FC2ブログ

中性子照射脆化の問題 

中性子照射脆化(以下、脆化と省略する)という問題が、原子炉の構造材にあることは以前から耳にはしていた。だが、石橋克彦編「原子炉を終わらせる」(岩波新書)を読むまでは、それが差し迫った危機をもたらしていることを知らなかった。

原子炉では、核反応を続けるために中性子を発生し続ける。その中性子が、原子炉(圧力容器)の構造体である金属に照射され続けることにより、金属の脆化を起こす。一種の原子炉の経年変化(劣化)である。金属本来の粘りがなくなり、脆くなるのだ。原子炉は、脆化のない条件で設計されている。この脆化の生じる条件で原子炉が作動されると、容易に圧力容器が破壊される。すると、チェルノブイリと同等、それ以上の放射能が大気中にばらまかれることになる。そうした事故が起きると、日本の大半が汚染地域となる可能性が高い。

原子核工学の専門家でもある、共産党の吉井議員が国会で、この問題について質疑を行っている。このサイトに、その内容が掲載されている。彼によると、プルサーマル化により、中性子の発生は5%程度増え、この脆化現象が起きる危険はそれだけ増す。また、経年劣化であることから、建設後年数の経った原発ほど危険性は大きくなる。

使用年数が40年以上で、プルサーマル化されている、玄海第一原発が、この脆化の問題からして目下一番危険な原発と指摘されている。これ以外にも、脆化が進行していると思われる原発は複数存在する。

電力会社や、安全保安院でも、この問題を重視しており、検討を加えている。実際には、実験での知見以外に、実際の原子炉に試験片を入れて、それの脆化を検証し、そのデータから、予測式を用いて、脆化の実際を推定し、進行を予測する、という作業をしている。

しかし、この予測作業が現実を反映するとは限らない。現実に合致するように、補正され変更されつつある。また、推定された脆化の程度も、実験では再現不可能な緊急冷却といった事態では、圧力容器の振る舞いにどのような影響を及ぼすかが不確定である。想定以上のストレスが加わり、脆化の限界を超え、爆発する可能性も大きい。

玄海第一原発では、2007年に、試験片の計測に基づき、脆化の程度を表す脆性遷移温度が、98℃という値を得た。1993年には56℃だったので、大幅な増加、すなわち脆化の進行である。九州電力は、試験片が圧力容器隔壁よりも炉心近くに位置するといたことから、実際の脆性遷移温度は80℃であり、同原発は、60年間使用可能であると予測し公表している・・・どのようなエネルギー機器であっても60年使い続けることはないだろう・・・。。

「原発を終わらせる」の著者の一人、井野博満によると、玄海第一原発の脆性遷移温度について予測が成立しがたいことを述べ、98℃という実測値を脆性遷移温度とすべきだろうとしている。そうなると、98℃以下で圧力容器内の圧を上げることはできず、実際の原子炉の運用が極めて難しくなる。そればかりか、脆性遷移温度が100℃を超え、実際に原子炉
を使えなくなるのが目に見えている。

予測値と実測値が乖離する場合、予測値よりも、実測値を重視するという考え方が、より科学的であり、重視すべきである。ことに、重大事故に繋がる観測項目であれば、尚更だ。

また、電力会社、これまでの安全保安院等の行政官庁、および彼らと関係の深い研究者達の出すデータにより、原発の安全危機管理を行うのは止めるべきだ。原発の安全性についての計測データを出す作業、さらにそれを用いて、原発の現状と将来の予測を行う作業、両作業ともに完全に中立厳正で利益相反のない、組織・研究者が担当すべきである。そうでなければ、原発の安全等絵に描いた餅である。

現にある原発の危機に慄然とする思いがする。重大事故が起きる前に、安全危機管理の体制を刷新すべきだろう。

コメント

原発は減らそう

 今動いてる原発は後回しでも、すでに壊れた柏崎や女川は廃炉にしましょう。そのあと古いモノから廃炉にしていけば比較的早く全廃できそうです。そのあと原子炉廃棄と核廃棄物処理の技術を開発するのはかなり大変でしょうが。
 元々不完全な技術であるのは医療も同じですが未来が暗いのは核開発の方です。

中性子照射脆化の観点から行くと、古い原発は、ことごとく危なそうです。

電力会社・行政は、実測データを都合の良いように取り繕って、古い原発がまだ使えると主張していますが、酷い話です。

圧力容器の爆発が起きたら、日本の半分程度は住めなくなる覚悟が必要です・・・ということは、この国が消滅することを意味します。

地震の多さから言っても、原発依存を大至急やめないといけませんね。大事故が起きたら、次世代の命を奪うことになります。

外来で小さなお子さんをかかえるお母さん方に、この説明をするようにしています。

  • [2011/09/03 11:48]
  • URL |
  • ja1nut @ office
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://nuttycellist.blog77.fc2.com/tb.php/2265-ac9da216