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人の存在を危うくする原発事故 

東大医科研グループが、依頼を受けて、飯館村で検診を行ったという報告。

老齢の方が、飯館村に住み続けたいという希望を漏らされた。それを受けて、この記事の筆者は、緊急の避難指示が正しい選択だったろうか、と問うている。この状況で、住み慣れた自宅にとどまるか否かは、極めて個別的な対応が必要だということは、筆者の述べておられる通りだ。行政にも一律の判断を押し付けることはやめてもらいたいものだ。

が、住み慣れた故郷の自宅に留まれぬという、年配の住民にとっては、生きることを根源的に否定される事態を、この事故がもたらしているという点にこそ、我々は注目すべきではないだろうか。放射能汚染は、年余にわたって生命を脅かすだけでなく、人が社会的な存在であることを脅かすのだ。我々が存在することを根源的に脅かす事態なのだ。この事態を改善する、切り札のような方策がない。一旦、こうした事態になると、周辺の大きな地域は人が住めなくなり、たとえ住めたとしても、放射能汚染の呪縛に数世代にわたって苦しめられることになる。

現在、事故を起こした原発では、10万トンを超える汚染水がたまり、その汚染除去システムが稼働したかにみえたが、どうもうまくいっていないらしい。あと10日前後で、高度汚染水が地表に漏れ出てくる。それは海をさらに汚染することになる。まだまだ剣ヶ峰を歩んでいる状態だ。何としても、このとめどない環境汚染の進行を食い止めてもらわねばならない。さもないと、我々の生存基盤が危うくなる。すでに、なっているのかもしれない。

もう一点、医科研と共同で、この検診事業を進めているという「星槎グループ」。その会長、宮澤氏は、知る人ぞ知るアマチュア無線愛好家。最近は、あまり聞かないが、1990年前後には、無線上珍しい様々な国に出かけて行き、無線をしておられた。何度かお目にかかったこともあるが、DXをやっている方には珍しく外交的で陽気な方だった。頑張っておられるなと思って、同グループのサイト等をサーフしてみた。


以下、MRICより引用~~~

飯舘村 健康診断・放射線相談会の舞台裏

東京大学医科学研究所
坪倉 正治

2011年6月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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村内全体が計画的避難区域に設定された飯舘村で5/21,22、特に空間線量の高い3つの行政区(比曽、蕨平、長泥)の村民を対象に健康診断および健康相談会が行われた。この健診相談会は菅野村長からの依頼にて、飯舘村と我々のチームが共同で行ったが、今回はこの経緯と結果についてご報告したい。

健診の結果は6/1に飯舘村ホームページに掲載されており、そちらもご参照いただきたい。
http://www.vill.iitate.fukushima.jp/news_item.2011-03-16.6166347824#44

【健診・相談会が行われるまでの経緯】
「村民の皆さんが避難する前に健康診断をお願いできないだろうか。」
飯舘村の菅野村長から東京大学医科学研究所(以下、東大医科研と呼ぶ)にこんな連絡があったのは5/13のことだった。相馬市内のとあるビルの2階、ここに星槎グループと東大医科研共同の事務所がある。この事務所を拠点とし、我々は震災後、相馬、南相馬で継続的に医療支援を行っていた。どうして我々に依頼が?そんなことを考えながら、飯舘村役場に初めて伺ったのは5/16のお昼頃だった。

菅野典雄村長と、健康福祉課の菅野司郎さん、石井さん、松田さんと、ハーバード大学公衆衛生大学院の細田美和子さん、と私の5人で相談をした。実は、この段階では誰を健診の対象にするのか、どの様に行うかは全く決まっていなかったのである。しかしながら、ものの数十分で方向性は固まった。なぜなら、村長のご意思が非常に明確であったからである。

「健康診断で、村民の皆さんの不安を出来るだけ取り除いてあげてほしい。1人1人の話をじっくり聴いてあげてほしい。」
これを繰り返し村長は強調された。

通常の健康診断では、医師1人あたり1日で200-300人程度の健診者を診察する。時間的に1人の健診者とのやり取りは1-2分程度が限界だ。僕は言った。「わかりました。できるだけ医者を集めます。しかし、時間的また我々のマンパワー的にも何千人の方々を対象には恐らくできません。」
この相談の5日後、18歳以上、特に空間線量の高い3つの行政区(比曽、蕨平、長泥)の村民の皆さんを対象に健診および相談会を行うことになったのである。

余談だが、こんなことも聞いた。どうして我々に依頼するのですか?と。答えはこうだった。「相馬市の立谷秀清市長からあなた方のことは聞いた。他に頼める人がいない。」と。
この時点で飯舘村は無医村であった。福島県や国は、「予算を30年間つけて住民の健康【調査】を行う。まず第一回目の会議を始めないと、、、」といったことを言っている段階であった。村長はじめ、地元の方々が望んでいたのは国や県がやろうとする調査ではなかったし、国や県は村民の皆さんが避難するまでの短い時間内に動ける状態でもなかったのである。

【健康診断・放射線相談会当日】
当日の健診会場は受診者でごった返し、まさにカオスだった。この大混乱を何とかまとめることが出来たのは、星槎グループの宮澤保夫会長を始めとする星槎スタッフの皆さんの協力なくては実現しなかった。この場を借りてお礼申し上げたい。
南相馬医師会長の?橋亨平先生、南相馬市立総合病院の及川友好副院長をはじめ、東京大学国際保健政策学専攻の渋谷健司教授、田仲曜先生、小林一彦先生、日向正光先生、谷本哲也先生、角泰人先生、福井一人先生、浅谷麻美子先生、飯舘村の看護師の方々、渋谷研の学生さん達、その他多くの方々が快く協力してくださった。
問診、採血採尿、身体測定、血圧測定を行い、その後医師診察を行った。私自身も診察に加わったが、村民の方々は本当に色々なことを話してくれた。村の歴史、自分の家族の歴史、仕事のこと、子供や孫のこと、自分の思いなど、ここではとても書き尽くせない。無念だという気持ちがひしひしと伝わってきた。じっと話を聞いていた。
腰が曲がった高齢者の方もたくさんいらっしゃった。「この村で死にたい。」そういわれて返す言葉は無かった。15~20分なんてすぐに過ぎた。
確かに空間線量は高い。健康に影響が出るかもしれない。ただ全員に、「じゃあ避難してください。」というのが正しいなんてとても思えなかった。

【当日の結果 背景・症状】
感想文のようになってしまっているので、結果の概要をご紹介したい。
今回の健診には合計257人の住民が受診した。年齢中央値は62歳、50歳以下は全体の20%程度であり、高齢者が大部分を占めていた。そのためか多くの方が、慢性疾患を合併しており、高血圧92名、高脂血症30名、糖尿病14名であった。悪性腫瘍の治療歴のある住民は11名だった。
抑うつの程度を計るため、PHQ-9を導入したが、住民全体のスコアの中央値は3点で、大半の住民は特に問題がなかった。しかしながら、47人(18%)がカットオフ値の10点以上であった。専門家による継続的な介入が必要であるというのは医師としてのコメントだが、この状況で何も感じないなんて不可能だとも思う。

【震災後の生活環境の変化】
特筆すべきは、震災後、生活環境が激変していることが明らかになったことだろう。震災前は半分以上の住民が、農家だからか、毎日5時間以上屋外で生活していた。それに比べ、震災後は屋外での作業時間は激減し、大部分の住民は一日に数時間しか外出していなかったのである。

【血圧身体測定、血液検査結果】
上記の生活環境変化が影響を及ぼしたかはわからない。
だが、明らかになったのは慢性疾患のコントロールが悪い健診者が多いことであった。血圧は94人(37%)で収縮期血圧が140 torr以上で、前年度に比べ統計的に有意に上昇していたのである。同様の傾向はBody Mass Index (BMI)でも認められた。
一方で、急性被曝の指標とされる白血球やリンパ球の明らかな低下を認めた住民は存在しなかった。

【結果を見て】
当然のことながら今回の検査結果のみで、放射線被ばくによる身体への影響は出ていない、なんてことは言えない。しかし、この結果を見て、私はあの健診のときの、腰のまがったおばあちゃんを思い出した。このおばあちゃんの血圧が避難指示を含めた災害によるストレスで急激に上昇し、虚血性心疾患や脳血管障害を引き起こしたら?
被ばくにより、十年後に発ガン率が、、、とか白血球が下がって、といったことももちろん重要なのだが、本当に健康に最も影響を与えている要因は被ばくなのか?
もっと言うと、本当に緊急の避難指示を出すことが正しかったのか?と。

被ばくによる影響を軽んずるつもりは毛頭ない。長期の慢性的な低線量被ばくの影響は不明である。Whole body counterを用いた内部被ばくの調査も行えていない。年齢を含め個人間で放射線の影響は異なる。きっと子供や妊婦さんにこの議論は通用しない。現在この結果の精密な分析を行っており、今後発表の予定だが、まだ我々は原発災害が身体にどのような影響を及ぼすかについて知らないことが多すぎるのだ。

繰り返しになるが、村民の皆さんの不安を出来るだけ取り除いてあげてほしいとおっしゃり、今回の健診の開催をご判断なされた、菅野村長に敬意を表する。今回の健診を通して、我々もできるだけの支援を続けたいと思うと同時に、この地区のより多くの方の健康が守られることを切に願う。


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