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晩年のフォーレ 

フォーレ晩年の作品には、若い時期の「甘美さ」が影を潜め、晦渋さ、怒りの感情を聴くことができる。そうした晩年の作品群の典型としては、チェロソナタの1、2番、さらにピアノトリオの3楽章等が挙げられる。

最近、ピアノトリオの2楽章の中間部にもそうした晦渋さが隠れていることに気付いた。バイオリンとチェロがユニゾンで息の長い旋律を弾くところがある。少しメランコリックだが、憧憬を表すかのように、徐々に上り詰めてゆく旋律だ。その旋律の背後で、ピアノが諧謔さを通り越して調性の崩壊に繋がるような、渋い動きをしている。先日、スコアを眺めながら、この部分を聴いていて、初めて気がついた。そして、怒りにも似た楽想に満ちた3楽章が続くことになる。

こうした厳しいフォーレの側面を知った後で、このピアノトリオの次の作品番号を与えられている、弦楽四重奏曲を聴くと、驚かされる。この「白鳥の歌」で繰り広げられるのは、柔和で、優しく、音楽の世界に遊ぶ精神だ。1楽章冒頭、ビオラが柔和に問いかけるような旋律を歌うと、他の楽器が、優しく、慰めるかのように応える。そこから、柔和な響きで、音楽の交歓が続くのだ。あの怒りや晦渋さが微塵も感じられない。人生と抗うことを止め、人生と和解したかのように聞こえる。

ピアノトリオで激しく問い詰め、怒りを見せたフォーレが、次の作品であるこの弦楽四重奏を作るまでの間に、どのような精神的な葛藤と、超克があったのだろうか・・・。

この弦楽四重奏を作曲し終わったときに、フォーレは死の床に就いていたらしい。この作品を公開する前に、ラロ、その他の作曲家に意見を請い、彼らの支持を得てから、公開するように、と病の床から言い残したらしい。フォーレの次男によるフォーレの伝記にはそのように記されていた。

今朝、朝風呂に浸かりながら、NHKの音楽番組がフォーレのピアノ四重奏曲二番とチェロとピアノのためのエレジーを流していた。その二つの作品を聴きながら、ぼんやりと、上記のようなことに思いを馳せた。

コメント

お話を読んでいたら、ピアノ五重奏曲第2番(ハ短調、Op.115)が印象的だったベルトラン・タベルニエの映画「田舎の日曜日(Un Dimanche a La Campagne)」のエンディングが思い出されました。

この曲もフォーレ晩年の代表作だったかと思います。若い頃の甘さはなく、老画家の葛藤を描くこの映画に非常に効果的に使われていました。

その映画で、二番のピアノ五重奏曲の何楽章が使われていたのでしょうか。今、ヴィアノヴァ弦楽四重奏団と、ジャンユボーのピアノの演奏をかけています(昔、繰り返し繰り返し聴いた演奏です)。

確かに、枯れた境地を思わせる作品ですね。

その昔、無謀にも、1、4楽章の演奏をトライしたことがありましたが、難しかったです。4楽章の変リズム・・・泣けました。でも、良い曲ですね。暗い分散和音のピアノにのって、影があるような旋律が四つの楽器に受け継がれてゆく・・・。フォーレの色彩感のある和声が、何処を切りとっても聞こえてきます。4楽章では、デモーニッシュなクライマックスを迎えますね。

話が取り留めなくなりました。小生の詰まらぬ感想にお付き合い下さり、お礼申し上げます。その映画も是非観てみたいと思っています。

出来れば、ハンドルをつけてくださると嬉しいです。またお立ち寄り下さい。

映画では第1楽章がテーマとして使われてました。たしかユボー・ヴィアノヴァの録音だったと記憶しています。

チェロは始める前から挫折(ウェルナーの途中でした。^^;)しているので、ピアノ五重奏曲をトライなど夢のまた夢です。

フォーレでは第一番と並んで昔から好きな曲でした。リタイアして時間が取れるようになったら再度挑戦してみたいです。


nieさん

やはり1楽章だったのですね・・・あの楽章以外考えられないと思っていました。20年以上前に、Durand社発行のとても高価な譜面を手に入れて、某所で1楽章だけ弾き、10年ほど前に1,4楽章にアタックして挫折という履歴です。1楽章は譜面の上ではさほど難しくなさそうなのですが・・・あわせるのは難しかったです。

1番も憂愁の音楽ですね。1楽章だけ弾いたことがあります。2nd Vnのソロから始まるところが、奥ゆかしいです。

共に、IMSLPというサイトからパート譜を入手できます。

是非、アンサンブルを組んで、演奏なさってください。あのフォーレの色彩感豊かな和声の渦のなかに身を置くことは愉悦そのものです・・・。

ご紹介いただいた映画、是非手に入れて観てみたいと思います。

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