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行政による医療現場支配 新型インフルエンザ問題を通して 

新型インフルエンザ流行の際に、行政が、予防接種、診療体制、検疫に直接的な関与を行い、現場を混乱に陥れた。予防接種は、その流通から接種対象者まで事細かに現場に指示を行った。それが現場の実情に合わないために、現場は大混乱に陥った。

予防接種の流通をコントロールしようとして、行政は、流行極期を過ぎてから、外国の製薬会社に予防接種を大量に注文した。それは殆ど使われなかった。そのために、国の予算が、数百億年の規模で無駄になったはずだ(その顛末も公表されていない)。また、現場では実用にならない「10ml」という大きなボトルの予防接種を大量に流通させ、大量の無駄を生んだ。どうもこれは、予防接種生産企業の都合を優先したためらしい。

また、年齢別・リスク別等で接種順位を事細かに設定し、現場を大混乱に陥らせた。事務手続きが煩雑を極めた。また、廃棄処分にせざるを得ない予防接種をかなりの量生じた。行政の指示通りに接種しないと、下手をすると新聞に書きたてられたのだ。

空港での検疫によって、流行の開始を遅らせることができたと、行政ないしその代理者は自画自賛しているが、実際は、検疫にその効果がないことが判明している。潜伏期の患者は、検疫を容易にすり抜ける。検疫には意味がない。

この失敗も最初の経験だから仕方のないことかと思っていたら、どうも行政が事細かに現場を支配するやり方を法制化する積りらしい。医療現場の人間を強制的に徴用することや、医学的に意味のない検疫で感染の疑いのあると行政が判断した人間を強制的に隔離する積りのようである。

医療現場にいると、行政が我々を意味なく支配し、コントロールしようとしている、その姿勢を強めているのを感じる。医療が自由化される方向に進む潮流のなかで、行政の存在意義、すなわち権益を確保しようとする行政の対応なのではないだろうか。

これは、翻って、医療の窮乏化をもたらし、医療を受ける国民に跳ね返ってくるはずだ。


以下、引用~~~


新型インフルエンザ対策は助成的・調整的行政指導であって規制的権力行政ではない
-医療従事者や帰国者・濃厚接触者の人権を侵害してはならない-

井上法律事務所 弁護士 
井上 清成

2011年8月29日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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これは「新型インフルエンザ対策行動計画」(改定案)に対する意見募集(パブリックコメント)に
提出した意見です。

平成23年8月28日

内閣官房新型インフルエンザ等対策室 御中

新型インフルエンザ対策行動計画(改定案)に対する意見
新型インフルエンザ対策は助成的・調整的行政指導であって規制的権力行政ではない
-医療従事者や帰国者・濃厚接触者の人権を侵害してはならない-

(1)医療体制の強化ではなく、医療提供体制の充実を図るための助成・調整と規制緩和をすべき新型インフルエンザ対策で最も大切なことは、新型インフルエンザ患者への医療提供の体制を充実させることである。そこにおける国、地方公共団体の役割は、医師・医療機関を半強制的に動員したり診療体制につき指揮命令したりすることではない。医療現場に必要な医療資器材や医薬品を医師・医療機関の要望に応じて迅速・柔軟に供給し、医師・医療機関に必要な医療情報を無制限・全面的に公開して供給することであり、緊急の正当業務行為たる診療に対する規制を緩和して自由に診療活動をできるようにし、その過程で生じた医師・医療機関の被災・被害を直ちに補償し、逆に、医療過誤等の責任問題を免責することである。
今回の行動計画(改定案)は、このような視点が乏しい。そこで、あくまでも助成・調整が国・地方公共団体の役割であるという観点から、見直しを図るべきである。

(2)医師・医療機関の半強制的な動員政策や帰国者・濃厚接触者の隔離政策は憲法に定める基本的人権を侵害しかねない
憲法第22条は、その第1項で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と定め、その第2項で、「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」と定めた。
「職業選択の自由」は、選択した職業を遂行する自由(事業活動の自由)を含み、医師・医療機関に即すれば、それは「医業遂行の自由」である。必ずしも医学的根拠が十分でなく合理性に乏しい「水際対策」の実施に、医師・医療機関を半強制的に動員してはならない。また、国や地方公共団体の政治的思惑に基づき「帰国者・接触者外来を指定しての診療体制」や「一般の医療機関でも診療する体制」への体制チェンジの指揮命令をするなどして、医療現場を混乱させてはならない。いずれも、医師・医療機関の基本的人権たる「医業遂行の自由」を侵害するものと評しえよう。
「外国に移住する自由」は、出国の自由や再入国の権利を意味する。必ずしも医学的根拠が十分でなく合理性に乏しい「水際対策」によって、出入国に規制をかけるならば、国民の基本的人権を侵害するものとなりかねない。さらには、離島その他に徒らに「地域隔離」政策を実施するならば、国民の「居住、移転の自由」を奪うものと評されるであろう。憲法第14条第1項に定める「法の下の平等」を侵すものとして、地域差別とも評されかねない。
新型インフルエンザ対策は「規制的な権力行政ではない」という原点に立ち戻って、人権侵害の恐れのある行動計画の部分は適切に見直すべきである

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