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機能しなかったSPEEDIによる予測 

原子力災害時に、放射能汚染を予測するシステムSPEEDIがある。文科省配下の財団法人原子力安全センターが統括するシステムで、過去130億円の費用をかけて作り上げられたらしい。原発事故等に際して、気象・地理条件等々をパラメーターとして、放射能汚染の拡がりを予測するシステムである。東電福島第一原発事故前5ヶ月にも、政府の事故対応の訓練に用いられていた。

過日の、東電福島第一原発では、しかし、この予測システムが機能しなかった。昨夜、テレビ朝日のニュース番組で特集をしていた。文科省・原子力安全委員会・原子力安全保安院等々関連する行政機関は、事故後すぐに上記センターにシミュレーションをすることを指示した。中には、40数回も指示した行政機関もあったらしい。しかし、それらのデータは、国民、特に汚染が拡大した地域の住民はおろか、官邸にさえも上げられず、住民の避難誘導に利用されなかった。原発の水素爆発が起きた直後、行政の放射線モニター作業は開始したが、地域住民は置いてきぼりだったらしい。高濃度汚染にさらされた地域の住民は、何も知らされず、そこに防護服に身を固めた行政担当者が、放射線量測定とモニターポスト設置に現れ、殆ど何も告げずに作業だけをしていったということのようだ。

上記行政機関の言い分はいろいろあるようだ。

原発から漏出し、爆発によって飛散した放射能物質の線量の数値がなかったので、予測が不正確になると思ったので出さなかったという言い訳を述べている行政官がいた。しかし、その後の実測値が、予測データとよく一致していたことが判明しており、汚染の絶対量は予測できぬまでも、同心円ではない不定な形で汚染が進むことが予測できたはずであり、この言い訳は成立しない。

政府が、同心円状に避難指示を出していたので、それに遠慮したということを言っている行政官もいた。しかし、これまでシミュレーションで汚染は同心円にはならないことが分かっているはずで、地域住民の安全を考えたら、政府の方針に意見をするべきだった。あの同心円の避難対応がおかしいことは、素人でもわかることだ。政府に意見することが、予測を担当し、情報を得る立場にある行政官の責任だったはずだ。

一番多く聞かれた言い訳は、他の省庁・期間が官邸にデータを上げると思っていたという、責任回避の言い分だ。データが出たならば、原発対応に多少なりとも責任のある部門にいる行政官は、政府にすぐにデータを上げるべきだったろう。情報が重複しても良いはずだ。それまでSPEEDIを用いた訓練を重ねてきたのは一体何のためだったろうか。

原発事故という、起きないと彼らが信じていた事態になって、対応ができなかった、固まってしまっていたというのが、実際のところなのかもしれない、と最初好意的に考えた。

でも、巨額の予算を用いてシステムを築き上げ、それを用いてシミュレーションを重ねてきたのだから、その言い訳は通用しまい。

官僚制度の制度疲労が、この問題にも典型的に表れているように思える。

第一に、硬直化し、責任を取ろうとしない制度の問題だ。硬直化とは、新たな事態に対応できぬ様態を指す。過去経験したことのない状況では、判断を停止し、責任回避に走ることになる。

第二に、情報を隠す、自己に都合の良いように利用する習性があるのではないだろうか。15分間でデータが出ると言うSPEEDIの情報をなぜ40数回も同じ部署から、原子力安全センターに要求したのだろうか。その情報は、専ら自らの関心のためであって、地域住民のためではないのだ。この習性は、情報を自分たちだけのものとし、必要とあれば、小出しにする、または都合の良い情報だけを公開するということにも通じる。医療現場にいると、そうした官僚の習癖を繰り返し見せつけられている。こうした地域住民の安全に直接かかわる情報を、秘匿したことは決して許されるべきではない。

この事態をもたらした、行政責任者は業務上過失を問われるべきではないだろうか。

情報を秘匿し、都合の良いように利用する行政の在り方を根本的に改めるべきだ。行政の存続・利権が自己目的化する硬直した制度も問われるべきではないだろうか。

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