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昔を懐かしむこと 

昨日、午前中、急患を診るために、いつもの通勤路を車で急いだ。夜中から降り積もった雪で、周囲の畑は一面真っ白。空は、やや明るさを取り戻しつつある鉛色。真っ直ぐに続く道で、行き交う車も殆どない。こうした風景に身を置くたびに思い出すのは、大学受験の頃。約40年前のことだ。当時は、まだ国立大学が一期、二期に分かれていた頃で、3月の受験日に合わせて、雪が降った。

どのような思いだったか・・・浪人してそれなりに勉強をしたが、試験に通る気があまりしなかった。雪の降りしきる中、試験会場に向かい、また受験を終えて、宿舎に戻った。きりっと引き締まった大気。空は、同じように鉛色だったが、昨日見た明るさはなかった。どうにも越えられない壁に打ちあたった切羽詰った気持だったろうか。その壁を越えることは難しく、一方、それ以外の選択肢も考えにくかった。実際には、教師になることも考えていたのだが、医学部目指して勉強してきたことを無にはしたくなかった。袋小路に迷い込んだような気持ちだったような気がする。

あの状況にまた戻ってみたいとは決して思わないが、振り返ってみると、人生のなかで、もっとも生命を燃焼させた時期の一つだったのかもしれない。試験に通ることだけを目指して、それに集中する生活だった。

過去のことを、このように懐かしく思い出すことが、この年齢になると多くなる。先日、CWopsに寄稿した拙文に、いち早くレスポンスをしてくれたのが、Bob W6CYXだった。「旧きよき時代のことを思い出すことができた。サンタバーバラのMerle K6DC以外に、John W6GTI、Rad W6THN、さらには、ベイエリアのEric W6DUと Bob N6EA、それにRay WA6IVM・Steve WA6IVN親子もいた・・・皆故人になってしまった。彼らのことを改めて思い出した。とても良かった」と言ってくれた。それはそれで嬉しい反応だったが、彼も、恐らく私も歳をとったものだと感じた。過ぎ去った時代を思い起こし懐かしむ、それは年老いた証なのではないか。

過去を懐かしむ、ノスタルジアに浸ることが特に悪いこととは思わない。歳をとってくると、身体・精神ともに能力の衰えが顕著になる。先のことが見えなくなってくる。我々は、若かりし時代を思い起こす。その時代に、我々は、生命を燃やしていた。人間は、何時になっても、生命を充足させることを欲する。それが、将来に対して求められなくなったときに、過去を振り返り、かって生命を充足させた記憶を思い起こすのではないだろうか。過去を懐かしく思い起こすということは、その時に生命を燃やし、充足させた記憶によって、現在の生命を再び満ちたらしめたいという精神の働きなのではないだろうか。

雪に覆われた畑の真ん中の真っ直ぐな道を車で走りながら、そんなことをぼんやりと考えていた。

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