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官僚主導の原発複合体 

吉岡斉著「新版原子力の社会史」(朝日新聞出版2011年第一刷)は、主に1954年原子力開発予算が国会で上程される前後から、東電福島原発事故までの、わが国の原子力・原発開発の歴史を概観する好著だ。著者は、原発推進の立場に「非共感的に立つ」科学技術史の専門家である。詳細に概説してみなければならない内容だが、それはまたの機会にするとして、この本を読んで、わが国の原子力・原発開発推進の歴史を通じて感じるを記す。

第一に、常に核武装を狙う政治家・官僚の意図が、底流にあるように思えることだ。敗戦後間もない時期に、絶好の機会をとらえて、原子力研究開発を始めたのは自民党の中曽根氏等だったという。そして、国策として、自己完結する核エネルギー開発を目指してきた。プルトニウムによる原発、高速増殖炉については、1970から80年代にかけて、欧米各国では、技術的に困難であり、危険を伴うと考えられ、研究を取りやめたのだったが、わが国では、国策の一つとして継続され、莫大な予算がつぎ込まれてきた。これは、プルトニウムとい原爆の材料を確保しようと言う意図があったからなのではないだろうか。

第二に、科学技術庁対電力会社・通産省連合という勢力争いないし対立の構図で、開発が続けられてきたが、結局全体を推し進めてきたのは、官僚達であったようだ。上記の高速増殖炉についても、電力会社は採算に合わないとして、積極的ではなかったが、官僚の意向でつい最近まで続けられてきた。高速増殖炉もんじゅの事故に際し、開発に携わってきた当時の動燃が事故の事実を隠ぺいし、国民の信頼が失墜したことがあった。その際に、原子力委員会の責任者の提案で、高速増殖炉懇談会が科学技術庁を事務局として設置された。その懇談かの人選・審議の進め方が、「高速増殖炉開発を継続する」という結論ありきで進められ、懇談会の議論が殆ど反映されなかったことが、委員の一人であった著者の生々しい体験として語られている。こうした審議会を用いて官僚の意向を実現する手法は、医療界でも日常茶飯事に観察されている。吉岡氏の悲憤慷慨を押し殺した経過説明の文章を読むと、官僚によってすべておぜん立てされて進められていることが大きな問題であることがひしひしと伝わってくる。また、原発は、1980年代に先進国では建設が様々な問題、特にチェルノブイリ事故の教訓から余り行われなくなってきたのに、わが国では、まるで社会主義国家の計画経済下のように、着々と建設され続けてきたことも特異な現象である。このことの背後に、官僚が原発複合体の中心にあって、建設を促進してきた事実があるのだろう。

第三に、核エネルギーの開発が国策として開始されたときから、学会・研究者達は、体面を保つことと、自己保身さらに研究費にありつくことだけを考えて行動してきたことが分かる。核エネルギー開発の危険性と非採算性を、一番世論にアピールすべきは、そうした研究者達だったのではないか。研究者達のこうした態度が、現在のわが国の原発の状況をもたらした一つの要因なのかもしれない。原発安全神話を歌い上げた研究者達は、ほっかむりしたままである。

官・政・業の原発複合体の中心にあって、一番甘い汁を吸い続けてきたのは、やはり官なのではないだろうか。これまであまり表に出てこなかった、この複合体内部での腐敗構造がこれから明らかになることだろう。

この報道は、そうした観点からすると、興味深いものだ。



以下、引用~~~

原子力機構、会費で1億円超支出

2012年1月10日(火)2時2分配信 共同通信



 高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)を運営する文部科学省所管の独立行政法人(独法)「日本原子力研究開発機構」が2009年4~9月に、関係する公益法人などに「会費」名目で計1億900万円を支出していたことが9日、民主党行政改革調査会の調べで分かった。一部法人には文科省や原子力機構のOBが「天下り」している。原子力機構には09年度に国から約1850億円が交付されており「お手盛り」との批判が出そうだ。


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