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産科医が自分で自分の首を絞めているような・・・ 

産科医療補償制度を担当する日本医療機能評価機構は、同制度により莫大な内部留保を貯めつつある。

一方、同機構が行っていることと言えば、対象となる脳性まひの範囲を狭めた上、書類審査だけで脳性まひの成因を公表すること。脳性まひの多くは、胎内で生じるというのが新生児病学の最新の知見だが、同機構は、脳性まひの成因を分娩時の問題に帰着させているようだ。

原因が複数あり、まだよくわからぬ側面のある疾患の個々の成因を議論するならば、多角的に、かつ医療資源等も考慮して行うべきだろう。それなしに、成因を一面的かつ一方的に決めつけられたら、医療現場としては困惑するのみなのではないだうか。特に、この脳性まひの成因のように医療訴訟に直接結びつく情報を、一面的で表面的な分析から公表されるのは、産科医を追いやることになる。

官僚や学会・医師会の幹部が天下っている、このような組織に、善意からせっせと上納金を納めている構図は、自分で自分の首を絞めていることに等しいのではないだろうか・・・。


以下、MRICより引用~~~

産科事故の一般公開は継続すべきなのか

この原稿は月刊『集中』2011年10月号「経営に活かす法律の知恵袋」連載第26回に掲載されたもので
す。

井上弁護士事務所 弁護士
井上 清成

2011年10月7日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1.壮大な実験―産科事故の一般公開
現在、日本産婦人科医会が主導して、壮大な実験とも表すべき試みが開始されている。もし、この実験が成功したと評価されるならば、産科事故に限らず他の診療科にも同様の制度が導入されるであろう。しかし、もしこの実験が失敗だと評価されるならば、産科医療の萎縮もしくは崩壊がさらに進みかねない。大きなリスクを抱えた賭けとも言えよう。筆者が「壮大な実験」と表現するゆえんである。
その壮大な実験とは、一口に言えば、「産科事故の一般公開」とでも評し得る試みにほかならない。
目に付いただけでも3つはあった。
妊産婦死亡事例の厚労省研究班の調査発表、産科医療補償制度での原因分析報告書の公表、同じく産科医療補償制度での再発防止報告書の公表の3 つである。

2.妊産婦死亡事例の厚労省研究班の調査発表
「妊産婦10人救命可能性/昨年出産時出血死16人分析/厚労省研究班」という大見出しの記事が、8月221日付読売新聞に載った。「昨年1 年間に全国で出産時の大量出血で死亡した妊産婦は16人おり、うち10人は、輸血などの処置が適切だったならば救命できた可能性が高いことが、厚生労働省研究班の調査でわかった」そうである。結論として、「研究班は、体内での出血の進行の見落としや、輸血製剤の不備などで、治療が手遅れになったと分析している」らしく、新聞記事ではさらにそれらの詳細が述べられていた。どうしてこのような研究成果を挙げられたのかというと、「研究班は、日本産婦人科医会の協力で、全国約1万5000人の産婦人科医からカルテなどの提供を受け、死因や診療内容の妥当性を分析」できたからであるらしい。

3.原因分析報告書の公表
産科医療補償制度とは、重度脳性まひ児・家族への3000万円の無過失補償と、補償事例の原因分析委員会による原因分析報告、再発防止委員会による再発防止策提言、調整委員会による重過失事案の損害賠償調整とを一体として組み合わせた制度である。分娩機関である病院・診療所・助産所の合計3336機関のうち、99.8%にあたる3328機関が加入しているという。日本医療機能評価機構とリンクし、日本産婦人科医会が主導して創設した制度である。制度がスタートして約2年半がたつ。

この制度の最も先進的なところは、原因分析委員会による原因分析の試みである。批判も多いところではあるが、先駆的な試みとして高い評価に値すると思う。しかし、透明性が高過ぎる点は、懸念材料としか評しようがない。

つまり、原因分析委員会の調査・分析・作成した原因分析報告書は、その症例の児・家族にダイレクトに渡されて、家族からの疑義・質問にも答える。もちろん当該分娩機関にも送付されるが、報告書の要約版はホームページで公表されてしまう。さらには、要約版ならぬ全文版は、学術的研究、公共的利用、医療安全の資料のため請求者に開示される。医療事故を事件として取り扱っている弁護士らも、開示請求するであろう。原因分析報告書は、児・家族はもちろんのこと、一般国民にもオープンにされているのである。

なお、原因分析報告書では、「当該分娩機関における診療行為について検討すべき事項」が厳しく指摘されてしまう。たとえば、「子宮収縮剤の投与量については、日本産科婦人科学会および日本産婦人科医会によって取りまとめられた『子宮収縮薬による陣痛誘発・陣痛促進に際しての留意点』の基準に準拠して行われるべきである」とか、「本事例は出生後に臍帯動脈血の血液ガス分析がなされていない」などと断定される。弁護士も含む一般国民としては、それが直ちに「過誤」「過失」を意味するものと捉えてしまう向きもあろう。

4.再発防止報告書の公表
原因分析委員会に引き続き、次は再発防止委員会が「再発防止に関する報告書」を作成し公表する。
再発防止策等の提言を、国民・分娩機関・関係学会・行政機関などに提供するというコンセプトらしい。ホームページで公表し、報告書を配布する。

日本医療機能評価機構は、8月22日に初めて、第1回目の再発防止報告書を公表した。8月23日付共同通信によれば、「学会の指針を逸脱した陣痛促進剤の過剰投与や心肺蘇生処置が不十分だった例が相次いでいたとして、関係学会や医療機関に注意喚起した」らしい。「陣痛促進剤を使用したのは15件中6件で、投与の量が日本産科婦人科学会が定めた指針より多かったり、投与の間隔が短かったりした」とか、「新生児の蘇生では『蘇生方法が不十分』『必要な器具や酸素が常備されていない』『蘇生できる医療関係者が不在』など7件で問題があった」とか、「胎児の異変を察知する心拍数モニタリングが十分でなかった例も8件あった」などと公表した模様である。

5.一般公開の位置付け
これらの調査発表や報告書公表は、産科医療の信頼を回復することを目指し、透明性を確保しようとの目標を設定したために、実施されたものであろう。そして、その位置付けは、たとえば再発防止報告書の末尾に注書きしてあるとおり、「本報告書は、利用される方々が、個々の責任に基づき、自由な意思・判断・選択により利用されるべきものであります。そのため、当機構(筆者注・日本医療機能評価機構のこと)は利用者が本報告の内容を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではないと同時に、医療従事者の裁量を制限したり、医療従事者に義務や責任を課したりするものでもありません。」と考えているらしい。

しかし、弁護士を含む一般国民は、必ずしも日本産婦人科医会や日本医療機能評価機構の意図したとおりに受け取るとは限らないであろう。これらの一般公開が、直ちに公的な権威を伴った過失の認定と捉えてしまうかも知れない。訴訟や紛争を誘発する恐れが拭い去れないと思う。さらに、これらの一般公開には、医師のための法的安全弁は何ら備えられていない。そう考えるならば、産科事故のこれほどまでの一般公開については、現時点で改めて、加入しているすべての産科医が再認識すべきであろう。そして、このまま継続すべきなのかどうかを再検討することが望まれる。

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