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1から4歳小児の死亡率が高い・・・その原因と対策は? 

昨日のNHK「クローズアップ現代」で、小児の死亡率について放映されていた。1から4歳の小児死亡率が、他の先進国に較べて高い、というのだ。

具体的な数値ではなく、棒グラフでの表示だったが、先進国の平均に較べて、それほど多いわけではなさそうだった。しかし、確かに、平均を超えている。

私の理解した限りでは、NHK(と番組に出演した識者)の分析では、この原因は

1)小児科医が1、2名しかいない施設での死亡が多い。

2)一次(救急)医療機関の医師が、頑張りすぎる傾向がある。

3)小児ICUが足りない。

それに対する同じくNHKの推奨する対策は

1)一次医療機関で医師が頑張らない、必要があれば、すぐに小児ICUのある施設に患者を送るべきだ。

2)小児ICUの数が足りない。現在の全国で10施設しかないところを二倍程度にすべきだ。

3)上記に合わせて、小児科医の集約を行なうべきだ。

この番組の方向付けの基本になったのは、この報告のように思える。

上記の論議は、厚生労働省の理解と方針そのものなのだろう。

私には、この論議に対して、大きな疑問を抱く。1から4歳までの小児の死亡率を左右するのは、事故による死亡ではないかと思うが、事故の原因の追求と対策を講じることがまず一番に来るべきなのではないだろうか。少なくとも、1から4歳の死亡原因を精査して、それに対する対策を講じることをまず行なうべきだ。特に、NHKの上げる原因(1)(2)は、この年齢層の死亡率が何故高いのかを説明しない。

事故における医療の対応では、外科系専門を含めて複数科が対応する必要が出てくる。が、そうした医療機関へのアクセスが確保されているのか。小児ICUを増やすべきだというのは正しいと思えるが、その前に、基幹医療機関での集約治療が可能であるのかどうか、アクセスはどうか、地域ごとに分析すべきだ。少なくとも、小児科医の能力が劣るとか、単位医療機関当りの小児科医数が少ないとまともな治療をしていないといったニュアンスの現状把握はピントがずれている。外科的対応が必要な患者を小児内科専門の医師が引き止めたりするはずがない。

死亡数の多くを扱っている医療機関は、番組では、小児科医の少ない医療機関、上記引用した報告では、年間死亡者の少ない医療機関であるとされている。どちらも重なり合うように思える。が、これをもって、小児科医の少ない、年間死亡者を出すことの少ない医療機関に問題があるとは言えない。勿論、重症患者を高次医療機関に搬送すべきは当然だが、小規模医療機関のパフォーマンスが悪いということを言うには、各々の規模の医療機関を受診する、ないし搬送される重症患者の数を母集団にして、死亡者数を議論する必要がある。

現在、小児科を標榜する医療機関、特に入院可能な医療機関は激減している。その大きな理由は、小児科が医療経済的にペイしないからだ。その点については、番組では一言も触れられていなかった。小児科ICUでは、なお更経済的には成立し難いはずだ。小児科ICUを増やして、それが抱え込む赤字はどうするというのか。

NHKは、厚生労働省の主張をそのまま番組にしているように思える。その主張に批判的な見解の現場医師や、識者の意見を何故流さないのだろうか。

コメント

こんばんは

まったくもってそう思います

kanoさん

今日は。小児科の現場にいると、こう感じますよね。

研究課題は何か確定しましたか。猛暑の折、お体を大切に。研究に時間を割ける幸せを存分に感じて、お仕事をお続けください。

産科の優秀さの反映では

虚弱児をすくってしまう産科小児科の優秀生の反映なのかもしれません。

 ハーバードの医局での出産よりは倉敷中央病院のほうがましと感じております。

JHさん

確かに、それはあるかもしれません。

が、米国全体で見ると、1から4歳児死亡率は、日本よりも高いようです。

Yosyanさんの「新小児科医のつぶやき」の過去ログに、この問題を扱ったポストがありました。

http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20090716

1から4歳までの死亡で、改善しうるのは、やはり「不慮の事故」による死ではないでしょうか。

全体的な底上げをしようとすると、現在でも「きりきりのパフォーマンス」をしている小児医療の底上げという無理難題に突き当たりそうです。

NHKは、小児科医の技量、患者を搬送しない狭量さを、この死亡率の高さの原因としたい様子でしたが、原因を突き詰めていない、最初から結果ありきの議論のように私には思えました。

戸籍の網羅性と統計上の誤差

 死亡率に関しては戸籍の網羅性が日本のほうが精確という点もありましょう。高齢者については最近ずさんな調査が問題になりましたが出生届が赤ん坊のほぼ全員にでている保障があるのは日本くらいではないでしょうか。

不慮の事故は・・・

手前味噌で申し訳ありません。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20100721

2006年の1~4歳の死亡が1177人で不慮の事故は207人です。207人を救うために医療体制の整備を進めるのは、藤林先生も真意じゃないと考えています。コスト・パフォーマンスはどう考えても莫大だからです。

本命はこれをテコにして、小児医療機関の集約と見ています。ただ地域エゴが強烈に出る集約ですから、どこまで進むかはなんとも言えません。

WBYさん

諸外国で、戸籍登録が不完全だとすると、母集団の数が減るわけですね。死亡者数が一応正確に把握されていると、死亡率は多くカウントされる可能性が出ますね。

すると、わが国の「1から4歳の死亡率」が諸外国よりも高いという「程度」は、さらに大きくなることになります・・・でも、戸籍の不正確さは、どの程度のレベルなのでしょう。死亡率を大きく変えるほどの変化はないかもしれませんね。

Yosyanさん

最近のポストでも取り上げておられたのですね。小児科の集約化の問題、私がこのブログを立ち上げた頃、鴨下元東大教授が班長をしていた厚生労働省研究班で、小児科医の集約化の必要性を、米国のデータを基に議論されていて、それを取り上げたことがありました。そのデータの取り上げ方が、恣意的なものだったのに驚いた記憶があります。

いずれにせよ、小児科医の集約化は小児科医の労働環境改善のために必要なことなのでしょう。でも、そうした方向に持ってゆくための「口実」が、どうにもおかしなものが多くて、と感じてしまいます。

小児科医療をより安全に質を高めるためには、小児科医の労働環境の改善を通した集約化しかない、という至極当然のことを、行政や政府が何故言わないのか大きな疑問です。

コメントをありがとうございました。

亀コメ

番組見ました。

番組終了直前に予防医療、ワクチン等の重要性についてコメントしておりましたが、時間の都合で殆ど予防医療については触れられませんでした。

私はこの部分に非常に興味があっただけに、消化不良な内容でした。

放送に隠された厚労省の真意が集約化であれば、予防医療の部分が割愛されてしまったのも頷けます。

風はばさん

今晩は。

今日の参議院予算委員会で、桜井充議員が予防接種の件を訊いていました。子宮頸がん予防HPVワクチンについては、ガン対策の一環として取り上げると、厚生労働大臣は応えていましたが、桜井議員の挙げた、Hibや肺炎球菌の予防接種については、十派一絡げの扱いで、熱意が感じられませんでしたね。

細菌性髄膜炎による罹患者は、この年齢層を中心に、年間確か100人を超していたのではなかったでしょうか。その患児の大多数が、重篤な経過を取ることを考えると、医療経済の面からも、幼児死亡率を下げるためにも、すぐに積極的に公費化する、というリスポンスがあってしかるべきなのですが・・・どうも、長妻さん、通り一遍等でしたね。

管理人@ja1nutさん

おはようございます。
早々のレス、有難う御座います。

私個人の意見ですが、予防医療はワクチンのみに限らず、不慮の事故の予防法や、起こってしまった時のバイスタンダー手技の、一般市民への周知も含まれるんじゃないかと思うんですね。

ワクチンのみならず、そういった予防分野への認識・啓蒙が薄いように感じてます。

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