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「新型インフルエンザ」予防接種に伴う死亡例 

舛添元厚生労働大臣の元で、厚労省改革に取り組んだ、村重直子女史が、官僚を辞めてすぐに、「さらば厚労省」という本を書かれた。以前にも、ここで少しご紹介した。厚労省の制度疲労を、内部から経験した彼女が、その実態を記している。現在の厚生労働行政、特に医療行政がどのように行われているのか良く分かる。ご一読をお勧めしたい。

その中で、昨年から今年にかけての「新型インフルエンザ」問題、特にその予防接種の問題が大きく取り扱われている。官僚は、天下り先である国内中小予防接種メーカーを護送船団で守るために、予防接種の配布・接種要項を事細かに管理・支配し、予防接種を円滑に国民に投与することなど殆ど考えていなかったことが、事実に基づき記されている。

その中に、わが国の「新型インフルエンザ」予防接種での死者数が、諸外国と比べて多いことが記されている。村重女史の推測では、基礎疾患のある方々への接種が優先と決められたために、無理をして、そうした方々に接種したためだったのではないか、ということだ。下記のMRICの記事も、同じ推測を述べている。東大の上教授と同じグループであり、データ、その解釈が同様なのだろう。

いずれにせよ、厚労省の官僚に、国民の健康を預けてよいものか、大いに疑問を感じさせることだ。こうした副作用の可能性のある事象を徹底的に調査し、その原因を明らかにすべきだろう。厚労省の過度な臨床現場への口出しは、医療を混乱させ、全体としてみると有害な問題を引き起こしうる、一つの例なのではないだろうか。


以下、MRICより引用~~~


新型インフルエンザワクチン有害事象に関する学術誌上での議論

東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携部門
中田はる佳
2010年11月23日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1.はじめに

 2010年10月1日から、新型インフルエンザワクチンの接種が開始されている[1]。
 私たちは、新型インフルエンザワクチン接種後の有害事象に関する論文を2010年6月1日にアメリカ感染症学会誌(CID; Clinical Infectious Diseases)上に発表した[2]。本論文に対して、アメリカ疾病対策予防センター(CDC; Centers for Disease Control and Prevention)からコメント[3]が同誌に投稿され、これに対する私たちのコメント[4]と合わせて2010年10月1日に掲載された。本稿では、一連の議論についてご紹介する。

2.新型インフルエンザワクチン接種と接種後の死亡件数

 2010年6月1日掲載の私たちの論文では、2010年1月7日までの厚生労働省の公開データを用いた。それによると、2009年10月19日に新型インフルエンザワクチンの供給が開始され、2009年12月21日までに推計約150万回分のワクチンが接種されたという。
 2010年1月7日時点で、新型インフルエンザワクチン接種後の死亡例107例が報告された。107例のうち98例(91.6%)が60歳以上であった。107例全てに基礎疾患があり、そのうち22例では基礎疾患の悪化が死因とされた。新型インフルエンザワクチン接種と死亡との因果関係について、因果関係ありと判定されたケースはなく、因果関係なし34例、評価不能73例であった。そして、1日当たりの死亡例数は接種後24時間以内をピークに急速に減少しており、64%の死亡例が接種後4日以内に含まれていた
 この結果は、新型インフルエンザワクチン接種と接種者の死亡との間に時間的関連性があることを示唆している

3.CDCからのコメント

 2010年10月1日掲載のCDCのコメントでは、一般的な自発報告の意義と限界について述べられていた。自発報告から有害事象の発生率や因果関係の有無を正確に評価することは難しいが、まれな有害事象を発見し、さらなる研究に導くという重要な役割がある。
 
4.私たちのコメント

 CDCのコメントは自発報告に関する一般論について述べられていたが、わが国の新型インフルエンザワクチン接種後の有害事象報告は、実態として「自発」報告ではなかったため、そのコメントはあてはまらないということを論文報告した。
 新型インフルエンザワクチン接種は、医療機関と国(厚生労働大臣)との「新型インフルエンザ予防接種業務委託契約」により行われた。医療機関が行う業務は、必要量ワクチンの購入(契約書第3条1号)、優先接種対象者等であることの確認(同条2号)、優先接種対象者等に対するワクチンの接種(同条5号)などのほか、厚生労働大臣に対する重篤な副反応の発生に係る情報の報告(同条11号)も含まれていた。本契約には、以下のように国が契約を解除することができる旨が定められていた


(解除等)
第九条 甲は、次の各号のいずれかに該当するときは、催告なしにこの契約を解除することができる

 一 乙がこの契約に違反したとき
 二 乙の委託業務の実施が不適当と甲が認めたとき
三 乙がこの契約を履行することができないと甲が認めたとき

※甲:厚生労働大臣、乙:医療機関

 この規定から、本契約の解除について、厚生労働大臣の裁量の範囲が非常に広いことが読み取れる。医療機関は「契約に定められた重篤な副反応の発生に係る情報の報告」をしなければ、契約を解除される可能性があった。

 この実態から、国家政策によって現場医療従事者の臨床判断に介入したことがワクチン接種直後の死亡例数の増加の一因になった可能性が考えられる。わずかなワクチンしか供給されず、ワクチンを無駄なく使わなければならなかったにも関わらず、10mlバイアルを開封後24時間以内に使い切れなければ残りを廃棄しなければならないことや、ワクチン接種の順序を厳格に定めたことにより、個々の患者に合わせた臨床判断が阻害された可能性があるワクチン接種順位があまりに厳しく非現実的だった時期と、ワクチン接種後の死亡例数が最も多かった時期が一致しているのである。このようなプレッシャーのある状況下では、ワクチン接種機会を逃して新型インフルエンザに罹患するリスクよりも、基礎疾患があってもワクチンを接種することを選択したのかもしれない。
 さらに、輸入ワクチンは臨床試験データに基づく通常の薬事承認プロセスを経たが、国産ワクチンは臨床試験データが不要だった。そのプロセスは十分に公開されていない。

5.おわりに

 ワクチン接種に関する臨床判断に国が介入しないことが国民の命を救うかもしれない。今後わが国においては、緊急時に対応できるワクチン接種方式や薬事承認についての法整備を議論する必要がある。

【References】
1. 厚生労働省「新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)のお知らせ」 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_vaccine22.html
2. Nakada H, Narimatsu H, Tsubokura M, et al. Risk of fatal adverse events after H1N1
influenza vaccination. Clin Infect Dis. 2010 Jun 1;50(11):1548-9.
3. McNeil MM, Broder KR, Vellozzi C, DeStefano F. Risk of fatal adverse events after H1N1
influenza vaccine: limitations of passive surveillance data. Clin Infect Dis. 2010 Oct
1;51(7):871-2
4. Nakada H, Narimatsu H, Tsubokura M, et al. Reply to McNeil et al. Clin Infect Dis. 2010
Oct 1;51(7): 872-3.
5. Centers for Disease Control and Prevention. Safety of influenza A (H1N1) 2009
monovalent vaccines - United States, October 1-November 24, 2009. MMWR Morb Mortal Wkly
Rep. 2009 Dec 11;58(48):1351-6.

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