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原発事故作業員に、生涯にわたって医療補償を 

午前中、予防接種に訪れた小学生の男の子と話をした。父親が、消防隊の師長をしているとのことで、今日は、福島に救援に出かけたらしい。「20キロ圏内・・・」と彼が呟いた。彼にも、きっとそれの意味するところが分かっているのだろう。被曝への防護対策はとるのだろうが、危険があることも事実。父親を誇らしく思う気持ちと、心配する気持ちとが入り混じったような思いつめた表情をしていた。

こうした名も無い多くの方々が、被災地・原発近辺で様々な救援活動に携わっておられることを、改めて思った。

最近、テレビを余り見なくなっているので、どのように報じられているか(報じられていないか)良く分からないのだが、原発で作業されている方々が、劣悪な条件での労働を強いられ、疲弊してきていると聞いた。

一番心配なのが、放射能被曝による健康被害だ。健康被害のなかで、深刻であり、かつ頻度も少なくないのが、血液系の悪性疾患である。それに対処する根本的な治療法は、骨髄移植だ。他人からの骨髄ではなく、自己の血液幹細胞を本人に戻すことは、合併症・副反応も少なく、極めて有望な治療法になる。先にアップした虎ノ門病院の血液内科医による、自己血液幹細胞の保存を作業されている方々に行うべきだとの提言は、マスコミにもあまり取り上げられていない様子。今日、その血液内科医の記者会見がある。下記の通り。

日時: 2011年3月29日(火曜日) 午後2時~
場所: 虎の門病院 8階 第一会議室
説明者: 谷口修一(虎の門病院血液科部長)、
豊嶋崇徳(九州大学病院遺伝子・細胞療法部准教授)

政府は、作業されている方の健康を守ることを、是非優先課題にして行ってもらいたい。彼等を英雄扱いして、美談に終わらせるだけで済ませてはいけない。

日本の未来が、彼等の仕事にかかっている。

作業員の方々は英雄ではなく、被害者であるという下記の論考は、その通りだと思う。彼等は、英雄であり、かつ被害者なのだ。彼等をバックアップすることは、我々の責任だ。



以下、MRICより引用~~~

「英雄」ではない「被害者」である原発事故作業員に、生涯にわたって医療補償を

有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役
木村 知
2011年3月28日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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 とうとう、原発事故作業員の方々に大きな被曝事故が起きてしまった。

 ほんの数日前まで、新聞をはじめとした各メディアは、原発事故現場に向かうこれら作業員の方々のことを、「決死の覚悟」で「命懸けの任務」を行う、まるで戦時中の特攻隊員を彷彿とさせる「英雄」として扱い、その勇気を讃美する論調を世間にあふれさせていた。こうしたある種の異様な論調やそれに同調する国民感情に空恐ろしい違和感を覚えたのは、けっして私ばかりではあるまい。

 しかしそんなメディアの論調も、今回の被曝事故が起きてやっと「作業員の安全確保を」という方向に変わりつつあるようだ。

 とは言え、事故の全容も未だ不明で、今後の見通しもつかず、事態収拾にこれからも多くの時間を要する状況で、これら作業員の方々はますます増員されていくに違いない。それに伴い、このような被曝事故も、仮に杜撰な安全対策が見直されたとしても、今後「二度と起きない」とは、けっして断言できないだろう。

 また、重大な被曝事故でなくとも、ギリギリの作業環境のもと相当量の被曝をすることで、「直ちに影響」は出なくとも、数年、数十年の経過を経て健康被害が発生する可能性も否定はできない。

 被曝のリスクだけでなく、十分な食料や睡眠さえ保障されない劣悪な労働条件での任務を強いられているとも聞く。肉体的なダメージはもちろん、精神的なダメージも計り知れない。このようなダメージは、仮に任務を終えて無事家族のもとへ帰宅できたからと言っても、簡単に癒えるものではないだろう。

 つまり、この原発事故現場での作業に関わったすべての方々には、「直ちに影響が出ない」とは言っても、将来なんらかの肉体的あるいは精神的「健康被害」が発生する可能性が否定できないと言える。

 そこで、非常に心配されるのが、将来なんらかの健康被害がこれら作業に関わった方々に生じた場合、「適切な補償が受けられるのか」、という問題だ。

 ただでさえ労働者の立場は弱い。

 日頃診療をしていると、明らかに「就労中のケガ」であるにもかかわらず、「ぜったいに『労災扱い』にしないで欲しい」と建設現場で負傷した土木作業員に懇願されることは、珍しくない。

 建設業界ではゼネコン、下請け、孫請けと順次下部企業へと工事が発注される受注形態があり、「労災事故」が多い下請けには、その上部企業からの工事の発注がされなくなるという、「病的ピラミッド構造」が根強く残っている。

 そのため、下請け、孫請けなどの零細企業は、なるべく「労災事故」の件数を少なくする必要があり、作業中ケガ人が発生した場合、全額自費診療扱いとして事業主が自腹で治療費を支払ったり、酷い場合はケガそのものを「就労と無関係」と作業員に言わせたりするなどの、いわゆる「労災逃れ」「労災隠し」を行う事例が後を絶たない。

 これは、建設業界に限定したものであるとは、けっして言えないだろう。

 今回の原発事故現場でも「協力会社」といわれる「下請け企業」から多くの作業員の方々が動員されているとのことだ。

 はたして、この「下請け企業」の方々に将来健康被害が発生した場合、適切な補償はされるのだろうか?

 「労災認定されるはずだ」という意見もあろう。

 しかし残念ながら、答えは「否」であると、私は思う。

 確かに「直ちに影響が出た」ものについては、労災認定される可能性はもちろんあり得ると思われるが、将来起こり得る健康被害も不明であるうえ、遅発性に起こったものについての認定は、原発事故現場での作業と相当因果関係が強固に証明できるもの以外は、まず無理だろう。

 そもそもただでさえ、作業中の安全管理対策が杜撰である企業が、将来起こり得る健康被害まで補償することなど、到底期待できない。

 つまり、「原発事故作業に起因した健康被害」を労災ですべて補償するのは、不可能ということだ。

 自衛官については、原子力災害対処によって死亡もしくは障害が残った場合、「賞恤金(しょうじゅうつきん)」が支払われ、今回その額が通常の1.5倍に引き上げられたという。

 もちろん、金銭が補償されればいいという問題ではないが、企業、特に下請けなどの零細企業に所属している作業員の方々にも同程度の補償は最低限必須と考えられる。今後起こり得る健康被害の種類が特定し得ないこのような特殊な状況である以上、原発事故作業との因果関係が証明できるものについてはもちろん、それ以外の傷病を含めたすべての医療費および定期的な健康診断による健康被害調査についても、国が責任を持ち、生涯にわたって補償を行うべきと考える。

 今後、入れ替わり立ち替わり、各方面、各所属の作業員の方々がこの任務に関わってくるにつれ、すべてがウヤムヤになってしまいかねない。早急に、いや緊急にこの医療補償について論じ検討しておく必要性を強く訴えたい。

 原発作業員の方々は、「英雄」である以前に「労働者」であり、自分自身や家族の犠牲を強いられている「被害者」であることを忘れてはならない。

 いくら「英雄」と讃美されても、肉体的精神的被害はけっして癒されることはない。

 この「被害者」としての作業員の方々に、生涯にわたって医療補償を行うことは、安全を犠牲に今日まで原子力政策を推し進めてきた国がなすべき、最低限の「せめてもの償い」と言えるのではなかろうか。

 作業員の方々を「英雄」と讃えた国民ならば、この「勇気ある被害者」への公的医療補償に、まったく異論はないと信じる。

木村 知(きむら とも)
有限会社T&Jメディカル・ソリューションズ代表取締役
AFP(日本FP協会認定)
医学博士
1968年カナダ国オタワ生まれ。大学病院で一般消化器外科医として診療しつつクリニカルパスなど医療現場でのクオリティマネージメントにつき研究中、2004年大学側の意向を受け退職。以後、「総合臨床医」として「年中無休クリニック」を中心に地域医療に携わるかたわら、看護師向け書籍の監修など執筆活動を行う。AFP認定者として医療現場でのミクロな視点から医療経済についても研究中。著書に「医者とラーメン屋-『本当に満足できる病院』の新常識」(文芸社)。きむらともTwitter: https://twitter.com/kimuratomo

コメント

心配です

ご無沙汰しております。
チェロのeriです。

医師としての立場から、今回の震災や原発事故を見られているシュタルクさんのブログ、専門知識のない私にもわかりやすいです。
本当に色々なことが心配です。まだまだ楽観視できないし、私など小さい傷ですが心もまだ落ち着きません。

少し時間がかかりそうですが、またご一緒にチェロを楽しく弾ける時がきたらなぁと思います。
お仕事もお忙しいこととおもいますが、ご自愛ください。
ブログ、これからも読ませていただきます。

eriさん

お久しぶりです。パーシモンホールでのバッハカフェでお目にかかって以来でしょうか。かわせみさん、体調を崩されたとかお聞きしましたが、その後如何なのでしょうか。

原発事故問題は、これから長い時間、多くの人々を苦しめることになるように思います。地震の震災も悲惨でしたが、既に復興への歩みが少しずつ始まっています。でも、原発は、そう簡単に決着はつきません。原発の問題を今後も注視して行きたいと思っています。

またどこかでお目にかかり、アンサンブルを一緒に楽しめる日が来ますように。

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