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日医とマスコミが、ネットでの発言を批判 

個人が公に発言するためには、その発言の場所が確保されていること、さらにその発言によって、理不尽な圧力を受けたりしないことが必要だ。

その点、ネットは便利な通信手段だ。自分の率直な考えを発信することができ、それに(一応)匿名性が確保されるからだ。同じ職業の人間同士、または関心を同じくするものが、ネット上のBBSのような場で、匿名で本音で語り合うことは現実に既に多くの場で行なわれており、様々な問題の理解を深める上で、重要な手段になっている。

誹謗中傷と紙一重の発言がなされる等、ネット上での匿名性の問題も確かにある。が、その匿名性は、絶対のものではないことはネットにアクセスするものは皆知っている。さらに、匿名の発言の利点は、一個人が公権力・マスコミ等有形無形の権力を持つ組織・人間の問題について言及する際に、その権力の行使によって不利益を受けることを、(一応)免れることが出来ることだ。(一応と繰り返し条件をつけているのは、発言が元で訴訟などに巻き込まれると、匿名性は保障されぬためであるのは、皆さんご存知の通り。)

数年前、SARSの流行が起きた時に、私は、県の不十分な対応を県当局に強く指摘したことがあった。その直後、保健所の「検査」が私の仕事場に入った。この「検査」とは、医療機関に対して行政が定期的に行うもので、ほとんど書類上のチェックだけで大したことのないものなのだが、やはり心理的には負担になる。その「検査」が少し早く入ったと思っていたが、後で、やはり早く行なわれたことが判明した。SARSに関する行政への問題指摘が、「検査」が早く行なわれた理由かどうかの確証はないが、それしか理由は思い浮かばない。診療所の運営は、行政の監視・指導下にあるのだ。勤務医は、病院や大学の経営者・管理者を通して、行政の監視・指導下にある。行政という「匿名」の組織は、本来我々のために仕事をしてくれているはずだが、時に思わぬ権力行使を我々に対して行なうことがある。

マスコミも、「ペンの力」という「権力」を振りかざす。医療の崩壊の原因の一つが、マスコミのそうした「権力」に基く誤った報道にあることはしばしば指摘されている。署名記事であったとしても、本質は、マスコミ企業を背後に持つ「匿名性」にある。

こうした権力組織に対抗するのに、個人が「匿名」での発言を行なうことを、マスコミが非難できるだろうか。

さらに、この提言を公表した日医でも、我々一般会員の関心・利益から離れた運営がなされている。このような高圧的な物言いをする前に、過去数年間の間に起きた医師の冤罪事件に対して、日医が、どれだけ医師の側に立った論陣を張っただろうか反省すべきである。医療事故調に関しても、厚生労働省案ににじり寄り、同案を積極的に広報する役回りをしていたではないか。さらに、最も重大な問題は、一般会員の意見を吸い上げる場が何処にもない。我々一般会員が、選挙を通して、日医の方針にコミットする方策・場が準備されていない。幹部を直接選出することができない。そうした日医がこのような「提言」をしても、我々一般会員のこころには響かない。まずは、改革を「隗より始めよ」だ。一般会員が日医に対して発言できる場を作ることだ。

さらに一般論として、専門職であると、匿名の発言が許されぬというのも、非論理的である。社会生活のなかで、我々は公権力・私権力を持つ組織に、監視され支配されている。それらに対峙するのに、専門職であってもなくても、公序良俗に反しない限り、匿名の発言は国民に許されるべきである。それを否定するような日医の見解は、専門職団体としてあるまじき愚かな見解である。

今日、マスメディアの広告収入が、ネット業界以外、引き続き落ち込んでいることがニュースに流れていた。マスコミにとって、ネットは脅威以外の何者でもないのだろう。マスコミは、ネットに敵対することによって、自らの既得権益を守れると思っているのだろうか。ネットを通じた医師のマスコミ批判には耳を閉ざし続けるのだろうか。


以下、読売新聞より引用~~~

医療事故の被害者や支援者への個人攻撃、品位のない中傷、カルテの無断転載など、インターネット上で発信する医師たちの“暴走”が目立ち、遺族が精神的な二次被害を受ける 例も相次いでいる。

状況を憂慮した日本医師会(日医)の生命倫理懇談会(座長、高久史麿・日本医学会会長)は2月、こうしたネット上の加害行為を「専門職として不適切だ」と、強く戒める報告 書をまとめた。

ネット上の攻撃的発言は数年前から激しくなった。

2006年に奈良県の妊婦が19病院に転院を断られた末、搬送先で死亡した問題では、カルテの内容が医師専用掲示板に勝手に書き込まれ、医師らの公開ブログにも転載された 。警察が捜査を始めると、書いた医師が遺族に謝罪した。同じ掲示板に「脳出血を生じた母体も助かって当然、と思っている夫に妻を妊娠させる資格はない」と投稿した横浜市の 医師は、侮辱罪で略式命令を受けた。

同じ年に産婦人科医が逮捕された福島県立大野病院の出産事故(無罪確定)では、遺族の自宅を調べるよう呼びかける書き込みや、「2人目はだめだと言われていたのに産んだ」 と亡くなった妊婦を非難する言葉が掲示板やブログに出た。

この事故について冷静な検証を求める発言をした金沢大医学部の講師は、2ちゃんねる掲示板で「日本の全(すべ)ての医師の敵。日本中の医師からリンチを浴びながら生きて行 くだろう。命を大事にしろよ」と脅迫され、医師専用掲示板では「こういう万年講師が掃きだめにいる」と書かれた。

割りばしがのどに刺さって男児が死亡した事故では、診察した東京・杏林大病院の医師の無罪が08年に確定した後、「医療崩壊を招いた死神ファミリー」「被害者面して医師を 恐喝、ついでに責任転嫁しようと騒いだ」などと両親を非難する書き込みが相次いだ。

ほかにも、遺族らを「モンスター」「自称被害者のクレーマー」などと呼んだり、「責任をなすりつけた上で病院から金をせしめたいのかな」などと、おとしめる投稿は今も多い 。

誰でも書けるネット上の百科事典「ウィキペディア」では、市民団体の活動が、医療崩壊の原因の一つとして記述されている。

奈良の遺族は「『産科医療を崩壊させた』という中傷も相次ぎ、深く傷ついた」、割りばし事故の母親は「発言することが恐ろしくなった」という。

◆日医警告「信頼損なう」◆

日医の懇談会は「高度情報化社会における生命倫理」の報告書で、ネット上の言動について「特に医療被害者、家族、医療機関の内部告発者、政策に携わる公務員、報道記者など への個人攻撃は、医師の社会的信頼を損なう」と強調した。

匿名の掲示板でも、違法性があれば投稿者の情報は開示され、刑事・民事の責任を問われる、と安易な書き込みに注意を喚起。「専門職である医師は実名での情報発信が望ましい 」とし、医師専用の掲示板は原則実名の運営に改めるべきだとした。ウィキペディアの記事の一方的書き換えも「荒らし」の一種だと断じ、公人でない個人の記事を作るのも慎む べきだとした。

報告の内容は、日医が定めた「医師の職業倫理指針」に盛り込まれる可能性もある。その場合、違反すると再教育の対象になりうる。
(2010年3月6日18時16分 読売新聞)

コメント

実名だと怖いかも

 小生のブログも実名で出ているので、あまり過激なことは書けません(^^; 勤務医ですが勤務先に自分の言論で迷惑を掛けるのも気が引けるので。開業医に対しては行政の密かなイジメがあるんですね。
 我々のブログも表現が過激だと言われるかも知れませんが、新聞のように自前で取材して、なおかつ嘘記事を流すよりは良いんじゃないかと思っています。

あら、実名で発言されているとすると、日医から表彰されそうですね 笑。いやぁ、行政からの小さなイジメは種々ありそうな気がしますよ。何しろ、彼等は、世の中を主導し、無謬であるという、どこかの独裁政党みたいな思想というか、エートスで凝り固まっていますから・・・でも、最近は叩かれるようになって少しは変化がありますかね。

次男が、こちらの大学を終了後、東北の某大学で医学の勉強を始めることになりました。強く勧めたわけではないのですが、医師という職業のこれからがとても気がかりです。臨床、それも日本で臨床をすることに拘らずに、広く勉強するように言おうと思います。近所になるかと思います・・・お会いする機会があるかどうか分かりませんが、どのような縁があるかも分かりませんので、その節はよろしくお願いいたします。

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