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母親を泣かせてしまった 

今日、外来で患者さんのお母さんを泣かせてしまった。

長期間続く鼻閉で、10日ほど前に来院した乳児。鼻腔所見で、鼻粘膜の腫脹が見られ、それ以外に異常所見がなかったために、この時期にしばしば見られる慢性の鼻炎と診断した。以前、このブログでも記した通り、この病態には、ステロイドの点鼻薬がよく効く。他の治療薬では効果が乏しい。それで、乳児にも投与しやすいステロイドの点鼻薬を処方した。

ところが、自宅に帰り、姑に報告したところ、「ステロイドなどトンでもない、投与してはいけません。」と言われた由。私と、姑の間に入って、お母さんは悩んだのかもしれないが、とりあえず薬を投与しなかったらしい。そしたら、数日して、鼻閉がさらに酷くなり、汚い鼻汁も見られるようになったので、慌てて私のところにやって来た、というわけだ。

このお母さんには、お子さんの病態について改めて説明し、ステロイド点鼻薬が必要なこと、さらに点鼻薬のステロイドは、極めて少ない量であり、全身投与の場合の副作用の可能性は少ないことを説明した。抗生物質の吸入も行なっていただくようにした。その上で、医療は、患者さんと医師の間の直接の関係であり、患者であるお子さんの代理人がお母さん自身であること、適切な医学的知識・経験のある方以外の言うことは、たとえ姑の言うことであっても副次的な意見として聴くこと、最終的にはお母さん自身が良く考えて判断することと、時間をかけて説明した。

私の言葉が少しきつくなってしまったのか、途中からお母さんは涙目になってしまった。

聞くと、ご主人は仕事が忙しく、お母さん自身で様々なことを決めなくてはならない様子。さらに、姑とは同居していないが、子どもの養育に関して様々な指示を強い口調されるらしい。

私は、投げ出すわけではないが、私の言うことが受け入れられないのであれば、他の医療機関にかかった方が良い。しかし、お母さん自身が自分で調べて、自分で考えて、最終的に決めるべきことを申し上げた。

このようなケースは、今までも何度も経験しているのだが、私に疑いの眼差しを向けられると、治療関係には到底入れない。そうした場合は、転医して頂いたほうがお互いのために良いと思うのだ。このお母さんの場合は、本当に迷った挙句に、投薬を見合わせただけのようで、最終的に私の意見に沿って治療を進めて欲しいとのことだった。最後には、涙目ながらもにっこり微笑んで、お子さんを抱っこして、診察室を出て行かれた。

医師・患者関係で根本的な信頼関係が成立しないと、とても治療を進めることはできなくなる。信頼をして頂くと、医師として本当に最善のことをする責任を感じる。こうした一種の修羅場をくぐると、結構しっかりした信頼関係を結ぶことができるものだ。お母さんの必死の思いに応えなくてはという気持ちになる。こうした医師・患者関係を誤ったパターナリズムとして排除しようとする動きも世の中にはあるのだが、それは患者にとっても、医師にとっても不幸なことだ。

夕方、診療が終わってから、「先程怒られたIですが・・・」といって、そのお母さんから電話がかかってきた。鼻閉のため咳き込み、ミルクを吐いてしまったとのこと。対応方法を指示した。お母さんは明るい声で、お礼の言葉を述べて電話を切った。「怒ったわけではないよ。」とは言ったのだが、医師・患者関係の最も基本的なところを分かってもらいたかったというのが本音だった。お母さんは、言葉や概念としてはそれを明白に把握しなかったかもしれないが、信頼関係の中にあるという安心感に包まれているように、私には思えた。

コメント

いるんですよねぇ・・・

私も手を焼いている方が常におられます。そんなに不満なら他の医療機関を受診すればと思うのですが、やはり受診されます。

どうにも私を説得したい様子にも見えるのですが、根拠が「隣のおばちゃんが言った」レベルですからなんともです。

まあ「○○先生はこう言った」で頑張られる方よりはマシと思っています。○○先生型は心底「ほいじゃ、○○先生にご相談してください」と思いますし、実際に口にも出します。

問題は患者の意思決定権と言いながら、不利益が生じれば説明不足として問題視される点なんですけどね。

>問題は患者の意思決定権と言いながら、不利益が生じれば説明不足として問題視される点なんですけどね

ということが、残念ながら現実になりうるのでしょうね。

昔は、経営のことも考え、本音を患者さん、その親御さんになかなか言えませんでしたが、最近は、丁寧な口調で、本心をしっかり言うようにしています。

治療関係がきちんと成立することが、患児にとってベストなことだと思いますから、成立し難いとなれば、他の医療機関を受診するように促します。

そこまで腹をくくると、これまでは、理解して下さる親御さんが多かったのですが、これからもそうとは限りませんね・・・。

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