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矛盾だらけのインフルエンザ予防接種指針 

今回のインフルエンザ予防接種は、接種方法・費用その他まで行政が事細かに決めている。それはそれで良いのだが、内容が極めてお粗末であり、また決めて現場に連絡するのが遅すぎる。

都道府県と医療機関の間に、都道府県医師会が介在して、予防接種契約を結ぶという形式をとっているが、実質は、行政と医療機関の間の契約関係である。その契約内容が明らかにされる前に、医師会から契約をしろ、要するに白紙委任の契約を半ば強制された。民間では考えられぬことだ。

で、具体的な契約書が県から送られてきたのは、契約が発効する日の前日9月30日だった。行政は、契約の発効日を、大分前から認識していたはずであり、もっと早く情報を現場に流し、契約内容を確定しておかないのだろうか。いわば、昨年秋から、この事態になることは分かっていたはずだ。行政は、医療現場に対して、様々な書類の提出などの期限を極めて短い時間に指定してくることが多い。しかし、自らの行う事務作業は、この体たらくだ。インフルエンザ予防接種が、昨年のような行政に振り回されるものになるのであれば、契約をしないことも考えていたのだが、それを実際に考える時間的な余裕が全く、医療現場には与えられていない。行政が民間の上に立つという意識はいい加減止めてもらいたい。

インフルエンザ広域予防接種の契約書等々の書類が、どっと送られてきた。9月30日以来現在までのところA4版で64ページに上っている。ところが、臨床現場で知りたい、最も重要なデータが抜けている。例えば、基礎疾患のある症例に予防接種を行う場合の具体的な効果と副作用リスクのデータだ。こうしたデータは、厚生労働省が握っているはずだが、送られてきた書類には、そうした症例の方々は、主治医とよく相談して受けるかどうか決めるように記されているだけだ。これでは判断しようがない。

下記の論説の著者和田氏の言われることには、大きく頷くばかりだ。付け加えると、こちらに送られてきた書類からは、GSK社の一価予防接種を、国産のものと比較して、アジュバントの使用等から副作用が多い印象を与える記述が目立つ。両者を別々な研究の結果から比較しているのだが、対象集団の違いを考慮しなければ、はっきりものは言えないはず。

そのまるで不完全な文献上の比較でも、客観的な所見である局所の発赤・腫脹は国内産のものの方が多く、さらに重い副反応は国内産2例・GSK製なし(ただし、両者の母集団数不明)である。他の痛みや倦怠感といった主観的要素の強い副反応がGSK製の方で多くなっている。重篤な副作用の起きる危険性は、極めて低い。しかし、重篤な副作用が国内産の予防接種に「相対的に」多かった可能性を、村重直子氏がその著作「さらば厚労省」(講談社刊)で記している。しかし、全般の記載を素直に読むと、行政は、国内産の予防接種を使わせたい意向のように、どうしても思える。どうしてしっかりとした比較研究を行い、そのデータを公開しないのだろうか。これでは、自らの天下り先でもある国内弱小メーカーを護送船団で守りたいと、厚生労働省の医系技官が考えていると疑われても仕方がない。

今回のインフルエンザ予防接種の費用は、行政が決めた。市町村別になっている。一つの市町村で、費用は20から24通りに分かれている。共通点も多いのだが、それにしても複雑怪奇である。もう少し、シンプルに出来ないものだろうか。医療現場には、医療スタッフだけでなく、事務スタッフも少ない。このように複雑な費用体系は、事務スタッフを疲労困憊させる。

さて、インフルエンザに関わる行政からの通知は、今年は何ページになることだろうか。行政は、医療現場の自主性を認めず、恐らく行政の利権がより多くなるように決めた方針を事細かに現場に押し付けてくるのだろう。


以下、MRICより引用~~~

矛盾だらけのインフルエンザ予防接種指針

わだ内科クリニック院長
和田眞紀夫
2010年10月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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厚生労働省は及び腰もいいところで、インフルエンザの予防接種に関して国民に正しい指示を与えようとはしない。ここではインフルエンザ実施要綱の内容についてのいくつかの矛盾点や問題点を取り上げてみたい。事実関係の確認については下記の厚生労働省のホームページに掲載されている内容をご参照いただきたい。

「新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)に関するお知らせ」
http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_vaccine22.html
「新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)に関するQ&A」
http://www-bm.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/info_qa22.html

始めに問題点を挙げると、新型(A/ H1N1パンデミック2009)インフルエンザに罹患して重症化しやすいのは、高齢者や基礎疾患(慢性疾患)を持つ方と妊婦や乳幼児の方であると説明しておきながら1)積極的に妊婦に接種を勧奨することはせず、2)乳児(0歳)に至っては接種を勧めていないとはっきり言い切ってしまっていること、この2点は大きな矛盾と間違った方針決定を含んでいると思われる。

ちなみに米国における2009パンデミック(H1N1)インフルエンザに対する接種基準(2009)をご紹介すると、「米国ではワクチンの優先者は妊婦が筆頭である。続いて、6ヶ月以下の乳児と同居または世話をする人、続いて、保健医療担当者・救急業務担当者、(さらに)続いて6ヶ月から24歳までの若年層、そして25歳から64歳までのインフルエンザが重症化する可能性のある慢性疾患保有者、となっている。25歳以上の基礎的疾患を保有していない市民(65歳以上の高齢者を含む)は、最後の最後である。」以上、「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」http://nxc.jp/tarunai/の2009.10.19記載より転記。( )部分は筆者が補足した。なお、今年の米国CDCの基準では6ヶ月以上5歳までの小児、特に2歳以下の小児、65歳以上の高齢者などを最重要対象に含めている(同2010.9.29記載参照)。これは今年度に関してはA/ H1N1パンデミック2009に加えてA香港型(AH3N2)が混合して流行することが予想されているためだ。

ところで、なぜ日本では妊婦の接種に及び腰なのか。筆者が想像するには従来の季節性インフルエンザに対する予防接種における方針を継承しているためと思われる。かねてから米国では妊婦への接種を勧奨してきたのに日本では眞逆の方針をとってきたという経緯がある。これまでの季節性インフルエンザ用のHAワクチン(北研および生研)の添付文章を転記したい。「妊娠中の接種に関する完全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には接種しないことを原則とし、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ接種すること」。それでは今年度のHAワクチン(北研)、すなわちA型H1N1株を含む3価ワクチンの添付文章はどうな
っているだろうか(以下転記)。「妊娠中の接種に関する完全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ接種すること。(後略)」。つまり「接種しないことを原則とし、」という部分を除いただけで大きなスタンスは変えられていないのだ。このような危険極まりない表現が使われていては妊婦に接種する気には誰もなれず、とてもではないが妊婦に接種を勧奨しているという状態とはいえない。にもかかわらず、上記の厚生省のサイトの説明では「現在までのところ、妊娠中にインフルエンザワクチンの接種を受けたことで、流産や先天異常の発生頻度が高くなったという報告はありません」という事実だけをさりげなく載せている。

話を乳児に移そう。さすがに欧米でも出生直後から生後6ヶ月までの乳児は予防接種対象からはずしているのだが(その代わりその保護者の接種を優先的に勧奨している)、6ヶ月以上は接種対象に入れるのが一般的だ。今年の米国の接種勧奨対象も生後6ヶ月以上の全ての国民となっている。アジアではどうかというとつい先日発表された台湾の基準でも生後6ヶ月以上を接種の対象としており、特に小学校3年生までの小児と65歳以上の高齢者を無料とすることで接種を促している(http://nxc.jp/tarunai/の2010.9.29記載)。それにも関わらず、日本で乳児を接種対象からはずしている理由は、「1歳未満のお子様に対する新型インフルエンザワクチン接種は、免疫をつけることが難しいためおすすめしていません。」と説明している。つまり、乳児はハイリスクグループに含まれると認めていながら「効果がないから」という理由だけで「勧めない」と言い切ってしまっている。それにも関わらず両親が強く望むなら(補償はしないけれども)どうぞというスタンスで、接種量だけを設定している。ところが、この場合はせめて生後6ヶ月以上とはせずに、出生直後から接種してよいことにしている(こういう国も世界中例を見ない)。実に無責任な設定と見受けられるが、実際補償をしないのだから責任は取らないということだ。これではもう何の指針にもなっていない。

最後に日本が設定している小児に対する接種投与量が全くおかしいことを問題提起しておきたい。「A型インフルエンザHAワクチンH1N1」の用法・用量は、1歳未満 0.1mL 2回、1-6歳未満 0.2mL 2回、6-13歳未満 0.3mL 2回、13歳以上 0.5mL 1回である。このように年齢に従って投与量を細かく減らしていくのは国産ワクチンだけである。乳児(0歳)に関しては0.1mLという設定だが、0.1mLの接種が実際にどのようなものか実態を認識して決めているのだろうか。0.5mLの接種でも実際は注射器や針の壁面で薬液をロスしてしまって、0.4mLぐらいになることはあり得るだろう。ある行政のQ&Aでは、「0歳の乳児のインフルエンザワクチンの接種は可能ですが、摂取量が1回
0.1mLと微量のため免疫効果がはっきりしていません。」として0歳児の接種を勧めていない。それでは何を根拠に接種量を0.1mLと設定したのだろうか。ちなみに国も承認している輸入1価ワクチン「アレパンリックス(H1N1)筋注」(グラクソ・スミスクライン株式会社)の用法・用量は6カ月‐9歳 0.25mL 2回(著者註:諸外国では2回だが、厚労省のサイトでは1回となっている)、10歳以上 0.5mL 1回となっている。さらにノバルティス社製は6カ月‐8歳 0.5mL 2回、9歳以上 0.5mL 1回、バクスター社製に至っては6カ月以上すべての年齢で0.5mL 2回となっていて、乳児も大人も接種量は同じ設定である。一般的にいって免疫応答というのは付くか付かないかであり、容量依存性に増大するものではない。ちなみに日本で行われている麻しんワクチンでは1歳児も大人も接種量は0.5mLである。厚生労働省は乳児のインフルエンザワクチンの接種量を0.1mLと設定した根拠と正当性を明らかにして欲しいし、それができないのなら小児の接種量を年齢によらず0.25-0.5mLと共通にして至急臨床データを集積して効果と安全性を確認すべきである。データがないといって何年も放置したままにしているのは怠慢以外のなにものでもない。

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