変更が、短期間に廃止、ないし廃止の予定になっています。「現状の医療制度化での」この診療明細書発行も同じ運命を辿ると、私は予測します。こうした杜撰な行政施策を策定・実行した責任者を是非明らかにしてもらいたいものです。そうした行政官には、後々責任をとってもらいたいと切実に思います。

法令遵守は

国を滅ぼす、という本も出ているように、違法行為と知りながら行う必要があることもありますし、それがいけないこととは判断できないと思います。

悪法でも法は法、として守るのか、法律を変えるように働きかけるか、でしょう。この時間的な差を縮める対策が必要でしょう。

専門の内科の中でも、たとえば気管支喘息でしか通らない薬をCOPDに使用したり、しています。似た疾患なので、病名は両方を併記します。

抗菌薬の量が、欧米の標準より少ないということで、感染症学会などで働きかけをしている例もあります。

医学は日々変化しているので、それに追い付くための法令や行政の整備が不十分であることが問題であると思います。

ところで、行政官について、彼らは責任をとることはしないでしょう。

副島孝彦 著 「悪魔の用語辞典」より、官僚について、「責任を負わない」という定義が載っていました。オクスフォード用語辞典の文言です。
責任をとるのは、行政官(官僚)の任免権を有する政治家です。

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