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驚きの愚策 その2 

内服薬処方の記載方法が、厚生労働省主催の検討会の答申を得て、改められるらしい。その内容は、以下の通り;

【内服薬処方せん記載の在るべき姿】
・ 「薬名」は、薬価基準の製剤名の記載が基本
・ 「分量」は、最小基本単位である1回量の記載が基本
・ 散剤と液剤の「分量」は、製剤量(原薬量ではなく、製剤としての重量)を記載
・ 用法は標準化(「標準用法マスタ」作成)

で、細かくコメントする。

・ 「薬名」は、薬価基準の製剤名の記載が基本

「薬名」は、ゾロ推進のために一般名にするとなっていたのではなかっただろうか。

・ 「分量」は、最小基本単位である1回量の記載が基本

これが驚きの変更だ。内服薬は、一日量を記載するのが、これまでの基本だった。最新の記載方法が、国際的に一回量に改められたのかと思い、最新版のNelsonのテキストを見てみた。が、やはり抗生物質、抗喘息薬、それに抗痙攣薬といった、ある程度の期間処方する内服薬は、一日量と、分法回数が記されている。能書もこれまではすべて一日量の記載だった。

この変更は、注射薬と同じ記載方法にするためと、検討会ではしているようだが、注射薬と同じにしたら、注射薬と内服薬の混同が起きるのではないか。注射薬は、血中濃度がすぐに上がるので一回量を明示する、一方、内服薬は、血中濃度が上がるのに時間がかかるので一日量で記載する、これがこれまでの考え方だったのではないだろうか・・・これのどこに問題があるのか。

・ 散剤と液剤の「分量」は、製剤量(原薬量ではなく、製剤としての重量)を記載

これも、驚愕の変更だ。散剤・液剤ともに、薬物に添加物・添加剤が加えられて製剤化されている。これまで行われてきたのは、もともとの薬物の量(原薬量ないし力価)の記載だ。それを、添加物・添加剤を加えた後の製剤量を記載しろ、ということだ。

一つの薬にも、様々な製剤がある。各々の製剤ごとに、その添加物・添加剤の量が異なることがあり、そ多寡により、濃度差がある。医師の記憶にあるのは、力価であるから、こうなると、それを一々製剤量に変換して処方箋に記載することになる。製剤ごとに、その換算が変わる。小児科では、散剤・液剤で処方することが多く、多くの手間になる。これまで行ってきた年齢別の量の加減の上に、力価から、製剤量への換算が新たに必要になるのだ。さらに、計算した一日量を分法回数で割って、一回量を出すことも新たに付け加えられる。それを処方箋におもむろに記すことになる。手間が増えることは、処方の間違いにつながる。どれだけ注意しても、間違いは起きる。

・ 用法は標準化(「標準用法マスタ」作成)

この変更の肝は、ここにありそうな気がする。これまでの医療での慣行を全部ひっくり返して、こうした煩雑で手仕事ではとても対応できぬ処方方法に変更するのは、標準化するというより、電子カルテ化を促すことに目的があるのではないだろうか・・・いや、それしか考えられない。電子カルテは、画像診断をすることの多い科などでは有用なこともあるようだが、まだまだ使いづらいという話を耳にする。それに、小児科のように、短時間に多くの患者さんの対応をしなければならない科では、まず利用価値がない。

しかし、より大きな市場を得たいIT産業は、医療に触手を伸ばすべく虎視眈々と狙っている。それに呼応した、官僚の暴走なのではないだろうか。

医療現場の声を何も聴くことなく、ただ産業界の意向だけで、このように根拠がない誤った変更を行う。産業界の意向を受け入れることによって、官僚にも何らかの権益が生まれるのだろう。

これは当面義務化させないようだが、だとしたら、混乱はさらに酷くなるはずだ。試行後、医療安全への影響等を検討するとしているが、犠牲が出てから引っ込める積りなのだろうか。

どうも最近の官僚の質が、どんどん落ちているような気がしてならない。

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